20、毛生え薬
「昨日はあの後どうだった?」
「ああ、おじさんたちと仲良くなったよ」
ロバのマントの話はしないほうがいいだろうな……。
「さすがユミね。それなら、協会には行きやすくなったね」
「うん。今日の収穫もみんなで分けるから、一緒に行ってみようよ」
「え!? いいの?」
「うん。だって、ミサたちと行かないと入れなかったもん」
『ありがとう』
二人にお礼を言われた。私は朝、気になったことを聞いた。
「女の子たちがいたけど、あんまり強そうじゃないよね」
「他のパーティに入ってるから、そうだと思う。下に行くほど難しくなるから、パーティが合流して五、六人になるのよ。女の子たちは今全員、どこかに入れてもらってるはず。寮にいる女の子は、今八人ぐらいかな。地元の女の子はいないと思う」
「そっか、地元の子もいるよね」
地元の存在を忘れていた……。私には区別がつかないけど。
「ダンジョンは危ないから、ほとんどの女の子は結婚すると冒険者をやめるって講習で言ってた。女性の冒険者は少ないみたいね」
「そうなんだ! そうだよね。——でも、講習でそんな話なかったな」
「私たちは、寮の女の子だけで一緒に講習を受けたのよ」
「そっか」
私は後で入ったからな。
「二人だけ普通ダンジョンのパーティに入ってると思う。今日後ろにいた子たちが、多分一番遅れてるパーティね」
「そうなのか。じゃあすぐにまた会いそうだな……」
というか、他の子にもそろそろ会うだろうな……。
「私たちは寮の中では別枠みたいな感じで情報は入ってこないから、話しているのを聞いたり、管理人さんから情報を仕入れてるのよ。同業だとライバルになるからそれでいいけど。みんな競争心高くて、パーティ以外は仲が良くないから、ほとんど話してないわね」
「わ~、そうなんだ」
私はそれを聞いて汗をかいた。今日挨拶してきたのも、探るためだったのか……。他の子にも会いたくないな。
昼ご飯を済ませると、ゲートの向こう側にある毒消し草を採取した。さらに奥に進むと、甲高い鳴き声がした。メイアが叫んだ。
「カロットだ!」
「あいつは、髪の毛をむしるから気をつけて」
「え!?」
今初めて聞いたよ! 前は、ルイスが簡単にやっつけたけど……。髪の毛は絶対にいやだ!
カロットがすごいスピードで突っ込んできた。私は思わずしゃがんだ。
「ユミ! 上」
「わ!」
見失うと、髪を掴まれた! 髪がカロットの足に絡まってしまった。
「痛たた!」
最悪だ! 引っ張られる! こ、これは、どうすればいいの!? 切らないとダメなの!? え~ん。私はハンマーを短く持って、なんとかカロットに当てると、ポンッと上で音がした。頭に固いものが、コツン、コツンと当たる。
「痛い、痛い」
頭を押さえて下を見ると、赤い魔鉱石と、小さい金属の缶だった。拾ってよく見る。
「これはもしかして! 幻の毛生え薬!!」
カロットが落とすアイテムだ!
「毛生え薬!? そんなものがあるの!?」
「うん。めったに落とさないって本に書いてあった。……抜いた髪の毛で作られてたら嫌だな」
「それはないと思う。多分、抜いた毛を巣に敷き詰めてるんだと思う……」
「それも許せない気がする……」
缶をひっくり返すと、裏にラベルが貼ってある! 商品名の毛生え薬と使用方法が書いてあった。ミサが興奮して言った。
「それどうするの? マイソ薬局の店長さんがはげてるから、大金を積むかも!」
「本当!? じゃあ、カシムさんに相場を聞いてみようかな。お金持ちと取引してるみたいだから」
私はぐしゃぐしゃになった髪をなんとか撫でつけた。
その後、時間まで薬草を採取するとゲートに戻った。
「ポーションをまた一個ずつあげるね」
「え!? いいよ。だって、今日は二本でしょう」
「私は一本持ってるし、また取れるからミサたちが持っていて」
「ありがとう……」
ゲートから出ると、私は二人にポーションを渡した。その後三人で協会に行く。中に入ると右にいつものおじさんたちと、左にカシムさんの他にもう一人おじさんが座っていた。いつものおじさんがニコニコして声をかけてくる。
「ユミちゃんこんにちは。今日もかわいいね」
おじさん……そんなこと言われたことないよ。もう別人だな。左側のおじさんが私たちのこと言ってくる。
「女の子だけのパーティは珍しいな。大丈夫か?」
「こら! ユミちゃんに失礼なことを言うな!」
いつものおじさんが唾を飛ばして、そのおじさんに食ってかかった。
「お前、なんか変だぞ?」
「うるさいっ!」
左側のおじさんが不審そうに言った。そりゃそうだよね。私は苦笑いした。いつものおじさんたちは顔色が良くなった。みんなニコニコして私たちを見ている。右側の別のおじさんが話しかけてきた。
「今日は違う子といるんだね」
「はい。ルイスは休みなので、今日は他の友達と入ったんです。
みなさん顔色が良くなりましたね」
「あれ、おいしかったよ~」
おじさんが返事をすると、横の女性も話した。
「今日は全然疲れなかったわ」
「良かった」
私がほほえむと、ミサが後ろからこそっと言った。
「ユミはすっかり、おじさんたちのアイドルね」
「うわ~、恥ずかしいからやめて!」
私は焦って顔を赤くした。ちょっと気になったことを聞いてみた。
「おじさんたちは、みんな同じパーティなんですか?」
「違うよ。俺たち年配の三人が同じパーティで、こっちの若い二人がカップルのパーティだ」
「そうなんだ!」
一緒にいるから、五人とも同じかと思った。カップルの女性は、相方の肩に手を置いてウィンクした。私は少し赤くなった。
「俺たちが最年長のパーティだな。俺はローシャ、最年長で五七歳。こいつらがジット五三歳と、ハキム五二歳だ」
ローシャさんは、明るい茶色のベストを着ているのが印象的だ。ジットさんは色あせた赤のヘアバンドをしていて、ハキムさんが左肩から斜めにかけて黒い武器ベルトをしている。
「私はレヴィ、三七歳ね。女性の年長者は四十代も復帰して二人いるわよ。薬草取りなら六十代もいるわね。相方はダン、四二歳」
「へ~」
そうなんだ! 薬草取りのほうが続けやすいんだな。ミサとメイアもちょっと、期待の眼差しをしていた。狩りのほうは、ダンジョン症が関係して続けられないのかな?
レヴィさんは茶色のロングヘア、ダンさんは黒いヘアバンドにグレーの長めの前髪を二つ分けしていた。ダンさんが言った。
「年取るとダンジョンはきついからな。年長者は無理しないように、早く上がって休憩してるんだよ」
「私たちは、いつもいるメンバーってところね」
「俺はまだ子供が小さいから頑張らないとな」
「え!? いくつ?」
「三つだ」
私が驚いて聞くと、ローシャさんが頭に手を置いて答えた。——孫じゃなくて!? ジットさんとハキムさんが笑った。
「こいつ、若い女に騙されて、結婚させられたんだ」
「若いって言っても三十代だけどな」
ローシャさんと結婚したい女性って誰なの……? 大人って分からない……。
衝撃を受けながらカウンターに行って、魔鉱石を三個出した。




