19、ユミ、身の振り方を考える
「昨日の話がやっとできるわね」
ミサも同じようだった。
「私たち昨日から調子がいいのよ。多分半ポーションのおかげだし、二人でソーセージも食べたよ。すごくおいしかった!」
「良かった。私も食べたよ。本当においしかったね」
「うん」
メイアもニコニコしていた。
「私たち、一日置きにそれぞれの部屋で一緒に家事をして節約しているの」
「そうなんだ! いいね。私も友達と日曜は一緒に夕食を作るよ」
「ユミもそうなのね。——じゃあ、仕事を始めましょう」
『うん!』
私とメイアで返事をした。三人で薬草を取りながら話をした。
「え!? ルイスはアイドルのコンサートに行ったの!?」
「うん、そうなの」
「なんだか意外ね」
ナンシーと同じ反応だ。
「でも、何でもしてみたいのはルイスらしいのかな。メイアにもアイドルの推しがいるんだよ」
「うん!」
「へ~、そうなんだ!」
メイアがカバンからブロマイドを取り出した。優しいほほえみを浮かべる、青い髪のイケメンが写っていた。
「ブライトのアイ君で、十九歳だよ」
「え? だいぶ年上だね」
「そうなのよ」
ミサが苦笑する。ブライトはグループ名だな。
「街に来たばかりの頃にユメイナで観光していたら、メイアとはぐれちゃったの。泣いてるメイアに、公演のチラシ配りをしていたアイ君が声をかけてくれて、手をつないで私を探してくれたのよ。その後すぐに、メイアはお小遣いでブロマイドを買ったの」
「わあ! そうなんだ」
メイアはニッコリ笑って、ブロマイドを大事そうに持っていた。いい話だな。でも、ファン獲得のためのサービスかもしれないけど……。
働いたお金をアイドルに全部貢いだりする子がいるので、今問題になっている。無理やり貢がせた場合は、そのアイドルは廃業になり、劇場主が貢いだ半分を返却するペナルティーがある。
アイドルは罰として、貢いだ子は治療のため修道院に数年預けられる。二人とも、もう街には戻れないし、同じ仕事には就けない。
元に戻れないようにするのは、同じ場所にいると再発しやすいからだ。
世の中には瘴気があるので、問題は何かしら起こる。人を移動させると、風通しがよくなる。この方法は、王様が長年考えて決めたことだ。
メイアは小さいので年よりも幼く見える。
「メイアは本当にかわいいね。妹って感じ。うちの妹は黙ってるから」
「私もあまり話さないほうだけど、メイアのおかげで話すようになったの。私がしっかりしなきゃいけないし」
メイアはかわいいと言われて照れていた。ミサはメイアを見て静かな声で言った。
「私たち二人とも、本当に心細かったの。でも、ユミとルイスのおかげで、お金にも心にも余裕ができた」
「私もそうだよ。昨日ルイスとその話をしてたんだ。ルイスがいたから冒険者にもなれた。それに、二人にも会えた」
私たちは三人でほほえみ合った。みんな同じだ。これからも、助け合っていけるといいな。
この先のことを考えると、ルイスがB級になったらソロダンジョンができるから、パーティは解散になるかもしれない。その時は、今日みたいにどこかのパーティに混ざって、冒険者の派遣で働こうかな。ダンジョンがある限り、一人でもできそうだから良かった。
ダンジョンは魔力がなくなると、モンスターが発生しなくなって閉鎖されるのだ。
「私たちずっと貯金してきたけど、余裕ができたから、今度アイ君がいるカフェボスピィに行こうって話してるの」
「そうなんだ! 私たちも、友達の推しがいるヴィエントに日曜日行くんだよ」
「そうなの、同じね」
ミサはニッコリ笑った。
貯金か~。私も余裕ができたから、今度ルイスと口座を作りに行こうかな。
私たちはそれから黙々と薬草を摘んだ。次の場所に移動することになり、私が先を歩く。一人で歩くと緊張する! 今日は私が二人を守らないといけないから……。横からホーンキャットが飛び出してきた。
ぎゃー!! 心の中で驚いた。
「二人とも下がって」
「うん!」
猫だから、動くものに気を取られるかな? ちょっと、ハンマーを左右に揺らしてみた。猫の頭がその方向に動く。私はさっと横に振ると、猫はハンマーに飛びかかった。その瞬間にハンマーの方向を変えて猫に当てると、ポンッと消えた。山吹色の魔鉱石とポーションを落とした。
「やった!!」
初めて、一人で成功した!! ルイスがいなくてもできたことは、すごい自信になる!
「なんか、ユミを見ていると簡単にやっつけてるよね……。もっとこう、バトルがあるのかと思った」
「あははは……。みんなはそうかも……」
これが私のやり方だな……。
「でも、本当にすごいわ。ポーションがドロップされたんだもの。きっと、ユミのやり方がいいのね」
えへへ。褒められた。私は魔鉱石とポーションを腰に下げた魔法袋に入れた。私は提案した。
「今日は奥に進んでみようよ」
「え!? ……そうね。せっかくだから毒消し草を取りに行こうかしら」
「そうしよう!」
ミサは、ちょっと用心したけど、メイアは賛成した。次の場所で採取をすませると、そのまま奥に進んだ。
ホーンドッグが現れた。昨日と同じように飛びかかってきたところを軽く突いた。青の魔鉱石とポーションが落ちた。なんだか一人でも慣れてきたみたい!
「ユミは、やっぱりすごいわ」
ミサも安心したようだ。私はハンマーをくるりと回してみせた。
「この武器、こう見えて魔法加工して強度があるんだよ」
「そうなのね。見かけによらないわね」
「あの子たち、何も分かってないね!」
メイアが得意気に言うと、三人で笑った。ゲートまで来ると、時刻は十二時少し前だった。ミサが言った。
「じゃあ、早いけどお昼にしましょ」
『うん!』
三人で座ってお弁当を食べた。




