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隣りの勇者とパーティを組むことになりました  作者: 雲乃琳雨


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18/24

18、仕事の依頼

 ジョンソンパンに入るとルラさんに挨拶した。


「こんにちは。ナンシーに言われて来ました」

「待ってたわよ。ユミちゃん、ルイス君。来てくれてありがとう!」


 ルラさんは座っていたけど、立ち上がってカウンターに手をついて歓迎してくれた。


「話って何ですか?」

「それが、アイテムバターのことなんだけど、パンを作ったらすごくおいしかったから、取れる時でいいんだけどまた持ってきてくれないかな。商品で出したいの。お金は払うわ」

「え!?」


 これは仕事の依頼ってこと? おお~、すごい。ルイスと顔を見合わせる。ルイスはうなずいた。


「いいですよ」

「物々交換にしませんか?」


 私が返事をして、ルイスが提案した。ルラさんは少し驚いた。


「いいの? そのほうがうちも助かるけど……」

「はい。どうせパンを買うので」

「アイテムの買取が十ルトだったので、一個につきパン三個はどうですか?」


 こないだは販売価格の六〇ルトで、パンをもらいすぎちゃったなと思った。普通のバターの価格はだいたい二〇〇グラムで五ルトだ。


「え!? いいの?」

「はい。安くしたほうが、みんなも安く買えますよね。高級パンとして、ジョンソンさんのほうで少し上乗せもできるし」

「ありがと~」


 私が言うと、ルラさんは喜んだ。ルイスが聞いた。


「数はどのぐらい要りますか?」

「一個か二個あればいいわ」

「分かりました!」


 ルイスは元気よく返事をした。私たちへの初めての依頼だ! 二人ともニッコリした。

 それからソーセージを二本渡すと、ルラさんもすごく喜んでくれた。帰ってから、ララさんとナンシーにもソーセージを渡した。残りはルイスと二本ずつ分けて、その日の夕飯になった。塩分控えめで、うまみが強くて本当においしかった!



 翌日。今日はミサたちと入るから遅れないようにしなきゃ。八時三〇分に家を出た。

 子供ダンジョンの前には行列ができていた。ミサたちが私に気がついて小さく手をふってくれた。後ろから二番目にいる。


「おはよう!」

『おはよう』

「みんな早いね」

「うん。私たちはいいけど、各層は早い順だから」


 ミサは私を前に入れてくれた。


「おはよう。君、サンテスの子だろ?」


 後ろの男の子に挨拶された! 後ろは、同じ年ぐらいの男の子二人のパーティだ。挨拶されて、ちょっとうれしい。いなくなった子たちとは違うのかな? 私も挨拶する。


「おはよう。そうだよ」

「いつもいないから、全然会わなかったけど、今日は勇者の子はいないの?」

「うん。休み」

「へ~、平日に休むなんて呑気だね」


 え? もう一人の子が言った。


「でも、あいつらを追い払ってくれたのは感謝してるよ」

「おかしくなってて、邪魔だったからな」


 いなくなった子たちのことだ。私はミサに聞いた。


「あの子たちはどうなったの?」

「昨日荷物をまとめて、全員出ていったよ。いなくなった子は全員アトロス寮の子だけだった。トミーとクムンの荷物は管理人さんが実家に送るって言ってた……。

 当分ダンジョンの子は入れないけど、他の仕事の子は入れるって言ってた」

「そのほうがいいよ」


 後ろの子が言う。寮は国の管理だけど、空き室はもったいないからな。クムンのことを考えると心が痛む……。

 地元の子たちはちゃんとルールを守っていたんだな。大人になるまで家に帰れないから、親に言われてたのかも……。


「見て、あの武器。店で売れ残ってたやつだよ」


 前の女の子たちがこっちを見て笑う。この子たち……みんないなくなった子たちと同じだ……。私はちょっとイライラした。

 この武器はルイスが選んで買ってくれたものだから、私の宝物だ! 前なら、泣いちゃったかもしれないけど、これのおかげで自信が持てたから、もう泣いたりしない! 私は無視した。


 女の子たちは、短いスカートにスパッツを()いたキャスケット帽の子と、短パンにぴったりしたTシャツを着て胸を強調している子だ。リュックも小さくて、なんかおしゃれな格好だった……。武器は腰に短剣を差していた。


「本当、ふざけた武器だよな」

「聖剣があるから、マスコット的存在なんだろ」


 その前にいる男の子たちも話している。女の子と同じパーティみたいだ。後ろの子がまた話しかけてきた。


「君たち、今どこにいるの?」

「……昨日は五層目に行ったよ」

「え!?」

「まじか。俺たちでも一か月はかかったのに……。やっぱり聖剣は早いな」

「私たち、一日一層ずつ降りてるの」

「……」


 二人の子は黙った。へへーん。ちょっといい気味。


「でも、今日は私しかいないから二層目だけ」

「……そうだよな!」

「まだ、二週間たってないけど、私Eランクになったよ」

「本当!? ユミすごいね」


 ミサが驚いた。


「あの後、たまたま上手くいったんだよね。それで、更新してもらったんだ」

「そうだったの」

「そうだよな。聖剣がいるから、おこぼれにあずかれてラッキーだよな」


 男の子が言った。……その通りだ。ルイスが褒められてるから、私は気にしなかった。


「そうだよ。こんなどんくさそうな子が、すぐにEランクになれるのは、聖剣がすごいってことだ」


 まあ、ルイスがすごいのは本当だと思う。ルイスは責任感があるし、優しいし、気遣いもできる。私がアストールでも逃がしたくないよな。二人の出会いを思い出してちょっと笑った。

 メイアはしょぼんとしていた。ミサも申し訳なさそうに言った。


「ユミごめんね。みんなこんな感じだから」

「本当のことだから気にしてないよ」

「ユミらしいわ……」


 ミサはちょっと笑った。


「それに今日は私が頼んだんだもの。……ごめんねメイア、嫌な思いさせて」


 メイアは首を横にふった。でも私は、仕事の依頼を受けてるからちょっと優越感を持っていた。他の子たちは自分のランク上げしかしていないから、先に進んでる感じある。私は、フフンという顔をして後ろの二人を見た。それに気がついた二人は、


「お前なんか生意気だよな……」

「ちょっと! 同じ年なんだから、そんなことないでしょ。もういい加減にしないと、勇者のルイスはユミの保護者のような存在だから、多分怒ると怖いわよ」


 ミサが言うと二人はビクッとした。ミサが大声出すなんてめずらしい。私のせいなのでちょっと申し訳なかった。


 ルイスは確かに私を守らないとって言っていたから、そんな存在だな……。でも他の人に怒ったことはないな。注意はするけど大事にはならないから、ちゃんと私を守ってくれてると思う。ルイスは本当に穏やかだけど、この子たちはルイスを知らないから仕方ないな……。


「こいつは、トミーのこともチクったからな。お前、聖剣に言うなよ」

「もう! ユミはそんな悪い子じゃないわよ。ユミたちはトミーにポーションをかけてあげたんだよ」

『え?』

「いなくなった奴ら、そんなこと言わなかったぞ」


 そりゃ、トミーしか知らないし……。そこへ遅れて、少し年上の集団が来て一番前に入った。一番前にいた子が頭を下げて挨拶していた。同じパーティなんだな。順番取りかな?

 あの子たちだけ、十六から十七歳って感じだな。ここに年長者が少ないのは、普通ダンジョンにいるからだろう。あとは、十四から十五歳だな。


 時間少し前に、門番のおじさんもやって来た。おじさんは一人で中に入ると、しばらくして出てきた。多分、中の鉄格子を開けたんだろうな。おじさんは時計を確認する。


「入っていいよ」


 おじさんが言うと、みんな順番に中に入っていった。でも、誰一人おじさんに挨拶する者はいなかった。私も前に進む。おじさんに近づくと挨拶した。


「おはようございます」

『おはようございます』


 ミサたちも挨拶する。おじさんが笑顔で返した。


「おはよう。今日は早いね」

「ルイスが休みなので、今日はミサたちと入ります」

「そうかい。気をつけて」

「はい!」


 私たちも中に入って、みんなの後に続いてゆっくり進んだ。階段を下りて二層目に入った。ふー、やっと一息ついた。


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