16、和解
さらに奥に進んだ。
「あ、これ痛み止めだ!」
かなりの高額だ! 薬草を見つけて採取する。魔法袋に入れておくから、明日ミサに渡そう。ルイスが言った。
「見て、ほこりだ!」
「あ、本当だ!」
四属性のほこりが一緒にいた。また、半ポーションが手に入るかな。ほこりたちは私たちに気がつくと、ビクッとして、あっという間にいなくなった。
「あれ?」
「逃げられたね」
「なんか動きが変だった。もしかして、昨日と同じほこり?」
「……そうかも。再生してるのかも」
「そうなんだ!」
不思議! 痛みがないといいけど……。次に現れたのは牙が大きなホーン猪だった。すでに白目を吊り上げて怒っている。見るからにヤバそう……。
ルイスが風を当ててみたが、素早く避けると突進してきた。見かけによらず機敏すぎる! 私は横に避けた。ルイスはそのまま剣を頭部に突き刺した。ルイスは押されることなく、猪がポンッと消え、緑の魔鉱石と大きなソーセージを十本落とした。
「ソーセージだ! 絶対おいしいやつだよ、きっと! やったね」
「うん!」
私はソーセージを魔法袋に詰めて、ルイスから受け取った魔鉱石も入れた。次に現れたのは、ホーン豚だった。こっちも気性が荒い。ルイスが私に言った。
「二手に分かれて同時に攻撃してみよう」
「うん!」
私たちが横に散ったので、豚は驚いてキョロキョロした。その隙に、横から二人で攻撃した。私はホーン豚の腰を叩いて、ルイスはわき腹を軽く突いた。こっちは、動きが遅い。ポンッと消えると、肌色の魔鉱石と網に入った大きなハムが落ちた。
「やった! ハムだ!」
拾うとすごく重い! 一キログラムはある。これはみんなで分けられるな。大漁だ! 私はルイスに聞いてみる。
「みんなで分けてもいいよね」
「うん。——今日はもう帰ろうか」
「うん」
時計を見ると十四時をすぎていた。
階段のほうが近そうなので階段から帰ると、ミサたちと会った。
「お疲れ~」
「一緒になったね。今日はおかげで全然疲れてないわ。ありがとう!」
「私は全然気がつかなかったけど、そういえば、そうかも」
あんまり疲れてない。ルイスを見ると、ルイスもうなずいたので同じみたい。
「ちょうど良かった。渡すものがあるよ」
「本当に!?」
私が言うと、メイアが喜んだ。塔の一階まで下りて、テーブルの上で魔法袋から痛み止めの薬草を出した。
「はい、これ。明日渡そうと思ってた」
「痛み止めの薬草だわ! これはすごい。ダンジョンの物は大人たちがよく採ってくるのよ。ありがとう!」
「そうなんだね。あとソーセージを取ってきたから、一本ずつあげるね」
『え!?』
私はソーセージを二本出すと二人に渡した。むき出しだけどベタベタしないし、手に臭いもつかない。さすがアイテム。メイアの表情が輝く。
「わー! すごい! 初めて見る」
「絶対おいしいわよね! アイテムの食料はみんなおいしいって評判だもの!」
同じ意見に、私もニッコリした。アイテムの食品は高値で取引されるから、平民が口にすることはほぼない。ホテルや高級レストラン、あとは貴族の屋敷で食される。私はちょっと自慢してみた。
「ここだけの話、今日は超レアなロバのマントも手に入れたんだよ!」
「——ロバのマントは知らないわ」
「え? ……そうなんだ」
あんまり自慢にならなかった……。
「でも、思ったんだけど……あなたたちドロップ率がおかしいわよ」
「え?」
ミサの言葉に、私とルイスも驚いた。
「普通、五〇パー以下なのよ」
「そうなの!? 今のところ七〇パーセント弱かな」
「俺は二層目までは何も取れなかったから、ユミが特別なのかも」
「そうなの? ——なら、ユミはアイテムを取る逸材かもよ」
え!? そうなの!? なんかうれしい! それって、冒険者に向いてるってことだよね。
「そうなら、うれしいな……」
私が照れると、みんながほほえんだ。
「今日は瓶を換金するから、私たちも一緒に協会に行くわ」
「うん。あそこは入りづらいよね」
「でも、カシムさんがいるから、割と大丈夫かな?」
「カシム? 誰?」
「冒険者のおじさん」
「そんないい人いた?」
あの中に? 私は首をかしげた。
塔を出て門番のおじさんに挨拶すると、協会に向かった。中に入ると、右側に座っているいつもの五人と、左側にいつものぞきに来るおじさんがいた。そのおじさんが話しかけてきた。
「なんだ、一緒なんてめずらしいな」
「カシムさん、こんにちは」
ミサが挨拶する。このおじさんがカシムさん!? ルイスがそっと私に耳打ちする。
「俺たちのことも、気遣ってくれてたのかも」
あれが? そうだったんだ。なんだかこっちは、イライラしたよ……ルイスも気がついてなかったし。そう思うと調子狂うよな……。カシムさんがこっちを見る。
「なんだ?」
「別に」
私は目をそらした。右側のいつものおじさんがヤジを飛ばす。
「女の子ばかりで、弱そうなパーティだな」
それを聞いて他の四人もニヤニヤ笑う。もう、無視だ。ミサがカウンターに瓶を出した。
「瓶の換金をお願いします」
「あら、これ、ほこりの半ポーションじゃない。どうしたのミサ」
「ルイスにもらったんです」
『!』
その場にいた大人たちが驚いた。カシムさんが感心する。
「さすが、勇者だな。ほこりはすばしっこいから、なかなか捕まらないぞ」
「俺たちも欲しいもんだぜ!」
「そうだ分けてくれ」
おじさんたちが、笑いながら言った。ダリアさんも無視して話した。
「そうか、あなたたち、アイテムをみんなに分けているのね」
「まあ、そうですね」
ルイスが答えて、メイアが言った。
「今日はソーセージをもらったのよ!」
『ソーセージ!!』
ダリアさんもカシムさんも身を乗り出し、他の大人も驚いた。全員、目の色が変わった。こ、怖い……どうしたの大人たち……。メイアが怯えてミサにしがみついた。圧に負けて、思わず言った……。
「た、たくさんあるからダリアさんにも一本あげます」
「わあ! ありがとう!」
「俺もくれ」
カシムさんが言った。
「おじさんは取れるでしょ」
「取れても売るから食べたことないんだよ」
食べればいいじゃん! なんなの! もう……仕方ないから、二人に渡した。ダリアさんが説明した。
「アイテムの食料も、滋養効果が高いのよ」
「あーあ、いいよな。もらえる奴は」
右のおじさんたちがふてくされていた。一人だけ女性がいるけど、その人も含めてみんな顔色が悪い。滋養効果が高いなら、ポーションと同じで食べたら元気になるのだろうか?
「——じゃあ、もうヤジを言わないなら、おじさんたちにはハムをあげます」
「え?」
いつものおじさんだけ声を出した。他の人たちは驚いて静まり返った。
「もちろんだ。言わない!」
「ちゃんと五人で分けてくださいよ」
ハムを渡す。これで静かになるかな?
「おお、ありがとう! このハムはな、言った数だけ勝手に分かれるんだ」
え? そうなんだ。
「五個に分かれろ」
おじさんがそういうとハムが勝手に五分割された。すごい! おじさんに聞いてみた。
「食べたことあるんですか?」
「ないよ。アイテムのハムは売って、安いハムを買うからな!」
「今日はハムステーキだ!」
おいしいものは自分で食べたほうがいいのに……。おじさんがみんなに分けると、みんなもご機嫌になった。
「本当、君たちいい子だよね~」
態度があっという間に変わった……良かったのか?




