15、ポーションの試飲
ミサたちのところに戻ると昼ご飯を入口の近くで取った。すぐに逃げられて安全だから、いつもそうしているそうだ。
「昨日の薬草も一人、八〇ルトになったわ。ありがとう」
「良かった!」
咳止めはあの量で六〇ルトか。高いな。ミサがルイスに聞いた。
「話って何?」
「うん、俺が明日休むから、ユミも一緒にダンジョンに入ってもいいかなって、お願いなんだけど」
「そうなの? いいわよ。私たちは朝開く前から来ているから、それまでに来れば一緒に入りましょ」
「分かった」
「ユミは、朝大丈夫なの?」
メイアが聞いてきた。
「うん。派遣の仕事をしていたときに、朝早い仕事もあったから、いつも六時に起きるようにしているの」
「わっ、すごい! 休みの日も?」
「うん」
「休みの日はずっと寝てる!」
「私も」
ミサも同意した。
「私も最初はそうだったけど、毎日同じほうが体が楽なんだよね」
「マネできない」
メイアがそう言うと、みんなで笑った。
「ユミのハンマーは武器なの? ずいぶんかわいいわね」
「うん、そうなんだ! そうだ、今日ポーションが三個も取れたの、また取れそうだから、二人に一個ずつあげるね」
「アイテムのポーションが!」
ミサとメイアの目の色が変わった。え? どうしたの……二人とも? ちょっと怖い……。
「二つもらえるなら、一つ飲んでもいいかしら? アイテムのポーションは高くて買えないから、試飲してみたいの!」
えー!! 私とルイスは驚いた。もったいないから、何でもないのに飲むという考えがなかった。ミサたちも好奇心旺盛だな……。
「いいけど……」
「それなら、半ポーションがあるからそれをみんなで飲もうよ」
「半ポーション!?」
またミサの目の色が変わった。ひぇ……。
「半ポーションは、ほこりのよね」
「うん……」
「すごいわ! 半ポーションはアイテムポーションの一・五倍の効果だもの! 一生お目にかかれないと思っていたわ!」
ミサが今まで会った中で一番目を輝かせていた……。ルイスはミサに水色の半ポーションを渡した。
「メイアは全部飲んじゃうから最後ね」
「もう!」
ミサはポーションを少し飲むと私に渡した。
「ああ、すごいわ。疲れが取れる。魔法使いのポーションより二倍の効果だものね。段違いだわ!」
ミサは顔を輝かせて感激していた。本当に顔色がいい。私も少し飲んでから、ルイスに渡した。
——初めて飲んだけど、午前中の疲れが取れて、朝よりも元気になった気がする。とても清々しい気分だ。
ルイスも飲むとメイアに渡した。メイアはやっぱり全部飲み干した。
「すごい! 気持ちいいから、いつものより元気になるね」
「……本当だ」
ルイスも自分の体を見ていた。みんなでポーションを飲んでしまうなんて、ちょっといけない気もするけど、いい体験だった。
「これで、午後からも元気に採取ができるわ。本当にありがとう」
「うん。瓶はあげるから、換金していいよ。明日のお礼にもなるから」
「本当に!? ありがとう」
ルイスがミサに言った。半ポーションの瓶も、一・五倍の一五〇ルトになる。
「私たち、結構ポーションを使っているの。どうしてもモンスターと出くわすから、逃げる時に転んで怪我をすると傷に垂らしたり、瘴気に当てられたら飲んだりで、二人ともいつも二本ずつ持っているのよ」
「そうだったの!?」
それだと大変だ。ルールだと、開封したらダンジョンを出ないといけない。買って戻ればいいんだけど、それだと面倒だよね……。
昼ご飯も済んだので、ミサたちと別れて階段を降りた。私はちょっと笑った。
「まさか飲むとは思わなかったね」
「うん! でも、ポーションがどういうものか分かって良かったよ」
「うん。そうだね」
私たちは五層目まで降りた。ここも森で、誰もいない。ルイスが言った。
「どうやら、いなくなった子たちは、四、五層目にいたんだろうね」
「ダンジョンが広くなるとはいえ、結構な人数だよね。普通ダンジョンも混んでるっておじさんが言っていたから、混んでいるとなかなか狩りができないということかな」
それでも、みんな先に進みたいから上の層には行かないんだな……。二人で昼ご飯の時にミサから仕入れた情報を話した。
「アトロス寮に残った子たちは三十人ぐらいで、十人は普通ダンジョンにいるから、この先にいるのはミサたちを抜いて十八人と、あとは地元の子が数人か」
「ボス戦は難しいから、手前の九層で活動してる子もいるとか言ってたね」
先に進み始めた。向こうからホーンロバがゆっくり歩いてきた。だんだんサイズが大物になってくる。
ホーンロバは私たちを見ると、歯をむき出しにして戦闘態勢に入った。ロバはルイスの聖剣に引きつけられているようだ。私はその隙に横に回った。ロバは前足を上げてルイスを威嚇した。
私はなんとなく、ホーンロバのかかとを打ってみたくなったので、ハンマーで叩いてみた。ロバは驚いて硬直し、そのまま横倒しになって消えた。
「あ、やった……」
「ユミ、すごいよ!」
ロバが消えるとグレーの魔鉱石と、グレーのロバのマントが落ちた。
「ロバのマントだ!」
ロバのマントは最高級の防寒用の魔法のマントだ。着る人によって伸縮する。売り値は金貨一枚からと言われている。
「装備にいいね!」
「うん。とっておこう」
ルイスも同意した。私はマントを魔法袋に入れた。
「ロバのマントは高級品だし、超レアで手に入らないのに……」
「もしかしたら、あの倒し方が良かったのかも」
ルイスが笑った。
「ユミもこれでEランクだね」
「そうだ! わー、うれしい! ルイスと一緒だ」
「うん!」
二人でパチンと軽く手を合わせて喜んだ。やった~! こんなに早くランクアップできるなんて、噓みたいだ!




