14、初めての狩り
私は寮の部屋にいた。外で音がしたのでナンシーが帰ってきたようだ。早速、ナンシーに会いに行く。
「え~、ルイスがコンサートに?」
「うん」
ナンシーの部屋で私がお茶を準備して、ナンシーは買い物した食材を片付けていた。ナンシーも意外そうに驚いていた。
「それで、日曜の昼食をヴィエントで奢ることにしたから、三人でどうかな?」
「いいよ! 会えるのが楽しみ。予約しておくね」
「よろしく」
私はポットにお湯を注いだ。ナンシーがお菓子を用意しながら言う。
「ルイスの話が楽しみだね」
「本当!」
ダンジョンツアーのお土産の話もした。
「バージョンアップのお土産は聞いたんだけど、内緒だって言われた」
「アハハ、そうなんだ」
「でも、ナンシーは好きだと思うよ」
私も笑った。その後私たちはゆっくりお茶をして、今日武器を買った話をした。女の子が話すことじゃないかもとふと思った。ナンシーも驚いたけど、冒険者の店には興味津々だった。ナンシーは好奇心旺盛だ。
翌日、私はハンマーをリュックに差して意気揚々と歩いた。
(ユミはうれしそうだな)
ルイスも私を見てニコニコしていた。子供ダンジョンに着くと門番のおじさんが、ハンマーに気がついた。
「新しい武器だね」
「はい!」
私は笑顔で返事をした。
「頑張って」
「ありがとうございます」
おじさんにも応援してもらって、気分が上がる~。一層目に着いた。
「じゃあ、午前中は一層目で、午後から五層目に行こう。途中でミサたちに会いに行こう」
「うん。分かった!」
「俺が、援護するから。どんどん打ってみて」
「はい!」
私は敬礼をして元気よく返事をした。奥に進むと、ホーンラビットが現れた。ルイスが、前に出て陽動する。私が後ろに回る。なんだかかわいそうだけど、ハンマーを振り下ろした。カスッ……
かすった……当たらない!? ホーンラビットに気づかれて、こちらにぐんっと弾丸のように飛んできた! うわぁああ!
「ユミ! 避けて!」
とっさに、横に飛んだ。ルイスが剣を振って、ホーンラビットに風を当てた。ホーンラビットは消えて、魔鉱石を落とした。
「あ、当たらない……」
私は両手をついて愕然とした……。ルイスが少し汗をかいて、笑顔で励ましてくれた。
「大丈夫だよ。俺もまだ、剣を当てたことはないから……。まず、素振りの練習をしたほうがいいかも」
「うん」
「自分が思ったところに先端が行くように練習してみて」
私は気を取り直して、ハンマーを前に振り下ろした。左にそれた。右に振り上げ気味だったかも。
「思ったより、ずれるな。細長いから、先をコントロールするのが難しいんだ」
私は何度か調整して、ようやく正面に振り下ろすことができた。いろんな角度から上げて、正面に下ろす。
「いい感じだよ」
「うん!」
今度は横に振ってみる。感覚が掴めた気がする。遠心力で自分を一回転してみせた。
「おお~、回る」
「ははは。じゃあ、そろそろ行こうか」
「うん」
歩くと、ホーンマウスに出会った。相手は普通のネズミと同じ大きさで小さいから、これも難しそう。ルイスがさっきと同じように、マウスを自分に引きつける。今度は上手くやらないと。私は、マウスめがけて振り下ろした。小さい衝撃が走ると、マウスが消えて魔鉱石とポーションを落とした。
「ポーションだ!」
「え!? すごい」
ルイスも驚いた。私は青い魔鉱石とポーションを拾った。
「あまり強く叩かなかったけど、衝撃だけでいいのかな?」
「そうみたいだね」
ルイスは考えながら言った。ポーションに思わず驚いてたけど、私——
「初めての狩りに成功したんだ! やったー!」
やった、やった、やった~! 私は飛び跳ねて喜んだ!
「うん! 小さい獲物に当てたんだからすごいよ!」
ルイスも褒めてくれた。ルイスはいい先生だ。それから、ホーンリスに会った。木の上だから狙いにくいが、好戦的なので襲いかかってくる。私は避けると、小さいリスと睨み合った。飛びかかってくるものにはどう当てたらいいんだろう?
「こっちだ!」
ルイスがホーンリスの横に回って声を出すと、ホーンリスはルイスのほうを見た。今だ! 私はハンマーを振り下ろした。見事に命中して消えた。茶色の魔鉱石とポーションを落とした。
「またポーションだ!」
「やったね! ……もしかすると、衝撃が弱いほうがアイテムを落とすのかも」
「そうなんだ! それはいいことが分かったね。これでポーションを買わなくても済む!」
大体の人は思いっきりやっちゃうからな。アイテムのポーションは効果が高いので高値で売れる。
魔法使いのポーションの瓶は、持ちやすいように細身で多面カットされていてきれいだ。瓶は回収されてそのまま再利用される。持っていくと五ルト返金される。
アイテムのほうはつるんとして底が少し膨らんでいる。こちらは偽物が売られないように、材料として溶かして再利用される。
アイテムの瓶は普通のガラスと混ぜると強度が増し、割れにくくなるのだ。瓶の買取だけで百ルトする。そのため、アイテムのポーションの価格は魔法使いのポーションの二・五倍だ。つまり二五〇ルト。
どっちも瓶の蓋だけど、魔法で中身がこぼれないようになっている。不思議だ。
次もホーンリスが現れた。同じ作戦でやってみる。今度は、ポーションを落とさなかった。
「あれ? やっぱり、確率の問題もあるのかな」
「そうだね」
「でも、二本も手に入るなんてすごい!」
「じゃあ、そろそろ二階に降りよう」
「そうだね。ミサたちと昼ご飯を食べよう!」
私たちは二階に降りた。二人を大声で呼んでみる。
「ミサー、メイア―」
「……こっちよー」
ミサの声がしたほうへ行ってみた。
「おはよう!」
「おはよう。どうしたの?」
「今日は話があるから、一緒にご飯を食べようと思って」
「いいわよ」
私はポケットから懐中時計を取り出して見た。時間は十一時だった。
「じゃあ、まだ時間があるから。狩りをしてるね」
「うん」
私たちは奥に進んだ。ホーンドッグが現れた。ルイスが囮になって私が後ろから叩くが、消えなかった! ホーンドッグが振り返り、目が合うと歯をむき出しにして、唸り出した。
やばい! ホーンドッグが飛びかかってきた! 私がハンマーを突き出して防御すると、ホーンドッグのほうが勢いよくハンマーにぶつかって消えた。良かった!
「危なかったね」
「うん! でもコツが分かったかも」
相手の力を利用すればいいんだ! ホーンドッグもポーションを落とした。魔鉱石は赤だ。
「ポーションだ! やった!」
「もしかして、聖剣だと威力が強すぎるのかな?」
「そうかも」
「なるほど……」
また新しいことが分かったな。
「そろそろ、戻ろう」
「うん!」




