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『なんで⁉︎何が起こってるの⁉︎』
怯えるように家への道を走るゼロ。その頭は混乱していた。
『あの電気は絶対僕の粒子から変換されたものだ。でも僕はやってない。そもそも、あんなに強い電気は作れない』
涙目になりながらやっと見えた我が家に安心した時、ゼロは動きを止める。
「………ジルバ」
「ゼロ?」
ちょうど帰宅したジルバが自宅の前にいた。ゼロの様子がおかしいことに気づいて駆け寄ってくる。
「どうしたの?顔真っ青じゃん。何が…」
「近づかないで!」
自分に何が起こっているのかわからない。近づけばジルバが怪我をするかもしれない。震えながら離れようとするゼロに、嫌な予感がしてジルバが手を掴んだ。
「ダメ!」
「なんで!」
「電気が……さっきツツヒ君がキスしようとしたら電気が起きたの!だから、ダメ!」
拒絶の言葉を聞きながらジルバが悲しみの表情に変わる。電気の話よりもキスの話の方がジルバの心を抉った。
「……アイツと付き合ってるの?好きなの?」
まだ手を離さず傷ついたように聞いてくるジルバに、ゼロは胸が苦しくなる。
「そうなれば、みんな幸せになれると思った。……でも、できなかった。……怖かった」
肩を掴まれ無理やりキスされそうになったことを思い出す。その手が震えていることに気づいて、ジルバは優しくゼロの体を抱きしめた。
「ジルバ、ダメだよ!もし電気が起きたら!」
「別にいい!それがゼロが自分を守るためのものなら、受け入れる!」
人より温かい体温は心地よく、ジルバとの間に電気は起きなかった。
「……なんで自分を大切にしないんだよ。怖がりながら、苦しみながら、ゼロが誰かのものになるなんて俺イヤだよ。……俺が幸せにしたい……好きだから」
やっと伝えられたジルバの気持ちにゼロが戸惑っていると、あの幼い声が頭に響いた。
『これが喜び。好きという感情。記憶しました』
自分より先に、自分の恋心を理解されて。クスリと笑うゼロにジルバは不思議そうにする。
「僕も好きみたいだよ、ジルバのこと」
「なんだよ、その好きみたいって」
「だって、僕の可愛い友達がそう言ったから」
幸せそうに笑いあう2人が唇を重ねようとしたとき、また頭に幼い声が響いた。
『往来でのキスは推奨できません。家の中に入りましょう』
慌ててジルバの口を手で塞ぎ、ゼロは「とりあえず家の中に入ろっか」と促す。
しかし誰もいない空間に入った瞬間、初めてにしては激しすぎるキスが待っていることをゼロはまだ知らなかった。
やっと想いが通じたゼロとジルバ。さぞや幸せに満ちた2人の時間を過ごしていると思いきや、数時間後には荒れに荒らされたリビングで親達に囲まれていた。
「あの、だから、僕も望んでたから無理やりじゃなくて……」
「ほら!俺の言った通りだろ!」
怒りで吠えるジルバの腕にしがみつくゼロは恥ずかしそうに顔を伏せている。
テーブルの向かいに座ったキトラは納得できない顔で話を聞いていた。
「お前の普段の行いが悪いからだろ」
「なんだよ!それでも捜査官かよ!ちゃんと証拠と証言揃えないと誤認逮捕することになるぞ!」
「……お前は何でそう……」
反抗期そのもののジルバにキトラは頭を抱える。
そもそもなぜこんなことになっているかと言うと、ゼロとジルバが家に入ってからの話に遡る。
初めてのキスで盛り上がった2人はソファに雪崩れ込み、抱き合って何度もキスを繰り返した。流石にそれ以上はダメだと止めるゼロに甘えるようにキスを続けるジルバ。ジルバもすぐにヤろうとするほど節操なしではないのでゼロも安心して甘やかしていたのだが、そこにジルバを迎えに来たキトラがやってきた。
インターホンを鳴らしても反応がないのでどうしたのかとリビングに入ってみると、ソファの上でジルバがゼロの上に跨っている。
その光景に勘違いしたキトラが糸でジルバに殴りかかり激しいケンカが繰り広げられた結果、帰宅したアギが何事かとやってきて一喝して止めたのだった。
その後、双方の親が揃ってやっと話し合いが行われたのが先ほどの会話である。ちなみにトカゲはボロボロになったソファのそばで「また買い替えか……」と項垂れ、コハクが「今回はうちが払います」と申し訳なさそうにしていた。
キトラの隣に座るカグラは家が荒らされていてもあまり気にせず、ゼロ達の話に結論を出した。
「とりあえずお互いに好きで望んでたんだから、僕達から何か言うことは無いよ。でもジルバ君はまだ学生なんだし節度は守ってね」
あのカグラがまともな事を言っている。
その事実にアギは「あらぁ」と嬉しそうにし、セキトは感慨深そうに頷いていた。
それで話は終わりと解散になりかけた時、ゼロがみんなを引き留めた。
「あ……待って……僕の……力のことで話が」
「そうだ!ツツヒってヤツに襲われたら電気が起きたって言ってた!あれ、何なんだ?」
襲われたの言葉にソファのことで落ち込んでいたトカゲの視線がギロリとゼロ達のほうを向く。慌てて手を振ってゼロが弁解した。
「その!大丈夫!何もされなかったし……付き合って欲しいって言われてつい頷いちゃって……そしたらキスしたいって言われたんだけど……」
どんどんと小さくなる声に親達が悲しい表情に変わる。それを見てゼロがギュッとジルバの腕を掴んだのに気づいて、カグラが口を開いた。
「いいよ。話したくないことは話さなくて。ジルバ君がいてくれるしね」
しっかりとジルバの腕を掴む姿は、自分達が何を言わなくても大丈夫だと親達に安心感を与える。それが伝わったのかジルバが腕を掴む手を自身の手で優しく包み込み、ゼロは落ち着きを取り戻した。
「怖い、イヤだって思った時に、イチの声がしたんだ。『ゼロが怖がってる。私が守る』って。そしたらツツヒ君との間に弾けるような電気が起きて。感覚で僕の糸の電気だってわかったけど、僕にそんな力はないし、なんなのかわからなくて」
話を聞いて「う〜ん」とカグラは考え込む。
「明日、ナラ教授のところに行ってみようか。イチのことは彼に聞くのが一番だし」
「うん」
そうやってやっと解散となった後、家に帰ろうとするジルバはゼロがスマホを見て困った顔をしていることに気づいた。
「どうしたの?」
「……ツツヒ君が、謝りたいって」
焦ってキスしようとしたことを謝ると言っているツツヒ。厄介なのは付き合うと返事してしまったので、キスの件はただの気持ちの行き違いとしか考えていないことだ。
「告白にオッケーしちゃったんだし、きちんと話さないと」
「………」
ジルバは不安だった。ツツヒはゼロが自分と付き合うつもりだと思っているのだ。それを今更付き合えませんと言って、果たして素直に納得するのか。
「そんなに心配しないで。ツツヒ君もわかってくれるよ。明日ナラ教授と会う前に話してくるね」
スマホで返事を打つゼロを見て、ジルバはセキトとアギのところへ歩いていく。
「セキト、明日学校休む」
当たり前のようにセキトへ許可を得に行くジルバにアギが笑う。
「わかった。学校には私から連絡しておこう」
「ありがとう」
急に大人の顔に変わったジルバに、セキトは満足そうにアギに話しかけた。
「アギ、明日は非番だったな」
「ええ。そうよ」
「なら、授業の成果を見に行こうか」
アギにはセキトの考えはお見通しだ。「いいわよ」と笑顔で答えるとセキトと腕を組み、仲良く家へと帰って行った。




