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無事ジルバの進路も決まり、キトラとの対決をゼロはカグラとトカゲに嬉しそうに話して聞かせていた。


「本当に嬉しかったんだ。ジルバとキトラさんの関係がとても素敵で。ジルバが幸せで良かった」


まるで我がことのように幸せな笑みを浮かべるゼロにカグラ達は優しく微笑む。その姿に今日見た光景がゼロの中で重なった。


「………カグラとトカゲも……ありがとう」


恥ずかしさで俯きながらだが、心のこもった感謝の言葉にカグラとトカゲが喜んだのが伝わってくる。

そのまま静かで幸せな時間が訪れると思っていたゼロの体を後ろから誰かが抱きしめた。


「兄さんにもありがとうって言っていいんだぞ〜。ゼロ、今日も可愛いなぁ」

「あ!ウタハ!抜け駆けすんな!」


いつのまに家に入ってきたのか、ウタハからゼロを奪い取ってキリがハグを堪能する。


「兄さん達、いつ来たの⁉︎」

「ゼロがジルバ君の話をしだした時にはリビングに入って来ていたぞ」

「……トカゲ、何で言ってくれないの」

「なんとなく教えない方が嬉しいことが待ってる予感がしたんでね」


勘が良すぎだろうとゼロは不服そうな顔をするが、そんな姿すら兄達には可愛いらしく2人でかわるがわるゼロを抱きしめている。

そんな賑やかな空間に一際大きな声が外から響いてきた。


「ゼロ!今日泊めて!」


ジルバが返事も聞かずにズカズカと家に入ってくる。その手にはパジャマと枕が握られていた。


「ジルバ⁉︎どうしたの⁉︎」

「どうしたもこうしたもない!キトラのヤツ、調子にのってあれこれうるさいんだよ!本部には10年経つまで来るなとか、公安は絶対ダメだとか!そんなに俺は信用ないの⁉︎」


怒り爆発と言った感じでゼロに抱きつくジルバだが、兄達の目の前でそんなことが許されるはずもなくあっさりと引き剥がされた。

ジルバの首根っこを掴みながらウタハが呆れた声を上げる。


「まったく。キトラにも困ったもんだな。アイツ本当に不器用なんだから」

「でもお前はうちに泊めんぞ。ゼロの風呂上がりが見れるなんて思うなよ」


ゼロをしっかり腕の中で可愛がりながら、キリが厳しい視線をジルバに投げている。


「え〜。いいじゃん。もう何度も見てるんだし」


不貞腐れるジルバにトカゲががっつり釘を刺してきた。


「それは付き合う前の話だろう?下心丸出しの人間の前に無防備なゼロを晒すなんて私が許さない」

「トカゲ、落ち着いて。手を出してないかジルバの記憶を隅から隅まで見るのはダメだよ」


記憶を見られてるのかと警戒するジルバを「僕が無効化したから大丈夫」と安心させて、カグラはトカゲにプリプリと怒っている。その姿にデレデレしながらも「でも心配なんだよ」と言い募るトカゲを見ながら、この2人の関係も独特だよなとジルバは感心していた。


「ジルバ!まだ話は終わってないぞ!」


今度は家を飛び出したジルバを追いかけてキトラがやってきた。その後ろをセキトが楽しそうについてきている。


「うるさい!もう聞かない!俺、ゼロと結婚してこの家に住む!」

「何言ってんだ!まだ子供のくせに!」

「そうだぞ!ざけんな!交際は認めても結婚なんて認めねぇぞ!」

「キリの言う通りだ!一緒に住むのも認めねぇからな!」

「なんなら私は交際もまだ完全には認めていない」

「トカゲは最近過保護が酷すぎない?」


みんな好き勝手に騒ぐ中でセキトが「うん。面白くなってきた」と呟くと、パンッ!と1つ大きな音で手を叩いた。


「お前達。外野が騒いでもしょうがないだろう。肝心なのはゼロ君の気持ちだ」


その言葉に全員の視線がゼロへと集まる。騒動の圧力に負けていたゼロは突然の注目にワタワタと慌てて言葉が出ない。


「えっ⁉︎僕⁉︎……えっと……その……」

「難しく考えることはない。ジルバと結婚して一緒に住みたいかい?」


シンプルな質問に絡まっていたゼロの思考はすんなりと答えを出した。


「結婚……はまだ早いかな。いつかはしたいけど。一緒に住むのも」


満点とでも言うべき答えにその場の全員が納得する。


「うん。そうかそうか。嬉しい答えが聞けて私は満足だ。ジルバ。キトラ。帰るぞ」

「……結局兄貴に全部持ってかれるのかよ」

「俺やっぱ公安に行きたいな。セキトに1回勝ちたい」

「いいぞ。でも何も知らない子供が来れるところじゃないからね。研鑽を積みなさい」


はっはっはと笑いながら家を出ていくセキトにカモの子のようにキトラとジルバがついていく。その光景がおかしくてゼロがクスクス笑っていると両側からキリとウタハが抱きついてきた。


「いつかはゼロも自分の家族を作っちまうんだな」

「でもまだしばらくは俺達の可愛い弟でいてくれよ」


ヨシヨシと愛おしむようにゼロを撫でる2人をトカゲが呆れたように見ている。


「それよりお前達は結婚しないのか?一緒に住むと同時にすると思っていたのに」

「え〜?元々家族だし、なんか今更な感じがすんなぁ」

「キリと同じく。まあ、気が向いたらするよ」

「その時はちゃんと結婚の報告に来てね。『息子さんをください』って、あれ1回やってみたい」

「2人がそれぞれに私達に言うわけだから、少しややこしいけどね」


楽しそうにしているカグラの頭をトカゲが優しく撫でながら苦笑する。そんな家族の中でゼロは幸せそうに笑っていた。




そんな騒動の2日後。ゼロはナラのもとへ来ていた。今日の護衛はホムラだ。


「教授は危険な目に遭ったりはしていませんか?」

「ああ。私はいたっていつも通りですよ」


真面目なホムラはナラと気があうのか、2人は初対面でもすぐに打ち解けた。


「でもゼロ君は不自由な生活を強いられているだろう。すまないね。私が研究に巻き込んだばかりに」

「教授のせいじゃありません。それにイチがいなければ僕は自分の能力にこんなに前向きになんてなれませんでした」

『私もゼロと会えて嬉しいです』


ピピッといつもの音が聞こえてイチの画面に文字が浮かび上がる。ミニイチと同じ機能を本体にもつけたためだ。


「そう言ってもらえると嬉しいよ。さて、前に話したイチをインターネットに繋ぐ話だが、今日作業する予定だからいったんミニイチは預かるよ。また明日取りに来てもらえるかい?」


今までイチは外部との接続はしていなかったのだが、知識を増やすためにネットの世界に繋ぐことが決まった。ある程度のフィルターはかけるが、ネット上であらゆることを調べられるようになる予定だ。


「はい。イチ、また明日迎えにくるからね」

『また明日ですね、ゼロ。もっとあなたの役に立てるようになります』


ゼロが前向きになったからか、イチも最近は明るい性格になっているように感じられる。明日を楽しみにしながらゼロはホムラと共に研究室をあとにした。




その日は他に大学での用事もないので、談笑しながらホムラはゼロを職場まで送ろうとしていた。


「明日の護衛については誰がつくかまた相談して連絡するよ」

「はい。今日はありがとうございました」

「俺も大学に来れて少し嬉しいんだ。モガ君が楽しそうにセンサーの開発に協力しているからな。どんなところなのか来てみたかった」

「そうなんですね。モガに話したら今度研究室に連れてってもらえるかもしれませんよ」

「いや。俺は機械のことは全く分からないからな。モガ君の話を聞くだけで十分だ」


どうやら機械関係は苦手らしいホムラは慌てて研究室行きを断ってくる。それがおかしくてゼロが笑っていると、急にホムラの顔が険しくなった。


「ホムラさん?」

「……なぜここにいる」


赤い瞳の先を追うとナラの研究室で会った男性がいた。こちらに向けて歩いてくる。

その瞬間、警戒してゼロを後ろにかばうホムラのスマホが鳴った。


『ホムラ君!やられた!張り込みの隙をつかれてギアが抜け出した!』


スマホからは珍しく余裕を無くしたトカゲの声が聞こえてくる。


「はい。今目の前にいます。……スピーカーに切り替えます」


そう言うとホムラはスマホをゼロに渡して、自身はすぐに蹴りを繰り出せる姿勢をとった。


「やあ。前にも会いましたね。ナラ教授の研究室で」


白々しく声をかけてくるギアにホムラは警戒を隠しもせず答える。


「彼に何か用か?」

「あなたは彼の護衛ですか?しまったな。不用意に動くんじゃなかった」


微妙に会話が噛み合わないギアにホムラがさらに警戒を強めると、今度はゼロのスマホが鳴った。


「ナラ教授?どうしましたか?」

『大変だ!ゼロ君、イチの研究が続けられなくなるかもしれない!』


唐突なナラの報告にゼロが驚きでスマホを落としそうになる。

その様子を見てギアが怪しく笑みを浮かべた。

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