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ゾンなめ。  作者: 鷹雪
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闇にまぎれて

今回からようや一家以外の人物達が、ずずいっと出てきます。

 その時マッカローニは闇の中、ろうそくの光だけを頼りに机に向かっていた。

ペンで何事かを書き、それをどかしては本を開いて調べるを繰り返す。

 彼はこの三国連邦のシーフギルド、その幹部なのだが、その彼がまだ日も暮れていない早い時間から宿をとり。その一室を締めきって、暗い部屋の中で急がしくしているのは、夜が訪れるその前にギルドの野暮用を済ませておこうという理由があったからだ。

 それ自体はいつもの事であったが、今日はそれだけでは終わらずにちょっとした事件がおこった。



 しばらく机の上の戦場に忙しく目を通していた彼は、ふと、部屋の中に広がる闇の中に”誰か”が紛れ込んだのを彼は感じた。

 これでも高度な技術を持つ盗賊である。自分の近くに変化が起こればたちどころにわかるものだ。

(連絡、人か?いや、違うな。)

 人ではない、すぐにそう判断した。

 

 なにかがここにいる。

 いったい何がいるというのだろうか?

 そして人ではないとはどういうことなのか?


 手を止め、顔を上げる。

周りを見回すとうっすらと部屋の中が見えてくる。

 ベット、椅子。閉ざされた窓。薄暗いということ以外、普通の宿屋の一室だ。もちろんこの瞬間までこの部屋に新しく出入りした人の形跡も音もなかったはずだ。

 そう、人の姿はほかにここにはないのだ。

 だがマッカローニは自分のカンを疑うことはしなかった。


「誰だい?いるのはわかってる。」


 しょうがないな、というように声を出す。

 当然のように、なにも反応はない。


(なんだ?なんでこんなことをする?)


 シーフギルドの者ならこの後に及んで姿を現さないというのは考えにくい。声をかけたのに姿を表さないのはいたずらではすまない、敵意があるとみなされても仕方ないことになるからだ。

 まさか、敵?

 しかし攻撃をするような不穏なものは感じなかった。


 もの言わぬ訪問者の意図がわからず混乱はしていたが、それでもゆっくりと警戒のレベルがマッカローニの中で上がっていく。

 そして片方の手はかたわらに置かれている自分の剣へとのびようとしていた。


さわ さわ さわ さわ さわ


 唐突に空気が揺れる、それはなにかのささやき声のようだ。

 とても小さく、かすかな音。

 すぐにその音を彼の耳が拾い上げると、瞬時にそれが意味をなしていない声であると彼は判断する。

こんなことをするのは誰だ?


(魔法使い?いや、違うな。どちらかというと別の…”力ある者”の方が可能性は高い)


 シーフギルドにいるメンバーでこの手の力を持つのは四人………違った、三人いる。その誰かか?

 それぞれの顔を思い浮かべるが、どうもどれとも違うような気がする。


ざわり


 闇の中、なにもいないその部屋で初めて大きな異変が起きた。

それまでささやいていたモノが身じろぎでもしたかのように動き、それによって空気がぬるりと一瞬なにかの形を作ってまた元に戻っていく。


「おお」


 マッカローニはそれを見ると驚きから声を出していた。


「久しぶりだ。3年ぶりか」


さわ さわ さわ さわ


 また闇の中がざわめく、どうやら何者か姿は見えないが、このマッカローニはすでに相手が誰なのか理解したらしい。

口元には笑みまで浮かべている、親しい人物だったのだろうか。


「どうした?なにかあったのか?」


さわ さわ さわ さわ


 ざわめきは一定のリズムを刻むだけで、大きくなったり小さくなったりはしない。

まるで感情を感じさせない、穏やかなものがあった。

 そして、先ほどと変わらない人の言葉ではなかったのに、今度は彼もその内容を理解しているのだろうか。マッカローニはなにもしゃべりもせず、再び闇の中をただ見つめていた。


 そんな沈黙の時間がどれくらいたっただろう。


「わかった。今近くにいる。夜にはなるが、丁度いい。会おうか。」


 いったい何を聞いたのか、伝わったのか。彼は突然口を開いてそうつぶやくと


さわ さわ さわ さわ


 闇は再びざわめき、唐突に何も聞こえなくなった。

 それと同じくしてマッカローニは部屋から”なにか”が出ていったことを感じた。


(帰ったか)


 剣にかけていた手を放し。再び机へと向かう。

 どうやら今日はひとつ余計な仕事が増えそうだ。約束してしまったのだ、忙がないとな。


「あいつ、とうとう戻ってくるのか。」


 声を出してみると今の出来事が現実だったと確信できた。

自然と口元に笑みが浮かぶ。


「お前の帰還を喜ぼう、友よ。」

次回から第2章ということになりそうです。それではまた。

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