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ゾンなめ。  作者: 鷹雪
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それからそれから

なんとかゴール、できました。

 宵と朱の空の下、モリガンは木々に囲まれた滝つぼのあの場所―以前アンブラとシーザーと出会ったあの場所に再び腰をおろしていた。

 その膝にはカッと目を見開いたまま微動だにしない、片腕のシーザーが体を横たえている。眠っているのだろうか?それとも?


「なんだ、楽しそうだな。モリガン」


 響く男性の声に、モリガンは反応した。この気まぐれな神に話しかけて注意をひくとはどんな人物なのだろうか。

目の前に広がる森、その向こうにその人物はいた。

 空にとどかんばかりの巨人。服を着てない生まれたままの姿で小さな人の姿となっているモリガン達を見下ろしていた。その顔には夜のように暗く影が差して誰なのかははっきりとはわからない。


「終わったの?」


 短くそう問うモリガンに巨人は楽しげな声で答えた。


「ああ、最後はあっけなかった。お前は来なかったのだな。わかっていたのか?」


 それに返事をせず、モリガンは肩だけすくめて見せた。どうやらそれが返事らしい。

 巨人はそれ以上何もいわずにひるがえして歩き出す。大地をその巨大な足が踏みしめているはずなのに、なんの音も地面が揺れる気配もない。

 それを面白くもなげに見送っていたモリガンだったが、巨人が山向こうへと姿を消した頃。膝に横たわるシーザーの髪に自分の指をからませて遊びだした。

(やはり、あの女はここにはこなかったか)

 アンブラは勘違いをしていたが、実際にモリガンはアンブラの最後を知らない。興味がわけば知るのに苦労はしないがそんんなことをするつもりもなかった。あの時、哀れにも崩れ落ちるシーザーを受け取った後はずっとこの場所で時が立つことだけを待っていた。

 どうやらアンブラは本当に敗れたらしい。

なにが期待を裏切るかもしれない、だ。グリフターめ。余裕ではないか。

 しかし、今のモリガンの元に彼女がここに姿を表さないということは勝てなかった時のためにあらかじめなにかよからぬやり方を考え、そして実行したのだろう。

(愚かな事を)

 モリガンは契約を守らなかったアンブラをわずかだが憐れんだ。

 本来、そのような事は許すわけにはいかない。神である自らの力でもって契約を守らなかった不届き者の甘い夢を粉々にした後でたっぷりお仕置きすることになる。しかし今回、モリガンにそのつもりはなかった。

 それならそれでいいだろう。それが上手くいくかどうか、私にはわかっているのだから。


「帰る場所は大切だ。戻らないのもいいが、戻れなくなるぞ」


 モリガンの口からもれたこの言葉は、一体誰に向けられたものだろうか。





 あの日から、いやあの夜から早くも数日がたった。

あの後、4人はやっとの思いで家に戻ると、説明を求めてくるメイド達に「今はそんな気分じゃない」とだけ言いのこして、それからほぼ1日全員ベットから起きることはなかった。



 僕等がようやく起き出した頃、町では大変な騒ぎがおこっていた。

そりゃそうだろう。ガリランドの町の住人のかなりの数が突然一夜にして行方不明になっていたのだから。そんな困り果て、上から下まで大騒ぎの衛兵達の所へおじいちゃんはグリフをつれていくと自分達の身におこったことについて話をした。

 最初は、そんな馬鹿な話とちっとも真面目に聞いてくれなかった彼らだったが。つづいて慌てて入ってきた仲間によって町の近くに怪しげな洞窟が表れたとの知らせを受けたらしい。

 慌てた彼等は今もそこに僕等が言うようなゾンビ達が本当にいるのかどうか。調査する、しないでもめているらしい。


 他人事だったが、僕の心配として中のゾンビが外にあふれ出てこないのだろうかと思っていた。が、グリフはそれをやたら自信ありげにないだろうといっていた。

 なんでもあの腕輪にはおかしな力があって、中に閉じ込めると外には出てこれないようにできるらしいということらしい。そしてグリフはあの時、洞窟を離れる前に中から出てこないようにとそれをやっておいたのだという。

 いつの間にそんなことをしていたのか、不思議にも思ったがどうせきちんと話してはくれないだろう。それならそれでいいと僕は安心することにした。

 そして実際ここまでの数日、洞窟から奴等があふれ出てきたという騒ぎはおこらなかった。



 そして今日。

 よく晴れたその日の午後を僕はファーギーと2人で買物から帰っていた。

 露出の多い可憐な女性と市場を一緒に歩いてショッピングというのは、若者が共通で持つ夢のような話しのようで、実はまったくそんなことはなかった。

 実際買ったのは板を1枚だけだったしね。

 それを僕とファーギーが一列になって持ち、昼が近い太陽の下で、つまらないことを話しながらのグダグダした帰り道を楽しんだだけだった。



 帰宅すると、犬達は今日も庭の一番日のあたる場所でごろっと寝ている。

 こっちがなにをはじめようとも横になったまま耳をひくひく時々動かすだけだ。


「エリー!頼んでたの、どこに置いたー」


 声をかける、すると家の奥から


「フィン様、玄関のところです。」


 とレイラさんから返答があった。わかったとこちらも返事をすると玄関にペンキとはけを見つけることができた。


「おー、それでどっちが書くんだよ」


 それを持って庭に行くと、ペンキの入った桶を前になんだかしらないがファーギーはテンションが上がってきているらしい。

 やたらに楽しそうにぴょんぴょん子供のように跳ねたりして乗り気になっているようだった。


「そうだなー、じゃあ僕が」

「なんでだよ!ずるいだろー」


 おお、ホントにノリがいいな。


「そか、それじゃ交互にやろう。」


 するとなぜかファーギーは不満そうにあのやたら色っぽい上目遣いをして


「あたしが書くってのはないのか?」

「ないよ。それじゃせめて最初をどうぞ」


 最初はちょっとドキドキもしてた気もするが、これが彼女の手なんだとわかると気にせずにこんな感じでズバッと切り捨てられるようになった。

 ちなみにグリフとおじいちゃんは今、部屋に閉じこもっている。

 まぁ、どちらもらしいとは思うけど実は理由はいつもとはちょっと違う。

 あの後も、どうやら押しかけるような形で2人で衛兵所の偉い人の所に何度か言ったのだけれど、どうやらそこでじいちゃんがいうには「そこで失礼どころではない侮辱を受けた」らしい。まぁ、尊大で不遜な老人とアヤシイ雰囲気の醸し出す方の孫が会いに行ったのだから、普通の人なら「さっさと帰れ」と言うのは当然だろう、とは思ったが僕は黙っていた。

 しかし、2人にしてみると許せることではなかったらしい。

 1人は年を考えないでへそを曲げただけだろうが、もう1人の方は今度こそ間違いなくどこからか処女をさらって暗い部屋の中でサバトでもやっているに違いない。

 とにかく、共通しているのは「あいつは絶対に許さん」との捨て台詞を残して2人は部屋から出てこなくなった。

 まぁ、出てくるまではしばらく平和だろう。



 お互いで書きあげると、ファーギーと2人ちょっとはなれて出来を見たりする。


「どう?」

「いいんじゃね?」


 そこにはこう書かれていた。


ハンターギルド

専門種 ゾンビ(仮)


 僕の方はと言えば、学校にも事実上卒業宣言をされてしまい。通う必要もなくなり、家にいてもファーギーの「退屈だ、なんとかしろ」との声を誤魔化すつもりでこうして看板作りなんてことをしている。色とりどりにやりたい放題書いてしまったから、採用はされないだろうけどなんだかそれなりに楽しめているようなので、それで良かったと思う。

 お互いがそれぞれ、看板の出来に満足していると表から「すいません」と声がした。

出てみると、そこには若い衛兵が一人緊張した顔で立っていた。


「なんですか?」


 フィンが刷毛を置きながら訪問者に問うた。


「はっ。ガリランド衛兵事務所の隊長より、先日いただいた報告について。ぜひ御相談したいことがあるとの伝言がありまして」


 とか言っている。それじゃ家に通そうということではいってもらったら、ファーギーがニヤニヤ笑いながら


「あたしがあいつらを呼んできてやるよ」


とめずらしい事をいう。そして階段下までいくと


「おい、デブ!クソジジイ!客だぞー」


 などと怒鳴りはじめた。それを目を丸くして驚いている衛兵さんに「あはは、今日もいい天気ですね」などと声をかけるが、本心はどうか今見たものは忘れてほしい、僕はそれだけを願った。


 グリフは思いのほかご機嫌な様子で登場した。

「ああ、衛兵隊長さんはお元気ですか」などと第一声から満面の笑みを浮かべている。

 弟として断言してもいい、その笑顔はどこからどうみても真っ黒だった。

なにやらよからぬ復讐など考えていませんようにと願いながら、隣に座る。そして、どうやら聞いていると話が見えてきた。

 例の件を訴えに行ったら、まるで信じてもらえず。さらにゾンビがわいていることも報告した際にうちで引き受けてもいいなどと申し入れたらしい。それを聞いて向こうはすっかり馬鹿にしてけんもほろろに追い出されたのだという。

 ああ、わかりますよ。どうせあれでしょ?「ゾンビ程度、助けなんているわけないだろう」ってやつ。僕もそう思っていたから、笑えないけどね。


「わかりました、すぐに隊長さんのところへ伺いましょう。お忙しいでしょうからね。」


 そう言って笑顔でグリフは使いの若者を快く送り返してしまった。そして、僕らの方に勢いよく振り返ると


「さぁ、野郎ども。準備だっ」


 ああ、やっぱりね。グリフの声にうんざりした顔をする僕と同じように、ファーギーは不満そうに言った。


「えー、あたしあそこにはもう行きたくないなぁ」

「もうあの件は解決ってことでいいんじゃないかな、ホント」


 僕とファーギー、どちらも嘘いつわりのない本心だった。そんな僕らにやれやれと首を振りながらグリフは諭すように言う。


「君たちは分かってないな。いいか、今回あれだけひどい目にあった。だがね、我々は得したことなんてない。むしろ言ってしまえば、大赤字といっていいくらいだ。」

「ちょっと待てよ、あの腕輪はどうなんだ?」

「あれ?あんな装飾不明の輪っかなんて価値はないぞ。なんならどこかの店で後で見てもらってくるか?」

「そんなー」


 確かに、びっしりとなにやら文字が刻まれただけの銀の輪っかだったし。その使い方も正直言ってどこまで使えるのかわからないものだったからなぁ。

 がっくりするファーギーの声を平然とグリフは聞き流してさらに続ける。


「それにだね、なんかやりきったつもりでいるみたいだけど。あれ、事件に巻き込まれて逃げてきただけだから。なんにも解決していません。」


 その言葉に僕の顔が歪む。その通りではあるんですけどね。でもさぁ………。

 そして、なぜかぐぐっと握りこぶしを作り


「だからな。これからあそこに戻って、なかの邪魔なのを全部ぶっ倒し。」


 いったんそこで区切ると


「その後で、あそこにある金目のものを全部頂いてくるのだ!」


 わー、なんかひどーい。

ちょっと呆れた顔で兄を見ていた僕だったが、ふと隣を見るとそこにはキラキラ輝く目をしたファーギーという名のビッチがいた。

まさかまさか、あなたねぇ。


「ああいうところって、やっぱ財宝とかあるよな?」

「邪教崇拝といっても、盗賊団もからんでたみたいだし、あるだろうねー。どんだけ頂けるか、楽しみじゃないのかね、君達。」


 うわー、乗り気になってるよ。

乗せる方も手慣れたものだが、乗る方も現金な事この上ない。こうなると、僕の抵抗など無意味でしかなくなるんだろうなー。そんなことを考え。そして自分もいい感じで乗せられてしまっていることを感じた。

 エリーを呼ぶとなにやら言いつけているグリフ、うきうきと愛用の手斧の調子を確認しているファーギーを見てぼくも腰を上げる気になる。新しくお爺ちゃんから借りた剣をそそくさと持ちだしてきた。


「なんじゃ、騒がしいな。」


 騒がしい階下の様子が気になったのだろう。ようやく部屋を出ておりてきたおじいちゃんに僕はさっそく声をかけた。


「おじいちゃん、ゾンビハンターの初仕事だよ。準備はいい?」

今回でいったん区切ります。

この続きをどうするかは、読み直してからゆっくり考える予定です。


初めて書いてみましたがなんとかここまでこれました。

ここまで、よんでいただきありがとうございます。


また、読んだ後で感想などを書いていってください。

よろしくおねがいします。

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