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ゾンなめ。  作者: 鷹雪
33/36

激突

「おい、大丈夫なのか?」

「なにがだ」

「アンブラさ。突然泣き叫んだり。シーザーの奴も帰ってこないのに、もう確かめろとも言わない。さっきから黙って何を考えているのやら。」

「よせ、彼女は大丈夫だ。冷静になっただけだ。」


 2人が話しているところに、男が近づいてきた。


「聞いてほしい事があるんだが」

「どうした?」

「じつは先ほどから廊下、つまり通路に立たせた連中の気配が感じられないんだ。」

「なに?」

「決めつけるわけじゃないが、もしかしたらってな。」

「声はかけて見たのか?」

「まさか、もしこっちが気がついたと思ったらなにが起こるかわからんからな。まだだ。」

「本当なのか?気にしすぎなだけじゃ。」

「もうしばらく通路から話し声が聞こえなくなっている。あそこに立たされた連中が、息をひそめてじっと喋らずに見張りをしていると本当に思うのか?」


 さすがにこう聞かれては、そうだとは言えなかった。


「よし、我々で見てこよう。」

「3人で?もっと呼んだ方がいいんじゃ」

「いや、通路で大勢いても有利にはならない。もし会ったとしても、3人ならここまで引き込めばこの広さだ。十分、取り押さえられるはずだ。」

「そうだな。」


 広間にはあちこちで人が固まって何かを話していた。

 ここにはこれだけいる、例え数人が押し込んできてもきっと大丈夫だろう。




 通路に3人が出ると、すぐに物言わぬ死体となった見張りたちを暗がりの隅に見つけることができた。


「一体、いつ。あいつらはどこへ?」

「わからん。もしかしたら、そこらにまだ身をひそめているのかも。とにかく一度戻ろう。」


 ふと、一人がふらふらと離れていこうとするのを見て慌てて止める。


「おい、なにしてる。戻るぞ」

「待ってくれ、なんか声が聞こえるんだが。」

「なんのことだ、こっちに早く来い。」

「本当だ、なんだろう。おかしな声が………」


ぉぉぉぉぉぉぉぉぅ


「なんだ、あれは?」

「な、聞こえるだろ?なにかな。」


ぉぉぉぉぉおおおう


「おい、なんか近づいてないか?おいっ」

「戻れ、早くこっちに来いよ」


おおおおおおおおおおおおおお


 通路の先は闇となってちっとも見えはしない。

早く戻って来いといら立ち始める2人とちがって、吸い寄せられるようにふらふらと出来るだけ前進して声の正体を確認しようとする。


 そしてフィンは暗闇から剣を抜いて飛び出してきた。

 体を乗り出していた男の脇をすり抜けざまその足を切りつけていく。


「痛ぇっ!」


 切られた男の声だけをそこに置いて、奥で驚いている2人の片方の胸の中に猛然と飛び込んでいった。

それに続いてグリフが表れると、膝を抱えた男の頭をむんずとつかむと下から首に刃を突き上げた。

 一方で、フィンは飛びこんだことで一気に2人目の身体を刺し貫くことに成功したのだが、反対に剣がその体から抜けなくなってしまった。

(ヤバイ)

 今だショックで動けてない相手を目の端に確認しながら、未練がましく引っこ抜けないか試して見る。それを見て、残った1人はチャンスと思ってしまったのかもしれない。剣をようやく抜くと、それを手に襲ってきた。

 しかし、それはすべてフィンはわかっていた。すぐさま相手の間合いを潰して相手の手をとると脇に挟んで動きを止めてしまう。そこを後ろから来たグリフが見事に胸を貫いたことで、兄弟のコンビプレイを前に、結局あれほど慎重であったはずの3人はあれよあれよと反撃も逃走も選ぶ暇なく倒されてしまった。

 男達が倒れると、兄弟は流石に肩で息を切らしながら周りを見る。


「えっと。倒れてるのがいるよ。ファーギーかな。」

「まさかビッチ、ばれてないだろうなぁ。」

「そんな感じはないけど、ちょうど今バレたところって感じ。」

「そうだといいな」


 そう言うと、自分達が走ってきた道の方に頭を向ける。


「ついてきてるな。さすがにちょっとヒヤヒヤしたぞ。」

「ホントにね。」


フィンは笑顔を浮かべるが、グリフは表情を変えなかった。


「息、整えろ。すぐにいくぞ。」

「わかってる」


ああああああああああああああああああ


「………近かったよ、今?」

「本当かよ。走ってるんじゃないか、あいつら」


 そういうと、グリフは少し来た道を戻ってひょいと顔を出す。

 いったいそこには何がいて、なにを見たのだろうか。


「ヤバい、もう来てる。すぐにいくぞっ」


 兄弟は走り出す。

 すぐに前方に両開きの扉が見えてくる。それを2人は思いっきり蹴り開けた。


「うちのジジイを返してもらおうかっ!!」


 フィンはそう腹の底に力をためこんだ声を張り上げていた。




(来た!本当に来たのね)

 兄弟が姿をあらわしたのをみてアンブラは息をのむ。

 当初、シーザーの死を感じた彼女が真っ先に考えたのがここを捨てて自分だけでも逃げるという選択だった。

 しかし、それはすぐにも却下しなくてはならなくなった。彼の死をはじめとした一連の騒動が、自分を狙ったものであるならば今は逃げることができても地上に出たらこれだけの騒ぎを起こしたのだ、すぐに追手がかかって自分は逃げきることができないだろう。

 シーザーの仇はとりたいとは思うが、正直いうと今は自分の命を守ることの方がなによりも優先するべき事だった。

 一応、今の自分には彼等の祖父というカードがまだ残っている。

これを使うことで、なんとか交渉で身の安全をはからなくては。


「思った以上に元気なのね、坊や。もう牢から飛び出してきちゃったの?」


 壇上でアンブラは2人を見下ろして悠然と笑って見せる。本当は顔からはさっきまでの影響で血の気が引いていたが、きっと誤魔化せたはずだ。

 その前にフードで顔を隠した連中が集まって壁を作って守っている。その数はどう見ても15人より多い。2人だけでこれを何とかすると言うのは無理だ。


「こっちもいろいろ準備してたのに、おかげで予定がくるってしまった。見たところあのお嬢さんがいないわね。かわりに前の時はいなかった人がいる。ご挨拶してくれないのかしら。」


 フン、と鼻を鳴らすフィンの横からグリフは進み出る。


「こんばんは、グリフィン・ライバーです。はじめまして。今夜はわざわざ我々を招いてくださりなんと感謝してよいやら分かりません。せめて皆さんをにぎやかしに負けないよう、急ぎではありますがこっちもささやかな趣向を用意してきました。」

「これはご丁寧に、なにが待ってるか楽しみですわ。」


 そう答えながらもアンブラの中では様々な感情と疑問が噴出していく。

 こいつがシーザーをやったのか?どうやって姿を隠していた?今まで何をしていた?


「その前にまず祖父を返していただく。なにぶん激しい運動を老人に強いるのはよくない。」

「さぁ、老人だけのけものというのは感心しませんわ。こちらもなかなか普段お目にかけることのない体験をせっかく用意していたところですからね。」


 さきほどから兄の後ろでフィンが落ち着かずに左右に行ったり来たりしている。

どうやら今すぐにでも口火を切りたくてうずうずしているようだ。もしなにか仕掛けようものなら嬉々として暴れ出そうとしているように見える。

(この人数の差がわからないのかしら、あの子)

 このまま素直に突っ込んでくるならそれはそれで有難い。人の数に任せて押しつぶしてしまえばいい。

 しかし、どうやってシーザーを”普通の人間”が倒したのか不明だ。自分から仕掛けることだけは避けたい。

 グリフが薄笑いをやめて、愛嬌ある笑顔でニコッと笑いかけてくる。


「挨拶はこれくらいでいいだろう、ガタガタ語り合う仲でもない。こっちの要求を伝える。」

「聞きましょう」


 さぁ、どうなる?


「今からアンブラ、あんたを除いた全員には死んでもらう。すぐにな。そしてじいちゃんも返してもらう。以上だ。」

「なによ、それ」


 一方的すぎるその内容にアンブラは呆れてしまった。


「それは交渉にもなってない。降伏も許さないとか、そんな馬鹿な事。私達が真面目に受け入れると思ってるの?」

「いーや。受け入れるとは思ってないさ。」


 グリフの邪気のない笑顔に影が差す


「受け入れてもらう。無理にでもな、その準備はもうしてきた。そう言っただろ?」


 ぁぁあああああああああああああああ


 凄まじい叫び声をはもらせた死者達の群れがいきなり部屋の入り口から部屋の中へとなだれ込んできた!




 グリフが無茶苦茶な要求を口にし始めた時。

 すでにフィンもファーギーも次のために動き始めていた。

 フィンは後ろから来る死者達にいきなり飛びつかれないよう、入口から死角になるであろう部屋の隅へと移動していた。

群れが入口にあらわれるのと同じく、グリフはその巨体からは信じられない身軽さで部屋の中に半分に折れて立っていた柱の上へとするすると体格からは信じられない身のこなしでサルのようにのぼってしまった。

 死者達は当然、目の前の壇上の前に集まる人間達にむかって突撃していく。

 地獄がそこに出現しようとしていた。


 グリフの言葉がほかでもない勝利宣言だと理解したのは死者の群れを見た時だった。

(どうやって?なぜ?)

 わからないことが多すぎた。

せめて祖父だけでも抑えようとした時だった。

 ケインが寝かせられていた台にどこからともなくファーギーが飛び降りてきて姿をあらわしたのだ。

 そして老人の上をまたぐように立つと、台のわきに立たせていた2人の護衛の首をまたたくまに見事に裂いてしまった。吹き出した血の向こうに立つファーギーのその姿に、アンブラがこの一瞬で自分が敗者となったことを認めなくてはならなかった。


「またあったな、おばさん」

「私を殺すの?」


 アンブラの声が震える。

 すでに死者達によって広間はひどい恐慌状態となっている。かたまって対抗しようとする者達はなんとかなっているものの、そこからはなれて少しでも安全をはかろうとするものも出てきている。その中の何人かはすでにつかまって齧られ始めている。

 そしてさらに運のなかった奴は壇上へと部屋の隅を移動していたフィンの剣のえじきになっていた。

 アンブラもこのままならば彼等とそう変わらない運命が待っていた。

ファーギーがその気になって飛びかかってくれば、2秒もかからずに致命傷を与えてくるだろう。


「いいや、残念だがそれはないぜ。」


 ない?どういうこと?そういえば、さっきも私だけはとか言っていたような。


「あたしはそうは思わないけどさ、あんたの頭と体が欲しくて欲しくてたまらないって譲らない奴がいるんだよ。あとでそいつにたっぷり可愛がってもらいながら質問してみたらいいぜ。」


  それを聞いて、アンブラはなぜかグリフの方へ頭を向けていた。

 柱の足元で生者と死者の混乱の上に、しゃがみこむように微動だにしない巨体がそこにあった。

その男は真下でおこっている喧騒になどまるで興味がないという風に、ただじっとそこからアンブラを見つめていた。

 そういえば、この男はさっきじぶんの名前を言っていた。どこで知ったんだ?

 それは漠然とした推測にすぎなかった。

 でもわかったのだ、自分が犯したミスが何なのかを。


 同じなのだ。そう、自分と同じく”普通の人間”ではない者によって攻撃されていた。

その突拍子もない結論は驚くほどこれまでの疑問の答えになっているように思えた。

 最初の襲撃に姿が見えなかったのは、自分と同じような力を持っていたからだ。シーザーはただ油断したから死んだのではなかった。この男によって倒されたのだ。そしてこの死者の群れ。これがすべてに都合よく自分に災難として襲ってくるその理由。


モリガン・・・・っ!


 モリガンと初めて会ったときから、アンブラの心には一度として敬服の念というものはなかった。

ただ力が欲しい。そんな強い力を得るため、手段として利用してやろうとしか思ってなかったからだ。

 しかし相手は何を考えているかわからない恐るべき存在。

 礼儀も言葉もとんちゃくしないその姿に、自分が見透かされていrのではといつも恐れていた。

 だから、シーザーのような若者を導いたり、通常では得られないような知識を求めたりしていた。その代償に多くの生贄が必要となってしまったのは痛かった。

 そんな、モリガンの下僕であるといってもいいアンブラが。モリガンが司るものの一つ、死者による攻撃を受けると言うのは彼女の意志がここに絡んでいることを意味している、そう考えられた。

(やっぱり見透かされていたんだ。私の魂を奪いに来たっ)

 それこそが恐怖。彼女がずっと望まないものだった。


自分の死。


「私を連れていくのね。」


 それは苦痛を押し殺すようなせりふだった。


「ああ、そういってるだろ。クソビッチ。なんだ?怖いのかよ。」


 ファーギーの声に含まれるあざけりに反応してきっと睨みつける。


「おお、怖い怖い。でも気持ちはわかるぜ。あのデブにのっかられて好きにされるなんて楽しくない未来、同情するぜ。貴族のあの手の連中の変態趣味ときたらひどいもんなぁ。」


 やはりモリガンと手を組んでいる可能性は高い。

(もうどこにも逃げられない!?)

 崩れ落ちていく仲間と、自分を守護する者から見放されたという恐怖を前にアンブラの思考は狭くなっていく。そして肝心の「ライバー達は死霊術師を探している」という部分にもおかしな解釈が入っていく。


「冗談じゃない。冗談じゃないわよ!そんなことごめんよ。絶対にお断りだわ。」


 もうわけがわからない。


「おいおい、落ち着けよ。まぁ、そういうこともあるのが人生ってもんだろ?」


 ファーギーは激しく乱れるアンブラを落ち着かせようとする。一応、このアンブラは生きて捕まえることになっているのだから。


「うるさいんだよ、この馬鹿女!」


 その言葉にカッとなって再びファーギーをにらむと一気にまくしたてた。


「お前はね。いや、あんたたちには驚くわよ。だってあんな化け物を近くに置いておくなんて。」


 そういうと柱の上にいるグリフを指差した。


「あたしはね、あたしは嫌よ。それが約束といっても、あいつらのおもちゃになって。使いつぶされて、哀れな姿になって、それでも終わりはないっ!」


 おかしな熱はそれで飛んでいったのか、抜け殻のように肩をおとすが口はまだ動いている。


「今ここは死にかけている。お前達という毒をひきこんだせい。」


 いったん区切ると声が震えてきた。


「あの方々も喜んでるでしょうね。ふさわしい地獄となった。もう止まらない。」


 そして再び狂ったように喚きだす


「なのに、なのに!こいつらわからないのよ。馬鹿みたいにあんたらをぶっ殺すとしかいわないの。冗談じゃないわ。それが何を意味するのかなんてぜんぜんわかってないんだからっ」


 そういうと懐から短剣をとりだした。


「ほんとうにどうしようもない。そんなことしたら思うつぼだと何度も説明したっていうのに。」


 ファーギーにはこの女の言葉がさっぱりわからない。それにどうやら抵抗するようだ、無傷とはいってなかったから腕の一本でも切り落としても大丈夫だよな、と確認しておく。


「あー、わかった。いや、わからないけれども、だ。それで抵抗するのはやめたほうがいいぜ。無駄だ。」


 警告してみたが、アンブラはファーギーをみてフンと鼻を鳴らす


「そうね、お前もわかってない。わかってない奴は見ているだけで不愉快よ。」


 そういうとごそごそと懐からまた何かをとりだす。


「ほら探し物よ、勝手にもっていくがいいわ。どうせここに来たのはそれが狙いでしょ。」


 ファーギーは投げつけられたそれを受け取って宙にかざして見る。

 銀製の腕環、これがなんなのだろう。


「よかったわね。それじゃさようなら。」


 突然、アンブラはファーギーの前で短剣を逆手に持つと自分の胸へと突きたてた。それはただの短剣ではなかったのか、女性の胸をたやすく貫通して背中が破裂でもしたかのように血を噴き出させた。

 ファーギーは自分の目の前で女の体が短剣で貫かれて血と肉片が飛び散る様を見てさすがに驚いた。


「ああっ、くそっ!」


 参った。またしくじっちまった、なんて言い訳しようか。




 フィンがようやく壇上へと登ったのは丁度アンブラが崩れ落ちた時だった。

 とりあえず、まずはファーギーの足元でいまだに動かないケイン老に駆け寄る。


「じいちゃん、大丈夫?じいちゃん!」


 真に信じがたい話だが、ケインはすーすーと寝息を立てて寝ていた。信じられない、この騒ぎでこれか。さすがだ。

 一方でようやくグリフも柱の上から飛び降りざま、下で戦っていた男を1人押し倒した。そして倒した男に何をするでもなく、すぐさまその上から飛び退くとそこに死者達が殺到する。「うわぁぁ」もはや助からないであろう男の悲鳴が響く。

 しかし、そんな事があっても眉一つ動かさなかったグリフも、さすがに壇上で倒れて動かないアンブラを見て顔が曇った。


「それで、なにがあった?」


 問いただすグリフにファーギーは口の中であーとかうんとかどもるだけである。


「あー、その。そうなった。」

「そうなったって、お前……おい、死んでるぞ。」


 首筋を確認するまでもない。胸がえぐれて破壊されつくしている。


「それだけどさ。そのクソ女。突然グッダグダ泣いたり笑ったり怒ったりと大忙しの後でさ。そうなった。」

「そうなったって。そうならないようにしろって言ったのに。」

「仕方ないだろ、でも片方はやったぜ。」

「及第点も怪しいな、クビにするかどうかはあとで考えよう。」


 これはまずいことになった。だがもめている暇はない。急いで脱出しないとこっちが危ない。


「フィン。じいちゃんは?」

「寝てる。すぐ起こすよ。」

「薬かもしれん。手荒にするなよ。ファーギーはこっちにきてこの女の身体検査。何か持ってるかも。」


 ケインが体を起こすのに合わせて台から飛び降りたファーギーはそこで気がついた。


「そうだ、これ。その女に渡されたんだけど。」

「なんだ?」

「いや、わかんないけど。腕輪をな。」


 そう言ってグリフに渡そうとした時のことだった。腕輪に刻まれた模様をファーギーの指がなぞるとうすい輝きを発した。

 カチリと音が鳴ると部屋の隅の床が開いた。

 そしてそこにゆっくりと石棺が音を立ててせり上がってくる?(あれは!?)当然だがグリフにはそれには見覚えがあった。

せりあがった棺は不自然な動きをするとそれにあわせるように中身をぶちまけながらひっくり返される。

 その中につまってたのはああの虹色の砂だった。それが広間の床にさっと散らばっていく。


「ゾンビパウダーか」


 グリフは唇をかんだ。これは一杯食わされたぞ。




「どうする、どうするんだよ!?}


 自分が何かさらにミスを犯したのではないかとパニック気味のファーギーの手からグリフは腕輪を取り上げる。

 予想外の罠があったが、これはきっと探していた脱出に必要なモノなはずだ。

 すでに広間では死者達の宴会が始まっていた。

そのどこまでもたまらなく不快な血と肉を味わう音が、腐ったどぶの匂いがたまらない。

 状況は悪い、今は死者達も生きた人間で楽しくやってるがそこに再びパウダーがぶちまけられたのだ。すぐにもその数を増やして今度はこっちにむかってくるだろう。


「いけるか!?」

「ほぁっ?」

「じいちゃんが起きた。いけるよっ」

「急ごうぜっ」


 本当ならアンブラを捕まえて本人にこの腕輪をつかわせるつもりだったが、時間もなかった。

 グリフがさっと腕輪のある部分をなぞると、壇上の一部が音を立てて穴が開いていく。

なぜ彼にはこれが使えたのか?

 グリフは腕輪を手に持った時、すぐにわかった。これは普通の人間や、魔術師では使えないものだと。そう、これは自分やアンブラのような連中だけが使えるものだと。それがさっそく結果が出たことで自分の考えが正解だったことをあらわしていた。

よければ読後に感想などをください。

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