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ゾンなめ。  作者: 鷹雪
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相対する

えへ、捕まっちゃった。と言うところでしょうか。

ここからの逆転は厳しそうです。

「アンブラ様、彼等をシーザー様と護衛が連れてきました。」

「そう。」


彼女は短く答える。


「被害はなかったのね?」

「はい、予定通り罠にかかって地下に引きずり込んだ後。彼らを取り囲みました。抵抗はなく、こちらに投降してきたそうです。」

「そう、よかった。」


 心配していたが、案外うまくいったものだ。

 いや、これほど万全を期していろいろ手を打ったのだからこうなって当然か。

アンブラを悩ませていた今回の件も、ライバーの祖父と孫に対面すれば終わるだろう。

 正直、彼女はホッとしていた。



「どういうこと?」


 3人の護衛とシーザーを先頭に、教団の手の者に囲まれた3人を見てアンブラは口を出さずにはいられなかった。


「1人足りない、4人と聞いてたわ。死んだの?」


 見たところ、特徴として太ったライバーの長男がいない。

 あの罠は、地下にある倉庫に直接天井を開けて突き落とすものだった。その衝撃で、おかしな落ち方をして、もしかしたらと思ったのだ。

 女魔術師の感情的な反応に、皆顔を見合わせる。


「あの、それが1人見つからなくて… …」

「どういうことなのよっ!?」


あきらかに取り乱すかのように荒れ出す彼女をなだめるようにシーザーが説明する。


「抵抗もなく3人は投降してきた。でも1人は姿がなかったんだ。」

「罠にかからなかったという事?」

「いえ、馬車から出たってことはないです。ずっと見張ってましたから。それなのに……ホント、おかしいですよねぇ」


 そのあまりにのんきな部下達の答えに彼女はカッとなった。


「おかしいじゃないでしょ!?ちゃんと探したの?」

「落ち着いてくれ、アンブラ。ちゃんと調べたよ。周りも全部ね。今も上では捜索させている。すぐに見つかったと報告もあるさ。」


 そうだ、取り乱してはいけない。アンブラは顔を伏せると、必死に落ち着こうとする。

 予想外の結果にちょっとだけ動揺してしまっただけ。作戦通り、3人はこちらの手に落ちた。

シーザーはバカではない、例え運よくライバーの1人があの罠を逃れたとしても上で探しているならすぐに決着がつくはずだ。




 この祭壇のある広間に通されたフィン、ファーギー、ケインの3人は顔を隠した怪しげな連中に囲まれていた。


「ようこそ、招待した皆様にはこうして直接お会いしたかったわ」


 つい先ほどまで、どこか神経質だったその姿を完璧に隠した女性が悠然と笑いかけ近づいてくる。


「ひとついいか?」

「なにかしら」

「ここはどこだ。町からそんなに離れた感じはなかったはず。」


 ファーギーのぶっきらぼうな問いに自然とアンブラの口元が緩む。

この反応は間違いない、自分達の罠にわからずにはまったということだ。


「その通りよ、ガリランドの町からそう遠くない場所にここはある。それだけは確かね。」

「わしの孫がまだおる、すぐに兵を連れてここに来るぞ」

「さぁ、それはどうかしらね?」


 老人の言葉を聞いても一笑にふす。

 彼等はやはり何もわかってない事がこれで証明された。

この地下洞窟だけではない、地上を含めたここら一帯には魔力による結界が張られている。

 ここを出入りするには、その特性を理解するか。自分達幹部の力がなければならない。その両方がなければ、この結界にとらわれて方位を失い決して抜け出ることはできないのだ。


「ここに姿がないお孫さんが迷子にならないよう、上では今も大勢が探しているらしいわ。すぐに会えると思いますわ。」


 祭壇への階段を下りると、3人を囲むように歩いて回りだす。


「つまり兵が此処まではいってくることはない。それはたしかよ。」


 まわりに囲んでいる者達の間からも低い、嗜虐的な笑い声がもれる。

彼等もそのうち自分達を捕えて囲んでいるのが、町の住人達だとすぐにでも理解することだろう。

 アンブラの教団に名を連ねる者の中には町の有権者達も多い。その辺のトラブルは起きないよう、気をつけている。

 彼等のはかない願いなどかなうはずもなかった。


「それで。僕等を呼び出して、捕まえて、一体何がしたいのかな?」


 フィンレイといったか。一番若い子だ。

つい先ほどまでおびえた少年のように見えていたが、なんだか今はそうは見えない。


「なにって、ガリランドの町の名士。ドラゴンスレイヤーのライバー家は有名じゃない?」


 わざとはぐらかしてみる


「ふんっ、ひどいウソだね。ライバーの名を聞いてドラゴンスレイヤーを口にするなんて。おかしくてわらっちゃうよ。」

「あら、そうなの?有名人の孫ってかわってるのね。」

「それが事実だからね。うちの護衛も傭兵だけど、じいちゃんのことなんて聞いたこともないっていってたぞ。」


 フィンが顎でファーギーをさす。

この女が傭兵?ドラゴンスレイヤーを知らない?なぜだろうか、アンブラの心の中で再び危険信号が鳴りだした気がする。


「あら、傭兵の名声には興味がないなんて。変わった女性ひとね。」


 ファーギーに目をやると「知るかよ、ボケッ」と小声で吐き捨てている。

この女、シーザーの話では流れ者だという話だったが… …いや、いいだろう。どうせ気のせいに違いない。


「なっとくしたなら聞かせてほしいね。僕等に何の用?」

(元気ね。この状態で私にこんな口をきいてくるなんて)

 酒場で暴れたのはこの子だと聞いた。なんでも大したものだったと聞いている。度胸があるのだろう。

 押し黙るアンブラを見て、不快感に思っていると理解した部下の1人が一歩フィンに近づくとその横腹にキツイ一撃をいれる。うっ、と唸り声をあげて体をかがめたがすぐにフィンは痛みをこらえて顔を上げる。


「なにをするんじゃ」


 孫への仕打ちに抗議の声を上げるケインに、今度は近づこうとする相手に


「よせ、じいちゃんに手を出したお前を殺す。」


 フィンの声は真剣だった。「そうか」男はそう答えるともう一撃、フィンの腹部につきこんだ。

それを見て、ケインもたまらず黙りこみ。ファーギーは目を泳がせる。

 再び、態勢を戻すと


「言っとくが、僕にも次やったら殺す。」

(面白い子ね)

 アンブラは手でもういい、とふって止める。


「確かにあなた達に聞きたい事があったの。答えてくれるかしら。」

「聞いた後で考えて答えるよ、おばさん。」


 おばさん、か。さすがに今度は少し傷ついた。


「坊や、女性にはせめてお姉さんっていってほしかったわ。」


 思わず自然と目がシーザーへとむかってしまう。

 その意味することを理解して、一瞬シーザーの顔がゆがんだ。


「でも、そうね。単刀直入に聞くわ。」


 フィンの顔を見て、その目をのぞきこむ


「魔術師を探しているそうね、あなた達。どうして?」

「用があるから探した、それだけだよ。」

「用って、なにかしら?」

「会ったらその人に直接話すさ。」

「あらあら」


 微笑してフィンに答える。


「それならあたしに話してちょうだい。あなた達が探している死霊術師。あたしがそうよ。」


 ケインは「ほう」と驚いた顔でそうもらした。ファーギーは目をむいた。フィンも思いもよらない答えに驚いた。

 そしてー

 そして、アンブラの背には冷たいものが流れた。

 なんだ?

今、自分は何かまずい事を口にしたのだろうか?


「そうか。それなら是非うちの兄ちゃんを探しだしてくれ。」


 驚いた顔のままフィンはそのまま言葉を続けた。


「あの人はあんたと話したい事がたくさんあるっていってたから。」


 なぜか、アンブラにはフィンのその言葉が自分への死刑執行をつげる裁判官の言葉のように感じられた。




「なら、協力して答えてもらいたいな。もう一人はどこだ?なぜ消えているんだ?」


シーザーがフィンの前に立ち顔を近づけて聞く。

(顔、近いだろ)

 ねばりつく感覚を覚えて、わきあってくる不快な思いをごまかすようにフィンは投げやりに答える。


「さぁね、なんせ積み込まれた箱の中であっちこっちぶつけてたからわからないんだよ。」


 次にケイン老の方へと移動して


「だが見つからないというのはおかしい。我々も迷子がいては申し訳ないからね。教えてくれれば丁重な扱いができるのだが。」


 老人はなにも答えない。

 次にファーギーの元へと移動する


「もし、もしもだよ。彼をみつけたものがうっかりしてしまい…手を滑らせて、傷つけてしまうかもしれない。……もしくは、殺してしまう、なんてこともね。それは我々も望んではいないんだ。わかってほしいな。」


 ことさら粘着されて、ファーギーに怖気が走る。

 それを見て、ケイン老はフンと鼻を鳴らすと


「あまり熱心に欲しがると、あとでご主人様に折檻されるぞ、若いの。たしかに、若い女の肌は良いぞ。お前さんがいつも味わっているものと違って皺ひとつないだろうからな。」


 その意味することを理解して、カッとなったシーザーがケインの横っ面をはたく。

パシッ

 音が勢い良くなると、フィンが一歩前に出て「おい!」と声を上げる。

それを待ってましたと、後方に移動していた先ほどの部下がさらに一撃をその横腹にいれようとした。


 それは一瞬の出来事だった。

 抗議の声を上げたフィンはその一撃を予想していたのだ。

脇をしめ、肘の先でもってつきこまれようとした棒の穂先をいなすと巧みな体移動で一歩で互いの距離を潰し、反対の肘を相手の顔面の中央へ、鼻っぱしらに深く叩きこんだ。

 嫌な音と共に、フラフラと相手はよろめく。


シャッ!


 鋭い音と共に、シーザーとその用心棒達が抜き放った剣先がフィンの顔へ、首へと殺到する。


「よしなさい!」


 アンブラの鋭い声で、剣は直前で列をなして止まる。フィンはそれを見ても顔色一つ変えようとはしなかった。恐怖を感じないのだろうか?

 肘を入れられた相手は腰から力が抜けるように崩れ落ちると、そのまま動かなくなった。


「坊や、ちょっとお痛がすぎるんじゃない?おとなしくできないのかしら。」

「次はない、本気で言った。あんたが止めなかった時は、こいつらも僕が殺す。ただそれだけだ。」

「おお、いってやれいってやれ。皺くちゃの婆さんを崇めるネクラ野郎共は皆殺しだってなっ」


フィンに続いて煽るように叫ぶファーギーを見るアンブラの目が冷たさを増す。


「いいわ、聞く事も聞いた。あとはもう一人を見つけたら、でいいでしょう。牢に連れて行きなさい。」




 いやいやながら、大きな態度で部屋を連れられて出ていく3人を横目にアンブラはシーザーと話す。


「すまない、アンブラ。やはり思っていたよりもなめていたのかもしれない。」


謝罪を口にする男の言葉などに興味はないかのようにアンブラは言った。


「わかってるわね。必ず見つけなさい。あの罠からは逃げられるはずはないのだから。」

「わかってる。どうやったかは知らないが、絶対に見つけるよ。」


そう返事をすると、シーザーは


「あいつらはどうする?」

「さっそくおじい様には生贄になってもらいましょ。老いたとはいえ、ドラゴンスレイヤーと呼ばれたものの心臓はさぞかし生きがいいものでしょうから。」

「孫の方はどうする?」

「そうね、元気で好みだけど。残念だわ、おじい様の後をおってもらいましょう。まぁ、もう一人が見つかって話を聞いた後の事になるだろうけど。」


 それまではいつでも好きに出来るというわけか。アンブラの言葉をそう勘繰ってしまい、シーザーの目の奥に嫉妬の炎が燃え上がろうとしている。

 それを楽しそうに見つめるアンブラは反撃する。


「あの娘。きれいだったわね。」

「え?ああ、目をつけてたわけだからな。」

「あの娘の事、あなたならどうする?」

「どうするって、なにが聞きたいんだ。」

「どう扱うのか、あなたの本心を聞きたいのよ。」


 しまった、一転してシーザーは戦慄に震えた。

 さきほど、ファーギーに近づいた時の事を彼女は怒っているのかもしれない。つい事がうまく運んだことで注意を怠ってしまっていた。この恋人の持つ執念深さ、恐ろしさをシーザーは理解していた。

 若いだけの自分がまわりの取り巻きどもを押しのけ、片腕として扱ってもらっているのは彼女からの好意があればこそ、なのだから。


「別に、特には。他のと同じようにすればいいだろう?」

「あら、自分がほしいと言いだすと思ったのに。」

「そ、そんなわけないだろ。」

「そう、でもそんなに急がなくてもいいと思わない?」

「… …それでいいのか?」

「ええ、せっかくあんなに可愛らしい顔をしているんですもの。みんなで楽しみたいはずよね?」

「っ!?それは……」

「こわれてもいいじゃない?どうせ、魂はどっちにしろしっかりもらうわけだから。」


 フフフ、冷たい笑いがアンブラの顔に張り付いていた。

いやー、危なかった。

勢いに任せて書いてたら、危うく一人脱落しかけて慌てて書き直したのは内緒の話。


いつものように感想のその他、お待ちしております。

励みになりますので。

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