第5章 それからそれから
ということで5章開始となります。
ライバーの一家がガリランドの酒場で暴れてからはやくも4日が過ぎた。
当然だが、あの日の一家の悪行と言うか、狂乱はさっそくこの田舎町では知らない者はいないというくらいの話題になっている。しかし彼等が恐れていたゾンビとか、ハンターといった話しはその中には一切なかった。
そしてなんとも皮肉な話だが、あの後。おじいちゃんは旅の疲れと興奮から体調を崩してしまい。
そして僕もまた暴れまわったせいで体のあちこちが、傷が痛みだし。そのせいで熱が出て、顔をパンパンに腫らした状態でこちらも寝込んで動けなくなってしまった。
そんな中、1人元気に動き回っていたのがグリフだ。
驚いた事にあの万年引きこもりと陰口をたたかれていた兄はまるで人が変わったかのように翌日の朝早くからこっち、どこかは知らないがあちこちを飛び回っているらしい。
「あーーーーーーーあっ」
フィンはのびをするとそれにあわせて声もどこまでも引っ張られていく。このとき彼は数日ぶりに自室のベットから出て居間へとおりてきたところだっだ。
まだ朝だがすでに日は昇ってから大分時間が立っている。
あの衝撃の「学校卒業な」宣言からこっち、怪我で体調不良というのもたしかにあったけど、同時に一気に気が緩んでしまったのかもしれない。寝て暮らす生活が当たり前のような気になりそうだ。
顔をはらして動けないということもあって、学校にはしばらく登校しないと連絡がいっているらしい。あの男の”作戦”では、多分このままフェードアウトするように僕は平穏だったあの学校生活から(強制的に)卒業ということになりそうである。
居間について中を見回してみると、誰もいないようだ。皆して、でかけてしまったのだろうか。
実をいうと寝てばかりいたからお腹がすいて動けないなんてことはないが、ちょうど今はなにか腹に入れるものが欲しいと思っていたのだが。
どうやら、間の悪い時に起きてきてしまったらしい。
さて、どうしようかと困りつつ、後で嫌がられるけど台所に忍び込もうかと考えていると
「おおー、おきたかー」
と長椅子の影から気の抜けた、というか眠そうな女性の声がした。ファーギーだった。
年長者2人のオッケーが出て以来、この人は宿を引き払ってこの屋敷へと移ってきていた。
しかし、戦闘しかできないといった彼女が今出来ることなどあるわけもなく。結局のところ、日がな一日をこの居間でだらけている。
それは本日も変わらないらしく、その姿はとてもほめられたものではない。だらしなく着崩されているガウンから、申し訳程度に隠された下着が盛大にはみでていてみっともないことこの上ない。髪も出会ったときのように縛ってなくて、ストレートになっている。まぁ、これはちょっとだけ新鮮に見えだ。
(あんたも食っちゃ寝かっ!)
とりあえず心の中でそう突っ込んでみる。
といっても一応は、これでも寝込んでいるケイン老とフィンの護衛ということらしい。
「ようやく起きれたのか?」
「いや、どっちかというと顔のはれ、がね。」
「キキキッ、パンパンに膨れあがってたらしいな。」
「うちのメイド達、いないのか。出かけた?」
こうして気さくに話せるけれど、別にここ数日はこっちも寝込んでいたわけで。
それでもこんな風に自然と打ち解けて話せるというのは、やはり流れ者であるということが関係しているのだろうか。
「メス犬?両方、外いったぜー。昼までには戻るってさ」
ファーギーからの返事にフィンの顔が少し曇る。
これは先にきっちりと言っておかなくてはならないだろう。そう思い、椅子に座りかけていた腰を上げると
「あのさ、犬じゃない。サフ族なんだよ。彼女達は。」
そう言ってはっきりと抗議の意思をあらわした。
「あ?なんだよ。似たようなもんだろ?」
「違うね、人間と人狼を同じだというくらい違ってる。」
その言葉にピクンと反応すると、ファーギーは体を起こす。
「……いちいち細けぇんだよ、お前。」
顔も見ないで、不機嫌な声だけが返ってくる。まぁ、外の世界にいればその違いになど気にしないだろう。
だがうちの中ではそれは細かいこと、とは言わない。どっちかというと、中指を立てて口汚くののしるにひとしい行為なのだ。
そもそも、こっちも正直気分は良くない。さわやかに目覚めた早朝から、なんだこの長椅子に横たわるエロい体はっ。
こっちは病み上がりとはいえこれでも若い男なのだ。いつまでもその無防備に寝そべったエロい体をさらし続けてほしくないんだが。……もちろん、これは本心だ。
「彼女達はうちでは一番の古株だ。つきあいもながいし、よく助けてもらっている、家族みたいなものなんだよ。それを尊重してくれないと困るんだけどね」
「へっ」
鼻で笑われた。しかし、それくらいではこっちも諦めるわけにはいかない。これは大切な事なのだ。
「本人達は気にしないだろうさ。だけど僕は、それにグリフもそのあたりはうるさい。いつまでもそんな口をきくと……」
「聞くと何だよ?なにかがおこるのかい?」
フィンの口調になにを感じたのか、ねっ転がったまま顔だけ挑発するように見返してくる。どうも酒場の一件で僕は舐められているのかもしれない。しかし、なんだろう気のせいかな。なんか嬉しそうにも見えるが。
「ひどい事があると思うね、間違いない。」
「はっ、面白ぇじゃねぇか。ぜひともそのひどい目にあわせてもらおうか」
退屈代わりに見せて見ろ、と言わんばかりだ。
正直、グリフならここで平然と濡れ場とかやれちゃうのだろうが、純愛至上主義で童貞の僕にそんな器用でエロい真似は当然できない。しかし、他に手がないわけではなかった。
「いいの?」
「ああ、いいぜ」
「ドMなんだね、ファーギーって。」
その言葉にファーギーは「あぁ!?」と眉を再び吊り上げると、そのタイミングに合わせてフィンは庭に向かって声を上げた。
「マール、ヤン。セァット!」
すると庭から凄い勢いで2匹の番犬が駆けこんでくる。
2匹は主人であるフィンが長椅子に座るファーギーを指で指しているのを瞬時に確認すると、長椅子の上へと飛び乗りファーギーを押し倒すとその上へと殺到する。
「ちょ、おい。やめろっ」
2頭はその巨体をファーギーの上でクルッと回りながらじゃれ始める。
「くそっ、ふざけるなっ、この馬鹿犬共」
ガウンの隙間からのぞく肌や、股間の布地に頭を突っ込んだり、なめたりと犬達もやりたい放題である。
必死にそれに抵抗しようとしているが、かえってそれが犬達を喜ばせている。
(おお、いい気味だ。しかし……こう……なかなか刺激的なことになってるなァ)
さすが我が家の番犬達である。主人を喜ばすツボもばっちりだった。
自然と僕の口元もゆるんでしまうが、これはいってみれば副産物なのだ。ちょっとくらい楽しんでも問題はないはず。
すらりと伸びた美脚、そこから肉の程よい尻、みごとな腹筋から素晴らしいボリュームのある胸、(なぜか)可愛らしい整った顔。それらを鼻でクンクンされ、舌でぺろぺろされているのをこうして見ていると、なんだろう。この僕でも、ちょっとイケナイ気分になってしまいそうだ。
「こんのクソ犬がっ!」
とうとう頭に来たのだろう、ファーギーは組み伏せられたままの体制から真横に腕を突き出すと拳を握って犬へと振り上げようとした。
ガシッ
その腕が勢いをつける前にフィンはさっと腕を伸ばすと力強く掴んで止める。
これでも一応鍛えているのだ、いくら相手が荒事のプロとはいっても女性を相手にそうやすやすと力負けはしないつもりだ。
「おいっ、このガキ!ふざけるなっ。ふぐっ」
ファーギーの体の上でクルクルと入れ替わり立ち替わり楽しんでいる犬に顔を蹴られだして、その口も動かなくなる。
「マール、ヤン。ファッ」
怒りの声を上げるファーギーをそのまま無視して、フィンは犬達をさらに煽ってけしかける。すると今度は2匹は体ではなく、ファーギーの整った顔へと両方が殺到してきた。
「ウギャーーーーーーウッウゥウ」
悲鳴はすぐにくぐもったものへと変わり、フィンが止められていた腕はもう一度激しく抵抗するがフィンはしっかりと握ってそれを許さない。
結局、抵抗したのもわずかの間で、あとはピチャピチャと犬達がファーギーの顔をこれでもかとなめ続ける音だけが響いている。
(そろそろいいか)
抵抗も声もなくなってからしばらく、ようやくフィンは許してやろうという気になった。
「マール、ヤン。もういいぞ。庭に戻れ」
彼がそう言うと、「はいはい、用は終わりました。」とでもいうように、長椅子からさっと降りると2匹はまた庭へとそそくさと引き上げていった。
きっと、また日課の昼寝の続きでもするのだろう。
後には、2匹の護衛犬によって蹂躙された犬の舌でなめつくされたファーギーのひきつったひどい顔とさらに着崩れて脱げかけた下着姿があった。
こんなところにメイド達が帰ってきたら問題になるかもな、ちょっとだけフィンはそんなことを考えてしまった。
「信じられねぇ。」
彼女の絞り出す声にフィンは答えない。机の上に置いてあったカップに手を伸ばすと、茶など入れて悠然とすする。
「まったく信じられねぇ、このクソガキ」
相手のムスッとした顔は宙をにらみ、体も動かしてないが、雰囲気からふつふつと怒りがわいてきているのを感じる。すかさずフィンは意見した。
「犬呼ばわりはひどい目にあわす、警告はしたよ。それに、わざわざやってくれと自分で言ったよね。」
「だとしても、信じられねぇ」
「うるさいなぁ。それに言わせてもらうけど、いつまでそんな格好で寝てるんだよ。一応は護衛なんだからしっかりしてもらわないと。」
「うるせぇお前が黙ってろ、クソガキ」
そんなファーギーの吐き捨てるような返事に。はぁ、とひとつため息のようなものをつくとわざとらしく困った声と表情で
「しょうがないな。君の服と武器は僕が持ってきてあげるから、マールとヤンにもう一度脱がしてもらうかい?」
ギロリ、今度は凄い目で見られてしまったが涼しい顔で見返す事が出来た。
やった、僕余裕あるわ。
そんな僕を見て言い争いは不利だと思ったのだろうか?小声でクソ、クソと繰り返しながらようやく体を起こすとファーギーは自分の部屋へと戻っていく。
ようやく着替える気になってくれたようだ。メス犬発言も今後は控えてくれることだろう。
その後ろ姿を横目で見ながら
(しかしなんという美脚。っていうか、こうしてみると胸もあるな。っつうか色々と砕けすぎだろう。まだ数日なのになんてそんなに自由な格好でいるんだよ。)
などと、匂い立つ色香にいまさら少年は惑ってみたり、困ってみたりしていた。
そんな彼女の後姿が見えなくなると、再び茶を楽しみながら、彼女について思いだしたことがあった。
フィンは部屋で寝ていた時に見舞いに来た兄との会話だ。
「よし、それじゃしっかり治せよ。」
見舞いにきていたグリフが席を立つのを見て思わず声をかける。
「えっ、今からまた出かけるの?」
「ああ、じいちゃんには先手を取られたからな。ここから先はこっちが動かないと。」
またひどいめにあいそうだ、とははっきり言わなかったがそういうことなのだろう。
それならとフィンは、気になっていた事について今のうちに聞いておくことにした。
「あのさ、行く前に聞いておきたい事があるんだけど。」
「これでも急ぐんだが。なんだ、すぐ答えられるやつか?」
「答えてもらわないと困る………簡単な事だよ、ファーギーのことさ。」
「どうした、欲情したので筆○ろしでも頼みたいのか?そんなこと俺の…」
「違うよ、真面目な話さ。」
アホ話に付き合わないことで、こっちが真剣だとわかってくれたらしい。口を閉じると、こっちをじっと見つめてきた。
「あの時さ…彼女を入れるってグリフがいった時。なんでそう思ったのかって。」
「不思議な事か?理由は言ったと思うが。」
「人が足らない、確かに聞いたよ。でもそれだけじゃ納得できないんだ。」
それを聞くと、にやりとしながらグリフは
「じゃ、あれだ。あの女のたまらないエロさを見て決めた。お前もあの時そう思ったろ、寂しい夜のお供にってな。それでいいんじゃないか?」
「まぁね、わかるよ。それで強引に納得しようとしたけど無理だったからこうして聞いているんだけどね。」
そうか、と短く返事をすると、しばし黙って何事かを考えているようだった。フィンはそれを寝たままじっと見上げている。
「そうだな……。」
どうやらなにがしか納得させてもらえる返事がもらえるようだ。
「確証は、と聞かれたら俺もはっきりとは言い切れないものがある。なにせここは田舎町だ、良い人材を求めるのは難しい。そう考えればじいちゃんがやったことは、無駄にも近いただのトラブルだった。」
そうなのだ、僕も同感だった。だからこそあの日、ファーギーを連れて帰るなんてことにはならなかったし。あれはおじいちゃんがただ僕らに迷惑をかけただけの話で終わったはずだ。
ならばなぜ受け入れた?おじいちゃんの面目を潰さないため?流れ者の女の色香にいまさらながらひかれた兄のきまぐれ?どれも違う気がした。
そこでいったん切ると、グリフはフィンの目を見返しながら
「だが終わった時、あれは無駄じゃなかったのさ。どこまで役に立つか、信じれるかはまだ分からない。しかし、あの時の彼女はお前を助けようと考えた。そして俺達に興味を持ってあとをつけようと考えた。これはもしかしたら彼女と俺達には強い縁があるんじゃないかと思ったのさ。」
思った以上にひどい理由だった。それが口に出てしまう。
「なにそれ、そんなアヤシイ理由で決めちゃったの?」
「悪いかな?」
「よくないね、知ってる?彼女、ここに来てから毎日居間で飲んで、食って、寝てを繰り返してるって。」
「そうらしいな。」
「なのにクビにするとは言わないんだね、他に何を隠しているの。さっさと言えよ。」
強い口調でそう責めると、兄はめずらしく苦笑して
「そうか。それなら言うけど、理由は簡単さ。じいちゃんもなにもいっていないのはなぜか?ってことだ。」
「それが答えなの?」
よくわからない。
「これが答えさ。じいちゃんは何も言わない。俺も特に言わない。それだけの価値はあると認めているのさ。理由はそれだけ。そうだな、まだこれでも納得できないなら彼女の秘密を考えるんだな。女の過去を知れば、こうして他人に答えは聞くまでもなかったってこともある。」
「なにそれ?」
結局、それだけ言うとグリフは部屋を出ていってしまった。
(彼女の秘密、ねぇ)
こうして話してみて、近くで見てもよくわからない。見落としているのだろうか?それとも無粋にも直球で答えを探ってみるか?なんだかどちらも自分の分を越えていることにしか思えなくなってきていた。
しばらくすると、初めて会った時のように鎧姿で腰に2本の斧をたらした”正装”のファーギーが戻ってきた。
(しっかし、こうして見るとさっきとそんなに変わらん姿だな。)
皮鎧から剥き出しになっているまぶしい肌、鎖骨と2本の美脚と細い腕なんかを見て思った。
「なぁ、それじゃいいか?」
「なに?」
席に着くと、彼女はすぐに話しかけてきた。てっきり先ほどの事でへそを曲げて、無視してくるかと思ったのだがそれほど怒ってはいないのかな。
「聞かせてほしいんだけど、ギルドってどうやってやるんだよ?」
「え?今聞くの。」
「だってよ。ここに来たらお前と爺さんは寝込んじまうし。デブは外に出たっきり帰ってこねぇ。」
そこで言葉を切るファーギーにフィンは(さすがにメイドには聞こうとしなかったか)などとひどいことを考えていた。
「僕とじいちゃんは予想外だったけど、今のところは待機かなぁ。」
「いつまでだよ」
「もうちょっと」
「………おい、本当にやる気あるのか?」
どうも、単純にこの女性はなにか理由をつけて暴れたくて仕方ないらしい。まぁ、本人も言ってたが体を動かしてないとイライラする人なのかもしれない。
「ひどいね。ちゃんと動いているよ。といっても、今はグリフだけだけど。」
「あいつ、どうせ色町で女と遊んでるだけじゃねぇーのか?」
どうやら歪んだ貴族像から、グリフのことを勘違いしているようだ。
ここ数年の生活態度を見てればそんな風には考えられないのだが。
「グリフから聞いてないの?」
「ない。留守の間、護衛を頼む。としか言わないでとっとと出かけやがった。」
あー、これはどうやら面倒な説明役は僕がやれということらしい。
「一応、グリフから話は聞いてるよ。少しだけど話せる。」
ファーギーが不満そうな眼をこちらに向ける。信用されてないのか、と言っているようだ。まぁ、どっちかというとグリフにしてみたら脳筋女にいちいち説明するのは面倒。弟にやらせよう、ということなのだろう。
弟というのはことほど大変なものなのだ。兄が突然にして投げつけてくる面倒をこうやって華麗にフォローをいれつつ処理できないといけないし、やっていけないのだから。
「別に信用してないわけじゃないんだよ。話してもどうせやれることはない。そういうことなんだ。」
「あたしは傷ついたけどな」
「それについては悪いとは思うけど、グリフが言わなかった事はそれほど間違ってないと思うよ。だってファーギー、待つとか苦手そうだし。」
「……それで?話してくれないのか?」
納得はしてないぞ、といった風だったが続きをうながしてきた。
「今は魔術師ギルドからの返事を待っている。グリフが走り回っているのは、ダラダラと時間を延ばされなよう色々やっているからだと思うけど。」
「でも、まだ返事来てないんだろ?」
「まだね。ま、あんまりグズグズと返事をのばそうとしてきた時は次の手を打つよ。」
「次?」
「返事が来なかった時はね。」
さすがにこれは言葉を濁した。というか、安易にこればかりは言えない。
グリフの話からすると「子分に話してもらちが明かないなら、親分さんのところにいくしかないね」だった。つまり魔術師ギルドではなく教会へ、それも偉い人達に直接という……うぅ、これ以上は胃が痛くなるかも。
正直これを聞かされたせいで僕の熱は悪化してしまい、1日なおるのが遅れたと思っている。。
「その後は?」
「本当は色々あるんだろうけど、ざっくりと大きく2つの目的のために動くと言っていた。ひとつは実績づくり。ギルドの情報を借りて、事件を見つけたらそこに無理やり介入するんだって。」
「まぁ、そうだよな。力を見せなきゃしょうがない、か。でも事件がなかったら?」
「この広い国の中で、まったく事件がないなんてこと。あると思うかい?」
「ああ、それはそうかもな。」
ふんふん、と納得して頷くファーギーを見て安心する。
ちなみにグリフはもっと物騒な事を言っていたのは内緒だ。「事件がなかったら?」と聞く寝込んでいる弟にあの悪魔は「ないなら作るまでだ」とか言い放ったのだから。なので、このことは弟なりに気を使ったアレンジというかオブラートで隠させてもらった。
自作自演で事件を解決とか洒落になってないよねー。
「もうひとつは仲間集め。まずは死霊術師かな。」
「あー、魔法使いか。」
「ああ、まぁ。そうだね。」
「?」
「あのさ、ファーギーって魔法とか詳しくないの?」
「え?ああ、そうだな。あたしも使えないし。せいぜいぶっ殺す時にどうするのか、くらいかな。」
また不穏な言葉が出てきたな。
「そうか、そうだよね………まぁ、簡単に言うといろいろと大っぴらにはできないようなヤバイ感じの魔法使いを必要としているってこと。」
「そんなの見つかるのか?」
「まぁ、いないというわけじゃないからね。」
「どうやって仲間にするんだよ」
あー、これはどう答えよう。
あの悪魔の言葉を弟的な思考、つまり弟脳では優しい表現をするのが難しかった。
しょうがない、ここは本人の言葉で語るか。フィンはコホンと咳払いを入れると、胸を張り腹を出来るだけ突き出し。息を吸うグリフの声を真似して、本人が自分に行った言葉をそのままファーギーにも伝えた。
「仲間?違うな、飼ってやるのだ。」
「なんだって?」
「飼う、いうことをきかせる、奴隷にする。好きに呼ぶがいい。だが、結局は死ぬまで俺の下で生きていくという事実だけは変わらないっ」
「あのデブか。うわっ、ひでー」
「まぁ、先の話だから。まだどうなるかわからないよ。」
そういうと肩をすくめて見せた。
もっと知りたい事があるんじゃないかと思っていたが、どうやらファーギーはこちらに考えがあると聞いて安心したらしい。それ以上話しを突っ込んで聞いてくることはなかった。
まぁ、僕の知っていることだってこれ以上はあまりなかったけれども。
数時間後、メイドのエリー達が帰宅すると、彼女達は一通の手紙をフィンにさし出した。
なんでも帰宅した時、家の前に誰かが届けに来ていたらしい。手紙を渡すとすぐにたちさってしまったという。
それは魔術師ギルドからきたグリフへの返書であるようだった。
表現としてギリギリオッケーと思いますが、ちょっと不安を覚えたりもしてます。
あと、感想など頂くと励みになります。よろしくお願いします。




