↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/104

第66話 騒がしい広間

【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―

綿花(めんか)がお城へ戻ると、廊下には春風(はるかぜ)と杏歌(きょうか)の姿があった。


綿花に気づいた春風が声をかける。


「おっ、綿花。文書は無事に公儀飛脚(こうぎひきゃく)へ届けられたか?」


「はい。廊下で雲祈(うんき)さんに出会い、飛脚さんの屯所まで案内してくださいました」


綿花の話を聞き終え、春風はやれやれと頭をかきながら、軽くため息をついた。


「そうか、よかった。それにしても、あいつは私に戻った報告もせず、綿花を案内したのか」


春風の苦笑いを微笑ましく見つめながら、杏歌はくすりと笑った。


「ふふっ。雲祈らしいわね。それに綿花は、座学のときに屯所へ行ったことがなかったのよね。ごめんなさいね、不安だったでしょう?」


「いいえ。私のときは時雨(しぐれ)さんに教わったのですが、忙しくて結局行けなかったんです。だから、雲祈さんに案内していただけて、とても助かりました」


「ふふっ。それならよかったわ」


三人で微笑み合ったあと、綿花が小さく微笑んで口を開いた。


「文書作成も無事に終わったので、諭作(ゆさく)さんからいただいた山茶花団子(さざんかだんご)を皆さんにお分けしますね」


「そうだったな。ちょうど小腹も空いた頃だ。綿花、私も手伝うよ」


「いいわね。なら私は、みんなを広間に案内するわ。哀伝(あいでん)はもう商談を終えたのかしら?」


こうして三人は、それぞれの役目を果たすべく動き出した。


*


広間に集まった皆のもとへ、綿花がそっと山茶花団子の箱を運んでくる。


箱を開けると、中には色とりどりの山茶花を模した、美しく愛らしい団子が整然と並んでいた。


その愛らしい姿に、皆の顔に自然と笑みがこぼれる。


「……わぁ〜」

「……綺麗だね」


綿花と春風は一つひとつ竹皮に包みながら、丁寧に団子を手渡していく。


団子が一つ、また一つと皆の口へ運ばれ、笑顔が広がり、感謝の声が広間にあふれ、柔らかな温かさが場を包み込んだ。


そこへ、雲祈の元気いっぱいの声が加わった。


「あぁ〜、なんて美しい山茶花団子でしょう。それを、お美しい杏歌様と一緒にいただけるなんて……私はなんて幸せ者でしょう〜!」


「……ったく、お前は本当に、任務を終えたとは思えないほど元気だな」


「ほっほっ。春風、本当じゃの。雲祈の元気のよさは計り知れぬな」


茶々蔵(ちゃちゃぞう)はにこやかに笑い、雲祈のはしゃぎぶりを見守る。


「まぁ、杏歌のこととなると……と言ったところかしら? 杏歌、あなたすごい部下を持ったものね」


「……えぇ、そうね。まぁ、雲祈が元気になるのなら、それはそれでよかったわ」


杏歌は優しく微笑み、広間の様子を静かに見守った。


諭作への感謝の声が広がる中、大納(だいな)が小さく、ぽつりと呟いた。


「今日は雲祈に先を越されてしまったな、蒼月(そうげつ)」


「そうだね、大納。先輩として、先手を取られてしまったね」


悔しそうな二人をよそに、雲祈は胸を張り、得意げに手を腰に添える。


「はっはっはっ。本日、綿花さんと任務をご一緒しましたし、公儀飛脚さんの屯所へも伺いました!」


「ふふっ。雲祈さん、今日は本当にありがとうございました。心強かったです」


「いえ!先輩として当然のことをしたまでです!」


「……くぅ〜、私も雲祈の今の言葉を綿花さんに言いたかった」


「……私もだよ、大納。悔しいけど、私たちはこれからだよね」


そのやり取りを見守る先輩たちは、三人の成長を頼もしく感じ、自然と微笑んだ。


「それにしても、山茶花団子は本当に美味しいわね」


「本当ですね、杏歌様!このまろやかな甘さ、私はもう、とろけてしまいそうです〜」


その雲祈の言葉に続いて、広間のあちこちから「美味しい!」という声が上がる。


皆、笑顔を浮かべながら山茶花団子を頬張り、思わず頬がほころぶような幸せな雰囲気が広がった。


そんな和やかな空気の中、春風がふと思い出すように口を開いた。


「そういえば杏歌。哀伝は、まだ商談が終わりそうになかったのか?」


「えぇ、もうすぐ終わりそうな様子ではあったんだけどね」


そのとき、広間の襖(ふすま)が静かに開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。