↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/104

第65話 公儀飛脚・虎鉄さん

【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―

雲祈(うんき)に手を引かれ、綿花(めんか)は軽く小走りでついていく。


やがて目の前に現れたのは、城内でもひときわ活気のある公儀飛脚(こうぎひきゃく)たちが出入りする屯所だった。


「さぁ、綿花さん!こちらですよ!」


雲祈の明るい声に背中を押され、綿花は一歩ずつ屯所の中へ足を踏み入れた。


「あっ、虎鉄(こてつ)さん!文書をお預けに参りました!」


雲祈の声に促され、綿花は少し緊張した面持ちで一歩前に出る。


「……こちらです」


そう言って文書を差し出した。


「おお、雲祈だべさ。それと可愛らしいお嬢ちゃんか。文書だな。よし、今確認するから、ちょっと待っててけろ」


虎鉄は堂々とした体格でにこりと微笑み、封の裏に押された印を丁寧に確認する。


「お、蔵の印も二か所ついてるし、間違いねぇべ。宛先は朽葉ノ国(くちばのくに)だな。おらに任せてけろ」


綿花はほっと息をついた。


どうやら、思っていた以上に肩に力が入っていたようだ。


その様子を見て、雲祈もにこにこと笑って肩を揺らした。


「虎鉄さん、こちらは交易使者の綿花さんです。私の後輩でございます。今後ともよろしくお願いしますね!」


虎鉄はにこりと微笑む。


「あなたが綿花さんだべさ。おらは虎鉄だ。おら以外にもあと三人いるだべさ。こちらこそよろしくけろ」


綿花は少し照れながらも、虎鉄の穏やかで親しみやすい態度に安心感を覚えた。


「綿花さん、公儀飛脚の皆さんはとても話しやすく、面白い方々ばかりなのですよ。また私がご案内しますから、ご紹介させてくださいね」


「ふふっ。はい、ありがとうございます」


「じゃあ、おらは松風(しょうふう)さんのところへ公儀札(こうぎふだ)を貰いに行くだ」


「では、綿花さん。私たちも蔵の方を通って帰りましょう」


「ふふっ。そうですね」


こうして三人は雑談を交えながら、蔵へと向かった。


蔵へ向かう途中、前方で荷物を抱えてよろよろと歩く諭作(ゆさく)の姿が見えた。


「あれ……諭作さん?」と雲祈が声を上げる。


諭作は荷物を抱えながら腰をさすり、苦笑いを浮かべた。


「これは皆様方お揃いで。栄善(えいぜん)様からご依頼のございました色奉書(いろぼうしょ)をお届けに参りました。……あたたたたっ」


「諭作さん!本日お店へ伺ったときも腰が痛いとおっしゃられていましたが、大丈夫ですか?」


「ほほほっ。なぜか今日は一段と痛みましてな。ご心配をおかけして申し訳ないですな」


「諭作さん、大丈夫だべ?無理しねぇでけろ」


「ほほほっ、虎鉄さん。お気遣いありがとうございます」


諭作はそう言いながら、また腰をさすった。


その様子を見ると、雲祈はすぐに歩み寄る。


「諭作さん、色奉書は松風さんのもとへお届けなのですよね?それでしたら、私がお持ちしますよ!」


そう言うと雲祈は、諭作の抱えていた荷物をそっと受け取った。


「これは、これは雲祈様。ありがとうございます。助かります」


「いいのですよ、これくらい。困ったことがございましたら、この私にお任せください!」


雲祈は綿花の方を振り返り、にこりと笑った。


「私はこのまま松風さんのところへ参りますので、綿花さんは先に戻っていてください。遅くなってしまっては皆様が心配されるかもしれませんから!」


綿花は小さく頷いた。


「分かりました。では先に戻って、諭作さんからいただいた山茶花団子(さざんかだんご)を皆さんで分けながら待っていますね」


「はい、ありがとうございます!」


綿花は諭作の方へ向き直り、軽く頷いた。


「諭作さん、お大事になさってください」


「ほほほっ。ありがとうございます、綿花様」


「虎鉄さんもありがとうございました」


「綿花さん、こちらこそ。これからもよろしくだべさ」


こうして、綿花は雲祈たちと別れ、静かな城内の通路を歩きながらお城へと戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。