第53話 夜更けの会議―収束―
【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―
一呼吸おいて、栄善が穏やかに言葉を紡いだ。
「皆、長時間の会議、誠にご苦労であった。忙しい中、こうして話し合えたことを心より感謝する。最後に、何か連絡事項のある者はおらぬか?」
ふと顔を上げ、茶々蔵が口を開く。
「おっ、そうじゃ栄善。松風に頼まれておったのじゃが、色奉書が少ないらしいのじゃ。しかし、わしが会議で立て込んでおって行けそうにないのじゃ。すまんが栄善、諭作のところへ赴き、購入してきてくれんかの?」
「そうであったな。すまぬな茶々蔵。任せきりになっておって。文書も出さねばならぬし、今度の儀式で使用する来客用の贈答にも必要であるからな。私が諭作のところへ赴き購入してこよう。……ただ、私もいつ参ればよいか」
栄善は顎に手を当て、少し考え込んでいる。
栄善も予定が立て込む中で、いつ行こうか迷っているみたいね……
そんな様子を見て、哀伝がにひっと笑みを浮かべ、何か思いついたように口を開いた。
「ねぇ、栄善。明後日、トワを誘って行けばいいんじゃない?」
「……トワを……」
「そうだよ〜!明後日は僕も午前中で外回りは済ませるし、茶々蔵もいるんだしさ。たまには栄善も、気分転換に出掛けるのもいいんじゃない?」
その哀伝の提案に、団丸と七左衛門もすぐに反応した。
「おう哀伝、それいいな!トワ、明後日休みだって言ってたからな!」
「あぁ栄善、そうしろよ!それにこの間のお礼がしたいって栄善言ってただろ?トワと二人で出掛けてこいよ」
ふふっ、いい流れね。
それなら──最後の背中を押すのは私の役目かしら。
「栄善、私もみんなに賛成よ。明後日は午後からみんなもここにいるし、私たちに任せてゆっくりしてきなさいよ」
私たちの言葉に、周りのみんなも笑みを浮かべながら頷いた。
「栄善〜、俺たちに任せとけぇ〜」
「お前も、たまには休まないとな」
「ここは私たちに任せるのよ、栄善」
「栄善様、この私にお任せください!」
「雲祈、“私”ではなく、私たちだろ!」
「ははっ、雲祈は相変わらずだね、大納」
「栄善、わしらがおる。ゆっくりとな」
「栄善様、私も文書、頑張ります」
頼もしい声が次々と上がり、栄善も思わず嬉しそうに呟いた。
「……皆、心より感謝する。色奉書は朝早く諭作のところへ赴き、手配してくる。明後日、城を開けるが、よろしく頼む」
そう言って、栄善は深々と頭を下げた。
ふふっ。
お殿様になっても、こうした人を思う優しさは変わらないわね。
周りのみんなも、安心したように微笑みを交わしている。
夜の灯りが穏やかに室内を照らし、長かった会議の緊張が少しずつ解けていく。
トワちゃんと素敵な一日を過ごしてほしいわね……
なんて、思わず心の中で呟く。
こうして夜更けの会議は、静かに、そして温かな空気とともに幕を閉じた。
長い一日が終わり、みんなの胸にはほのかな満足感が残っていた。




