第52話 夜更けの会議―採用―
【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―
雲祈は小さく息を整え、声に弾みをつけて話し始める。
「はい!私が考えているのは、文書を包む色奉書に糊付けをすることです。
もちろん、正式な文書だと分かるように折り方などは従来通りで、そのまま糊付けします。
そうすれば、開封済みかどうかが確認でき、信頼性を確保できるのではないかと考えます!」
雲祈の言葉に、みんなは大きく頷いた。
感嘆と賞賛の声が次々に上がる。
「雲祈、おめぇ〜やるじゃねぇ〜か」
「あぁ、お前の発想には感心させられるな」
「そうね、春風。私も常々そう思っていたわ」
「杏歌、さすがあなたの部下ね」
「本当だね〜。僕もいい案だと思うな〜」
「雲祈はおいらたちの弟分だからな!」
「そうだな、団丸。雲祈、誇らしいぜ」
「蒼月、私たちも雲祈に続こうな!」
「うん、そうだね、大納!すごいよ、雲祈」
「雲祈はいつもふざけておるが、すごいのぉ」
「ふふっ、そうですね、茶々蔵さん」
みんなからの賞賛を浴び、雲祈は両手で頬を押さえながら、嬉しさを隠しきれない様子で、左右に顔を振っている。
……しかし、その様子がどこかおかしい。
「あぁ〜、皆さん!今の杏歌様のお言葉、お聞きしましたか!?常々、私のことを感心してくださっていたなんて〜。なんて幸せなことでしょう〜」
そんな雲祈のいつもの調子に、みんなは「さっきまでの凛々しいお前はどこに行ったんだ」と笑い合っている。
……ったく、雲祈ったら。
相変わらずだけれど、あんなに喜ぶ姿を見ると、つい笑みがこぼれてしまうわね。
ふふっ、やっぱり可愛い後輩だわ。
栄善も思わず肩の力を抜き、雲祈の嬉しそうな姿を穏やかに見つめながら口を開いた。
「皆も同意のようだな。では、雲祈の案を採用する」
「あぁ〜栄善様、ありがとうございます!」
栄善は落ち着いたまま視線を巡らせ、言葉を静かに紡ぐ。
「早速明後日、綿花が書く文書から実行したい。それに伴い、雲祈、すまないが、麻袋の調達の後、諭作のもとへ行き、糊の購入もお願いしたい。文書に間に合うよう、午前中に頼めるであろうか?」
雲祈は背筋をすっと伸ばした。
「もちろんですとも、栄善様!午前中に町へ赴き、午後の文書に間に合うよう手配いたします!」
その返事に、栄善は小さく頷いた。
「あぁ、よろしく頼む」
みんなが雲祈の様子をそっと見守る中、哀伝が柔らかな声で続ける。
「あっ、栄善〜。僕もだん吉のところへは午前中に行くようにするね。だん吉も早めに方針を伝えないと困るだろうしさ」
「あぁ、そうしてもらえると助かる。哀伝、よろしく頼む」
「任せといてよ〜」
交わされるのは、ほんの短い言葉。
けれど、そこには長い時間の中で育まれた信頼が、さりげなく息づいていた。




