第51話 夜更けの会議―提案―
【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―
ざわめきが静まり、室内に落ち着きが戻ると、話題は自然と最後の議題へと移っていった。
「皆、受け入れてくれたこと、心より感謝する。そして、これより最後の議題に入る」
栄善の言葉に応えるように、一人一人の表情が柔らかくほころび、静かな期待が夜の灯りに満ちていく。
「先ほど杏歌が案を出してくれた件について触れたが、ここで皆にも意見があればぜひ示してほしい」
その言葉に、みんなが理解を示すように口角を上げ、静かに微笑んでいる。
「より良い未来を築くには、さまざまな視点が必要だ。杏歌の案が私にはなかった発想を示してくれたように、皆の意見も貴重だ。小さなことでも構わない。考えがあれば遠慮なく教えてほしい」
その言葉に、誰からともなく頷きが起こる。
一人が言葉を紡ぐと、他の者たちもそれに続き、考えを重ねていった。
こうしてみんなで意見を述べ合い、室内には静かな満足感が広がった。
一人一人の顔に柔らかな笑みが浮かび、私たちはまた一段と絆を深めた──そう、胸の奥でそっと感じた。
栄善はゆっくりと視線を巡らせ、みんなの様子を確認する。
「皆、多くの意見、大変ありがたく思う。やはりこのような場を設けることは必要であると、改めて感じた。さて、これで意見は出揃ったであろうか?最後にまだ意見のある者はおらぬか?」
「はい!栄善様!」
元気な声が弾け、空気が一瞬ぱっと明るくなる。
「ふっ、元気であるな雲祈は」
栄善は微かに微笑み、雲祈に視線を向けながら促した。
「文書についてですが、今、私たちが他国へ出している文書は、書いた文書を色奉書に包んでいるだけかと思います」
その声に、みんなが自然と耳を傾ける。
頷きながら、興味深そうに見つめている。
「しかし、それでは大切な文書の中身を見られてしまう可能性もあるのではないでしょうか?」
栄善は手を顎に添え、考え込むようにゆっくり頷いた。
「……確かに。そう言われてみれば、そうだな」
「わしも、そこまでは考えが及ばなかったな」
茶々蔵も感心した様子で、ぽつりと口を開いた。
……雲祈ったら、本当に仕事のことになると鋭い感性を持っているわね。
けれど、新しい風の大切さを、このとき改めて私は実感した。
長年ここにいる者たちなら、今までのやり方が当たり前で、こうした疑問すら浮かばなかったかもしれない。
長年のしきたりや決まりというものは、時に厄介者なのかもしれない。
みんなの視線が雲祈に集まる中、彼は少し胸を張り言葉を続けた。
「もちろん、公儀飛脚さんや門番の方々を疑っているわけでは決してございません!皆様方を私は心より尊敬しております。
ですが、文書がすぐに開封できる状態で送られていることは、同時に改ざんの可能性もあるということです。
作成された文書には、正式な文書である証の印がきちんと押されているため、外部から見ただけでは偽文書かどうかを判断することは極めて困難だと思います」
栄善は雲祈の意見に深く頷き、静かに言葉を紡いだ。
「極めて秀逸な意見だ、雲祈。国を揺るがしかねない文書について、我々はそこまで考えきれていなかった。これは国を守る大きな防衛策にもつながる。心より感謝する」
雲祈は嬉しそうに微笑んだ。
その微笑みを目にして、みんなの口元も自然とほころぶ。
栄善に続き、茶々蔵が口を開く。
「ところで雲祈。開封できないようにするためには、どのような案を考えておるのかの?」
茶々蔵のその問いかけに、再び場の視線が雲祈へと集まる。
みんなの顔には、興味と期待の色が浮かんでいた。




