第5話 やんちゃ坊主―素敵な縁―
【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―
なんとか誤魔化した私の苦労なんてお構いなしに、二人が帰ってきた。
……しかも、三人の男の子たちを引き連れて。
そのときに出会ったのが、団丸と七左衛門、そして雲祈だった。
「ちょっと、哀伝!あんた、いい加減にしなさいよ〜!私がどれだけ苦労して誤魔化したと思ってんの!」
「えっ、なんで?いいじゃん。それより見てよ、友達もできたんだ〜」
ぷんすか怒っている私をよそに、哀伝はあっけらかんと、にこにこ笑っている。
このときの私の怒りっぷりを見て、雲祈は私に憧れたんだって。
怒ってるところに憧れるなんて、やっぱり雲祈って、ちょっと……いや、かなりぶっ飛んでるわよね。
『あぁ〜、杏歌様。私は将来、あなたに仕えたいです。あなたの部下になりたいです』
初めて出会ったときから、こんなことを言っていて。
そして、この頃から哀伝と雲祈の言い合いは始まったのよね。
結局、哀伝と栄善が町へこっそり抜け出したことは見つかり、こっぴどく叱られた。
……栄善を誘った哀伝。
そして、なぜか──私が。
意味わかんないんだけどー!!
「お前は賢いし、しっかりしてるから、茶々蔵も念を押したんだろうな」
「春風……そうかもしれないけどさー」
「こっそり町へ抜け出すなんて、やるじゃねぇ〜か〜。哀伝と栄善よぉ〜。げぷっ……ひっく」
「何を言っているの!いいわけないでしょ!杏歌、次はちゃんと見張っているのよ!」
……え〜。
時雨は適当だし、柚寧は厳しいし、なんなのよ、本当。
それからも、哀伝と栄善は懲りもせず、こっそり町へ抜け出しては、団丸と七左衛門、雲祈を連れてお城へ戻ってきていた。そして、みんなでよく遊んでいた。
私も三人とは自然と仲良くなったわ。
栄善は将来の殿になる身だったけれど、まだ学びの途中で、お城の仕事や作法に慣れる最中だった。
そんな頃、栄善は三人をお城に迎え入れたいと、茶々蔵に頼んでいた。
身分の垣根を越える──その考え自体が、幼いながらも彼の芯の強さを示していた。
しかし、これは通常ではありえないことだった。
──けれど当時、お城では人員を増やす必要があり、訓練・警護・戦術の各方面で新たな見習いを求めていた。
その事情もあり、団丸の異常な体力と、七左衛門の戦術に長けたずば抜けた判断力が認められ、茶々蔵や当時の重役たちとの協議の結果、将来有望とされ、私たちと同じ見習いとしてお城に加わることになった。
入城後、団丸はそのゴリラ並みの元気さを活かして訓練隊長として鍛えられ、七左衛門は冷静かつ広い視野を活かして戦術担当として鍛えられていった。
雲祈は、農家を弟たちに引き継ぐ必要があったため、そのときの入城は見送られた。
だけど今回、幼い頃の私たちが交わした
『いつか一緒に仕事ができたらいいね』という約束が、ついに現実になった。
雲祈は、私の部下としてお城に加わった。
人柄や才能を重視する道を彼らが切り開いてくれたおかげで、今回の新人選びは実現した。
茶々蔵は、哀伝が『英雄になれる』なんて言って栄善を町へ誘ったことを受けて、『お前が栄善を悪の道へ誘ったー!』と嘆いていた。
そのときのことを、今でもずっと言われ続けている。
茶々蔵は、この出来事をきっかけに腰を痛め始めた。
まぁ、無理もないわね……
だって、やんちゃ坊主が四人になったんだから。
たまに私も巻き込まれるんだけど……
茶々蔵はやんちゃ坊主たちに手を焼きつつも、元気にはしゃぎまくる彼らを、いつも微笑ましく見ていた。
その姿を見るたび、きっと元気に動くことのできなかった蛍火のことを思い出しているのかな……って、私は思ってる。
もちろん今は、子供が通り抜けられるような穴はない。
そもそも、穴があったこと自体が問題よね。
だけど、それで団丸や七左衛門、雲祈に出会えたんだから、人との縁って本当に何があるか分からないわ。
この素敵な縁は、ちゃんと大切にしていかないとね。
***
「やっぱり栄善を悪の道へ誘ったのは、哀伝、お前ではないか」
「茶々蔵……そこは悪の道じゃなくて、英雄の道だって言ってくれない?」
「しかし、栄善もよく英雄の道だなんて言われて、付いて行ったな」
「ふっ……春風の言うとおりだな。でも、哀伝に誘われたとき、私にはとても輝いて見えたのだ。こっそりと抜け出すことで、本当に英雄になれる気がしたんだ」
「俺ぁ〜、おめぇらなら、やる男だと見込んでたぜ〜ぇ〜」
「酔っ払いは黙っていてもらえるかしら?」
「あぁ〜、やはりあのとき、私が杏歌様に出会えたのは運命! そして、再び運命が動き出し、こうして巡り会えた。杏歌様ーー!!」
今にも私に抱きつこうとする雲祈を、哀伝が片手で軽々と阻止した。
「ぐぇっ!!」
「僕の杏歌なんだから、引っ付かないでって言ってるでしょ、雲祈」
「こりゃ、やめんか二人とも。さぁ、仕事を始めるぞ」
今日もこの子たちに振り回されながら、賑やかに一日が始まる──そんな予感がした。




