第4話 やんちゃ坊主―英雄への道―
【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―
私たちが栄善と打ち解け、仲良くなった頃──事件は起こった。
そう、この男……哀伝によって。
***
昼下がり──穏やかな城内。
「栄善〜!ねぇねぇ、来て来て!」
「ん?どうしたんだ、哀伝」
いたずら猫のように手招きして、栄善を誘う哀伝。
「ここ、見て見て!」
指差す先には、子供が通り抜けられそうな小さな穴があった。
「ここから抜けて町へ出られるんだよ!行ってみようよ、栄善!」
「しかし……勝手に行けば、茶々蔵たちに叱られてしまうのではないか?」
「栄善、知らないの〜?」
哀伝はくるりと振り向くと、目を輝かせてにっこり笑った。
「お城での教えではね、こっそり町へ抜け出した人は、英雄になれるって言われてるんだよ!」
「……英雄」
「そう〜!それに、僕たちは男として、それができてこそ、真の英雄になれるんだよ!」
「……真の、英雄……」
栄善の手を引き、穴へ向かおうとする哀伝。
「こら〜!あんたたち!そんなところで何してんのよ!」
私は、哀伝が良からぬことを吹き込んでいるんじゃないかと心配になり、駆けつけた。
「やっほ〜杏歌。一緒に来る?今から町へ抜け出すんだ〜」
「はぁー!?あんた、ばっかじゃないの!そんなことして叱られても知らないんだからね!栄善、哀伝の言うことなんて聞かなくていいんだからね!」
しかし、栄善はじっと考えているようで動かない。
やがて、ゆっくりと顔を上げた栄善。
その口から出た言葉に、私は膝から崩れ落ちそうになった。
「男たる者、こっそり抜け出すことができてこそ、真の英雄になれるのだ」
……はい〜ぃ!?
真顔でそう言い放つ栄善。
「そうだよ、栄善〜!真の英雄を目指して、僕たちは突き進むんだ!じゃっ、まったね〜、杏歌〜」
にこにこと手を振る哀伝。
今にも穴から抜け出そうとする栄善の着物の裾に、私は必死にしがみついた。
「ちょ、ちょっと!栄善、いいの?あんた将来のお殿様なのよ!」
「私もやってみたかったのだ。仲間とこっそり抜け出すなんて……楽しそうではないか。それに、哀伝が教えてくれたのだ。男たる者、こっそり抜け出せてこそ、真の英雄になれると」
ぽか〜ん。
口が開いたまま、塞がらなかった。
え……なに?
栄善って天然なの?
心を開いてくれたのは嬉しいけど、素直すぎない!?
っていうか、哀伝のやつ……なんででたらめ教えてんのよー!!!!
頭を抱えていると、今、一番会いたくない人物が現れた。
「杏歌〜、栄善と哀伝を見ておらぬか?昼の甘味の時間じゃぞ」
茶々蔵……
なんて言えばいいのよ〜〜!!!!




