第49話 夜更けの会議―断行―
【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―
「急な話で、驚きを隠せぬだろう。そのことに関しては、誠にすまないと思っている。……皆、どうか、この未来についてきてはくれないだろうか……」
そうして、栄善は深々と頭を下げた。
その姿を前に、これからみんなが口にする言葉に私の胸もひときわ緊張が走った。
けれど、意外なことに、みんなの反応は静かで、想像とは少し違っていた。
最初に口を開いたのは時雨だった。
「……ま、あれだな。この間のトワのときの話もそうだったけどよ、栄善の話は最後までしっかり聞くべきだな。そこまで考えてんのなら、俺ぁ何も言わねぇぜ」
「……時雨……」
その言葉に、私は思わず声を漏らしてしまった。
それに続けて、柚寧も口を開いた。
「そうね……今こそ、昔からの常識を打ち破るときなのかもしれないわ。現状維持では、何も変わらないものね。それに、一国に依存しているのも、遠い未来ではこの国を脅かす可能性を完全には捨てられないものね」
春風も静かに口を開いた。
「……お前の覚悟、強く伝わったよ。それに、新たな交易の道まで進めているとは、大したもんだ。過去にさまざまな経験を経て、今こうして考えを示しているお前なら、きっと素晴らしい未来を築けるだろうな」
「柚寧……春風……」
栄善は驚きと喜びが入り混じった表情を浮かべ、思わず声を漏らした。
奉行たちに続き、雲祈も声を上げる。
「栄善様のお言葉、大変心に響きました!そして、新たな交易の道……なんと大きな改革なのでしょう!これは、やはり栄善様のご案でしょうか!」
きらきらと輝く眼差しで、興奮気味に言葉を重ねる雲祈。
栄善は静かに微笑み、答えた。
「いや、この素晴らしい案を出してくれたのは杏歌だ。私ではない」
「……えっ、杏歌様……」
栄善の言葉に、雲祈が固まる。
……どうしちゃったのかしら、雲祈。
私の案じゃ、何かまずかったのかしら?
けれど、私の心配はよそに、室内は歓声と笑いに包まれた。
みんな、思い思いの言葉を口にしている。
「やるじゃねぇ〜か、杏歌〜」
「杏歌の案だったか。さすが、私の部下だ」
「杏歌、あなたは昔から隅に置けないわね」
「柚寧さん、杏歌さんは昔からなのですね!」
「大納、さすが杏歌さんだよね!」
「あったり前じゃん、蒼月。僕の杏歌だよ〜」
「杏歌は昔から体力ゴリラだからな!」
「今、体力ゴリラの話してないだろ、団丸……」
「杏歌は未知の生物かもしれんぞ、綿花」
「興味深いですね。何から調べるべきか……」
さっきも思ったんだけど、たまに失礼なこと言ってる人たち、いない?
やっぱり空耳なんかじゃなかったわ!
ってか、団丸はなんでいつも私と「体力ゴリラ」を結びつけるわけ!?
そして七左衛門。
さすが、いい助け舟だわ!
そんなことを考えていると、先ほどまで固まっていた雲祈が突然、私の方に向き直り、両手をぎゅっと握ってきた。
「杏歌様!あぁ〜もう、なんて素晴らしいのでしょう!このような大きな変革を起こす、新たな交易の道という名案!これは、この国にとって大きな前進に違いありません!」
「……えぇ、ありがとう雲祈」
その迫力に、思わず圧倒される私。
さらに雲祈は、熱を込めて続ける。
「私はあなたの部下として、心から嬉しく思います!それでは、杏歌様……お聞きください。あなたに捧げるこの歌を、あぁ〜杏歌様〜♪」
そう言って、気持ちよさそうに歌い始める雲祈。
もちろん、それを哀伝が黙っているわけもなく……




