第46話 夜更けの会議―前触れ―
【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―
今年も、ついにこの季節──山茶花団子が発売される晩秋がやってきたわ。
口にできると思うと嬉しくて、思わずにっこりしちゃうわね。
でもこの季節は同時に私たちにとって最も忙しい時期でもあるの。
冬の足音が、すぐそこまで迫っているから。
今年は諸々の行事に加え改革の取り組みも重なり、みんなで集まれる時間を作るのが難しかったのよね。
そのため、夜更けに会議の間の灯りの下で顔を揃え、会議を開くことになったのよ。
会議には、茶々蔵と栄善をはじめ、交易班・外交班・勘定班、訓練隊長の団丸、そして戦術担当の七左衛門も参加していた。
議題はただ一つ──迫り来る冬への食料の備えについて。
茶々蔵は書類をそっと机の上に広げ、穏やかな声で言った。
「では、冬の備えに関する会議を始めるとする。まずは、朽葉ノ国より届いた文書についてじゃ。塩の増量を願う旨が記されておる。内容は交易班が確認済みじゃ」
栄善は書類に目を落とし、やがて静かに口を開いた。
「内容は確認した。冬の備えとしては妥当な要請と判断する」
春風も小さく頷く。
「外交上の懸念はないな。朽葉ノ国との関係も、今のところ良好だ」
私も続けて口を開いた。
「交易班の確認も踏まえ、内容の真偽や背景も確認済みよ。増量要請に問題はないわ」
栄善は視線を上げ、交易班へと向き直った。
「晩秋のうちに塩を届けることは可能と見てよい。よって、交易班には承諾の文書を作成してもらいたい」
「承知した、栄善。承諾の文書だな。おい、哀伝、頼んだぜぇ〜」
時雨が声をかけると、哀伝はにこやかに頷いた。
「任せてよ時雨〜。あっ、でもさ、ちょうど良い時期だし、綿花に文書の書き方を教えてあげたらいいんじゃない?」
その提案に、栄善は顎に手を当てた
しばし思案し、やがて小さく頷く。
「綿花はそろそろ独り立ちの頃であったな。哀伝の言う通り、良い時期かもしれぬ。茶々蔵、其方はどう見る?」
茶々蔵は穏やかに目を細める。
「わしも良いと思うぞ、栄善。綿花はしっかりしておる。交易の仕事を任せられる器じゃ。取引のやり取りは避けて通れぬもの。今がちょうど良い頃合いじゃろう」
その言葉に、場の空気が静かに定まった。
誰もが同じ結論に至っていることを悟る。
「では、この文書は綿花に任せる。時雨、奉行として、文書の書式や内容をしっかり教えてやってくれ」
「おう、任せろ栄善。……でもよぉ、明日は立て込んでてよぉ。わりぃが、明後日でも構わねぇか?期日は間に合うか?」
栄善はわずかに頷いた。
「あぁ、明後日で問題ない。期日にはかろうじて間に合う。綿花も任務に支障がなければ明後日の予定を空けておいてくれ」
綿花は深く頭を下げ、時雨も落ち着いた表情で頷き返した。
一つひとつの決定が、確かな形として積み重なっていくのを感じていた。




