第43話 杏歌の座学【午後・公儀飛脚編】②
【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―
「公儀飛脚さん……なんて格好いい響きなのでしょう。それに、国を揺るがすほどの任務を任せられているなんて……杏歌様!私、公儀飛脚さんのこと、もっと知りたいです!」
雲祈に続いて、大納と蒼月もいきいきと声を上げる。
「杏歌さん、私もです!」
「私もわくわくしてきました!」
ふふっ。
怯えてしまったのではなくて良かったわ。
この子たちは、きっと責任の重みを恐れるのではなく、受け止めようとする子たちなのね。
だからこそ、重い責任を担う方々に尊敬の念を抱き、憧れるのでしょうね。
新しく入ってきた子たちが、心から桂ノ国のことを想ってくれる──そんな人たちで本当に良かったわ。
さすが、人柄を重視して人材を選ぶ──栄善の想いが詰まったこの改革は、やはり間違ってなどいない。
私はその言葉を胸に響かせながら、静かに話を続けた。
「えぇ、もちろんよ、みんな。だから、文書を出す側の私たちは開閉時間をしっかりと頭に入れた上で、文書を作成しなければならないわ。夜道はどうしても危険が伴うから、大切な文書ほど日が傾く前に、飛脚の方にはこの国を出発してもらうようにしたいの」
「なるほど……私たちも、公儀飛脚さんに文書を預けるときを見越して、早めに整えておかねばならないのですね」
「まさにその通りよ。だから時間配分を頭に入れて、日々の業務を確実に遂行しなければならないわね」
「あぁ〜なんてかっこいいのでしょう、杏歌様〜。座学を受けて私はますますあなたの虜でございます〜」
三人は笑いながらも、どこか誇らしげな表情を浮かべていた。
この座学が彼らの心に少しでも刻まれているのが分かる。
そんな中、蒼月がそっと手を挙げた。
「杏歌さん、公儀飛脚さんへはどうやって文書を預けるのですか?」
「そこ、気になるでしょ?桂ノ国専属の公儀飛脚が常駐する飛脚の屯所が城内にあるのよ。そこへ私たちは文書を預けに行くの。後でみんなを案内するわね」
「ほぉ、胸が躍りますな!」
「あぁ、楽しみだな!」
「うん、早く公儀飛脚さんに会いたいよね!」
「みんなが喜んでくれて私も嬉しいわ。そして、飛脚の方も私たちから受け取った文書が門番の方と同じように、決まりに沿った正式な文書かどうかを確認してから他国へ届けるか判断するのよ」
三人は頷きながら、私の言葉を受け止めていた。
「ところでみんな。文書を届けられるのは桂ノ国専属の公儀飛脚だけって話をしたけれど、門を通過するには証明になるものが必要なのよ」
「杏歌様!ずばり、その名は!!」
「ふふっ。その名は、ずばり飛脚札よ」
「あぁ〜、杏歌様が私の言葉に同調してくださった〜。なんて幸せ〜」
「……飛脚札か、興味深いな」
「うん、専属の札だもん。貴重だよね」
雲祈は嬉しさのあまり、今にも背中に羽が生えて飛び立ちそうな勢いだった。
……あれは放っておくと、本当に飛びかねないわね。
まぁ、いつものことだわ。
さて──説明を続けようかしら。




