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第38話 杏歌の座学【午後・門番編】①

【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―

午後の座学が始まると、先ほどまで楽しげに甘味を口にしていた三人も自然と背筋を伸ばして机に向かっていた。


「さぁ、みんな。午後の座学を始めるわよ。これからは、この国の門番の役割と決まりを教えるわね」


その言葉に大納(だいな)の目がきらりと光った。


「私、門番の方々のお仕事にずっと興味があったのです!この国や城を守る護衛として、日々凛々しく立ち向かうお姿──とても尊敬しています!」


そう言って、生き生きと力強く話す大納。


その熱に、二人の目も自然と輝きを増していく。


早く学びたい──そんな眼差しを、私に向けていた。


「ふふっ。そうね、大納。私たちがこの国で穏やかに過ごせているのは、門番の方々が日々守ってくださっているおかげよ。……さて、ここで問題よ。この国には三つの門番がいるの。その三つが何か分かるかしら?」


私の問いかけに、待ってましたと言わんばかりに、大納がすかさず手を挙げた。


「はい、大納」


「港の門番、国境の門番、そして城の門番です!」


「さすが大納。正解よ」


その言葉に続いて、雲祈(うんき)と蒼月(そうげつ)も意気揚々と声を上げた。


「おぉ〜、さすが大納ですな!」

「うん、門番の方々のことなら大納だね!」


大納は少し照れくさそうに笑い、そして口を開いた。


「門番の方々のことなら、少しは任せてくれ。だが、他の面ではまだまだ知識不足だ。雲祈、蒼月、助太刀を頼むぞ」


「もちろんですとも大納〜。杏歌(きょうか)様のことなら、私にお任せあれ!」


「みんなそれぞれ得意分野が違うから、ある意味私たちはいい釣り合いが取れているよね」


三人とも、さすが同期ね。

いい連携が取れてるわ。


雲祈は……やっぱり相変わらずだけど、その“らしさ”が逆にこの三人の調和を作っているのかもしれないわね。


「各門には、それぞれ文字通り役割があるのよ。港の門番は船で出入りする人たちの監視。国境の門番はこの国に入る人たちの取り締まり。お城の門番はお城に出入りする人たちの管理。そして、どの門でも手荷物の拝見は欠かさないわ」


真剣な表情で聞く三人を見て、私は続けた。


「各門には通行帳簿が設けられていて、出入りした人を記録していくの。ただ、私たちお城の者は門番の方々にも顔を覚えていただいているから、出入りは目で把握する程度で帳簿には書き入れないの」


「お城で勤めさせていただいている、私たちの特権ですな!」


「えぇ、雲祈。確かにそうかもしれないわね」


大納と蒼月も、嬉しそうに頷いた。


「そして、忘れてはならないのは、門番の方々が一日中、各門を守ってくださっているということ。これは、どういう意味か分かるかしら?」


「はい!杏歌さん!」


「ふふっ。はい、大納」


「朝組と夜組に分かれて交代し、毎日各門を守ってくださっているということです!」


「えぇ、そうね。ばっちりよ大納。よく分かってるわ」


いつもは逞しい表情の大納が、子犬みたいに嬉しそうに笑った。


「大納、私の杏歌様をそのような顔で誘惑しないでくれないか!」


「……な、何を言っているんだ雲祈。わっ、私はただ、杏歌さんに褒めていただいて嬉しかっただけだ」


「うん、大納、すごくいい表情してたよ」


雲祈の言葉に、珍しく戸惑う大納。

蒼月はそんな二人を、穏やかに見守っている。

 

──この子たち、本当に可愛いんだから。


そう思いながら、私は小さく息をついた。


午後の空気は、まだ穏やかに流れていた。

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