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第35話 賑やかな廊下―集結―

【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―

その瞬間、みんなの視線がそちらへと向く。


大納(だいな)と蒼月(そうげつ)が現れた。


「雲祈(うんき)、さっきから聞いていれば何だ。私たちも綿花(めんか)さんの先輩なのだぞ」


「そうだよ、雲祈。綿花さん、前にも言いましたが私たちにも頼ってくださいね」


綿花は更なる先輩たちの登場に驚きつつも、頼もしく思ったのか再び笑みを浮かべた。


「綿花〜、人気者だね。だけど、この三人の圧が怖くて言えないことがあったら、直属の上司である僕に何でも言うんだよ?」


そう言った哀伝(あいでん)を押しのけて、雲祈が口を開く。


「何をおっしゃいますか、哀伝さん!綿花さん、私はですね、私の直属の上司である杏歌(きょうか)様のもとで、数々の座学を受けて参りました!ちなみに、公儀飛脚(こうぎひきゃく)さんのことでしたらこの私にお任せください!」


胸に手を置き、得意げに言う雲祈。

それに負けじと、大納と蒼月も口を開く。


「何を言ってるんだ雲祈。お前だけではなく、私たちだって杏歌さんに教わったんだ。綿花さん、私は門番の方たちのことなら得意です」


「そうだよ、雲祈。いつも一人で抜け駆けしないでよ。綿花さん、私も杏歌さんに教わっているのでこの国やお城の知識なら任せてくださいね」


「……ふふっ。皆さん、ありがとうございます。困ったことがあったときは頼りにしています」


綿花は手のひらを口元に添え、穏やかに微笑んだ。


その笑みを見て、雲祈も大納も蒼月も自然と顔がほころんだ。


私はその光景を見て、少し前の懐かしい出来事を思い返していた。


「ふふふっ。あのみんながこんなにも頼もしく成長するなんて、なんだか懐かしいわね。まるで育てた雛が巣立つみたいだわ」


「杏歌、雲祈たちの教育係を任されてたんだよね〜。さすが杏歌が教えてただけあって、みんなしっかりしてるよ〜」


「あの座学は、私にとって実に有意義な時間でした。何と言っても愛しき杏歌様に直々に教わったのですから」


そう言うと、雲祈はくるりと一回転し、右手を腰に当てて左膝を曲げ、床につく。


そして、人差し指を高く掲げ、力強く言い放った。


「そして、私の得意分野は、そう!公儀飛脚さんのことなのです!」


雲祈の周りだけ、まるで光が当たっているかのような雰囲気が漂っていた。

 

その声が廊下まで響いたのか、書斎の襖(ふすま)が開き、ぞろぞろとみんなが顔を出した。


「お前たち、一体何を騒いでいるんだ。……雲祈、お前はいつも何をやっているんだ」


「ったくよ〜、うるせぇな〜餓鬼ども。……って、だはははっ!雲祈、おめぇのその姿勢はなんなんだよぉ〜」


「まったく、あなたたちは。いつも賑やかね。……雲祈は何をやってらっしゃるのかしら?」


「どうしたんじゃ?雲祈のその姿勢は、なんとも愉快じゃのぉ。わしゃ腰を痛めておるから羨ましいわい」


「ふっ。雲祈はいつも愉快であるな。杏歌、これは一体、何の騒ぎなんだ?」

 

栄善(えいぜん)にそう言われ、私はそれに応えた。


「ほら、雲祈と大納と蒼月の教育係を私がしていた頃があったでしょ?その話をしていたのよ」


「杏歌が三人を教えていた頃も、すごく賑やかだったよね〜」


哀伝のその言葉に、みんなはあの頃のことを思い浮かべたのか、くすりと微笑んでいた。


私も、あんな頃もあったわね……なんて思いながら、三人が入ったばかりの頃を懐かしんでいた。

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