↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/104

第31話 改革

【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―

ここ最近、城内では少しずつ慌ただしい日々が続いていた。


身分制度廃止に向けた新たな改革。

冬に向けて、他国との備蓄を巡るやり取り。

対縁(たいえん)の儀(ぎ)、そして栄善(えいぜん)の御誕辰祭(ごたんしんさい)。

行事が目白押しに迫っているの。


私は相変わらず、仕事漬けの日々。

この間、春風(はるかぜ)が言っていた通り、ますます仕事が増えている。


だから最近は、私たちも朝座(ちょうざ)に出席することが多くなった。


だけど、人のお役に立てている──

そう思えるだけで、私は十分幸せ。

仕事漬けの日々も、苦にはならないの。


……まぁ、またみんなに「仕事詰め」なんて言われるのは目に見えてるんだけど。


気を引き締め直して、私は書斎で書類に目を通していた。


すると襖(ふすま)の向こうから、聞き慣れた声がした。


「杏歌(きょうか)〜、いる〜? 書類を届けに来たんだけど、入っていい〜?」


「えぇ、大丈夫よ」


次の瞬間、襖の向こうからひょっこりと哀伝(あいでん)が顔を出した。


「はい、これ。栄善に聞いたらさ、『外交補佐のあいつに渡しておけば間違いない』って。頼りにされてるね、杏歌」


にこにこと笑いながら、哀伝はそう言った。


その笑顔は、忙しいはずの彼には似つかわしくなくて……疲れた様子なんて、ひとつも見せない。


それどころか、こうして私を気遣う言葉まで自然にかけてくれるんだから。


「ありがとう、哀伝。書類、確かに受け取ったわ。それで……そっちの交渉はどう?うまく進みそう?」


「うーん、朽葉ノ国(くちばのくに)と同じ内陸国と今交渉してるんだけど、金額がさ〜、予想より少し高いんだよね。栄善も茶々蔵もそこで少し踏みとどまってるみたい」


そう言いながら、哀伝は考え込むように指先で頭を掻いた。


「……そう。確かに、そこは悩みどころね」


私は少し視線を落とした。


すると、哀伝の穏やかな声が室内に響いた。


「まぁ、僕に任せておいてよ。僕の交渉術に、右に出る者はいないからね!」


そう言うと、哀伝はにっと笑う。

迷いのない、輝くような笑顔だった。


「ふふっ……そうね、哀伝。心強いわ」


哀伝の存在は、いつだって私に安心感を与えてくれる。


彼と一緒なら、今進めている取引もきっと大丈夫。

自然とそう思えてしまうの。


私たちは今、栄善の指示のもと、ある取引を進めている。


それは私が提案した案だった。

栄善はそれを「名案だ」と言って、迷いなく受け入れてくれた。


そして実行へと踏み出す覚悟を、ためらうことなく決めていた。


殿としては、決して容易に下せる決断ではないはずなのに。


そのとき、改めて私は、栄善の殿としての偉大さを感じた。


その案は、桂ノ国(かつらのくに)が一国に依存せず、多くの国と手を結ぶためのもの。


権力に縛られない国を少しずつ作るための道。


──そして


対縁(たいえん)の儀(ぎ)で進められている、あの縁談を断つためでもあるの。


──それは、この国の未来を左右する決断だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。