第27話 海を越えて来た者―決断―
【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―
重たい沈黙の中で、それぞれが胸の奥に浮かんだものを言葉にできずにいた、そのときだった。
栄善は、静かに視線を上げた。
「……私には、とても嘘をついているようには見えなかった……そして、門番たちに不用意に責任を背負わせるわけにはいかぬ──真意を確かめぬうちは……」
その言葉が落ちると同時に、部屋の空気がまた一段と重くなった。
沈黙を破ったのは、哀伝だった。
「みんな、その子が何も知らないって言ったから決めつけてるけど……港の門番の通行帳簿の記録もまだ確かめてないんだよ?もしかしたら、名前が載ってるかもしれないでしょ?」
続いて、七左衛門が口を開く。
「栄善は防御体制に欠陥がなかったか、徹底して確かめるとも言ってたぜ」
団丸が、言葉を引き取るように続けた。
「それに……受け入れたやつが何か犯したなら……」
一拍置いて、団丸は言い切る。
「栄善が、すべての責任を負うとも言ってたぞ」
三人の言葉に、みんなの表情はさらに歪んでいった。
そんな中、私は静かに口を開いた。
「……みんなの気持ちも、もちろん分かるわ。国の人々を守る立場として、どれも正しい意見だと思う」
一度言葉を区切り、私は続けた。
「ただ……さっき茶々蔵に言われて気づいたの。心で人を見なければ、救える命さえ救えないこともあるって……」
「救える……命……」
私の言葉をなぞるように、雲祈が静かに呟いた。
私は、ゆっくりと頷く。
「そう……仮に、その子が本当のことを言っていたとしたら……?」
その言葉が、室内に静かに響いた。
「確かに不可解な出来事ではあるわ。でも……もし、本当に目が覚めてここにいたんだとしたら?」
私はみんなの顔を見渡しながら、そっと言葉を落とした。
「そのとき──私たちのほうが、“悪人”になってしまうんじゃないかしら……」
私の言葉に、みんなははっと息を呑んだような表情を浮かべた。
時雨は何か言いかけて、口を閉じた。
低く息を吐き、ゆっくりと顔を上げる。
「……悪かったな、栄善。おめぇの話の途中で口を挟んじまってよぉ。恐怖にかられるとだめだな……つい、否定的になっちまう」
「……時雨……」
時雨の言葉に、栄善は一瞬だけ目を閉じた。
その目元が、かすかに揺れた。
「……栄善。お前の覚悟、響いたよ。それに、色々なことに気づかされた……」
「……そうね。時雨や春風の言う通り。しきたりや決まりばかりに囚われていては、本当に大切なものまで見失ってしまうかもしれないわ」
時雨、春風、柚寧の言葉に、新人四人の表情も少しずつ晴れていく。
「俺たちも受け入れに同意する。みんな、いいよなぁ?」
時雨の言葉に、みんなは力強く頷いた。
「……皆、誠に感謝する」
栄善は、深く深く頭を下げた。
——その瞬間、張り詰めていた空気がようやくほどけた気がした。




