表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/19

第16話 特別―初めての景色―

【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―

「だっだんだんまる〜♪おいらはだんまる〜♪体力ゴリラ〜だんまる〜♪」


「ぷははははは〜っ!団丸(だんまる)、いつもその歌、歌ってるよね!」


「くくくくっ、何なんだよ、団丸。その歌は」


「くすくすっ、団丸は本当に愉快であるな」


……ったく、こいつらなんて能天気なの。


私なんて、茶々蔵(ちゃちゃぞう)たちに叱られないか心配で気が気じゃないのに。


しばらく歩いていると、福紙堂(ふくしどう)の前を通りかかった。


すると、たまたま諭作(ゆさく)がお店から出てくるところだった。


「諭作〜!やっほ〜!」


「おやまぁ。やんちゃ坊主様たちではないですか。ほほほっ、本日はお嬢様もご一緒なのですね」


「私は勝手に連れてこられたのよ。茶々蔵には内緒にしてね。って言っても、お城に戻ったら結局ばれちゃうけど……」


「ほほほっ。そうでございますな。皆様方、気をつけて行かれるのですよ」


「おう〜!じゃあな〜!」


そう言って、私たちは町を抜け、少し歩いて海辺へと出た。


そこでは、いつものように塩職人さんたちが作業をしていた。


「お〜い!だん(きち)〜!」


哀伝(あいでん)が海辺へ向かいながら、ぶんぶんと手を振った。


「おや、哀伝様たちではないですか!皆さん、今日もお揃いで……それに、お嬢まで!また秘密基地に行かれるんです?」


「うん!そうなんだ〜!今日は杏歌(きょうか)も連れてきたんだよ!」

 

「そうでございやしたか!皆様、いつも元気ですな。あはははは〜!しかし、あの場所は危ないですから、くれぐれも気をつけるんですぜ!」


「うん、ありがとう!だん吉、お仕事頑張ってね!」


私たちはだん吉と別れ、さらに奥へと進んだ。


「……あんたたち、一体どこまで行くつもりなの?こんな山道に入って……それに、だん吉が危ないって言ってたけど、大丈夫なの?」


「大丈夫だよ、杏歌。僕が杏歌を危ない目には合わせないからね!」


確かに哀伝は、山道に入ってからずっと私の手を握ってくれている。


「おいらたちもいるから安心しろ!がははははー!」


「おっ、もうすぐだな。楽しみにしてろよ、杏歌」

 

「きっと杏歌も気に入るであろうな。さぁ、ここが私たちの秘密基地だ──」


導かれるまま、一歩前に出たその先で──私は思わず息を呑んだ。


「……なんて、素敵なの……」


目の前に広がるのは、いつも遠くに見えていた山と海。


ここからなら、山も海も同時に見渡せる。


こんな景色が私の住む国にあるなんて──思ってもみなかった。


「ねっ、綺麗でしょ?杏歌にも、この美しい景色を見せたかったんだ〜」


「哀伝のやつ、『早く杏歌に見せたい』って聞かなかったんだぜ」


「哀伝ったら……でも、ありがとう。桂ノ国(かつらのくに)で、こんなに美しい景色を見られるなんて知らなかったわ。たまには英雄になるのも悪くないわね」


「ふっ、そうだな。それに、桂ノ国は沿岸国だからな。沿岸国ならではの特権であろう」


「本当にそうだな!杏歌も揃ったし、ここはおいらたち五人の秘密基地だー!」

 

団丸の元気な掛け声に、みんなが「おー!」と言いながら笑った。

 

「ちなみに危ないのは、ここまで行くと崖になっていて、すぐ下が海だからだよ〜」


「……あんたたち、この場所に来てること、茶々蔵が知ったら大変なことになるわよ」


全く、四人のやんちゃぶりったらありゃしないわ。


そのとき、団丸がごそごそと枯葉の混じる山草を掻き分け始めた。  


気になって、私は団丸に声をかけた。

 

「団丸、何してるの?」


「おい、みんな!ここ、なんか道があるぞ!」

 

団丸の指が指す先には、枯葉に隠れるように、細い小道が続いていた。


「すげーな!面白そうだし、行ってみようぜ!」


七左衛門(しちざえもん)、賛成〜!」


「これでまた一つ、英雄への道が増えたな」


「行くぞ〜みんな〜!おいらに続け〜!!」


「ほら、行くよ〜杏歌〜!」


……もう、ついて行くしかないわね。


私は哀伝に手を引かれながら、曲がりくねった小道を進んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ