第16話 特別―初めての景色―
【第二部】遺志を継ぐ者たち―巡―
「だっだんだんまる〜♪おいらはだんまる〜♪体力ゴリラ〜だんまる〜♪」
「ぷははははは〜っ!団丸、いつもその歌、歌ってるよね!」
「くくくくっ、何なんだよ、団丸。その歌は」
「くすくすっ、団丸は本当に愉快であるな」
……ったく、こいつらなんて能天気なの。
私なんて、茶々蔵たちに叱られないか心配で気が気じゃないのに。
しばらく歩いていると、福紙堂の前を通りかかった。
すると、たまたま諭作がお店から出てくるところだった。
「諭作〜!やっほ〜!」
「おやまぁ。やんちゃ坊主様たちではないですか。ほほほっ、本日はお嬢様もご一緒なのですね」
「私は勝手に連れてこられたのよ。茶々蔵には内緒にしてね。って言っても、お城に戻ったら結局ばれちゃうけど……」
「ほほほっ。そうでございますな。皆様方、気をつけて行かれるのですよ」
「おう〜!じゃあな〜!」
そう言って、私たちは町を抜け、少し歩いて海辺へと出た。
そこでは、いつものように塩職人さんたちが作業をしていた。
「お〜い!だん吉〜!」
哀伝が海辺へ向かいながら、ぶんぶんと手を振った。
「おや、哀伝様たちではないですか!皆さん、今日もお揃いで……それに、お嬢まで!また秘密基地に行かれるんです?」
「うん!そうなんだ〜!今日は杏歌も連れてきたんだよ!」
「そうでございやしたか!皆様、いつも元気ですな。あはははは〜!しかし、あの場所は危ないですから、くれぐれも気をつけるんですぜ!」
「うん、ありがとう!だん吉、お仕事頑張ってね!」
私たちはだん吉と別れ、さらに奥へと進んだ。
「……あんたたち、一体どこまで行くつもりなの?こんな山道に入って……それに、だん吉が危ないって言ってたけど、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、杏歌。僕が杏歌を危ない目には合わせないからね!」
確かに哀伝は、山道に入ってからずっと私の手を握ってくれている。
「おいらたちもいるから安心しろ!がははははー!」
「おっ、もうすぐだな。楽しみにしてろよ、杏歌」
「きっと杏歌も気に入るであろうな。さぁ、ここが私たちの秘密基地だ──」
導かれるまま、一歩前に出たその先で──私は思わず息を呑んだ。
「……なんて、素敵なの……」
目の前に広がるのは、いつも遠くに見えていた山と海。
ここからなら、山も海も同時に見渡せる。
こんな景色が私の住む国にあるなんて──思ってもみなかった。
「ねっ、綺麗でしょ?杏歌にも、この美しい景色を見せたかったんだ〜」
「哀伝のやつ、『早く杏歌に見せたい』って聞かなかったんだぜ」
「哀伝ったら……でも、ありがとう。桂ノ国で、こんなに美しい景色を見られるなんて知らなかったわ。たまには英雄になるのも悪くないわね」
「ふっ、そうだな。それに、桂ノ国は沿岸国だからな。沿岸国ならではの特権であろう」
「本当にそうだな!杏歌も揃ったし、ここはおいらたち五人の秘密基地だー!」
団丸の元気な掛け声に、みんなが「おー!」と言いながら笑った。
「ちなみに危ないのは、ここまで行くと崖になっていて、すぐ下が海だからだよ〜」
「……あんたたち、この場所に来てること、茶々蔵が知ったら大変なことになるわよ」
全く、四人のやんちゃぶりったらありゃしないわ。
そのとき、団丸がごそごそと枯葉の混じる山草を掻き分け始めた。
気になって、私は団丸に声をかけた。
「団丸、何してるの?」
「おい、みんな!ここ、なんか道があるぞ!」
団丸の指が指す先には、枯葉に隠れるように、細い小道が続いていた。
「すげーな!面白そうだし、行ってみようぜ!」
「七左衛門、賛成〜!」
「これでまた一つ、英雄への道が増えたな」
「行くぞ〜みんな〜!おいらに続け〜!!」
「ほら、行くよ〜杏歌〜!」
……もう、ついて行くしかないわね。
私は哀伝に手を引かれながら、曲がりくねった小道を進んでいった。




