表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花嫁に逃げられた侯爵と花売り娘、辺境で無双する  作者: ユーコ
第二章 冒険者の集落の再生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/22

03.環境変異2

 次にリリがオズワルドに見せたも何やらパッとしない雑草だ。

「これは何だ?」

「ガリウム・アパリン。いわゆる『ひっつき虫』ですよ」

 やっぱり雑草だった。


「あれか」

 オズワルドはげんなりした。

 ひっつき虫ならオズワルドも知っている。

 荒れ野や道ばたに生えている雑草で、茎や葉の全体に、目に見えないほど小さなトゲがびっしり生えており、軽く触れただけで服や皮膚にしつこく絡みついてくる。

 無理に剥がそうとすれば服の繊維は毛羽立ち、素肌は細かな擦り傷だらけになる。


「で、そのひっつき虫も魔境の土に適合したのか?」

「その通りです。ちょっと不快なだけだったトゲがパワーアップしてナイフのように鋭くなり、服はもちろんのこと、情け容赦なく皮膚を切り裂きます!」

 リリは誇らしげに胸を張る。

「随分凶悪になったものだな」

 オズワルドは感心した。

「でしょう? 元が雑草なだけに繁殖力が高い。魔境土の濃度が少々高くても育ちます。お役に立ちますよ」

 リリは太鼓判を押した。




「お次はこちらです」

 リリは続いての防御壁候補を紹介した。

「まだあるのか?」

「こちらどこにでも生える野草のイラクサさんです」

「知り合いみたいに言うな。今度も雑草か」

 今度は葉っぱが大きな雑草だ。

 よく見ると葉と茎に鋭い毛がびっしりと生えている。

 触れるとこの毛が折れて、皮膚の中に毒液が注入され、火傷のような激痛が数時間続くという。危険な草木だ。


「基本的には丈夫な草木が適合しやすいようです。イラクサの攻撃力は先のテッポウウリ、ガリウム・アパリンに劣りますが、これはなんと葉っぱが食べられます。あ、生食は駄目ですが、あく抜きしてペーストにすると美味しいですヨ」

「ふうん、食えるのか、それはいいな」

 集落での食糧獲得もオズワルドの悩みの種である。

 その点、イラクサは丈夫な上、何故か石垣の側を好むので、防御壁にはぴったりの野草である。


 リリは小鼻を膨らませて得意になった。

「そうでしょう、そうでしょう。お次は本日最後のご紹介。閣下、どうぞこちらに」

 そう言ってリリが見せたのはとてつもなく背が高い草だった。

 セロリが巨大化したような見た目である。温室の外から見えていたのはこの草だろう。

「これはなんだ?」

「ジャイアント・ホグウィードという植物です」

「見たことがないな」

 オズワルドは興味深そうにジャイアント・ホグウィードを見上げた。

 さすがのオズワルドもこれは見たら忘れないだろう。高さが二メートルを超えて天井につきそうになっている。

 木ではこのくらい育つものもあるだろうが、見た目がセロリなだけに異様としか言いようがない。


 オズワルドは思わずリリに質問した。

「おい、君、これは元々こんなに大きいのか? 魔境の土で大型化したのか?」

「元々大きいんです。高さ三メートルから五メートルにもなります。これは魔境土で生育が抑えられている状態です」

「なるほど」

 とオズワルドはもう一度巨大草を見上げた。

 見れば見るほどその大きさに圧倒されるが、二メートルを超える程度だ。三メートルはない。


「これは外来種で近年輸入されたものです。一般の方はあまりご存じないでしょう」

「そうだな」

「このジャイアント・ホグウィード、早くも『最凶』の水辺植物と呼ばれております」

「最凶?」

「ジャイアント・ホグウィードは当初珍しい見た目から観賞用として輸入されました。また、この植物は成長が早く大型なのでボリュームもある。川沿いや湿地といった水辺だったらほっといても育ちます。家畜の飼料として使えるのではと期待されましたが……」

「が?」

「樹液に毒があるんですよ。肌に付着した状態で日光を浴びると、重度の火傷のような水ぶくれを引き起こします」

「最悪だな」

「ええ、危なくて家畜の餌にも出来ません。口が被れてしまう。羊は何故かこの毒に影響がないようですから、そちらの研究が進むと違うでしょうが、現在のところ、単なる厄介者です」

 あわてて駆除することになったが、鳥が種を運び、あっという間に自生を初めてしまった。


「だが、毒があるなら魔境の防御壁として使えるな」

 オズワルドは期待したが、リリは顔の前でパタパタと手を振って否定した。

「いえいえ、閣下、これが魔境土の面白いところでして。いやあ、予想外の結果になりました」

「なんだ? 早く言え」

 オズワルドはリリを急かす。

「魔境土で育てると毒性が消えました」

「は? 何で?」

「さあ、正確なところは分かりませんね」

 とリリも首をひねる。

「ただ、このジャイアント・ホグウィード、毒さえなければ、でっかいセリです。味は良くないので人が食べるのには向きませんが、家畜の飼料になります」

「ほう……」

 オズワルドはキラリと目を輝かした。


 オズワルド達は冒険者の集落への輸送に馬車を使っている。

 病気になったり、魔境の空気にも怯える馬が四割、病気にならず、そこそこ元気な馬が六割だ。

 その中でも特に魔境の環境に適応出来た個体を使用している。

 馬の飼料が現地で入手出来ればかなり楽になる。


「……」

 真剣な眼差しでジャイアント・ホグウィードを見上げるオズワルドに、リリは「むひひっ」とほくそ笑んだ。

「実際にどこにどの植物を植えればいいのかは現地に行ってみないと分かりません。閣下、連れて行ってくれますね」

 なんか負けた気がするが、オズワルドは渋々リリの同行を許可した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ