最後の勝負
そこで五傑が、ディアだけに話があると、少し離れた場所に連れて行ってしまう。
多分あの事だろうなとエリオットは見送る。と、リアネーゼがポツリと、
「……エリオットは、こんなに強かったんだな。今まで手加減していたのか?」
「……分らない。ただ、ディアに勝ちたいと思って、頑張っていたら前よりも強くなったし、この剣のお陰というのもある気がする」
「その剣は?」
「ディアを守るための……ディアの祖先である東の神が、自分を守るために与えた剣だ」
「そうか……どうりで強い力があるわけだな。だが、あのディアに微かな懐かしさを覚えたのが、そうか……俺を崇める国の神か」
「慕われているな、リアネーゼ」
そうエリオットが言うと、リアネーゼは少し黙ってから、そうだなと頷く。
その顔が少し嬉しそうに見えて、良かったと普通にエリオットは思えた。
昔はとても辛くて、憎しみに満ちていたのに、今は素直にリアネーゼの事がエリオットには思えた。と、
「これで一件落着か」
「ソラ、カミルも、ありがとう」
「ふふふ、僕たちだって多少はお手伝い出来たでしょう?」
カミルがそう笑う。笑って、深々と息を吐く。
「……僕、南の魔王そのものだったんだ」
「……でも、人を滅ぼすつもりはないんだろう?」
「もちろん! ああ……でも目覚めるとか、南の魔王は特に関係ないんだ。となると、もっと素直になって良いのかなって僕は思う」
そう言いながらちらりとソラを見ると、何食わぬ顔をソラはしている。
なのでカミルはそれ以上何も言わずに笑うだけ。
そこで、怒ったようなディアがエリオットに走ってきた。
そしてエリオットに何かを言おうとしてすぐに唇を噛んで、
「エリオット……」
「そうしたんだ? ディア」
「……ほしい」
「え?」
「私と……戦って欲しい」
そう、悲痛な表情で答えたのだった。
五傑から話を聞いたんだなとエリオットは思いながら、頷いて、西の魔王の城の外にディア達は出た。
後からやってきた五傑の内の二人、“黄の人”ロウズと“赤の人”クリムゾンが、リアネーゼとテイルを、そしてアオイが他の二人の神を連れてきたので、彼らを東の魔王城に送った。
あの他の二人は、オルトとソルトという兄弟神で、やけに大人しくアオイにしたがっていた。
そう思いながらエリオットは剣を構える。
ディアの魔法の拘束をリアネーゼが解き、今すぐ傍で見届け人をしている“緑の人”レイトと“白の人”フィエルが、ディアにかけていた魔法を解いた。
だから全力でお互い挑めるのだ、とディアは思う。
そして、エリオットとディアは戦うが……。
地面に倒れこんだディアが、嬉しそうに、けれどどこか悔しそうに呟いた。
「……エリオットは強いな」
「……この剣があるから。でもこの剣で、これからもディアの事を守るから」
その言葉にディアは少し黙ってから、
「手加減したのか?」
「……していないよ」
「嘘を言うと、怒るぞ? 私が」
「……ごめん」
「謝らなくていい……そうか」
残念そうにディアが呟く。
手加減されるくらい自分が弱くなってしまったのだと思い、ディアは……呟いて顔をほころばせた。
「これで私はエリオットのものか。私がエリオットを自分のものにしたかったが、仕方がないな。私もエリオットが好きだから、それでいい」
そう呟くと、エリオットがディアの傍までやってきて、ディアに手を差し伸べる。
その手を握ると、そのまま立ち上がらせられて、ぎゅうっとエリオットに抱きしめられた。
「ようやく手に入れた。俺の……最愛の魔王様」
エリオットの囁くような声に、ディアも嬉しそうに頷いて、そのまま唇を重ねる。
そんな二人を、見届けていた五傑が引き剥がそうとするのもいつもの事だった。




