問いかける
「……リアネーゼを許してもらえないだろうか」
驚くようにテイルを見上げるリアネーゼ。
それを見ながらエリオットは、テイルに問いかける。
「どうしてそんな事を言うのですか? というか貴方は?」
「西の魔王、テイルです」
そう答えた彼を、ある種の驚きをもってエリオットは見た。
彼が残虐な西の魔王?
見た目は可愛らしく瞳は赤い彼だが魔力はとても小さい。
そう思って普通の人間では彼に敵わないのだとエリオットは気づく。
そしてテイルは、エリオットの問いに口を開く。
「……僕はリアネーゼと同じで、寂しがりやなんだ」
「? どういう意味だ?」
「僕達のような存在はこの世界では四人しかいなくて、残り二人は眠ったまま……あれ?」
そこで西の魔王テイルがカミルを見て、目を瞬かせる。
「何で南の魔王は人間ごっこをしているの?」
「「え?」」
そう呟いたのはカミルとディアの二人。
それにテイルは目を瞬かせて、
「だって、自分の分身を人間にしているから、簡単に言うと、記憶のない同一人物で……ディアは分らないの?」
「う、うん……何も感じない……そういえば、テイルにも感じないが……おい。ここにいる五傑全員が、どうして顔を背けるのだ? 私から」
半眼でその四人が顔をそむけるのを見てから、ディアが嘆息した。
「そういえば五傑全員に力を弱められたり、魔法への感覚の鈍くなる魔法をかけられていたな」
「そんな魔法をディアがかけられていたのか?」
「うむ、彼らが私の事を自分たちのものにしようとしていたのだが、その状態で私が勝利した」
「そうか……良かった。でも、まさかそれでリアネーゼに拘束されている、という事はないだろうな?」
それを聞きながら、ディアは少し考えてから、
「それでも難しいと思う。私ではリアネーゼに勝てない」
告げるディア、そうかとエリオットは呟く。
きっと自分の勇者の力とこの剣は、東の神の力のもので、その力は魔王よりも格段に大きいのだろうと実感する。
同時にその力さえあれば、ディアは安全なのだ。
そう思いながらエリオットは微笑む。と、
「それで、リアネーゼは見逃してくれる?」
テイルが再び問いかけて、エリオットは、
「俺は、確かに辛い思いをしたけれど、幼馴染のリアネーゼを殺したくない。それに、ディアの母親がこのリアネーゼを神と崇める国の出身で、そういった事はしないで欲しいといわれている」
意外な話に、リアネーゼとディアは驚いたようだった。
そこでディアがその西の魔王のテイルに言う。
「テイル、私からは人間への侵攻を止めるのを、リアネーゼを見逃す条件として加えたい」
「ディア……相変わらず人間が好きだね」
「む、悪いか? というか、エリオットが真っ先にそれを願わないといけないだろう?」
エリオットがはっとしてディアを見た。
確かにディアの言うとおり、それを願わなければならない立場にエリオットはある。
黙るエリオットに、ディアがこそっと耳打ちする。
「だから一緒にいよう、これからも」
不意打ちな告白にエリオットが顔を赤らめる。
けれどディアはすぐにテイルに向き直ると、テイルが、
「リアネーゼが傍にいてくれるなら、少しは寂しくないだろうからいい」
「テイルは初めから、彼が異界の神だと気づいていないのか?」
「それは気づかなかった。でも、強い力を持って、同時に孤独なのが見えたから」
「……そうか。という事は私の事は諦めるのか?」
「え? なんで?」
テイルが不思議そうにディアを見上げる。
ディアは少しその意味を考えてから、
「テイルは、リアネーゼの事が好きなのでは?」
「え? 確かに好きだけどそばにいて欲しい存在だね、リアネーゼは。でもディアはこう、襲いたいというかなんというか……」
そう可愛らしくもじもじするテイルだが、彼に抱きしめられているリアネーゼは、凍りついたようだった。
それを見ながらディアは大きく溜息をついて、
「まだしばらくは時間がかかりそうだが……とりあえずは、リアネーゼ達神々は暫く監視も必要……そしてそれに抗する力が必要だから……暫く全員で、私の魔王城に住んでもらう事になるが、かまわないか?」
ディアがそこにいる全員に問いかけたのだった。




