邂逅
目の前に、一番欲しかったエリオットがいる。
そんな彼が憎々しげにこちらを見ている。
今までのどうでもいいような、他の者達と同じようなそんな視線ではない、そう思うとリアネーゼは胸が高鳴る。
そこで人質として連れてきたディアが、首を振る。
その様子に相変わらず、見た目は絶世の美貌なのに気に入らないな、とリアネーゼは思いながら、先ほどの事を思い出す。
ここに来る前、
「エリオットが来た」
嬉しそうに呟くリアネーゼだが、そこでディアは、
「エリオットに謝って、一度関係を修復したらどうだ?」
「謝って許してもらえると、本気で思っているのか?」
「だが、実際にリアネーゼは過去にそういった事をしてしまい、そしてまだエリオットの事を諦められないのだろう?」
「……ふん、人間など、俺にとっては取るに足らない相手だ。欲しければ力ずくで奪える」
「心までは奪えないぞ?」
「それは、お前がエリオットの心を奪ったという自慢か?」
「……傍にいてもらえても、憎まれるだけでは辛いのはリアネーゼ、貴方の方だと思うが」
「知ったような口を聞くな! ……丁度いい、お前を人質にする」
「! そんな事をしては余計……!」
そこでディアの声が出なくなる。
焦ったように口をパクパクさせるディアを見ながら、リアネーゼは冷たい笑みを浮かべて、
「煩いから声を消した。始末するにも静かでいいだろう?」
脅すようにリアネーゼはディアに囁くも、きっとディアはリアネーゼを睨みつける。
その表情がどこか既視感を覚えるも、すぐにリアネーゼは傲慢に笑い、
「睨みつけた所でどうにもならないだろう?」
そう嗤う。
と、そんなリアネーゼに西の魔王テイルが、
「リアネーゼ! ディアに手を出すのは止めろ!」
「ふん、お前は自分の立場が分っているのか? 俺に逆らえばどうなるか、分らないほどに頭の中身まで“猿”なのか?」
「むかっ! そもそもディアは僕のもので……んんっ」
そこで、リアネーゼはテイルの唇を奪う。
暫くキスをしてから放し、リアネーゼはテイルに嗤う。
「……全てが終わったら、抱いてやるよ。俺の慰み者として」
「ふ、ふざけるな」
「あまり口煩いと、もう一度塞いでやろうか? 唇で」
うぐっ、と悔しそうに押し黙るテイルにリアネーゼは再び嗤い、そして、
「エリオットを手に入れたら、こいつは用済みだ。……お前にもディアを抱かせてやるから、大人しくしていろ」
ディアが大きく首を振るも、リアネーゼを無視する。
ついでにディアの髪を一本とり、偽の気配を作り出し、ついでにディアの気配を消すよう細工する。
そして、今に至るわけだが、
「ディアを放せ!」
「人質だ。そしてこのディアがという東の魔王が俺の手の中にある間は、お前は手を出せないだろう?」
「リアネーゼ……どうして、俺にそんな事をするんだ?」
そんなに憎かったのかと、エリオットは聞かなかった。
答えが分りきっていたからで、案の定、
「昔からずっと、エリオット、お前の事が好きだったんだ」
そう、そのときばかりは嬉しそうにリアネーゼは答える。
それを聞きながら、エリオットは、
「……だったら、正々堂々言って来ればいいじゃないか。エミを傷つけ……俺を傷つける前に」
「……お前が、エミの事を好き過ぎて言いなりだったじゃないか。それに……引きこもっていれば、魔王退治に仮ださえる事もないとふんだんだ。まさかこんなことになるとは思わなかったがな」
そうディアを見て、リアネーゼは冷たく嗤う。
けれどすぐに、エリオットに視線を移して、
「どの道、この世界は俺達のものだ。こんな弱々しい魔王達に如何こう出来ないだろう?」
「……ディアは弱くない」
「こんなに簡単に捕らえられる存在が弱くないとどうして言えるのか、俺の方が知りたい」
「俺は、リアネーゼを倒せる」
「……面白い事を言うな、エリオット。だが俺は今まで本気を出した事がないぞ?」
「そうか。だが俺はまた強くなった」
そう答えるエリオットに、リアネーゼは鼻で嗤う。
「俺はお前を傷つけたくないから、この人質を連れてきた。エリオットはこの魔王ディアを傷つけたくないのだろう?」
その問いかけにエリオットは笑う。
「リアネーゼ、お前が手を出す前に、俺はお前を倒せばいい」




