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聳え立つその城は、ディアの東の魔王の城に酷似しているとエリオットは思う。
そこで、一緒に来たカミル達にエリオットは、
「俺がリアネーゼの相手をするから、二人にはその他の二人の神の相手をして欲しい」
「分った」
「……南の魔王様が、お手伝いしようかといっているけれど……」
「駄目だ」
ソラがカミルの提案を、即座に否定した。
「カミルは、カミルのままで良い」
「ソラ……でも僕は……」
「それにその魔法の杖があるんだ。足手まといにならないし、俺も危険を察知したら逃げるから安心しろ」
「分った……」
不満そうにカミルが俯くも、その頭をソラが撫ぜる。
そこで声がした。
「良い度胸だな。殺さないようこちらが手加減しておけばいい気になるなよ?」
“緑の人”レイトが、恨めしそうにエリオットに言うも、エリオットは嘆息して、
「何人かは、本当に殺しにかかってきて、返り討ちにしたが」
「ぐ……だがディアの手助けもあっただろう」
「あったが、お前達がルールを破ったからだろう? 俺だってそのルール内で手加減したのに」
「……手加減だと?」
「……きっと俺が本気で戦えるのはリアネーゼか、ディアかもしれない」
そう呟くエリオットを、“緑の人”レイトは得体の知れないものを見るように、エリオットを見る。と、
「まあまあ、それで、リアネーゼが現れればエリオットが戦い、他の神々が現れれば、そっちの人間達が相手をして、残りの五傑はディアを救出して、東の魔王城に連れて行く、と」
魔族しか転送の魔法が使えないので、自然とそういう段取りになった。
そしてエリオットは更に付け加える。
「ついでに、ディアを送ったなら、同時に俺も送って欲しい。俺のこの力を……ディアへと“返す”のだから」
ずっと一緒にあった力を思い描きながら、エリオットは微笑む。
それでディアが守れるならば、安いものだとエリオットは思う。
「こいつの言う事なんざ信用できるか」
「残念ですが、クリムゾンと同じ意見ですね」
「俺も、ディアがまたなく事になりそうで、昔からの眷属としては不安ですね」
そう呟く“赤の人”クリムゾン、“黄の人”ロウズ、“白の人”フィエル。
やっぱり信用されていないなとエリオットが思っていると、どちらかといえば無口のアオイが、
「僕は、信じる」
「アオイ?」
「その力にエリオットは未練があるけれど、ディアのためなら、それを返すのでしょう?」
「もちろん」
「それに、エリオットは確かに人質としてディアを連れて行かれたけれど、それを助けるために命をかけられるのでしょう?」
「俺は、命はかけない。だって、後に残されたディアが悲しむから」
エリオットは、真っ直ぐにアオイを見て告げる。
その言葉に、アオイは少し驚いたようだけれど、すぐに微笑んで、
「僕は、君を信じてもいいかもしれない」
「ありがとう」
そんなアオイの様子に他の五傑も、渋々といったように頷いたのだった。
そして西の魔王城に突入したが、そこで“緑の人”レイトが、
「裏をかこう。確かディアのいる部屋は外から魔法を飛ばして確認してから……」
何故か西の魔王城の間取りに詳しい五傑達。
エリオットは不思議に思うも、レイトが真剣そうだったので聞くのははばかられた。
ちなみに、どうして知っているのかといえば、東の魔王が西の魔王に何度も惚れられて追い掛け回されて、連れて行かれてしまうため、連れ戻すためにそういった知識が蓄積されていたのだ。
そして普通とは違った少し変わった道のりで走っていく前に、二人の何かが立ち塞がる。
彼らはおかしそうに笑いながら、
「オルト兄さん、僕たちのほうに先に来ちゃったよ」
「そうだねソルト。でも俺達でどうにでもなるだろう? たかだか魔族と人間ごとき、ね」
そう風の刃がエリオット達を襲う。
けれどそこでソラがエリオット達の前に出た。
「早く行け」
そう短くエリオットに告げるソラに、エリオットは礼を言ってその場を後にする。
その場に残ったのは、ソラとカミル、そして……“青の人”アオイ。
そんなアオイにカミルが、
「あっちに行かなくて良いの?」
「僕の好きなディアはエリオットが好きだから、でもエリオットを手伝うのは悔しいから、ここでお手伝いする。人間は嫌いだけれど、人間だけでは……魔王を飼っている人間の君でも危険だろうから、いざという時のために、ここにいる」
暗に、いざとなれば二人を連れて、転移するというアオイに、カミルは微笑み、
「……後で、アオイとディアの恋愛本書くからね!」
「! ぜひ!」
カミルのその言葉にアオイはやる気を出したのだった。




