仲がいいな
所変わって、捕まっていたディアとテイルだが。
「ディア、一緒にここから逃げよう!」
「……今のままでは難しいな。あのリアネーゼ以外に、二つほど気配を感じる」
「え? どこ?」
「……テイルの父と母の部屋だ」
「! あいつ等勝手に……」
「というかご両親はどうした? 前は一緒にすんでいただろう?」
そこでテイルが目をとろんとさせて、
「……両親揃ってディアの両親を追っかけに行ってしまいました」
「……父様が怯えていたと聞いたが、待て。今両親といったか?」
「というわけで、逃げようよディア」
「テイル……話を変えようとしているのは分るが、まあいい。どの道、現状では逃げられない。状況が変わる何かが起れば話は別だが」
「そっか……状況が変わる……ディアは思い当たる節があるの?」
「五傑もいるし、エリオット達も来るだろう。だからその時に……テイル?」
そこでテイルが頬を膨らませた。
「エリオットって、確かリアネーゼも好きなディアの好きな人間だよね?」
「そうだ」
「でもってあの東の初代魔王を倒した勇者の末裔なんでしょう? そんな人間の何処がいいんだ」
「見た目も良いし性格も良いし可愛いし……やっぱり一緒にいるととても幸せな気持ちに慣れるんだ」
そう指をもじもじさせながら頬を赤らめてディアは語るが、それがテイルには気に入らない。
そもそも人間が嫌いだというのもあるが、大好きなでぅあが好きな人間というのも気に喰わないし、あの、偉そうなリアネーゼがエリオットの事に関してはやけに素直なのも、なんだか悔しい。
だから更にぷうっと頬を膨らましたテイルはそこであることに気づいた。
「そういえばディア、鎖で繋がれて、精々この部屋くらいしか逃げ場がないよね?」
「……テイル、悪い事を考えているだろう」
「ここなら、ディアを好きなだけ押し倒せるかなって」
ディアは聞いた瞬間、ベットから飛び降りて逃げようとした。
しかし繋がれた鎖をテイルがぎゅっと握って、ディアは逃げられない。
そんな顔を蒼白にするディアに、あくどい笑みを浮かべたテイルが、一歩一歩ディアに近づき、
「ふふふ」
「テイル、待て、落ち着こう。まずは話し合おう。こういった繊細な事象に関しては、お互いの意志の確認といった様々な手順が……」
「いっただーきまーす」
「うわぁああああああ」
ディアはテイルに押し倒された。
焦ってじたばたするが、ディアは圧し掛かられて逃げられない。
テイルのほうが小柄なのにディアよりも力が強かった。
「わー、ディアの肌ってすべすべー」
「や、やめ、服に手を入れるなって、テイル、やめっ」
「すぐに気持ちよくしてあげるから、安心してね、ディア」
「安心できるか! だ、誰か助けて……」
涙目で叫んだディアだが、そこで部屋のドアが開かれた。
「紅茶とお菓子を持ってきてやった。この俺に、感謝するんだな……何をやっているんだ?」
やけに上から目線な傲慢な雰囲気で現れたリアネーゼは、目の前でディアがテイルを押し倒している状況に、首をかしげた。
そしてリアネーゼはすぐさま、このテイルがディアの事を好きなのを思い出して押し倒しているのだと気づく。
「ああなるほど、あれか。そういえば人間たちはやっていたな」
「……だったらでていってくれないかな? 僕はディアと楽しむから」
「何故お前の都合を聞かないといけないんだ、俺が」
「じゃあ、リアネーゼも交ざる?」
「……」
沈黙するリアネーゼ。
つい二人でディアを襲う想像をしてしまったのだが、実際にこのディアはこれまで見たことのないほどに美しい。
だからリアネーゼは少しくらい手を出したいと思ってしまったのだが……そこでディアがテイルをぎゅっと抱きしめると同時に横に転がった。
テイルがベットに、ディアが覆いかぶさるように体勢が変わり、
「よくもやったな、テイル」
「えっと……僕は攻めです」
「残念だなテイル、私はそのどちらにもならない。代わりに……」
「きゃはははははは」
ディアがテイルをくすぐり笑い出す。
テイルがやめてというがディアは許さない。
そしてテイルが、完全にぐったりした頃、ディアは手を放して、
「それで紅茶と菓子を持ってきてくれたのか? ありがとう」
一仕事終えたかのようなディアが晴れ晴れとした表情で、リアネーゼに微笑んだのだった。
並べられた菓子には生クリームが添えられて、果物のジャムが小さな白い陶器に三種類ほど、銀色のスプーンと共に置かれている。
「わー、僕の大好きなバナナケーキ!」
「……テイルが好きだから、買って来た。ついでに、生のバナナも」
「わー、珍しく気が利くね。偉そうにふんぞり返っているだけだから、何も自分で出来ないのかと思ったよ。でも、ここにあるの、僕の好きなものばかり。よく分ったね」
「……早く食べろ。その生のバナナから」
「? 分った」
そう言ってバナナの皮をむいて、一口ぱくりと口に含んで、美味しいと顔をほころばせるテイル。
それを見ながらリアネーゼは、ふん、と笑って、
「本当にバナナを食べているテイルは可愛いな。猿みたいで」
「……」
「……」
そこで、むきー、と怒ったテイルがリアネーゼに襲い掛かった。
けれどそれは簡単にあしらわれてベットに転がされる。
「うぐ、この体力馬鹿」
「残念だな、今は魔力でも俺のほうが強いんだ」
「ぐぬぬ……許さん、許さんぞ……とうっ! ……うぎゃ!」
そうやって何度もベットに転がされるテイル。
それを見ていたディアが、
「二人とも仲がいいな」
「「そんなわけない!」」
声までも一緒な二人は、その後もひたすら仲が悪そうに戦っている。
正確にはリアネーゼが、テイルで遊んでいるのだが……そこで、リアネーゼははっとしたようだった。
「エリオットが来た」
そう、どこか嬉しそうに、挑むようにリアネーゼは呟いたのだった。




