なるほど
森の小道を歩いて、指定の場所に向かうエリオット達。
「次で、最後の四天王か。でもまだ人間の領域を出ていないが、魔王の城って一日でいけるものなのだろうか」
そう呟いたエリオットに、カミルがやってきて、
「まさかそれが狙いだったりして」
「なるほど、不戦勝か……」
ソラも、なるほどと頷いているが、それにエリオットが反論する。
「ディアがそれを許さない。ディアは誠実な人だから」
「それに、あの魔王ディアもエリオットを愛しているしね」
「……うん」
いざ他人にそう言われてしまうと、エリオットは恥ずかしくなってしまう。
顔を赤くするエリオットを更に、カミルが面白がってはやし立てる。
そんな事をやっているうちに、開けた場所へとやってくる。
森の中にぽっかりと開いた広場。
そこに魔族が二人。
“緑の人”レイトに、“白の人”フィエルだ。
レイトはエリオットを見て憎々しげに、
「ディアを惑わす勇者はここで打ち倒してやる」
「はいはい、レイトはあの勇者の仲間と戦うように」
「何故だ、フィエル!」
「……レイトにはあまり危険なことをさせたくないんだ。じゃあよろしく」
「おい!」
レイトを押しのけて、フィエルは近づいてくる。
そしてエリオットに、
「はじめまして。はるか昔、東の神に仕えた竜の末裔、その長であり、現五傑の一人、“白の人”フィエルといいます」
「丁寧ですね。はじめまして、勇者エリオットです」
「そう、そして東の神の忠実なる僕である竜であり共に反転した我々。だから風属性の五傑が二人いるわけですが……そんな竜の長は特別で、東の神の絶望を我々五傑の中で一番強く引き継いでいるのです」
笑顔で告げるフィエルに、何かを感じてエリオットは飛びずさった。
それと同時に見えに何かがエリオットのすぐ傍を通り過ぎて、木々をなぎ倒す。
その様子を見ながら、エリオットは手抜きは出来ないなと思って、接近戦で固唾けるしかないと判断して駆け出した。
それを援護しようとソラとカミルはするが、すぐにエリオット達の方とは、地面が隆起して土の壁が現れて分断されてしまう。
「……仕方がありませんが、貴方方のお相手は僕がさせていただきます」
そう、嘆息するようにレイトは告げたのだった。
律動する大地に植物の攻撃は、ソラには厄介だったが、カミルの生み出した炎の魔法で植物は焼ききられる。
けれど足場が定まらないのは、動きにくい。
「普通、人間は地面に足をつかなければ、生きていけない生き物でしたからね」
笑いながら植物の魔法や地面を隆起させる魔法を使うレイト。
厄介な危険な相手だとソラは思いながら、この前エリオットに教わったとおりに勇者の力を使う。
カミルの援護があったとはいえ、積み重なる植物を引き裂いてレイトの前に躍り出る。
突如別人のように俊敏になり、強い魔力を帯びさせた槍を持つソラがレイトの前躍り出る。
今まで弄ぶ程度の二人であったからレイトは油断してしまっていたのだ。
ゴスッと衝撃を感じて、そこでレイトは意識を失ったのだった。
「やったね、ソラ!」
「ああ」
嬉しそうに抱きついてくるカミルに、ソラは頷き微笑んだのだった。
レイトをソラたちが倒した頃、エリオットもフィエルを追い詰めていた。
「なるほど……確か、に……あの四人が負けた……事はありますね」
息も絶え絶えなフィエル。
大してエリオットは息切れすらしていない。
そんなエリオットの様子にフィエルはこのままでは勝てないと確信する。
だからここでほぼ全力で魔法攻撃をする。
渦巻く風がエリオットに向かって収束する。
けれどそれら全てをエリオットは難なく交わした挙句いくつかを打ち滅ぼす。
そしてフィエルに剣を向けた。
その剣は昔東の神がエリオットの祖先に作り上げたもの。
苛立ちを覚えながらもフィエルは負けた事を悟る。
「負けました」
そう、降参の仕草をするとエリオットは剣を下ろす。
そして、気絶しているレイトをお姫様抱っこしてから、フィエルはエリオット達に悪い笑みを浮かべて告げた。
「そういうわけで、後は自力で魔王の城に来るんだな!」
清々しい笑みを浮かべて消えてしまうフィエル達。
それを見たエリオットは、ソラ達に礼をいいながら、
「ディアが迎えに来るのを待っても良いが、どうしようか」
「ひとまず宿に戻って休もうよ、僕、疲れちゃった。久しぶりに全力出したし」
そのカミルの意見に、エリオットはそうだなと頷き、とりあえずは宿に向かったのだった。
この時はまだ、東の魔王城にいくどころではない事になるなど、微塵もエリオット達は思わなかったのだった。




