第九話
「ふふ、スイル様! 朝食ができましたよ。早く起きてください!」
眩しい朝の光とともに、エレナの弾んだ声が聞こえてくる。
スキルで作った『天然のオーガニック豪邸』での生活が始まって一週間。俺──スイルの毎日は、控えめに言って天国そのものだった。
リビングへ向かうと、そこにはエプロン姿のエレナが作った豪華な料理が並び、すでにリリアーヌとジャンヌが席についていた。
「遅いわよ、スイル! 王女である私がこうして待ってあげているのよ?」
「いや、リリアーヌ様。あなたさっきまでスイルの部屋のドアの前で、いつ入ろうかソワソワしていたではないか」
「な、なな何を言うのよジャンヌ! 私はただ、今日の予定を確認しようと──!」
顔を真っ赤にして怒るリリアーヌと、それをからかうジャンヌ。
そんな賑やかな彼女たちを眺めながら、俺は温かいスープを口に運んだ。
前世ではブラック企業で擦り切れるまで働き、この世界に転生してからも『バットギルド』の奴らにゴミのように扱われ、ただ雑用をこなすだけの日々だった。
あの理不尽で地獄のような日々を思えば、今のこの環境は、奇跡以外の何物でもない。
(……ああ、本当に異世界に来て良かった。前世のあの惨めな人生とは違う)
俺は静かに拳を握りしめ、心の中で深く、強く誓った。
「──この世界では、本気出す」
もう誰かに怯える必要もない。大切な仲間たちと、この最高のスローライフを全力で守り抜いてみせる。
「スイル様? 急に真剣な顔をして、どうされたのですか?」
エレナが心配そうに顔を覗き込んできた。その拍子に、エプロンの隙間から綺麗な鎖骨が見えて、俺のシリアスな決意は一瞬でどこかへ吹き飛んだ。
「あ、いや、なんでもないよ。エレナの料理が美味しすぎて感動してただけさ」
「もう、スイル様ったら……っ!」
エレナが嬉しそうに顔を染める。リリアーヌとジャンヌも「私にも一口ちょうだい!」と騒ぎ始め、食卓はさらに賑やかになった。
俺の最強異世界生活。愛する彼女たちに囲まれながら、俺は今日もこの世界を本気で楽しむのだった。




