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第八話

「ふはー……。夜の城下町の空気って、なんでこんなに美味いんだろ」

 昼間の喧騒が嘘のように静まり返った、真夜中の王宮のバルコニー。

 俺──スイルは、一人で冷たい夜風に吹かれていた。レベル999になってから、夜中に目が冴えてしまうことが増えたのだ。

 すると、背後から軽い足音が近づいてきた。

「あら、スイルも『夜ふかし』? 奇遇ね」

 振り返ると、薄い寝巻きを羽織ったリリアーヌが、金髪をほどいて立っていた。

 さらにその後ろからは、銀髪を夜風に揺らせたエレナと、昼間の鎧を脱いでラフな格好をしたジャンヌまで現れる。

「スイル様、夜風は冷えますよ? ……でも、誰もいない夜の世界って、なんだか特別な感じがしますね」

「ああ。昼間は義務だの忠誠だのとうるさいが、夜は誰も私を縛らん。今日という日に満足してない奴だけが、こうして夜ふかしをする特権を得るのさ」

 ジャンヌがどこかで聞いたような格好いいセリフを呟きながら、ニヤリと笑う。

「今日に満足してない、か。確かに俺、最強の力を手に入れたのに、まだ自分の家すら持ってないもんな」

 俺がポツリと言うと、リリアーヌがパッと顔を輝かせた。

「それなら、私にいい考えがあるわ! この国の最高の領地に、あなたの理想のマイホームを建てましょう!」

     *

 翌日、俺たちはリリアーヌが用意してくれた、豊かな自然に囲まれた広大な一等地へと向かった。

 目の前には、手つかずの美しい草原と、澄んだ川が広がっている。

「ここをスイルの領地として認めるわ。でも、家を建てるには腕の良い大工を雇って、何ヶ月も──」

「いや、そんなに待たなくても大丈夫。──『草を操る』」

 俺は地面の青々とした芝生に手を当て、魔力を一気に流し込んだ。

 刹那、周囲の草木が意思を持ったように猛スピードで組み上がり、太い大樹の幹が美しく絡み合っていく。

 ズズズズズ……ドーーーーン!!!!!

 わずか数十秒。そこには、大自然の木々と緑で構成された、おとぎ話に出てくるような巨大で豪華な『天然のオーガニック豪邸』が出来上がっていた。

 自動で周囲の魔力を吸収して外敵を弾く、最強の防壁システム付きだ。

「は……? 魔法の資材も使わずに、一瞬でこんな大邸宅を……!?」

「ス、スイル様……これなら、私たち全員で住んでも部屋が余りまくります!」

 リリアーヌとエレナが、口をあんぐりと開けて驚愕している。ジャンヌにいたっては、あまりのスケールの大きさに呆然と立ち尽くしていた。

「よし、これで俺たちの最高のスローライフの拠点が完成だな。……さて、せっかくの引っ越し初日だ。今夜もみんなで、最高の『よふかし』を楽しもうか」

 俺が笑ってみせると、三人の美少女たちは顔を赤くしながら、嬉しそうに俺の新しい家に足を踏み入れるのだった。

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