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第七話

「お前が『神樹』を一瞬で蘇らせたという、噂の男スイルか!」

 神樹を救った翌日。王宮の広大な訓練場に、けたたましい足音が響き渡った。

 現れたのは、隣国から親善大使として滞在していた聖騎士団長、ジャンヌだった。

 燃えるような赤髪をポニーテールにし、白銀の鎧をまとった凛々しい美女だ。だが、その瞳は戦闘狂のそれであり、俺を完全に値踏みするように見つめている。

「私の剣を前にして、一歩も引かないか。フッ、気に入った。スイルとやら、私と手合わせを願おう! 断ることは許さん!」

「いや、俺はのんびりスローライフを過ごしたいだけで──」

 俺がやれやれと首を振った瞬間、ジャンヌは腰の聖剣をスラリと引き抜き、ビシィッと鋭い構えを取った。

「だが断る! このジャンヌ・ド・ルシル、強いと噂の男を前にして引き下がる趣味はない!」

 彼女はまっすぐに剣を突き出し、好戦的な笑みを浮かべる。

 呆れる俺の隣で、エレナとリリアーヌがすかさず前に出た。

「無礼ですよ、ジャンヌ様! スイル様の手を煩わせるまでもありません、この私が!」

「そうよ! 我が国の救世主に無断で剣を向けるなんて、王女の私が許さないわ!」

 一触即発の空気が流れる中、俺は一歩前に出て二人を制した。ここで彼女たちに怪我をさせるわけにはいかない。

「いいよ、二人とも。……ジャンヌさん、あんたの覚悟は本気みたいだし、少しだけ付き合うよ。ただし、一撃で終わらせるけどいいかい?」

「ハッ! 大きく出たな! この私の『神速の連撃』を、ただの草使いが防げると思うなよ!」

 ジャンヌが地面を蹴った。

 凄まじい風圧とともに、彼女の聖剣が目にも留まらぬ速さで突き出される。

「喰らえ! 我が究極の連撃をォォォッ!!!」

 無数の剣の残像が、俺の身体を切り刻まんと迫る。

 だが、レベル999の俺から見れば、その猛攻も止まっているかのように遅かった。

「──『草を操る』」

 俺は足元に生えていた小さなクローバーに魔力を込めた。

 刹那、俺を中心に、鋼鉄をも超える超硬度の雑草の壁が激しい音を立てて急成長した。

 キィィィィィン!!!!!

 ジャンヌの神速の連撃は、その緑の防壁にすべて弾き返され、激しい火花を散らす。

「な、何だと……!? 私の聖剣が、ただの雑草に防がれた……!? ば、馬鹿な!」

「言ったろ、一撃で終わらせるって」

 俺はクローバーのツタを一本だけ伸ばし、ジャンヌの持つ聖剣の柄に巻き付けた。そして、軽く指をスナップする。

 パシィィィン!

「あ……がはっ!?」

 ツタから放たれた規格外の衝撃波により、ジャンヌは武器をもぎ取られ、そのまま訓練場の壁まで吹き飛ばされて背中から激突した。

 隣国最強の聖騎士団長が、指一本触れられずに完全敗北したのだ。

「ふぅ……。やっぱり、朝の澄んだ空気の中でスキルを使うのは、最高に気持ちがいいな」

 俺が何でもないように髪をかき上げると、壁からずり落ちたジャンヌが、信じられないという顔でこちらを見ていた。その顔は恐怖ではなく、未知の強者に出会った高揚感で赤く染まっている。

「ま、参った……。まさか、世界にこれほどの男がいたとは……。スイル、お前こそが私の探していた、真のあるじだ……!」

 ジャンヌはよろよろと立ち上がると、俺の前に跪き、忠誠を誓うように俺の手を取った。

「これからは、この私の剣をお前のために振るおう!」

「ちょっと待ちなさいよ! 勝手にスイルの身内に入り込もうとしないで!」

「そうです! スイル様の隣は私たちの特等席なんですから!」

 リリアーヌとエレナが、またしても俺の左右の腕をガシッとホールドし、ジャンヌを睨みつける。

 最強の女騎士まであっさりと味方にしてしまった俺の異世界生活。これから一体どうなってしまうのか、ますます賑やかになる予感しか連れてこなかった。

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