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第六話

「はぁ……まさか本当にベッドの真ん中で寝かされる羽目になるとはな」

 翌朝、俺──スイルは、極上の柔らかさに挟まれて目を覚ました。

 右側には俺の服の裾をギュッと握りしめて眠るエレナ、左側には顔を真っ赤にしながら俺の腕を枕にしている王女リリアーヌ。

 これ以上ない最高の目覚めだが、流石に緊張で肩が凝った。

「スイル、起きたの……? さあ、約束通り我が国の『神樹』のところへ案内するわ。早く行きましょう!」

 リリアーヌが飛び起き、俺の腕を引っ張る。エレナも慌てて起きて、俺のもう片方の腕をがっしりとキープした。

 こうして俺は、二人の美少女に付き添われるという、周囲の冒険者が見たら血涙を流しそうな格好で、王宮の最深部へと向かうことになった。

     *

 案内されたのは、王宮の地下にある広大な神殿だった。

 その中心には、国全体の防衛結界の要である巨大な大樹──『神樹アルカディア』がそびえ立っていた。

 だが、その葉はすべて枯れ落ち、幹は灰色に変色して今にも崩れ落ちそうだ。

「これはひどいな……本当に枯れかけてる」

「そうなのよ。バットギルドの奴らが、ここの維持管理の予算を横領した上に、間違った魔術を施したせいで、もう手の施しようがないって宮廷魔導士たちに言われて……」

 リリアーヌが悲しそうにうつむく。エレナも心配そうに俺の顔を覗き込んできた。

 周囲にいた頭の硬そうな宮廷魔導士の老人たちが、俺の姿を見て不満げに鼻を鳴らす。

「おいおい、王女殿下。まさかそんな、ギルドを追放されたような若者に、国の最高機密を触らせるおつもりですか?」

「スキル『草を操る』だと? そんな園芸用のゴミスキルで、神樹様が蘇るわけがなかろう!」

 どこに行っても、こういう頭の古いモブはいるらしい。

 俺はため息をつきながら、神樹の根元へと歩み寄った。

「ゴミスキルかどうか、その目で確かめてみるといいさ。──『草を操る(真・神樹覚醒状態)』」

 俺は足元に生えていた、何の変哲もない小さな雑草にそっと触れた。

 そして、その雑草が持つわずかな生命力を、スキルによって『10万倍』に増幅。そのまま、神樹の根へと流し込んだ。

 次の瞬間──。

 ゴオォォォォォォン!!!!!

 神殿全体が、目を開けていられないほどの眩い緑の光に包まれた。

「な、なんだこの桁違いの生命エネルギーは……!?」

「バカな! ただの雑草から、世界を埋め尽くすほどの魔力が溢れ出ているぞ!」

 宮廷魔導士たちが、驚愕のあまり腰を抜かして床にひっくり返る。

 光が収まったとき、そこにあったのは、天をも突き抜けんばかりに青々と繁り、神々しい黄金のオーラを放つ『完全復活した神樹』の姿だった。

 それどころか、神樹から溢れた魔力のせいで、国全体の防衛結界がこれまでの100倍以上の強度で再展開されていた。

「は……? 一瞬で、神樹様が元通りに……?」

「嘘……これ、神話の時代でもあり得ないレベルよ……!」

 リリアーヌもエレナも、あまりの規格外すぎる光景に、口をあんぐりと開けて完全にフリーズしていた。

「よし、これでしばらくは大丈夫だろ」

 俺が何でもないことのように手を払うと、宮廷魔導士たちが一斉に俺に向かってドゲザした。

「ス、スイル様! 先ほどは大変な無礼をいたしました! どうか、我が国の最高魔導顧問になってください!」

「いや、俺はのんびりスローライフを送りたいから、そういう面倒なのはお断り。なぁ、リリアーヌ、エレナ」

 俺が振り返ると、リリアーヌは完全に恋する乙女の目で俺を見つめ、エレナは誇らしげに胸を張っていた。

「ええ、スイルは私の……じゃなくて、我が国の救世主よ! 誰にも縛らせないわ!」

「はい! スイル様は、私たちが全力でお守りします!」

 こうして俺は、国を裏から支配するほどの最強の力を示してしまった。

 二人の美少女にますます深く愛されながら、俺の気ままな異世界生活は、さらにとんでもない領域へと突き進んでいくのだった。

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