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第四話

「す、スイル様……お風呂、とっても気持ちよかったです……!」

 湯気とともに浴室から出てきたエレナを見て、俺は息を呑んだ。

 貸した大きめのシャツ一枚だけを羽織った彼女は、濡れた銀髪から水滴を滴らせている。ボタンの間から覗く白い肌と、太もものラインが眩しすぎる。

「あ、ああ、気に入ってくれてよかった。ベッドも広いし、ゆっくり休んで──」

「あの……スイル様。ベッド、一つしかありませんね? 私、スイル様と一緒なら、その……狭くても全然平気ですっ!」

 エレナが顔を真っ赤にしながら、俺の腕に抱きついてきた。

 薄いシャツ越しに、彼女の柔らかくて豊かな胸の感触がダイレクトに腕へと伝わってくる。

(うおおお! これは異世界スローライフどころか、異世界ハーレムライフ突入か!?)

 理性が消し飛びそうになった、その時だった。

 ドーーーーン!!!!!

 激しい音を立てて、スイートルームの頑丈な扉が勢いよく踏み外された。

「そこまでよ! この国家の危機に、一国の王女である私を差し置いて、何を破廉恥なことをしているの!」

 現れたのは、光り輝く金髪をツインテールにした、気の強そうな美少女だった。

 身にまとっているのは、美しい装飾が施された最高級の魔導鎧。小柄ながらも、ツンと上を向いた胸元が彼女のプライドの高さを物語っている。

「王女……? ていうか誰だよ、人の部屋のドアをぶっ壊して!」

「無礼者! 私はこの国の第一王女、リリアーヌ・ド・アルカディアよ! Sランクの魔物を植物の綿毛一つで瞬殺した規格外の男がいると聞いて、直々にスカウトに来てあげたわ!」

 王女リリアーヌは、ふんっと豊満な胸を反らせて俺を指差した。

 だが、俺の腕には未だにシャツ一枚のエレナがしがみついている。リリアーヌは俺たちの密着ぶりを見て、一瞬で顔を真っ赤に染めた。

「な、ななな、何よそのハレンチな格好は! 昼間から女を連れ込むなんて、やっぱり男なんてみんな不潔で野蛮な生き物なんだわ!」

「あんたが勝手に入ってきたんだろ! 大体、俺はのんびり暮らしたいから、国の専属になる気はない!」

「は、はあ!?」

 リリアーヌが、信じられないという顔で絶句した。王女である自分の誘いを、一秒で断る男など今までいなかったのだろう。

「わ、私直々の頼みなのよ!? あなたを追放した『バットギルド』のせいで、我が国の防衛結界の維持費が跳ね上がって、国家予算が大ピンチなの! あいつらの代わりに、あなたのその『草を操る』っていうバグスキルで、結界の基盤になる神樹に魔力を注ぎなさい!」

 なるほど、バットギルドが国から受けていた大きな仕事の裏にも、俺のパッシブバフが関わっていたらしい。あいつらが奴隷落ちしたせいで、国全体が大慌てというわけか。

「断る。俺を無能扱いした連中の尻拭いなんてごめんだ」

「なっ……! な、なら、私が直々にあなたの実力を試してあげるわ! 私が負けたら、あなたの言うことを何でも聞いてあげる! でも、私が勝ったら大人しく国に尽くしなさい!」

 リリアーヌは顔を真っ赤にしながら、腰の細剣レイピアを引き抜いた。

 王宮一の天才魔導剣士と謳われる彼女の剣技は、確かに鋭い。だが、レベル999の俺の前では、止まっているも同然だった。

「──『草を操る』」

 俺がパチンと指を鳴らす。

 すると、部屋の生け花から伸びた一本のツタが、リリアーヌの突進を一瞬で捉えた。

「えっ……!? うそ、動けな──ひゃうんっ!?」

 ツタは彼女の剣を弾き飛ばし、そのまま彼女の細い手足を絡め取って、宙に吊るし上げた。

 おまけに、リリアーヌがもがけばもがくほど、ツタは彼女の体に食い込み、自慢の魔導鎧の隙間から細いウエストや太ももを締め上げていく。

「な、何これ!? ツタが勝手に私の魔力を吸い取って……力が、入らな……ん、あんっ……!」

 ツンとしていた王女様が、植物の締め付けによる微弱な快感(魔力吸収の副作用)のせいで、急に艶めかしい声を漏らして顔を染める。

「ス、スイル様、これはちょっと……破廉恥すぎますっ!」

「ち、違うんだエレナ! ただ捕まえただけなのに、なぜかこんなエロい展開に!」

 宙に吊るされた金髪ツンデレ王女と、シャツ一枚で俺にすがる銀髪エルフ。

 俺ののんびりスローライフは、どうやら2人の美少女によって、ますます賑やか(で少しスケベ)な方向へ暴走し始めてしまったようだ。

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