表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

第三話

「お、おい……測定器が木っ端微塵に吹き飛んだぞ……!?」

「あいつの魔力、一体どうなってやがるんだ……」

 静まり返る冒険者ギルド。

 粉々になった水晶玉の破片を前に、元リーダーのアルゴは腰を抜かして床にへたり込んでいた。

 隣にいるエレナは、目をキラキラと輝かせながら俺の腕にギュッとしがみついてくる。

「すごいです、スイル様! ギルド最高の測定器を破壊してしまうなんて……やっぱり私の目に狂いはありませんでした!」

 エレナが興奮して跳ねるたびに、俺が貸したコートの隙間から、豊かな胸が腕に何度も押し当てられる。

(うおお、柔らかい……! 役得、まさに役得……!)

 俺が内心で鼻の下を伸ばしていると、ギルドの重い扉が勢いよく開いた。

「ギ、ギルドマスター! 大変です!」

 息を切らせた若手冒険者が飛び込んでくる。

「街のすぐ近くの街道に、最高警戒度Sランクの魔物『地響きの大百足ギガ・セントピード』が出現しました! 現在、バットギルドの残りのメンバーが交戦中ですが、全滅寸前です!」

「なんだと!?」

 ギルドマスターが顔を青くする。

 すると、床に倒れていたアルゴが、弾かれたように若手冒険者の胸ぐらを掴んだ。

「嘘だろ!? 俺たちが抜けたとはいえ、うちのメンバーがSランクごときに負けるわけが──」

「それが、あいつら急に動きが鈍くなって、普段の10分の1も力が出ていないみたいなんです!」

 その言葉を聞いて、俺は納得した。

 俺のスキル『草を操る』の真の効果は、周囲の植物の生命力を吸い上げ、味方に還元すること。

 つまり、俺がバットギルドの荷物持ちをしていた時、彼らは無自覚に俺から『全ステータス10倍バフ』を受け取っていたのだ。それが消えた今、あいつらはただの一般兵並みに弱体化している。

「ス、スイル……お前、何か知ってるんだろ!?」

 アルゴが、プライドをかなぐり捨てて俺の足元に縋り付いてきた。

「頼む、戻ってきてくれ! 荷物持ちじゃなくて、副リーダーにしてやる! 報酬も山分けだ! だからあいつらを、俺のギルドを助けてくれぇ!」

 額を床に擦り付け、涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら土下座するアルゴ。

 さっきまで俺をゴミのように見下していた男の、あまりにも惨めな姿だった。

 ギルド中の冒険者たちが、冷ややかな目でアルゴを見下している。

「──いまさら戻ってきてくれと言われても、もう遅いです」

 俺はアルゴの手を静かに振り払った。

「あんたたちは俺を無能だと切り捨てた。その結果がこれだ。自業自得だよ」

「そんな……っ! 頼む、頼むスイル──!」

 絶望に染まるアルゴを置き去りにし、俺はエレナの方を向いた。

「エレナ、ちょっとその辺の草を間引いてくる。ここで待ってて」

「はい! スイル様、お気をつけて!」

 俺はギルドを飛び出し、街道へと向かった。

 そこでは、巨大な百足の魔物が、バットギルドのメンバーを今にも噛み砕こうとしているところだった。

「ひ、ひぃぃ! アルゴ、助けてくれぇ!」

「グルルル……!」

「やれやれ。街に被害が出ちゃスローライフの邪魔だからな」

 俺は足元に生えていたただの『タンポポの綿毛』を一つ、ふっと息で吹き飛ばした。

 それと同時に、スキル『草を操る』を発動する。

「──『烈風・千本緑針ニードル・ストーム』」

 俺の魔力を吸った綿毛の一粒一粒が、音速を超えるダイヤモンド並みの硬度の針へと急成長。数千発の緑の閃光となって、大百足を襲った。

 ドバババババババババッ!!!!!

「ギェェェェーーーッ!?」

 Sランクの魔物が、悲鳴を上げる暇さえなく一瞬で蜂の巣にされ、光の粒子となって消滅した。

 バットギルドのメンバーたちは、腰を抜かしたまま、ただ呆然と空を見上げていた。

「よし、これで終わりだな」

     *

 ギルドに戻ると、Sランク魔物を瞬殺した俺は、一気に最高ランクの冒険者として特別待遇を受けることになった。

 ギルドマスターから差し出されたのは、街で一番の高級宿のスイートルームの鍵だ。

「スイル様、本当にありがとうございました! あの、不躾なお願いなのですが……私もそのお部屋に、一緒に行ってもよろしいでしょうか? もっとスイル様のおそばにいたいのです……!」

 エレナが顔を林檎のように真っ赤にしながら、上目遣いで指をもじもじさせている。コートのボタンが外れ、またしても素晴らしい谷間が主張していた。

「も、もちろん大歓迎だよ!」

 元パーティーのバットギルドは、クエスト失敗の違約金と、俺への不当な追放による罰金で完全に破産し、全員奴隷に落ちることが確定したらしい。

 あいつらがどうなろうと、もう知ったことじゃない。

 俺は美少女エルフとの、最高に甘くて刺激的な異世界スローライフを存分に満喫するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ