表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/21

第二話

「お、おい、なんだ今の地響きは……!?」

 俺──スイルが放った神級魔法『終焉の樹界降臨エルドラド』の余波で、森の半分が消し飛び、巨大なクレーターが出来上がっていた。

 レベル999の力は伊達じゃない。だが、さすがにやりすぎた。目立ちすぎるのはスローライフの敵だ。

「とりあえず、一回街に戻るか……」

 自分のステータスを確認しながら、俺は冒険者ギルドのある街へと引き返すことにした。

 道中、ガサガサと茂みが激しく揺れる。また魔物か? と身構えた瞬間──。

「きゃああっ!?」

 飛び出してきたのは、魔物ではなく、一人の美しい少女だった。

 透き通るような銀髪に、尖った耳。おまけに、着ている緑のローブはボロボロに引き裂かれ、信じられないほど豊かな胸元や、白い太ももが容赦なく露出している。

「うおっ!? す、すごいスタイル……じゃなくて大丈夫か!?」

「た、助けて……! 『暴走した殺人熊キラーベア』に襲われて……ひゃんっ!?」

 少女が足を滑らせ、俺の胸に飛び込んでくる。

 柔らかい感触がまともに俺の体に衝突した。しかも、彼女の引き裂かれた衣服のせいで、肌と肌が直接触れ合っている。

(お、おふぅ……! 異世界転生して最高のイベントが始まったのでは……!?)

 鼻血が出そうなのを必死に堪えていると、背後の森から巨大なキラーベアが咆哮を上げて迫ってきた。

「グルァァァァッ!」

「ああっ、もうダメです……!」

 少女が恐怖で目を瞑り、俺の服をギュッと握りしめる。

 だが、今の俺はレベル999だ。

「大丈夫。ちょっとそこらの雑草に、お留守番を頼むだけだからさ」

 俺は足元に生えていたただのツタに魔力を流し、スキル『草を操る』を発動した。

 すると、ツタは一瞬で太い大蛇のような大樹の根へと急成長し、キラーベアを一瞬でガッチリと締め上げた。

「ガ、ブッ……!?」

 バキバキ、と小気味いい音が響き、危険度Aランクの魔物が指一本触れられずに圧殺される。

「へ……? キラーベアが一瞬で……?」

 銀髪の少女が、信じられないものを見る目で俺を見上げてくる。

 そして次の瞬間、俺から溢れ出た規格外の魔力のプレッシャー(風圧)のせいで、少女のボロボロだったローブの紐がプツンと切れた。

「あっ……!」

「しまっ──」

 ハラリ、とローブが完全に滑り落ち、彼女の眩しすぎる下着姿(というか、ほぼ全裸に近い状態)が露わになる。

「ひゃああああっ!? な、何を見てるんですかこの変態エルフキラーーーッ!」

「違うんだ! 俺の魔力の風圧のせいで不可抗力なんだって!」

 真っ赤になった彼女からポカポカと涙目で叩かれながらも、俺の目はどうしてもその素晴らしいプロポーションに釘付けになってしまうのだった。

     *

 なんとか誤解を解き(俺の予備のコートを貸した)、彼女と一緒に街の冒険者ギルドへと戻ってきた。

 彼女の名前はエレナ。高貴なエルフの血を引く魔導士らしい。

「本当にありがとうございました、スイル様。あの……服を借りたお礼に、ギルドの登録、私がお手伝いします!」

 すっかり懐いてくれたエレナに連れられ、俺はさっき追放されたばかりのギルドの門を再び潜った。

 すると、受付カウンターの奥から、聞き覚えのある下品な笑い声が聞こえてくる。

「ハハハ! あのゴミ虫スイル、今頃森で魔物のエサになってるぜ!」

 『バットギルド』のリーダー、アルゴだ。

 あいつら、まだギルドで油断して騒いでやがったのか。

「おや、アルゴさん。ずいぶんと楽しそうですね」

「あ? 誰だてめえ……って、ス、スイル!? なんで生きてやがる!」

 アルゴや周りのモブ冒険者たちが、幽霊でも見たかのようにガタガタと立ち上がる。

「ふん、ゴミを拾ってくれる奇特なパーティーでも見つけたか? おいおい、そこのエルフの姉ちゃん、そいつは『草を操る』しかできない無能だぞ?」

「失礼なことを言わないでください! スイル様は、キラーベアを一撃で倒した偉大な御方です!」

 エレナが胸を張って言い返す。ギルド内が「ざわ…」と静まり返った。

「ハッ、嘘吐きやがれ! おいギルドマスター、こいつのステータスと魔力を測定器で計り直してくれ! 不正を暴いてギルドから永久追放だ!」

 アルゴが騒ぐので、困り果てたギルドマスターが、巨大な魔力測定の水晶玉を持ってきた。

「スイルくん、一応、この水晶に手をかざして魔力を流してみてくれ」

「わかりました(まあ、ちょっとだけ手加減して流すか……)」

 俺はほんの、本当に指先から一滴垂らすくらいの気持ちで、水晶玉に魔力を込めた。

 次の瞬間──。

 ピキィィィィィィン!!!!!

 ギルド全体が太陽のような黄金の光に包まれる。

「な、なんだこの魔力は!? 測定不能、いや、数値が跳ね上がりすぎて──」

 ドガァァァァァン!!!!!

 ギルドが誇る最高級の魔力測定器が、俺の魔力に耐えきれず、大爆発を起こして粉々に吹き飛んだ。

「「「「「は?????(驚愕)」」」」」

 アルゴも、ギルドマスターも、そして隣にいたエレナまでもが、口をあんぐりと開けて完全にフリーズしていた。

 俺の最強スローライフ(と、ちょっとスケベなハーレム生活)は、ここから始まるらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ