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第一話

 お前のような無能は、我が『バットギルド』には必要ない」

 きらびやかな冒険者ギルドの一室。

 豪華な革椅子に深く腰掛けたリーダーのアルゴが、俺を見下しながら冷酷に言い放った。

 その背後には、かつて仲間だと思っていたメンバーたちが、嘲笑を浮かべながらこちらを見ている。

「待ってくれ、アルゴ。俺が抜ければ、このパーティーの荷物持ちや雑用は誰がやるんだ?」

「そんなもの、新しく奴隷でも雇えばいいさ。お前が授かったスキルを見たか? 『草を操る』だぞ? 雑草をちょっと動かすだけの、戦闘にも補助にも使えない正真正銘のゴミスキルだ。そんなお荷物をいつまでも置いておけるかよ」

 アルゴは鼻で笑い、床にペッと唾を吐いた。

「おい、ギルドマスター! こいつの登録を我がパーティーから外してくれ。あ、そうだ。こいつが今まで使った装備や滞在費、全部違約金として請求しといてくれよな」

 周りの冒険者たちからも、クスクスと哀れむような笑い声が漏れる。

 誰も俺──スイルの味方はいなかった。これまでどれだけ彼らのために尽くしてきたとしても、この世界では『スキル』がすべてなのだ。

「……わかった。今までありがとう」

 俺は拳を握りしめ、静かに部屋を後にした。

 財布の中身は数枚の銅貨だけ。文字通り、すべてを失った。

 *

 街を出て、あてもなく歩いているうちに、俺は危険な『絶望の魔の森』の入り口まで来てしまっていた。

 ガサガサ、と草むらが揺れる。

「グルルル……!」

 現れたのは、新米冒険者なら一瞬で案内所に送られる危険度Bランクの魔物、『迷宮狼ダンジョンウルフ』だった。

 終わった。武器もない。雑草をゆらすだけのゴミスキルしかない俺は、ここで死ぬんだ。

『条件が達成されました。対象の絶望値を検知。固有スキル【草を操る】の真の能力を解放します』

 頭の中に、冷徹な機械音声が響いた。

「え……?」

『草を操る』──それはただの草木を少し動かすだけの地味な効果だと言われていた。

 しかし、俺の目の前に現れた半透明のステータスボードには、全く違う文字が並んでいた。

 《 固有スキル:草を操る(真・神樹覚醒状態)》

 《 効果:世界樹を含むすべての植物の生命力を無限に増幅し、その全ステータスを宿主に還元する 》

『自動発動:周囲の草木から魔力を10000倍にして吸収。および、対象の魔物の生命力を恒久的に強奪します』

「ガ、ア……!?」

 目の前のダンジョンウルフが、急に苦しみ出してその場に倒れ伏した。

 それと同時に、俺の体に見たこともない濃密な魔力と、圧倒的な力が流れ込んでくる。

 《 報告:個体名スイルのレベルが 1 から 999 に上昇しました 》

 《 報告:神級植物魔法『終焉の樹界降臨エルドラド』を習得しました 》

「な、なんだこれ……!?」

 指先を少し動かしただけで、足元の雑草が一瞬で大樹へと急成長し、周囲の大気がビリビリと震える。

 試しに、迫ってきた別の魔物に向けて、新しく覚えた魔法を軽く放ってみた。

「──『終焉の樹界降臨』」

 ドゴォォォォォン!!!

 凄まじい爆音と共に、目の前の森から巨大な黄金の根が突き出し、地平線の彼方まで敵を消し飛ばしながら巨大なクレーターが出来上がっていた。

「は……?」

 呆然と自分の手を見る。

 ゴミスキルだと思っていたものは、世界のシステムさえも書き換える、規格外の神チートスキルだったのだ。

「あいつら……俺のスキルの本当の価値に、気づいてなかったんだな」

 ふと、自分を追い出した『バットギルド』の面々を思い出す。

 俺のこのスキルは、実はパーティー全体の生命力を裏で10倍に底上げするパッシブ効果も持っていた。それを受け持っていた俺が抜けたのだ。あいつらが今頃どうなっているか、想像するまでもない。

「まあ、もう俺には関係ないか」

 これほどの力があれば、もう誰かに媚びる必要もない。

 俺は最強の力を隠しながら、異世界でのんびり気ままなスローライフを送ることを決意した。

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