第二十話
あれから、一体どれだけの月日が流れただろうか。
俺──スイルが、愛する妻たちであるエレナ、リリアーヌ、ジャンヌとともに最強の家族冒険者パーティーとして世界を旅し始めてから、数十年。
俺たちの残した足跡は数々の伝説となり、子供たちも立派に育ってそれぞれ自分の家庭を持つまでになった。
そして今、俺たちは旅の果てに建てた、始まりの場所によく似た緑の木々に囲まった小さな邸宅のベッドに、みんなで横たわっていた。
かつて世界一美しいと言われた妻たちの髪には白いものが混じり、俺の手もすっかりシワだらけになっていた。
レベル999の俺の魔力をもってしても、時の流れという寿命だけは変えられない。だけど、俺の胸の中にあるのは、不思議なほど満ち足りた、どこまでも穏やかな気持ちだった。
「スイル様……」
俺の右側で、優しく微笑むエレナが、シワの刻まれた愛おしい手で俺の右手を握ってきた。
「スイル様と出会えて、たくさんの子供たちを授かって……私、本当に世界一幸せなエルフでした……。生まれ変わっても、またスイル様の妻にしてくださいね……」
「ああ、もちろんだよ、エレナ。俺の方こそ、君が隣にいてくれて救われたんだ。ありがとう」
エレナは安心したようにそっと目を閉じ、穏やかな呼吸のまま、まるで眠るように静かに息を引き取った。その顔は、まるでお昼寝をしているかのように幸せそうだった。
「ふふ、エレナに先を越されちゃったわね……」
俺の左側から、愛おしそうに俺の腕を抱きしめるリリアーヌの、掠れた声が聞こえてくる。
「王女の座を捨てて、あなたと世界中を旅した毎日……本当に、一秒だって退屈しなかったわ。最後にあなたに看取ってもらえるなんて、やっぱり私はチョロい王女様ね……大好きよ、スイル……」
「俺も大好きだよ、リリアーヌ。ずっと俺の特別な王女様だ」
リリアーヌもまた、俺の腕の中で満足そうに笑みを浮かべたまま、静かに深い眠りへと落ちていった。
「スイル……」
最後に、俺の胸元に頭を預けていたジャンヌが、ゆっくりと俺を見上げてきた。
「私の生涯の剣は、すべてお前と家族のためにあった。最後の最期まで、お前の前衛にいられて……誇らしかったぞ。……少し、眠くなってしまったな……」
「お疲れ様、ジャンヌ。俺の背中を守ってくれてありがとう。ゆっくり休んでくれ」
ジャンヌは俺の胸に顔を埋めたまま、静かにその大往生の生涯を全うした。
両腕に、そして胸元に、生涯をかけて愛し抜いた三人の最愛の妻たちの温もりを感じる。
前世のブラック企業で孤独に人生を終えそうだった俺が、異世界に転生し、本気で生きて、こんなにもたくさんの愛に包まれて最期を迎えている。
カクヨムやなろうの物語なら、ここで「おしまい」だろう。
だけど、俺たちの絆はきっと、これで終わりじゃない。
「みんな、本当にありがとうな。……また向こうで、のんびりスローライフを始めようか」
俺は三人の妻たちの手をしっかりと握りしめ、ゆっくりと目を閉じた。
レベル999の最強の草使いスイルの、そして彼を愛した最高の妻たちの物語は、どこまでも温かい祝福の光に包まれながら、静かに幕を閉じるのだった。
第二章 完




