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番外編

「──よし、今日も神樹の庭は青々と茂ってるな!」

 始まりの場所である、大自然の木々に囲まれた大きな邸宅。

 かつて世界を救った大英雄スイルと、その最愛の妻たちが穏やかに旅立ってから、数年の月日が流れていた。

 あるじを失ったはずのその庭は、今も変わらず黄金の神々しいオーラを放ち、色鮮やかな花々が咲き誇っている。

 庭の真ん中で快活な声を上げたのは、銀色の髪をなびかせた一人の美しい少女──スイルとエレナの間に産まれた長女、リーフィだった。

 彼女が足元の小さな雑草にそっと触れると、草木は嬉しそうに身を震わせ、一瞬で色鮮やかな花を咲かせる。父親譲りの規格外のバグスキル『草を操る』は、見事に次の世代へと引き継がれていた。

「お姉ちゃん、朝から張り切りすぎ。スイルお父様が言ってたでしょ? 『のんびりスローライフを送るのが一番だ』って」

 邸宅のテラスから呆れたように声をかけたのは、金髪のツインテールを揺らす少女──リリアーヌの面影を色濃く残す次女のルナだ。手元でパラパラと魔導書をめくる姿は、かつての天才王女そのものである。

「ルナの言う通りだぞ、リーフィ。あまり魔力を使いすぎると、お父様のように測定器を爆破してしまうからな」

 そう言って赤髪のポニーテールを揺らしながら、木剣を片手に笑ったのは、ジャンヌの凛々しさと戦闘センスを受け継いだ三女のシアだった。

 かつて世界一最強で、世界一賑やかだった家族の血は、三人の娘たちの中に確かに息づいていた。

「ねえ二人とも、今日は街のギルドから依頼が届いてるの。最近、森の奥でSランクの魔物が暴れて困ってるんだって。私たちの『家族パーティー』で、ちょっとお散歩がてら片付けに行かない?」

 リーフィが冒険者プレートを掲げながら提案すると、ルナはため息をつきつつも不敵に微笑み、シアは「私の剣の錆にしてくれよう」と目を輝かせた。

 彼女たちが街へ向かうと、相変わらずギルドの門前では、彼女たちの正体を知らないガラの悪いモブ冒険者たちが絡んでくる。

「おいおい、お嬢ちゃんたち、そんな可愛い格好で冒険者気取りか? 危ないから俺たちと──」

「「「ですが断ります」」」

 三人の娘たちは、かつて父親が使っていた懐かしい名セリフを綺麗にハモらせた。

 底辺から這い上がった父の教え通り、理不尽な絡みには毅然と立ち向かうのがこの家族のルールだ。

 リーフィが足元のクローバーにほんの少しだけ魔力を流した瞬間、ギルドの目の前に鋼鉄を超える巨大な植物の防壁がドゴォォォォォン!!と出現する。

「ひ、ひぃぃぃ! なんだこのバケモノみたいな魔力はぁぁぁ!?」

 腰を抜かして逃げ出していくモブたちを見送りながら、三人の娘たちは顔を見合わせて、お互いに楽しそうにクスリと笑い合った。

「やっぱり、お父様とお母様たちが残してくれたこの世界は、最高に平和で楽しいね!」

 偉大な両親はもういない。けれど、彼らが本気で守り抜いたこの世界で、最強の遺伝子を持った子供たちの新しく賑やかなスローライフ(と、たまに大無双)は、これからもどこまでも幸せに続いていくのだった。


番外編 完

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