第十六話
「ふふ、お待たせしましたスイル様。今日のご褒美ですっ」
魔王が消滅し、世界に完全な平和が訪れてから数日。
緑豊かな『天然のオーガニック豪邸』の広々としたリビングで、俺──スイルは、人生最大の幸福(と書いて天国と読む)に溺れていた。
お腹の赤ちゃんを無事に出産し、すっかりお母さんの優しさと大人の色気を身につけたエレナが、俺の膝の上にちょこんと腰掛けてくる。
薄手のワンピース越しに伝わる彼女の体温と、エルフ特有の甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「はい、スイル様。あーん、してください」
エレナが剥いてくれた、果汁たっぷりの高級フルーツが口に運ばれる。
咀嚼すると圧倒的な甘みが広がったが、目の前のエレナの愛おしい笑顔の甘さには到底敵わない。
「美味いよ、エレナ。いつもありがとうな」
「もう、スイル様ったら……そんなに見つめられたら、私、また顔が熱くなっちゃいます……っ」
エレナが照れて俺の胸に顔を埋めてくる。その柔らかい感触に鼻血が出そうになっていると、左右から強い圧力が加わった。
「ちょっとエレナ、ずるいわよ! スイル、次は私の番ね。ほら、私の特製マッサージを凝り固まった肩に施してあげるわ!」
金髪ツインテールの王女リリアーヌが、普段のツンツンした態度を完全にどこかへ投げ捨て、俺の右腕を自分の胸元にぎゅっと抱きしめながら肩を揉み始めてくれた。
王女様直々のマッサージというだけでも恐れ多いのに、動くたびに彼女の豊かな形が腕に何度も押し当てられる。
「リ、リリアーヌ、ちょっと当たってるっていうか、位置が近いというか……」
「い、いいのよ! 私はもう、あなたの奥さん(候補)なんだから! これくらい、当然のご褒美よ……っ!」
顔を耳まで真っ赤にしながらも、絶対に腕を離そうとしないリリアーヌ。ツンデレの『デレ』が限界突破していて最高に可愛い。
「ふむ、リリアーヌ様ばかり卑怯だぞ。スイル、私のことも忘れてもらっては困る」
今度は左側から、薄着になった聖騎士長ジャンヌが滑り込んできた。
彼女は俺の左腕を両手でしっかりとホールドすると、そのまま自分の膝の上に俺の頭を乗せ、まさかの『お返し膝枕』を敢行してきた。
「昼間の戦いから解放されたお前の顔を、こうして近くで眺められるのは最高の贅沢だな。スイル、お前は本当に格好いい……」
凛々しいはずの最強の女騎士が、とろけるような恋する瞳で俺を見つめ、優しく俺の髪を指ですいてくる。
右からはリリアーヌの甘い吐息、左からはジャンヌの包容力、そして正面には愛するエレナの温もり。
前世のブラック企業でボロ雑巾のように扱われ、バットギルドに無能だと切り捨てられたあの日々が、今では遠い過去のようだ。
あの時『この世界では本気出す』と誓って、本当に良かった。
「みんな、大好きだよ。俺、お前たちを世界一幸せにするからな」
俺が本気でそう告げると、三人の美少女たちは一瞬で顔を真っ赤に染め、それから本当に幸せそうに、俺の体にさらに深く密着してくるのだった。




