第十二話
「冥王がやられただと!? バカな、あの男一体何者だ!」
「四天王の面汚しめ……! こうなれば我ら三人がかりで、一思いにその首を刎ねてくれるわ!」
冥王が消滅した翌日。我が家の庭に、突如として巨大な三つの魔力の渦が現れた。
現れたのは、魔王軍四天王の残り全員──『覇王』『獣王』『竜王』の三人だった。
それぞれが国を一つ滅ぼせるほどの災厄の化身であり、三人が一堂に会したことで、周囲の大気がミシミシと悲鳴を上げている。
「スイル! 今度は三人がかりよ! さすがに危険だわ、私だって戦える!」
「いや、リリアーヌ様。ここは聖騎士である私の出番だ。スイル、お前はエレナ殿と下がって──」
リリアーヌとジャンヌが武器を構え、俺の前に立とうとする。
だが、俺は二人の肩をポンと叩き、優しく微笑みながら前に出た。
「いいよ、二人とも。俺たちの平和な庭をこれ以上荒らされたくないからね。一歩も動かずに終わらせるよ」
「フン、小癪な人間のガキめ! 死ねぃ!」
四天王たちが一斉に、空間ごと消し飛ばすような暗黒の極大魔術を放ってきた。
三つの絶望的なエネルギーが融合し、真っ黒な光線となって俺に迫る。
だが、レベル999の俺は、ただ静かに足元に生えていた小さな『四つ葉のクローバー』に魔力を流し込んだ。
「──『神緑の絶対拒絶』」
俺が一歩も動かずに視線を向けた瞬間、足元から透き通るような緑色の光の結界がドーム状に展開された。
四天王の放った世界滅亡級の暗黒魔術は、その緑の結界に触れた瞬間、パリンッとガラスが割れるような軽い音を立てて完全に霧散してしまった。
「な……何ィィィッ!? 我らの合体魔術が、ただの結界に消されただと……!?」
「バ、バカな……! この男、底が知れんぞ……!」
絶望に顔を歪める四天王たち。
彼らが次の行動に移るより早く、俺は結界の魔力をそのまま反転させ、彼らの足元の雑草へと繋げた。
「終わりだ。──『草を操る』」
ズドォォォォォン!!!!!
彼らの足元から、超高密度の魔力を宿したツタが爆発的に伸び、三人の体を一瞬でがんじがらめに縛り上げた。そのツタは彼らの魔力だけでなく、存在そのものを世界から消去するように分解していく。
「あ、あり得ん……! 我ら四天王が、手も足も出ずに──」
光の中に消えゆく四天王を見つめながら、俺は静かに髪をかき上げ、彼らに向かって言い放った。
「──今度こそ、俺は変わるんだ。もう誰も、俺の大切なものを奪わせない」
ドガァァァァァン!という轟音とともに、魔王軍四天王の残りは全員、チリ一つ残さずこの世界から消滅した。
一歩も動かないまま、文字通りの完全勝利だった。
「はえー……。本当に一歩も動かずに全滅させちゃったわね……」
「スイル様、さすがです! 私の選んだお方は、やっぱり世界一の英雄です!」
リリアーヌが呆れ果てたように呟き、エレナはお腹を優しくさすりながら満面の笑みを浮かべている。
すると、ジャンヌが頬を赤くしながら、俺の左腕をギュッと抱きしめてきた。
「スイル、お前のその圧倒的な強さ、本当に惚れ惚れする……。私もエレナ殿に続いて、お前の子を授かりたいぞ!」
「ちょっとジャンヌ! 抜け駆けは許さないわよ! 私だってスイルの子供を産むんだから!」
四天王を全滅させた直後だというのに、またしても俺の両腕は美少女たちの柔らかい感触で埋め尽くされ、賑やかなキャットファイトが始まってしまうのだった。




