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Secret Workers  作者: 悟一品
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-B-

序章「報告レポート」


 ここにサトル・ユクロンの定時報告とする文書を作成した。

 今回の任務は能力の回収。報酬は能力限定の解放。

 対象は黒時町くろときちょう在住の金原かねばらさとる

 私立黒時高等学校の生徒。

 潜入開始日、三人の人間に囲まれているところを発見。

 その時点で任務を開始。

 力の片鱗を出し、彼に気づかれてしまう。

 『気配感知オーラセンサー』を使いこなしているように見えるが、まだあの能力には秘密がある。

 『気配感知』は本来、著者の所有していたものである。

 だからこそ、著者は金原覚(以下、護衛対象)を護衛とともに能力の完全開放を目指す。

 能力の完全開放、気配を消す以外にも存在自体を消すことができる。

 しかし、護衛の最中に予想外の事態が発生した。

 細田さいだ剛太郎ごうたろうによる護衛対象の友人二人を拉致されてしまった。

 この事態に対し、著者は『科学魔法サイマ』による救出作戦を立案、実行したのは護衛対象であることを明記する。

 作戦は成功。しかし、彼らに正体を見抜かれそうになった。

 彼らの名は、藤原ふじわら絵理えり花田はなだけんである。

 この事態の結果、著者は正体を明かすことにした。

 何故なら、この二人にも能力があるのだ。

 報告は以上とする。



 それが、彼が報告するはずだったレポートだった。









第三話「災難は降り注ぐ」


 日曜日、昼頃――

「そんな!?」

 予測不可能だった。何が予想外なのか。

 健が裏切りやがった!

「そんなことしていいの?この部屋のマスターキーで侵入して何しようとしたのかな?」

 うっ!そうだよな。ここで遊ぼうとしていたんだから。

 目の前のスタイルがいい女性――ララ・スクリアッドがウインクしながら聞いてきた。

「すいませんでした。こっちの連絡不足です。今後は気を付けます」

「あぁ、いいのよ。頭を下げなくても……ちょっと用があって来ただけだから」

「用……というのは?」

 ララは胸から紙を取り出した。

 ――スルーだ。スルーしよう。

「ごほん、サトル・ユクロンに伝達。護衛対象、並びに藤原絵理、花田健をトスカへと場所を移し護衛することを任命する」

 全員が呆気にとられた。……トスカってどこだ?そんな疑問がよぎる。

「どういうことですか!?」

 朱雀すざくがたまらず聞き出した。

 確かに、どこかに連れて行かれることは予想してなかった。

「…ALKATONESSアルカトネスの中にアック・ステーリアがいるって知っているわね?」

「…!」

 朱雀が急に黙り始めた。

「アック・ステーリア…?…まさか」

 俺は感じた。サトルのあの傷。鉄塔が溶け、小さなクレーターができた場所。まさか、あいつ!

「無茶しやがって!」

「覚、どうしたの!?」

 俺の唐突な発言に絵理が驚いた。説明しよう。

「あいつ……サトルは、あのテレビの場所にいた!あの重傷はそれでできた!」

 無茶はするなって言う奴が無茶しちゃいけないんだ!

「怒っても変わらないよ。金原君」

 ララがさっきまでの顔とは違う。冷静な顔だ。……そうだ、冷静に考えないと。

「すまない、血が上がっていた。頭にな。…それで、統括」

「何かしら?」

「俺がいなくなると、ここのマンションの管理ができなくなる。両親は海外に行っている。その間はどう考えている?」

 実際に、明日から学校が始まる。

 その質問をすると、ララは答えを出した。

「分身を置いておくのよ」

「分身」

 その言葉をつい繰り返してしまう。

 ――分身…作れるのか?

「作ったわ。とっくにね」

 そう言うと……えぇっ!?俺ぇええ!?

 統括の背後から俺が出てきた!うわ、そっくりだ!!

「コピーロボットよ。すごいでしょ。作ったのはあの、サトルなんだから!」

 胸を張るララ。ポヨンと揺れる胸に目がついていく。

 無罪だ!いや、有罪か。

 絵理に肩をつかまれた。

「本当に、後でお話しましょうねぇ……覚」

「はい」

 返事しかできなかった。


「ふぅ…やっと、すべての臓器を作れた。あとは移植するだけ」

 この医者の名は佐藤さとう源五郎げんごろう

 黒時町在住の医者だがSecret Workersシークレットワーカーズのサポートをする黒服くろふくと呼ばれる中の一人だ。

 佐藤は治療のための臓器を作り終える。後は移植の作業のみ。

 失敗すれば、サトルは死んでしまう。そこに携帯電話が鳴る。

 佐藤はそのまま鳴っている携帯電話を置いたまま、耳に触る。

「もしもし?」

「こちら、Secret Workers、兵士部司令官、コクロン・ユニバーだ。佐藤医師かな?」

「司令官……今、サトル・ユクロンを治療しています。何かありますか?」

 こんな時に連絡してくるとは。

「実は治療場所を変えてもらいたい。上からの要請と……そっちで起きた事件のことで、サトル・ユクロンを尋問しなければならなくなった」

「そんな!?」

 それは、佐藤にとって予想外だった。一度治療の中断をしなければならないうえに、その患者を尋問の場に立たせることは避けたかった。

 この子はいい子だ。サトル・ユクロンは最初に会ったときは普通の青年で優しいと感じていたのだ。

「佐藤医師、気持ちはわかる。だが、彼の発明が事件を起こしたというのなら……Secret Workersは容赦しない。たとえ、同業者でもあっても……わかってほしい」

 司令官の声にも痛みが含んでいることが分かった。

 サトル・ユクロンはそれほど重要な存在なのだから。

「……尋問の時期はなんとか延ばしてほしい。治療は医療部に引き継がせてほしい。私はこの黒時町の医者だ。行けば、町が困る」

 言うことは言った佐藤。少し沈黙が流れユニバーの返事がくる。

「わかりました。後は任せてください。治療は大丈夫です、尋問は延ばしてみるよう、上に掛け合います」

「ありがとうございます」

 佐藤医師は安心した。すると、外からヘリコプターの音がした。


「あっ来た、来た。……おーい、大丈夫?」

 覚は床に倒れていた。ララが胸を揺らすごとに絵理の蹴り、正拳突き、背負い投げのコンボによって倒されていた。

 それが繰り返され数分後、耐えられなくなった覚は倒れてしまったというわけだ。

(……絵理…こんなキャラだったか?)

 そう思った覚だった。

(しかし、あの胸……この町じゃ見ない大きさだ。髪の色は金色。瞳は青色、青竜に負けないくらい青い……この人も、サトルと同じ人間じゃないのか?)

 ちなみに、覚がこうやって声を殺しているのは絵理に気づかれないためだ。

 今の絵理は触れたら爆発する風船……中身は唐辛子とハバネロがいっぱい入っている風船……割ったら熱いということだ。

「覚…起きているでしょ?立ちなさいよ」

 死刑はまだ終わっていないらしい。俺は無言を貫いた。

「……」

「おい、絵理。暴力はいけないぜ…なっ。こいつは変になっただけなんだ」

 健がやっと口を開く。絵理の凶暴さにただただ沈黙していたが、もう黙ることはないと判断したのだろう。

「…健…そう言えるの?」

 絵理に睨まれる健。

「言えません」

 即答でその判断を覆した健。それを見かねたのか、ララが――

「ねぇ、仲間が迎えに来たからそろそろ乗ってもらうわよ」

「…!では、私たちは帰ります!」

 朱雀がそう言って部屋から出ていき青竜せいりゅう白虎びゃっこ玄武げんぶも続いて出て行った。

「鈴木さん!?いつ会えますか……」

 朱雀を鈴木さんと呼ばれる理由がある。

 赤色、青色、黄色、黒色の女子――朱雀、青竜、白虎、玄武――は偽名として鈴木すずき朱夏しゅか青木あおき奈々(なな)、黄空おうくうらん黒井くろい英子えいことして名乗っているのである。

 ちなみに、俺しか知らない。

 時はすでに遅し。去ってしまった鈴木さんに思いを馳せる健。

(……さて、そろそろ起きよう。重要なことが起こりそうだ)

「ぐ……」

「覚!?」

 俺は立ち上がり、体の状態を確認する。

 軽傷だ、絵理は手加減してくれたようだ。凶暴って思ってしまった。謝ろう。

「よく、起き上がれたわね……この後、どこかに行くそうだから…そこで話しましょう?今後の関係について」

 撤回しよう。凶暴さは去っていなかった、草場に隠れたと思ったらそのままいたよ。

 ついにそのやりとりが終わった。

「早く来てくれない!?サトルを搬送したいから、そのあとに続きたいの!早く来て!!」

 ララである――?

「「「ん?」」」

 ボイスチェンジャーだろうか、低い声が聞こえた。

「わかった。絵理、そこで話すならここから出よう。いいか?」

「わ…わかったわよ…」

 自分のしてきた行動に反省したのかそれとも俺のもっともの意見を言ったのかわからないが、絵理の顔が赤くなりうつむいた。

 …変になっていないだろうか…。

 ともかく、外に出ると……何もない。

「こっちよー」

 ララの声は聞こえる。

 とても低い声だが……ヘリコプターの音がしたのに本当に何もないのだ。

「どこだ……」

 『気配感知』を使うが、ヘリの気配なんてわかるのだろうか……いや、わかった。

「?……覚、そこには何もない…!?」

 絵理が驚く、俺も驚いている。

 なぜなら空間にひびがある。それを引っ張るとサトルが横たわっていた。布をかけられて。

「…どんな治療を受けたんだ?…おい、行かないのか?」

 絵理と健がそこで立ち止っていた。

「パパとママを置いていけないよ!それに、覚は行くの?」

 もっともな理由だ。絵理たちは来なくてもいいはずだから。でも、俺は――

「…俺は行く。『気配感知』がなくなるのなら行く。お前も健も何か能力が目覚めたんだろ?なら行こう」

 その一言で動いたのが――

「そうだな……俺も行く」

「健!?」

 健が同意した。

 でもいいのか?

「親に言わないと」

「あいにく、俺は一人暮らしだ。マンション〈くろとき〉の住人のな。親に行くときの連絡はした」

 健は相変わらず行動が早い。

「そうか。なら行こう」

「ああ」

 ヘリに乗るとき、ララが絵理にこう言った。

「その両親なら私から連絡してある。学校にも。だから、安心しなさい」

 絵理は考え、答えが出たのか。ヘリに乗り込んだ。

「覚の世話は私がしなくちゃ……健も」

 世話をするようだ。でも――

「ありがたい」

「そうだな」

 ここからはどうなるかわからない。そんな気がした。

「じゃあ、出発!!」

 ヘリのドアが閉められ急いで席に座る。

 そして、ララが告げる。

「ご乗車ありがとうございます。このヘリはSecret Workers本部、トスカ島へと向かいます。荷物はすでに載せてありますのでご心配なく」


 一方その頃、ヘリが飛び去った跡に白いコートを着た男……アック・ステーリアが立っていた。その顔には獲物を逃したオオカミの顔をしていた。

 ピリリリリリリリリ……ピッ。

「アックだ。金原を逃した。…わかっている、これから本部の座標を入手するため、潜入作戦を実行する…あぁ…メカロイドのことなら心配ない。開発者の発明はよくできている。あんたのおかげだ」

 アックはS.W.(スウ)のとき悪さはせず、サトルの部下で天才と呼ばれていた。

 しかし、今のアックは違う。

 裏切られた時のサトルの顔が忘れられない。

 あの顔…悪を見るような眼…あれが気に入らず、すべての研究を持ち去った。

 サトルの発明はすべて兵器に変えたのもこの男だ。

 もっとも、兵器に転用する技術はALKATONESSの技術がなければできなかったのだが。

「クロスバーン元帥、作戦は成功させる。その時は……奴の首を持っていきます」

 通信を切り、ステルスモードを起動。アックは消え去った。


 ……お前の敵は近くにいる。…奴らだ。友を守りたければ、我の声を聞け…金原…我はお前を守らなければならないのだ……


「はっ…?」

 寝ていた。…またあの声か。男と女の混ざったような声……『気配感知』自身が警告しているのか?

「あら、早起きね」

 低い声が目覚めを急速に早めた。

「統括……そのボイスチェンジャーは外せないのか?とても低くてサスペンスドラマの誘拐を思い出す」

「あら……まぁ、外せないのよ。諸事情よ。大人のね。それとも、教えてほしいのかしら?」

 今、寒気が背中を通ったような感じがした。絵理が目を開けてこっちを見ているんだろうか。

 絵理を見よう。後ろにいるはずだから。

「……」

 寝ていた、しかし半開きの目で。

 絵理はいつもこうやって寝ているんだろうか?本人に聞きたいところだ。

「それより、例えが上手ね。金原君。サスペンスドラマのようだって・・・まぁそうだけどね?」

「えっ!?まさか、本当に誘拐なのか!?」

 冗談で言ったのに!

「嘘よ」

「悪い冗談はよしてくれ……」

「でも、聞きたいことはあるわ。いいかしら?」

「はい?」

「あなた……サトルのことをどれだけ知っているのかしら」

 低い声で聞かれると答えにくい……けど言わなくてはならないという空気は読める。

「あいつはヴァンパイアで魔法使い、グレアという人格があり、ある女の名前を出すとグレアが出てくる。自分で自分を封印し、師匠に起こされ復活。その十年後に師匠がいなくなり旅に出た…これだけか…」

 後のことはうろ覚えだ。玄武の話をちゃんと聞いておくんだったな。

「そう……私がその師匠なのは教えてもらったかしら?」

「…えっ…?」

 目の前にいるのがサトルの…?

 マジで!?

「山を三つ吹き飛ばし、跳躍力は海を越え、アイドル並の歌唱力を持つ…師匠!?」

 俺が聞かされたのはこれくらいだ。

「そうよ!アイドルは言い過ぎよ…せめて、歌姫と言ってほしいなぁ」

 なんということか!すごい人がいる。

 数時間前まで全裸でいた人が今ではサトルの師匠と名乗っている……。

 しかし、歌姫のほうが言い過ぎではないだろうか。

「驚いて、何も言えない?なら結構。もうすぐ着くわよ」

「えっ」

 外を見てみると信じられない光景があった。

 桜……春が過ぎたというのに、その花は散っていない。むしろ日本の桜よりも大きい。そして…あれが…。

「到着、到着。先に行ってる。あとは頼むわよ、コクロン司令官」

「了解、統括」

 ララがドアを開きそのまま空中にダイブした。ええぇっ!?

「大丈夫だ、金原君。あの人は死なないさ。それに、姿が消えているだろう?」

「!!」

 見ると姿は消えていた。

 でも、さっきコクロン司令官って…?

「自己紹介しよう、ヘリを下降させながら…私はコクロン・ユニバー。S.W.本部で兵士部司令官の役職に就いている。サトル・ユクロンの上司だ。そして」

 ヘリがガタっと音を立てて到着。

「ここの…科学部名誉隊長でもある」

「…!名誉隊長…サトルと同じ…」

「先になったのが私だ。そのあとを追ってきてなったのがサトルだ。一年の差だ。それでも、あいつの発明のほうが有名なんだ」

 ここにもすごい人がいた。すると、ヘリに近づいてくる複数の白衣を着た男たちが来た。

「司令官、患者は!?」

「ヘリの後部にある、今開ける。緊急事態だ」

 ユニバーが何かのスイッチを押すとヘリの後部が開く。

 やっぱり、このヘリは何か違う。今の技術より先に行っている。

 ちなみに今、考えている最中にサトルが連れて行かれた。素早い動きだった。

「緊急医療チームだ。素早いだろう?来てから治療室に運ぶ時間は…四十一秒だ」

「四十一秒…微妙な速さだ」

 いや、早いのかな。知らないけど。

「…そうか……さぁ、行こうか。寝ている者たちを早く起こせ。猶予は十秒だ」

「絵理、健!起きろ!!」

 やばい!さっきの目つきが違う!

「なに…?ふぁ…」

「いてて…首が…」

「起きたようだな。では、私の部屋に行こう」

 そう言ったときユニバーの手が光る。そして、手を合わせると――

「うわっ!?なんだ!?」

 俺たちは光の中にいた。

「聞いていないのか?サトルから『科学魔法』の移動方法、ガシェイトを」

 ガシェイト!?『科学魔法』!?

「『科学魔法』は私たちと……ALKATONESSが使う、君たちの思っている魔法とは違う学問だ。これを君たち、人間の学問をすべて極めたとしても使えない高度な学問だ」

「学問って……うわ!」

 俺と絵理と健は部屋に到着し、着地ができず転んでしまった。それにしても疑問がある。

「何で、ここに来るときは『科学魔法』を使わないんだ?」

「理由は、我々が作った法律にある。…一つは人間の世界では使ってはならない。使ったら使ったで、君たちは驚き捕まえようとするからだ」

「いや、捕まえはしないよ」

 でも、ちゃんとした理由もあるんだな。

「もう一つは人間に対して使ってはならない。最近の研究でわかったことで、人間に対して使うと……いや、言わないでおこう。怖がらせる」

「言ってくれ、言わないと怖いんだけど!?」

 もうかけられてしまった後なのだから!!

「…そうか…まだ寝ぼけている者たちもいるだろうから」

 ユニバーは近くの机に座り、何か操作をして空中ディスプレイを映した。

 それに画像が出てきた。…なんだ?この文字…?象形文字なのか、丸と線がくっついたような文字が出てきた。

「すまん。これはクルスト語だった。今、わかりやすく日本語にまとめ、一言で表せよう。数十秒間、待ってほしい」

 そう言って、カタカタと音が聞こえた。

 しかし――

「は……早い」

 文字が日本語に変わるのが早い。

 俺のまわりでこんなに早く文字を打てる人はいない。

 ――クルスト語って言ったか?

「クルスト語ってなんですか?」

「このトスカで使われている言語だ。君たち人間にも日本語やら英語、違う国の言語があるように、私たちも違う言語を使う。ちなみに、ここの島民はすべての言語で話しかけても答えることができる。私のように…っと。はい、できた」

 すると、話している間に終わらせた。

 そんな…質問しても手は止まらなかった。それにしても…わかりやすい…。

「人間に使うと、自身も使えなくなる……」

 壁に投影された文字がそう表していた。

「そうだ、しかし島の結界内に入れば関係ない。法律に触れず、君たちを移動させることができた」

「それで……」

「質問があるようだね。でも、すぐに答えが出る」

 コンコンとドアをノックする音がした。

「来たようだ。社長、お入りください!!」

 キィ……とドアが開き、ユニバーと同じ年齢くらいだろうか。

 男が入ってきた。…なんだ!?あの美人!?

 男の隣に秘書なのか美人な女性がいた。

「司令官、これが例の能力者か…?」

「ハッ!!その通りであります!!」

 ユニバーが慌てて敬礼する。『気配感知』を使わなくてもわかる。

「ふむ……私は、Secret Workers本部、本部長兼社長兼特攻隊長のケント・スターズだ。そして、こちらは私の妻で副本部長兼副社長兼特級司令官のクリム・ベルタだ」

 紹介された美人は会釈をした。

「金原…君と呼べばいいな?サトル・ユクロンと混同してしまうからね、サトルと呼ぶと…いいかな?」

「はっ…はい!」

 まぁ、混同されなくて助かる。

「よし、返事がいい…ん?そこの少女は誰かな?寝ている…クリム、起こしてあげてくれ」

「はい」

 クリムは絵理に近寄り揺らした。すると、絵理が起き上がった。

「…!!すごくきれい」

「ありがとう……お名前は?」

 静かに尋ねるクリム。

「藤原絵理です…ここは…?」

「起きたか、絵理」

「覚!ここはどこ!?それにこんな美人な人……」

「ここはトスカだ。俺たちは司令官の部屋にいるんだ」

 そこに、ケントが割り込んできた。

「では、自己紹介しよう。少女よ、聞いてくれるか?」

「は…はい」

 突然の自己紹介宣言。

「私はケント・スターズだ。よろしく」

「よろしく」

 さっきの長い自己紹介とは違う名前だけの紹介で終わった。

「ユニバー、やはり日本の女性は華麗だな。この子は美人になるぞ。さすが、大和撫子の国……」

「あなた……」

 同じだ。クリムからもどす黒いオーラが出ている。

「わかってるよ……ユニバー、私は先に済ませなければならないことができた。・・・生きて会いたいものだな」

 クリムがケントを引っ張り部屋から出ていく。

 どっかで見たことがあるなぁ。ユニバーは何かつぶやいている、涙を流しながら。

「社長…生きて…会いたい…くっ…でも社長は君が美人になるって言ったのは本当のことだよ。藤原さん。誇りに思ってくれ…彼のためにも」

「は……はい…」

 絵理もそんな返事しかできない。

 絵理、顔が赤くなっているなぁ…。

 女なら美人になるって言われたら照れるもんだな。俺も照れている。

 ところで――

「司令官、聞きたいことが」

「うん?玄武ならサトルのもとにいるぞ。……しまった」

「……!!」

 ゾクッとした。殺気がこの部屋を包んでいる…あぁ…ここでもか。

「覚……続きをしましょう」

 パキン、ゴキンと絵理が手を鳴らしながら俺の背中によって来る。

 後で掃除できるかな。そう思ったのが最後の意識の中だった。


「主人…もしかしたら、私が…」

 朱雀は自分を責めていた。あの時、もう少し粘れば――!!

「朱雀、そう思い悩むな。…我も出れば…」

 青竜も後悔していた。

「王子様……」

「……サトル様が言ってた」

「「「えっ?」」」

 玄武がその空気を断ち切るように力強く言った。

「…ヒートを守れ…と。ここで泣いている…場合じゃない」

「…そうだった。後悔するよりも行動しろ…主人の命令通りだ」

 いつもあの元気でおっちょこちょいな主人のことを思い出す三人。

「……ヒートの気配……ユニバーの部屋で感じる」

 玄武がそう言って、走り出す。三人も彼女に続いて走り出した。


 現在、体の状態は軽傷、意識は朦朧としている。

 もう、立ち上がれない。

「覚…起きてるでしょ?玄武って誰?」

 絵理の目が赤く輝いて見えるのは俺だけなのだろうか?

「……!!恐ろしい…!マダム・スターズの再臨か…?あの悲劇が蘇ってしまうのか?私は新な犠牲を出してしまうのか!?」

 そんなことを言ってないで助けてくれ。

 健、起きているのは知っている。おびえるな、すくむな!自分の性能を生かして俺を助けてくれ!!

「無理だから」

 絵理が無慈悲に告げる。

 二十連コンボのあとにまた二十連コンボを食らったらもう死ぬかもしれない。

 説明しよう。立ち上がり――

「玄武は……黒井さんのことです、絵理さん…もう勘弁してください」

 そのまま土下座へと移行。

「黒井さん?……それじゃあ、鈴木さんと青木さんと黄空さんも人間じゃないの?」

 鋭い。もう、俺の心を読んで自分で理解してほしい。

 あと、踏みつけないで。

「そうです…放してください、絵理様…もう、トラブルには巻き込みません」

「……わかった。許してあげるわ」

 説明し終わり絵理の尋問……拷問が終わる。そこに――

「ヒート!大丈夫!?」

 玄武がドアを開け俺に抱きついた。

 あぁ……タイミングが悪すぎる……!

「覚、よかったわね。私以外の女の子に抱きしめられて……司令官さん」

「なんでしょうか?」

 ユニバーがビビりながら絵理に応える。

「私と健の能力……どうやったら消せるか、別の部屋で教えてもらうわ。覚といるのはもう嫌だから!」

「わ、わかりました。では、手を」

 ユニバーは渋々手を出した……というより手を出さざるをえなかった。

 ――俺とはもう嫌だ……?!

「どういうことなんだ!?俺、何もしていないのに!」

「自分の胸に聞きなさいよ!!健!!行くよ!」

 絵理は怒鳴り散らしている。健も絵理の味方のようだ。

「金原君、あとで迎えにくる。待っていてくれ」

 ユニバーはそう言い、シュッという音とともに絵理、健をどこかに連れていった。

「俺のこと…嫌だったのか…?」

「…ヒート」

 玄武が心配している。

 はぁ…あんなことを言わせるとは。


『私以外の女の子に抱きしめられて…』


「情けねぇ……」

「そう言っている場合か?金原」

 背後からはっきりとした声が聞こえた。

「朱雀……」

 厳しい目つきで俺を見ている…。非難を受けるのは甘んじよう。

「金原、お前は主人と会って変わりすぎた。それに友人が追いつけないのも無理はない。でも、お前が何に恐れているか知らないが……確信はしている」

 ……

「友の変わった姿も追いつけない…そうだろう?」

「!…見破られやすいな…前の俺は、見破らせはしなかったのにな」

 追いつけないものか…。

 そこにいたのは脱力してしまった俺、玄武、朱雀、青竜、白虎だった。


 ――言い過ぎたのかも……しれない。

 絵理はそう考えていた。前の覚はこんなわけのわからないところに行かなかったのに・・・。でも、私はそれでもついてきた。

 あの時、何もできなかったときに、覚は現れて、一緒に戦ってくれた。絵理はナンパしてきた男がそいつの仲間を連れて現れたとき、まわりは助けてくれなかった。

 空手を習っていて無敵だったからだ。でも、一人で対峙するのは厳しかった。

 そこに覚が現れて――

 

『絵理に手を出すな!!女を集団でよってたかるようなことは、俺が許さねぇ!!』


 その時はうれしかった。守ってくれる人が現れてくれたから。

 だからかな……他の女の子に覚を取られるのは嫌だって思ったのは…。

「むかつく」

「あっ…何か気を障ったかな?ごめんね、こんな空き部屋で」

 司令官さんに八つ当たりをしてしまった。

「いえ、自分のことです…覚にむかついているんです…。前はこんな風じゃなかったのに…胸が苦しい」

「…深いことは聞きませんよ。レディ藤原」

「レディって…そんな年齢じゃないですよ…はぁ」

 まだ、相応しくないし……。

「私たちがなぜ女性を優遇しているのでしょうか?」

 司令官さんがそう言った。

「……はい?」

 その問いって…関係あるのかな…?

「私たち、S.W.は女性至上主義……レジアル教を信仰しています」

 レジアル教?

「レジアル教?どんな宗教なんですか?」

「女性のための宗教です。昔、この島は男尊女卑社会だったんです。女性は圧倒的に不利な立場でした。そこで、この会社の前身――Notesノーツは女性のための宗教を考えました。Notesは情報会社でした。そこで、女性に調査をしました。どんな宗教がいいのかを」

 そこで、ユニバーは呼吸を整えた。

「ノーツ……?」

「そうです、その呼び方であっています。調査結果は政治への参加権、職業の自由、結婚の自由を求めていたことがわかりました」

「そうなんですか……」

 絵理にはそう答えるしかなかった。

 規模が違うからだ。この島の感覚と自分の感覚が。

「それで、Notesは国に認められ宗教を成立させました。そこで、国を乗っ取りこの会社で宗教を広めようと考えました!」

 それって――

「…軍事国家…ですよね?」

「当時の国の国家は悪事ばかりでしたからね…初代社長が頑張りました!そして、一年後に国家を解散させNotesが権利を握りました。ついでに、その国家を次元の狭間に追放した……と文献が語っていました!」

 絵理はやりすぎだと思った。

 ――次元の狭間にって……。

 健もその話にひるんでいた。

「それって…やりすぎなんじゃ…?」

 司令官さんが頷いた。

「最初はそうでしたが、後からなるとこれでよかったという結果になりましたね。そのあとは大変そうでしたが」

「そうなんですか……」

「宗教法も作りました。本島の中心にある桜……あれはホシザクラと呼ばれています」

 ホシザクラ……?

「ホシザクラの別名はスターズです、聞いたことありませんか?」

「それって…ケント・スターズ…?」

「気づきましたか。君なら気づくことができるとわかっていました。さて、本題に移りましょうか」

 長い話だった……絵理と健はそう思った。

 ここの人たちは長い話をしないと気が済まないのだろうか。

「君たちの能力は感染という形で発現している。でも、この場合はあまり長続きしないで消えてしまう能力だ」

 感染……嫌な予感がした。これから続く話に。

「何もしなければ消えるんですか?」

「その通りです……しかし、感染源を殺さねばなりませんが」

「「えっ!?」」

 感染源を殺せばって…もしかして!

「金原君をサトルの吸血で殺せば能力は消えます。確実にね」

 そう言ったユニバーの表情は冷酷な表情だった。

「覚を殺さないで!」

 やっぱり、嫌な予感が的中した!

「…これだけはどうにもならないんですよ、レディ。…他の方法もありますよ。過酷ですが」

 殺すだけが能力を消せるわけではないと知った絵理はホッとした。

 ――でも、過酷な方法って……?

「その方法ってなんですか?」

「シアナの呪いを金原君に付加させることですね」

 シアナの呪い――サトル・ユクロンを殺すことではないかと、絵理は察した。


 一方、その頃――

 覚、朱雀、青竜、白虎、玄武の五人は治療室の外にいた。

 サトルの状態を見てみたいと覚が言い四人が連れてきたのだ。そこは――

「ぐ…グロい…!」

 その光景は形容しがたい状況だった。

 これを説明すると誰かが倒れてしまうので割愛することにしよう。

 俺の胸の中に……。しかし、四人はケロリとしていてその光景を見ていた。

 鉄の心臓を持っているんだろうか?そんな疑問がよぎる。

「主人のミイラよりはましだな」

 ミイラ!?

「あの時はひどいもんだった。爆弾を腹の中に入れて爆散された様子はな」

 爆散!?

「…!!王子様――!」

「…ヒート、大丈夫?…顔色が悪いよ?」

 サトル……お前に同情はする。

 ひどいことをされてもお前が今日まで生きたことを忘れない。

 ――カテゴリーが違うけど。

「お前ら、あいつの何を見てきたんだ?!どうしてあいつのグロテスクな光景に耐えられるんだよ!?」

 その問いに玄武が答えた。

「……サトル様は、大体こんな状態になって復活する。……だから、みんなは心配しないの」

「玄武の言う通りだ、金原。私たちは見慣れてしまった。グロテスクを」

 そんな朱雀の目は輝いていない。

 すると、治療室から誰かが出てきた。こっちに歩いてくる。

「治療は終わりました。あとはベッドに移すだけですので、そのベッドに案内します。こちらです」

 そう言って歩き出した。四人はついてゆき、サトルも運ばれる。

「待ってくれ」

 そう言わないとおいて行かれるような気がした。

 いや、いいか。俺は立ち止った。朱雀がこっちに歩いてくる。

「お前は誰だ!?出て来い!!暗殺者のような奴!!」

 俺の言い放った一言にみんなが俺を注目する。

 すると、そこにはなかったものが現れた。

 やっぱりか。白いコートを着た男が現れたのだ。

「……!!アック・ステーリア!!主人の仇!!」

「見抜かれるとは……やはり、能力が強くなっている。金原覚か?」

「……」

 嫌な気配だ。体中が痛い。

「ふん!その目、気に入った!サトル・ユクロンと同じサトルとしてはいい目だ!座標は手に入った。また、会おう。金原!!」

 その男はガントレットを前に出し光り輝く。

 その光が消えたとき、金色の装甲をまとった姿になった。褐色な肌、金色の目、髪は黒色の男。朱雀は斬りかかるが、その装甲に傷はつかなかった。

「か…固い…!私たちと同じか、それ以上の…!」

「アルティメットは究極を冠する程のシステム。装甲も武器族以上でなければ意味はない。これほど役立つ発明を…なぜ、サトルは兵器に転用しなかったのか、わからないな」

 サトルが開発した……?

 そうか、兵器に転用したくなかったわけがわかったような気がする。

「教えてやるよ、アック」

「?」

 俺はあんまり知らないけど言うしかない。

「兵器に転用しなかったのは、あいつが優しすぎるんだよ。どう考えているのか知らないが……これだけは言える。あんた、小さいんだよ。サトルの器よりも」

 その言葉を聞いて、アックは唖然とする。

「もっと言うなら……あんたって弱すぎる。あいつよりも」

 サトルのことを知っているつもりじゃないが、こう言える。自信を持って。

「なんだと……!?」

「……!フッ、そうだな!金原!!主人は優しすぎてこんなことしない!!」

 その時、警鐘が鳴り響き、武器を持った男たちが現れる。

「アック・ステーリア!!貴様を逮捕する!!目標向け、撃て!!!」

 銃声が鳴り響く。朱雀はその前にアックから離れ、距離をとった。アックの金色の装甲に銃弾がめり込む。

「何!?装甲が!!」

「やっぱり、ビームより、物理的攻撃のほうがよかったんだ」

 その声はサトルだった。

「くっ!!退却!!」

 アックは銃弾を受けながらも壁を破壊し逃げ去った。

「やめ!!」

 銃声がその号令でピタリとやんだ。

「ジョー隊長、ありがとうございます!」

 ジョー隊長と呼ばれた男はいかつい顔をしていた。

「礼には及ばん。ヨセフ……お前の開発のせいで、苦労はした。しかし、アック・ステーリアは必ず捕らえて見せよう……」

 そう言ったジョーは黒い物体に号令をかける。

「金色だ。今、壁を破壊して飛んで行った。撃ち落とせ!!」


「ちっ…ちゃんと、メンテナンスをしておけばこんなことには……」

 アックはトスカに来る前にメカロイドのメンテナンスを怠った自分を呪った。

 それと同時にあんなことを言った奴も気に入らなかった。


『あんたって弱すぎる』


「俺は弱くない!サトルよりも!!」

 その時、システムの警告が告げる

《警告、警告…熱源ガ、コチラニ近ヅイテキマス》

「何!?」

 アックが振り返るとビルから砲台がのぞいていた。

 そして、ビームがかすり装甲が取れてしまう。装甲は海へと落ちていった。

 アックに焦りと緊張感が迫りくる。

「ちっ……!俺がいない間にあんな装備を!」

 アックはまだ、結界内にいた。それで狙われている。

 しかし――

「装甲を分析されれば……あいつのメカロイドを完成させてしまう!」

 脳裏にあのデータが蘇った。

 アックは海へと向かう。しかしビームが向かうことを邪魔させる。

「…!どうすれば…」

 アックはビームを避けながら考える。

 その時、通信が入った。

「アック、今は逃げることに専念しろ」

 クロスバーン元帥からの通信だった。

「クロスバーン元帥!!しかし、装甲が!」

「そいつはどうでもいい。帰還しろ。今はメカロイドが完全にあいつらに渡る前に逃げろ」

 クロスバーンの警告を聞き、アックはステルスモードを起動。

 姿は消え、目標が消えた砲台は動きが止まった。



























エクストラストーリー2


 俺は恋焦がれていた。

 あの優しい瞳、笑顔に。

 俺がヴァンパイアと知っても語り掛けてくれた女。

 シアナ。

 俺はお前のことが好きだ。

 キモイだろうな。今の時代じゃ。

 俺はそのためにあいつから、お前を取り戻す。

 待っていろ。そこにいてくれ。









第四話「襲撃の後に」


 現在――

「……そうか、消えたか」

 ジョーは報告を聞き、溜息を洩らした。

「どうなりました?」

「アック・ステーリアは消えた。そして、奴は結界内にはいない。しかし、収穫はある」

 ジョーは不満ながらもサトルに報告していた。

「収穫というのは?」

「奴の装甲の欠片が海に落ちて、科学部が回収したことだ。…ヨセフ、欠片を分析できたら…完成できるんだろうな?」

「できます。…あいつらの技術は使いたくはないですが、できるはずです」

「いい返事だ…第一班、撤収!」

 その号令で足早と去っていく男たちとジョー。

 軍隊なのか?それに、あいつはヨセフと言われている。

「……ヒート、サトル様がなんでヨセフって言われているのは…この組織に入ったときの最初の名前」

 玄武が解説をしてくれた。

「そうなのか…」

「……いろいろあった。Notesのとき…今度、話す」

「おう、わかった」

 今度か……いつになるんだろうか。

 玄武はゆっくりだということはわかっている。

 今までで話してきたことでわかったことだが。

「それでは、案内します。ついてきてください。中断されたので早めに行きましょうか」

「お願いします。覚君、頼みたいことがあるんですがいいかな?」

「なんだ?何をやらせるつもりだ!?」

 こいつの頼みごとは危険なことか、くだらないことなのか……それがわからない!

「警戒しないでくださいよ。頼みたいことは僕の部屋からあるものを取ってきてほしいことです」

「取ってきてほしいもの?なんだ?」

 まともな願いだな。

「こんなところでは言えないので、白虎と一緒に取ってきてください。白虎」

 白虎は不満そうな顔だ。俺といるのは嫌かもしれん。

 なぜかって?俺をすごく睨んでいるからだ。

 ――虎の怒ったような顔だ、可愛げある顔を見せるのは…サトルだけか。

「王子様、なんでうちがこんな」

 …?白虎が何かをためらっている。…そうか…俺は白虎に何かしたんだろうか・・・

「この変態といなきゃいけないんですか!?」

 そうか。それは誤解だ。

「大丈夫だよ、金原君なら、何もしないでしょう。そうでしょ、金原君」

 笑いながら確認するサトル。

「おう……結局、変態と認めるのか、俺を?」

 サトルは黙った。そして、目を逸らした。

 同じサトルとして不信感を抱いてしまう。

 しかし、ベッドを運ぼうとしようとしている人の顔を見てくれ。

 般若の顔をしているぞ。

「サトル・ユクロン、早く伝言を伝えなさい」

「…了解…」

 すると、サトルは目を閉じ数秒間沈黙したあと、ベッドに寝ころび運ばれていった。

 朱雀、青竜、玄武はついてゆく。白虎は顔を赤くしながら別方向に歩いていく。

「あぁ……待ってくれ」

 俺は白虎について行った。ついていくうちにエレベーターに乗った。

 そのエレベーターは下に下降しながら各階に止まった。途中、人が入ってきて白虎と挨拶をしていた。

「おっ、黄空ちゃん……彼氏できたんだ?いいね、うらやましいなぁ」

「彼氏じゃないです……王子様に言われて仕方なくですよ」

 そんなに嫌だったのか…!

「でも、なんだかうれしそうね」

「えっ!?うれしくなんかありません。もう!ここでおります!」

 目的の階に着いたのかエレベーターが止まる。

 白虎が降りて俺も降りる。あの女性、優しそうだな。

 絵理も優しかったのに。

「なに暗い顔してんのさ!王子様の部屋はあと少しなんだから!!」

 暗い顔は嫌らしい。

「わ、悪いな……」

 また歩き出した白虎についていく。

 しかし、さっきとは違ってここは暗いな……。

 何か出てきそうなものはない。出てくるなら気配でわかる。

 そうこうしているうちに白虎が突然止まり、ぶつかってしまった。

「!!触んな!!」

 白虎が背負い投げで俺を投げる。

 突然の投げ技に反応できず廊下に背中を打った。

「いてて…」

 白虎に目を向ける俺。白虎は言い訳をし始めた。

「触るからいけないのよ!!うちに触っていいのは王子様だけ!誤解しないでよね」

「触られるのが…苦手なのか?」

 当てられたのか、白虎が小さく頷いた。

「……そうね…。でも、やりすぎた。ごめん」

 謝られてしまった。……人間を嫌っているのは本当のことのようだ。

「いや…嫌いなら構わん。それで…この部屋があいつの部屋か?」

「うっ……そうよ、王子様の部屋。ええっと…これはこうして…」

 白虎は何かいじり始めた。

 ……パズル?ロックが違うのか。

 それにしても――

「解除の仕方、わからないのか?」

「わかるわよ!待ってなさい……今すぐ開けてやるんだから!…うう…やっぱりわかんない…」

 どうやら、降参のようだ。できなくてもやってみるか。

「俺がやってみる、どいてくれ」

 仕方ないので解いてみるかと、提案したが……白虎は睨み、考えた後にドアから離れた。

 素直でいいな。それとも、こうやれば頼みも聞いてくれるのか、まぁいい。

「よし……ふむ、なかなか美しいパズルだ」

「早くやってくれない……?」

 白虎が呆れている。このパズルはとても美しい。

 だから――

「これをこうして……」

 ブロックを左、右、上、下と動かしていく。

 最後に丸いくぼみが現れた。

 ……?これはなんだ?

「白虎、一応解いてみたぞ。でも丸いくぼみがあるんだが……どうする?」

 それを見た白虎は感心していた。

「……すごい、解き方教えてないのに解くなんて……あとは、うちがやる。うしろ向いてて」

「了解」

 言われたことは正しく従う。これは大事なことだ。

 絵理に学び絵理によって実践できた……言い過ぎではない。決して。

「ほら、来なさいよ。早く!!」

 ドアを開け、俺を待っていた。

「了解」

「…了解って言わないでいいよ……面倒だから、素のままでいいから」

「わかった。じゃ、入るぞ」

「どうぞ」

 部屋に入ると……そこは散らかっていた。

 壁には何かの設計図が書かれている。

 しかし何語で書いてあるかわからない。

 俺より変人じゃねえか!これで俺はあいつに言うことができた。

 変態とは言わせんぞ!

「ふふふふふ……白虎」

「それでも、変態よ」

 撃沈。この一言が今の俺に似合っているのかもしれない。

 落ち込んでいると白虎はそれでも何かを探し続ける。

 ……気になる。

「白虎、聞いてもいいか?」

「探し物は極秘。聞かれても答えられない」

 まぁ、当然だよな。しかし、きっかけは何でもいい。

「そうか、でもほかに聞きたいことがある」

「何よ?」

 白虎は顔を向けず探し続ける。

「なんで、俺は変態って呼ばれているんだ?」

「朱雀と玄武に聞いたの。護衛対象はどうかって…これでもない。…朱雀は誠実な人だって言ってた」

 そういう評価か。朱雀らしい――知らんけど。

「玄武は?」

「…熱い心を持ってる、サトル様みたいにって」

 それでも思う。そこから何で変態という言葉が浮上してくるのか。

「でも、玄武をそこまで言わせるなんて変態しかいないって思った」

「……?」

 何でそこで変態が出てくるんだ?

「玄武の恋の相手っていつも変態か、ダメ男……つまり、あんたのことよ」

 そうなのか……。言うことは何もない。

「白虎は三人よりあいつのことだけ、王子様って呼ぶのは?」

「…王子様をなんで王子様って呼ぶのか…それは、サトル・ユクロンはヴァンパイア・プリンスだから」

 ヴァンパイア・プリンス。

「吸血王子?」

「そんな感じ…!これだ。やっと見つけた。あんた、そわそわしてるわね。藤原さんのことを考えているのかしら?」

 絵理のことを気にしているか――そう見えているのか。

「まぁ、そうだな。さっきから気配を探しているんだが見つけても移動しているんだ。白虎、俺がいなくてもあいつのところまではわかるよな?」

「うん…」

 白虎は俺がいなくても大丈夫だ。俺は探さないといけない。

「それじゃあな」

 部屋から飛び出し、暗い廊下を走る。

 それにしても、早すぎる。移動速度が人間じゃない。

 もしかして……まだあのユニバーのところにいるのか?

 あのユニバーっていう男は敵ではないことは知っている。…?止まった?上の階だ、そうなると……統括の気配、ララの気配を感じる。

 急ごう。エレベーターを待たず階段があったので二段飛ばしで駆け上がる。廊下に出ると、やっぱりいた。

「覚、何してたの?」

「おう、覚。どこにいたんだ?」

 二人は無事の様だ。

「絵理、健……無事だったか」

「どうしたの?」

「……お前たちを探していた。ALKATONESSがいたんだ。だから……」

 言葉が思いつかない。二人が安全だったからか……。

「その報告は聞いていた。だから、逃げていた。金原君は大丈夫でしたか?」

「大丈夫です。……サトル・ユクロンが復活しました」

「それも聞いている。明後日、サトル・ユクロンを尋問する。そして、今日付けで君の護衛の任を解任する」

 尋問?あいつは…重傷を負っているのに?

 その言葉に絵理、健は驚いている。

「なぜだ?」

「ユクロンは、我々の機密情報を君に漏らした可能性があるからだ」

「真悟君はそんなことしていません!」

 真悟――正確に言えば秘労ひろう真悟しんごを名乗ったサトル・ユクロンのことだ。

 それに絵理が反論した。

 そうだ、あいつはそんなことをしていない。

「機密情報か……昔の自分自身のことを話しただけで?」

「その通りだ。S.W.にとって自分自身の情報は極秘中の極秘。本部長と副本部長、その他の幹部全員に許可を得なければならない」

 そんなに重いのか。そうだよな。だからこそ、俺たちがここにいる。

「そうか……尋問の証人は俺たちか」

「「!?」」

 二人が俺の言ったことに驚く。

「覚、知ってたの?」

「そんな…」

 健は関係ないと思っていたらしい。

「知ってたんじゃない……よく考えてみろ。突然ここに呼ばれ両親と学校には連絡がいっていた。用意周到すぎる。それに、ユクロン自身も尋問されることは知っていたはずだ。事件を起こせば……の話だが」

 俺、こう思っていたのか?

 推理を披露すると絵理、健、ユニバーが呆気にとられる。

「金原君、よくわかっているではないか。どこまで気づいていた?」

「……」

 今……と言えばいいんだろうか。

 ユニバーの気配が変わっている。焦っている気配だ。

 答えを教えてやろう。

「今、と言えば納得されるかな?」

「何!?思いつきで言ったのか!?」

 思いつきの推理は簡単に覆される。しかし、俺のはそんな類じゃない!

「正直、ユクロンが復活したとき、奴は元気だった。それにタイミングがいい襲撃。男たち…ジョー隊長率いる第一班が攻撃したとき、アックの装甲にひびが入った。そして……撃墜させようとしたが、装甲だけを狙いうまく装甲をはがした。そうなったら、メカロイドを開発したユクロンを尋問させることができる」

 そこまで言って、ユニバーの気配が穏やかなものになる。

「金原君、君はすごい。称賛に値するよ」

 称賛に値するらしい。なら、褒美を要求しよう。

「……それで、部屋はどうなる?」

 一番気になっていた質問をぶつける。

 その質問に三人はまた呆気にとられた。


「白虎、ありがとう」

「それほどでもないです、王子様!」

 サトルは白虎に持ってこさせた紙を受け取る。

 その紙はクルスト語で書かれていた。だが書かれているものは何かの設計図だった。

 ――これで完成できる。望まない形だけど。

「…それにしても、尋問を受けるなんて何年ぶりかな?あの子がいるべき場所に帰って尋問を受けたからな……」

「イリーナ・クロム……主人、また思い出すんですか?惚気話を」

 朱雀、青竜、白虎、玄武は微笑んでいた。

「惚気って……今でも彼女のことが好きですよ。グレアは違うけど」

 それに反応するように、もう一人の人格が言った。

(俺はシアナのことだけを想っている。イリーナは知らん。異世界の冒険のことは置いておけ。それすらも考えられない尋問が待っているぜ)

 グレアがサトルに語りかける。今のことを考えろと。

 ……そうだね。

「グレアの言う通りだ。……わざと事件を起こすんじゃなかったなぁ。わかっていたけど」

 当時のことを思い出すと、良い後悔をしたと思う。今となっては。

「あの時に逃げればよかったじゃないですか?私たちはいつでも主人の味方です」

 朱雀が優しく言ってくれた。

「そうだ」と、青竜も賛同してくれた。

「うん!!」

 元気いっぱいな白虎。

「……朱雀に賛成」

 芯の強い玄武。

 四人はいつでも僕についてきてくれる。感謝をしないと。

「それに、任務内容を聞いて怪しむべきでした」

 朱雀が思い出したかのように言った。

「そうだよね……金原覚を守れ、彼は」


 僕のクローンである可能性が高い……


 その言葉を聞き、四人の間で沈黙が流れる。

 その沈黙を破ったのは、サトル自身だった。

「僕のクローン……聞いたときは驚いたなぁ……」

 数日前にさかのぼる。

 ある日、司令官に呼ばれ部屋に来たとき、任務を受けてはくれないだろうかという命令だった。驚いたのはその内容だった。


『この男を守ってほしい』

『!?……なんですか?僕の悪い記憶を呼び覚ませようっていう魂胆ですか?いくら、あなたでもやっていいことといけないことがある』

『わかっている。…内容は君のクローン、今は金原覚と呼ばれている。守ってほしいのは、この男の持っている『気配感知』という能力をALKATONESSが狙っている』

『『気配感知』…!どうりで欠けている何かがあると思ったら、『気配感知』だったか・・・』

『引き受けてくれ。そうしなければ、シジン・フェインドラがこの任務を受けてしまう。これだけは避けたい』

『……!わかりました、その任務、受けます』

『頼む、お前の兄弟子は容赦しないだろう。だから、頼む……行け!!』

『了解!』


 そして、この後すぐに日本へ行き、黒時町を目指した。

 そして着いた頃には覚が健たちに絡まれているところを助け出し、接触した。

「うまくいくなんて思っていなかった。接触したときは…Secret Workersと名乗り、彼がどんな反応を示すのかわからなかった。あの時、襲ってきた場合…」

 サトルはその先を言わなかった。その意味は四人にもわかっていた。

「主人……本当に、金原がクローンであれば、私たちを使えるはずです。玄武は違うようですが」

「……ヒートは、違う。普通の人間。装化して触れても…何も反応しなかった」

 サトル以外の三人が反応する。

「装化して触れたのか!?なぜ黙っていた!?」

 朱雀が玄武に対して怒った。

 装化――自分自身を武器にして、相手に使わせること。

 信頼した相手以外にすれば――死ぬ。

「……試してみたかった…それだけ」

「それでも、危険だよ!!あの時のこと、覚えてんの!?前にクローンに触れたとき…!」

 白虎は口をふさいだ。玄武が泣いていたからだ。

 あの時のことを思い出させたかもしれない。

「…ごめん」

 白虎は頭を深く下げて謝った。


 一年前――

 この組織である極秘計画を進行させようとした。ALKATONESSに生物兵器をぶつけて壊滅させようとした計画。

 クラッシュA――サトル・クローンによるALKATONESS破壊計画。

 サトル・ユクロンの遺伝子を取り出し、複数のサトルを生み出そうとした。

 当時のサトル・ユクロンはSecret Workersの中で、ケント・スターズをしのぐ程の力を持っていた。

 この計画の主任はアック・ステーリアだった。

 最初、サトルは反対した。しかし、アックの説得により、サトルは遺伝子サンプルを渡した。ある条件を出して。

『もし目的が壊滅だけの結果を出さず、本部に被害を出したとき、僕はクローンを処分する』

 アックはその条件をのみ、サンプルを受け取り、計画を進めた。

 その最中に異変が起きた。生体構造を構成中にクローンが暴走。

 結果、三体のクローンが暴走した。これを知り、サトルはそのクローンを殺した。しかし、一体のクローンが玄武を取り、使った。

 それでサトルを苦しめた。しかし、玄武を奪い返した後、そのクローンが逃げた。


 現在――

「サトル様……あの時はごめんなさい…」

 そのことを思い出し、泣き崩れる玄武。

 それを慰めるサトル。

「泣くことはないよ。玄武は悪くない。僕が悪かった。あの計画は」

「本部長の承認がなかった計画だと知らなかったからな」

 突然、男の声が部屋に響いた。朱雀、青竜、白虎、玄武はサトルに寄り添う。

「やぁ、兄さん」

 サトルはその男を兄さんと呼んだ。

「元気か。アックの攻撃で重傷を負ったと聞いた。見舞いだ」

 男は花束を差し出した。男の年齢はサトルより年上、青い髪で目は銀色。服装は軍服を身にまとっている。

「シジン……話を聞いていたのか?」

 朱雀が問う。シジンはそれにこう答えた。

「ずっと、この部屋にいた。サトルェン、お前に知らせを聞かせるために」

「知らせ?」

 シジンがそう頷いた。

「メカロイドのことだ。ツインコアシステムの基盤ができた」

「!!」

 サトルは驚いていた。百年経ってもそんなことはできないと思っていたからだ」

「ど……どうして?僕のラボ、のぞいたの!?」

「…お前の部屋に書かれている設計図と暗号を読み取り、俺が完成させた。お前の部下を使ってな」

「部下?……みんな、協力してくれたのか?」

 部下を思い出したサトル。あれ以来、自分は孤立したものだと思ったからだ。

「アックに対抗できるもの…それはツインコアシステムしかないと、お前も思っているだろう?アルティメットシステムを完成させたアックより名誉隊長の考えた案が良いと」

 シジンの言うことに唖然となるサトル。シジンは続ける。

「それに、尋問は明後日だ。今日を入れて三日……完成させるしかない。お前、もう動いても大丈夫だろう?そんな下手な芝居をしなくてもいいんだ」

 ……兄さんはわかっているなぁ。

 嬉しい感情がこみ上げたサトルはベッドから立ち上がり、シジンに近づく。

「本部長の承認は下りているのかな?」

「下りている。奴らを壊滅させ、罪を償わせるためにだと。あとはお前の意志だ」

 手を差し出すシジン、その目を見つめるサトル。そして手を出し握手した。


 その頃、覚、絵理、健は部屋に案内されていた。

「すごい豪華…!」

「…俺の管理している部屋よりもすごいな…」

 シャンデリアがついている。壁紙も凝っているし、窓枠も良い。

「俺はあんなに汚い部屋に住んでいたのか」

 健、お前の部屋はお前が汚くしていたんじゃないか?

「ここはレディの部屋だ。お前たちは違う部屋になる」

 ここは絵理の部屋か。

 そうだよな、女がいる部屋では俺たちは身が持たん。

「えっ?でも、ここは広すぎますよ?」

 確かに、絵理ひとりだと広すぎる。

「広い部屋ほど、ここには誰も近寄っては来ませんよ。大丈夫です。では」

 ユニバーは俺と健の肩をつかみ引きずってく。

 …男はこんな扱いなのか?

 数分たち、俺たちは外にいた。

「このテントにいてくれ。誰かが近寄っても大丈夫なはずだ。それでは」

 俺の目の前にテントが張ってあった。二つ。何も反論できぬまま置いていかれた。

「……納得できるか?健?」

 健はテントを見て、俺を見て――

「じゃ、おやすみ」

「納得するのかよ!?」

 そんな健はテントに入っていった。

 何となくだが空を見上げた。星がきれいに輝いていた。

 もう夜なのか。……なんだか懐かしい気がする。この建物も最初見たときも懐かしかった。

 そんな気持ちに油断していたのか、俺は後ろから来ている気配に気づかなかった。

「貴様」

「!?」

 呼びかけられ初めて気づいた。

 なんだ!?こいつ…俺より小さい……。

「ここはトスカだ。人間が来るところではない。ここでテントを張ってもらっては困る。誰が許可したものか」

 状況がのみこめない俺。

「あんたは誰なんだ?ここは司令官が使えって言われて使っている」

 正直なことを話す。

 もしかして、言ってないんだろうか?そう言うと、小さい人は驚いた。

「司令官が……?このテントはもしや」

「?」

 小さい人が答えを出してくれた。

「お前たちは研修の者か?すまんな、連絡があまり伝わってないんだ。兵士部への所属希望か?!」

 どう答えたものか。研修?俺たちは連れてこられた……いや、言えないな。

 なんだか希望の眼差しで見られている。

「はぁ……俺は」

「そうか!!希望者か!やったー!これで仲間が増えた…でも待てよ…人間が入ってもいいんだろうか?確認しなければな…よし、お前とテントに入っている奴!ついてこい!」

 厄介なことに巻き込まれているような気がする。

 小さい人……すごい行動力だ。

「その前に聞きたいことがあるんだが」

「おい、上官にタメ口をきくとは何様のつもりだ!?しかし、答えてやろう、なんだ?」

 答えてくれるのか!?…よし、今度はタメ口ではなく…

「あなたの……」

「貴様はなんだ?!タメ口と思えば敬語で話そうとするとは!どっちかに統一しろ!」

 怒られた。…統一しろと言われているから、俺の言葉でいいか。

「あんたの名前を聞きたい」

「名前か。いいだろう、答えてやる。私はグラフェ・ストリアスだ。兵士部特攻隊長兼研修責任者だ。貴様たち、S.W.になりたいのか?もう期限が過ぎているのに……」

「期限というのはなんだ?」

 聞かされていない話だ。もっと聞こう。

「決まっているだろう。認定試験のことだ、知らなかったのか?今では千名中十名が合格しているんだぞ」

 倍率高いな!どんだけ人気なんだよ、この組織!?

「それに、認定試験は今日終わったのだぞ。午前中に……」

「そこまでだよ、グラフェ」

 突然の声に反応しその方向に向くグラフェ。

 そこに立っていたのはユニバーだった。

「司令官!こんばんは!」

「こんばんは……グラフェ、すまないがこのテントは私が張ったものだ。無許可でやってしまったんだ。すまない」

 ユニバーは素直に謝る。さっきまでの態度は何だったんだ?

「そうですか…認定試験に参加する者かと思いました。もう遅れているというのに…」

「本当にすまない」

「あんたがここで寝ろって言って寝ようとしたんだけど……」

 刹那、ユニバーが近寄り腹にパンチを受けた。

「ぐっ!?」

 激しい痛みに襲われる。グラフェはかなり驚いていた。

「すまないね、グラフェ。テントは撤去する。こいつだけはね…もう一つはまだ張っておいてほしい…いいな?」

 ドスの利いた声だ。

「はい!わかりました!!」

 ユニバーはよろけた俺をつかみガシェイトでどこかへ連れて行く。


 一方その頃、ALKATONESS本拠地アラスカで金色に光る装甲を身にまとった男がいた。

 アック・ステーリアだ。

「はぁ…プロテクターも持っていくべきだった。こんな寒いところに本拠地を建てるなんて…何を考えているんだ?…」

「遅いぞ、アック……メカロイドはどうだ?」

 黒いコートの男が聞く。背が高い。そして、声も低い。

 ……こんな声を聞いたら誰でも驚くんだが…そう思ってもしょうがない。

「クロスバーン元帥、ここまで来ることはなかったのに」

「気にするな…さぁ、入れ」

 元帥が手を差し出す。その手を取り、二人が消えた。

 そして、どこかにたどりついた。

 どこかの倉庫だった……いや、あいつから奪ったラボだったな。

「よくぞ、戻ってきた。アック」

 その老人は巨大な椅子に座っていた。

「……」

「総帥……お体の調子はどうですか?」

 元帥が聞くと、老人は頷いた。

この老人はアイトリオン・アルカトネス。ALKATONESSの創設者だ。

 総帥は何歳なのか知らない。初めて来たとき、死んだと思っていたからだ。

 しかし、生きていた。Notesにはある内戦があった。

 フラット派とアイトリオン派に分かれての戦争だった。そこに魔皇帝軍が絡み三つ巴の戦争になった。

 厄介なことにNotesはその魔皇帝軍と組みアイトリオン派を苦しめ追放させられた。Notesも甚大な被害を受けた。

 それはフラットの病死で組織がぐらついてしまった。

 その隙を狙われ魔皇帝軍がNotesに攻撃を仕掛けたが返り討ちに遭い魔法を強制的に奪われたのちに追放。

 魔皇帝が死んでしまい、その戦力を取り込み大きくなった組織がALKATONESSだ。

「計画は順調か?奴らを潰す計画はどうなっている?」

「それは抜かりなく……裏人は私の手元にあります。サトル・ユクロンは予定通りに尋問を受ける手はずになっております」

 裏人を操るのもこの組織だ。

「サトル……!奴はケント・スターズの次に消さねばならぬ存在…我が組織を壊滅寸前に追い込んだヴァンパイアめ…ごほごほ…」

 総帥は頭に血が上ったのか、体が痛んでいた。

「奴から受けた傷は治りませんか、総帥……」

「あの時のことは忘れん…。女を取り戻しに来た時のあいつの姿はリーメイルよりも化け物じみていた。あの目も忘れない……決して!」

「サトル……クロスバーン元帥、あの禁術…メカライズをしてください」

 アックは元帥に頼んだ。

「メカライズ……!正気なのか!?」

 正気のつもりだ。

「そうしなければ、サトル・ユクロンを倒せない…!装甲は気づかない間にもろくなっている…元帥、頼みます!」

 元帥は考え、決断した。

「わかった。必ず勝て。そして、潰すぞ」

「了解」

 サトル……俺はお前に認めさせる。

 たとえ、体が機械になろうとも。お前の顔を見るのが楽しみだ。























終章「メカロイド開発経緯」


 この計画は、極秘計画とする。

 開発主任兼発案者:サトル・ユクロン

 開発副主任:アリス・シェイン

 被験者:サトル・ユクロン

 開発承認:ケント・スターズ

 計画の目的、全世界への宣戦布告においての対話的解決方法。

 この計画において、兵器への転用をなるべく防ぐため、限定的な試作型を作成、装着した。

 動力源は――


 サトルはそれを握り潰した。

「動力源はまだ、決まっていないはずなのに……どうなっているんだ?」

 一人で考え、発案し、装着した。

 エンジンは動く。何が足りないんだ?

 しかし、そこで考えることをやめた。

 爆発がしたからだ。自分のラボから。

 そこに走って向かうと、自分の部下がラボごと持ち出そうとしていた。

「やめろ!!」

 しかし、その時には遅かった。

 目の前で何かが弾き、爆発したのだ。

「ふん。これで手土産はできたな」

 彼の名前はアック・ステーリアだった。

 計画書のコピーは手元にある。上司の手に握り潰された計画書だ。

 その中に続きがあった。


 現時点で考えうる動力源は機械と融合した者の生体エネルギー。

 すなわち、《機械化メカライズ》を施さなければならない。


「《機械化》……だからこそ、サトル・ユクロンか。武器族の血も含めているスペシャル。自分で発案したものに殺されるんだな。俺によって」

 そのまま、姿を消したアックだった。


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