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序章「統括の日記」
久しぶりと、あの子に言いたい。でも、言えないのよ。
何百年も離れて、やっとあの子のことを忘れかけたのに。
あれから五年?十年前?
あの子が部下になって、あまり仕事を出させないようにしてきたけど、ついには乗り込んできた。
僕に仕事をください。
なら、危険な仕事でもいいよね?この仕事はそう甘くないから。
だから、彼が苦手とするような任務を出した。
ハニートラップだらけのお・仕・事・☆
それでも返ってきたのはすごいとしか言いようが無かった。
この子は本気だ。
その子の兄弟子よりうんと可愛くて、いじめたくなっちゃう――
サトルェン・リアス・ユクロン――サトル・ユクロン!
統括――ララ・スクリアッドは日記を書き終え、見直し、顔が赤くなった。
「まぁ……メロメロってことよ。うん」
一人言い訳するララ。
「それにしても、あの子……人間嫌いなのに何でこの任務を受けたのかしら?」
任務の内容は知っている。あれは――
コクロン・ユニバーが独断で立案した計画だから。
金原覚――あの子のクローンだって言われているけど違うのよ。
最後のクローン、私が倒したし。
でも、初めて会った時の反応はあの子と似ている。
そのあとは、藤原絵理っていう子が現れて、守ってたのよね。
でも、守り方が攻撃なんて。それじゃあ、逃げちゃうと思うけどなぁ。
ララには持論がある。
甘えるときには甘えて、振るときは振る。
「襲撃の報告書も書かなくちゃ」
ララはいそいそと報告書の作成に取り掛かった。
日記帳からパソコンへ。
暗い部屋の中での作業だった。
第五話「大事なものを失うとき」
トスカ、翌日の朝――
俺は……桜の木の下で起きた。
なんでここにいるか……昨日の夜のことだ。
『ここで寝ろ、いい景色が見れるだろう?』
『…風邪を引くと思うんだけど?』
『おやすみなさい』
シュッ
『そんな!?健は違うのにこんな扱い!!絵理の二十連コンボに比べて理不尽だ!!』
こういうことだ。無言で立ち去って行った司令官を恨みながら寝た。
でも、予想以上に寝心地が良かったのでぐっすりと眠れた。
「さて、ここから出ていくか、それとも迎えがくるか…来ないだろうな…」
あの司令官のことだ。ほったらかすつもりだろう。
花田健――健のことも気になる。
考えてばかりなのか、誰かに話しかけられた。
「あれ?なんで、男がいるの?……!金原君!?なんでここにいるの!?」
「えっ」
振り返るとララがいた。
しかし、服装が違う。
白い…なんだろう…シスターの服を着ている。
「統括、どうしたんだ?」
全裸よりもましだ。美しいとさえ思える。
「金原君こそ!ここ、女の聖地よ!?男はいてはいけないの、知らなかった!?」
ララが厳しく言いながら近寄ってきた。
ここにいてはいけないのか!?あいつを恨むしかない…!
「恨んでも仕方ないよ。さぁ、移動するわよ!ほかの人たちが来る前に!」
がしっと手をつかまれガシェイトで移動された。
これは『科学魔法』であることはばっちり覚えている。
移動した先は門だった。しかし、その向こうには、あのでかい桜の木があった。
「あとは自分でいける?」
「は…はい!」
「なら、よろしい。じゃあね!」
そして、ララは消えていった。俺は恨みを見抜かれていた。
…やっぱり、あいつの師匠だと思い知らされる。
すると、ララと同じ服装をした女たちが続々と来ていた。
「あれ…ここでは見ない男の子だね。しかも日本人…誰?」
先頭の女性が言った。
「・・・?新しいS.W.(スウ)の人なんじゃない?聞いてみようよ」
S.W.――Secret Workersの略式名称だ。
「でも、今日はダメでしょ?口を利いちゃ…じゃあ…」
「「「無視ね」」」
一人の女が門を開けぞろぞろと入っていった。その行列は長く、俺は立ち尽くしていた。
「……」
俺は黙って歩き、好奇の目にさらされながら歩いた。
…美人な人がいる。彼らは見ただけで俺を日本人と見極めた。
しかし、あの一言を思い出す。
『『『無視ね』』』
「無視ね……か…」
絵理の暴力にも傷つくが、あれはすごく傷ついた。
でも、男と口を利いてはいけないことは知った。
仕方がないことだ……泣いていないよ。言っとくけど。
歩いているうちに町に出た。本当にやっぱりこの島は世界と違う。
煉瓦の街並みが広がり商店街なのか、人がたくさんいる。
…男だけ。聞こえてくるのはめちゃくちゃな言葉だった。
「クエル、クリファシオロ」
「ガンナルクリファス」
「ヤージ!!」
意味がわからなかった。これがクルスト語なのか…。
言葉の壁が出来上がると思っていたら、子どもが近寄ってきた。
「…?お兄ちゃん、誰?ここは人間が来るところじゃないよ?」
子供にも人間とわかるらしい。
「日本語、わかるのか?」
「うん」
撤回。壁はできなかった。しかし、ゆっくりしゃべろう。
ゆっくりな日本語だったからだ。あまり喋り慣れていないのだろう。
「ここ、は、どこ、ですか?」
「ここはアルージ地区。ここで買い物ができるよ。お兄ちゃん、案内してあげようか?」
「頼む」
「…た…の…む…?…お願いします?」
早速ぶち当たった!!
「そう、それ」
なんか、会話がしづらいな。
すると、俺より背の高い男が近寄ってきた。
「コクンレル、イエル?」
「アンニファリア、クイスファス…ジャルポーン」
子どもと男が会話をしている。
ジャルポーンと聞いた男はこっちを向き――
「君は日本人か。イエルと話していたようだけど何かあったの?」
「日本語、わかるのか?」
「なめるなよ、日本人。このトスカでは地球の全言語はみんな話せる」
そう言われてまた思い知らされる。やっぱり人間じゃない。
「そうか、すまん。俺は金原覚。あんたは?」
「俺はアンニファリア・イキレイス。この小さいのがイエル・イキレイス。弟だ」
男が自己紹介をしてくれた。
「兄貴、小さいって言わないでよ。よろしく、お兄ちゃん」
「うん。よろしく」
長い名前だ。アンニファリアか……。
「ジャポルーンを案内するってイエルが言っているんだけど、この子どもにそんなことはさせん」
弟想いだ。わかったのは目つきがガラリと変わったからだ。
「…ところで、ジャポルーンってなんだ?クルスト語?」
その問いにはイエルが答えてくれた。
「そうだよ、お兄ちゃん…それにしても」
「どうした?イエル?」
イエルが俺を見て考えている。
子どもに見つめられるのはなんだか恥ずかしい。
「なんか、ついているのか?」
「…あの人に似てる…サトル・ユクロン!」
なんということだ。あいつに似ていると言われるとは……!
でも聞かないとな。
「ど、どうして?」
「初めて会ったとき、同じ場所で会ったんだ。サトルも昔の英語で話しかけてきたときびっくりしたんだ」
あいつも俺と同じように話しかけられたのか。
「そうなのか……あぁ、確かに似ているなぁ……髪の長さが違うだけかな」
確かにあいつの髪は男の俺から見ても長い。
肩までかかっている髪の長さだ。
「じゃあ、一緒に案内するか!女性たちもいないし、すべての案内ができそうだ」
「女たちが」
「ちょっと待て!!」
アンニファリアが俺の口をふさぐ。な、なんだ?!
「いいか、カネバーラ!トスカでは女性たちを気軽に女たちと呼んではいけない!知らなかったからいいが、最高位聖職者の前で……女性たちの前では言ってはならない。これは掟だ。いいな?」
言い終わり俺の口を解放する。
……苦しかった、力が強い。…とにかく、女から女性と変えればいいんだな。
「わかった、女性と呼ぶよ…それにしても何でそんなにおびえるんだ?」
そう聞くと沈黙された。…そうか、わかったような気がする。
「宗教関係ってことか?」
健から聞いたのだがレジアル教が女性を守っているらしい。
「……その通り。これ以上は話せない。場所を変えよう、俺の家に来い」
手をつかまれた、イエルもアンニファリアの手をつかんでいた。
また、ガシェイトか。
移動した先は散らかっている部屋だ。
片づけたい……!そんな衝動に駆られそうになる俺。
アンニファリア……長いな、それじゃあこうしよう。
「ファリア、この部屋片付けたいんだが」
「ファリア?俺にあだ名をつけたのか…いいあだ名だ。感謝する、カネバーラ」
さっきからカネバーラと呼んでくる。かねばらは言いにくいのかもしれない。
甘んじて受けよう。
「片付けはさせてくれないんだな」
「させないよ、今はこの状態を保っている……じゃあ、さっきの話をしようか。とりあえず、すきに座っていいよ……イエル、お前はこっち」
「はい、兄貴」
イエルは言われたとおりにファリアのそばに座った。
俺は…ここでいいか。開いている隙間に座った。
「さて、宗教の話をしようか。俺たちが信仰しているのはレジアル教という宗教だ。その宗教はトスカで最初の宗教だ。これはわかるな?」
「あぁ」
「極端に言えば女性至上主義だ。最初は女性からっていうことだ。危ない仕事は男がやり、女性は危なくない仕事をする。まぁ、宗教じゃなくても男はそうすべきなんだけど」
当然のことを言っている。
納得するなぁ…だから、絵理はあんな待遇を受けるのか。
「俺もお…女性友達がいるんだけど」
「あっ、そこは普通に女友達って言えばいいよ。…気になる女の子かい?」
…ある意味では気になる。
「危険人物であることは変わりない」
「危険人物!?マダム・スターズと同じくらい?!」
驚きの声をあげるファリア。それにしても――
「マダム・スターズというのは……誰なんだ?」
「…最高位聖職者のことだ。ケント・スターズの姉…クリス・スターズのこと。…この話は…伝説の話だ。心して聞いてほしい」
そこで、ファリアは深呼吸をした。
ある日のことです。クリスさんはボーイフレンドを待っていました。
そのボーイフレンドは結婚を前提に付き合っていました。
しかし、彼は来ませんでした。翌日、彼女は彼に聞きました。
なんで来なかったのか?と。
そして、彼の答えは――
『忘れてた』
その言葉を聞き、彼女は激怒。
初めてのデートをすっぽかされたのです。そして――
「そ…そして…彼は血祭りにされました。最後のとどめは……彼を石に繋ぎ海に沈めました」
めちゃくちゃな話だ。そう感想を持った。
しかし、すごいおびえようだな……。
「その後、彼は一生をかけて謝り続け、彼女と結婚しました。その後の彼はどうなっているか知らないのです」
「知らない?どういうことなんだ?」
ファリアは汗をダラダラと流していた。
……聞いちゃいけなかったかもしれん。
それでも、ファリアは答えてくれた。
「…結婚した後、行方不明になったんだ。みんなで探したんだけど、見つからなかった。五年前の話」
「五年前!?」
…もしかして……。
「桜の木の下に埋められているんじゃないのか…?」
「…可能性としては…無いとは言いきれない」
そんな…俺が寝ていたところで埋められている可能性があるのか!?
お祓いをしたい……。
「さて、この話はここまで。それにしても、その女友達はそんなに危険人物なのかい?」
俺はうなずき、絵理のことを話した。
絵理の関係と今まであったことを話した。
話し終えたとき、ファリアはなぜかにやけた顔でこっちを見ていた。
イエルはわからなかったが。
「そうかぁ……いい関係だね。その絵理さんはそんなに危険人物とは思えない」
他人から見ればな。いや、見ても俺の視点になるだろう。
「そうか?女性の裸を偶然とはいえ、見てしまったら二十連コンボを繰り出す女性がいるのか?」
それでも、いい関係と言われるのは初めてだ。
「そうかな……少なくともカネバーラのことを好きだと思うんだけど」
唐突な発言だった。
「!?…絵理が俺のことを好き…?」
それを更に肯定するファリア。
「そうだよ。カネバーラは気づくべきだったんだ。彼女の気持ちをね。そうすれば痛い思いをしなくてもいいのに…なっ、イエル」
「うん!」
うーん…二人がそう言うのなら…。
俺も絵理の気持ちに気づけば痛くなかったかもしれない。
「よし、案内してやるよ。アルージ地区は知っているから、ヤンジ地区とスイエル地区、そして名物の場所に行こうか!さぁ、手を取れ!」
俺の冒険が始まるのか。
でも、ここに来て痛い思いしかしていない。その手をつかもう!
俺の小さな冒険が始まった。
その頃、絵理は大きい桜の木の下で話を聞いていた。
――すごい大胆だなぁ…みんなの話を聞くと。恥ずかしくなっちゃう。
どうしてここにいるのか、それは今朝のことだ。
部屋に案内されたあと、疲れがたまっていたのかすぐに眠りに落ちた。
起きたときにはユニバーがいた。
『レディ、おはようございます』
『おはようございます、司令官さん』
『ユニバーと呼んでください、レディ。朝ごはんを召し上がられますか?』
『いい匂い…ここの料理ですか?』
『そうです。名物料理なのでぜひ味わってください』
その料理を見て驚いた。こんなに輝く朝ごはんがあったなんて!
『いただきます!』
『どうぞ』
その料理を食べたときは知らない味があった。
これがトスカの名物料理…!
『おいしいです!』
『それはよかった。ルリンを和えたステーキの味、日本人の口に合うのですね』
『ルリンってなんですか?』
『果物です。ここでしか取れないので珍しいものです。それでなんですが、お願いがありまして』
『なんですか?』
『実は今日、女性のみなさんはホシザクラの下で集会を開く日なのですが、行ってみてはどうでしょう?』
『そうですか、でも…覚と健は今どうなっているんですか?』
『今は二人とも、テントに寝ていますよ』
覚と健の待遇が悪すぎる。男はこういう扱いなのかな…。
『それと、集会に必要な服装を用意しましたので着替えてください。私は仕事がありますのでここで失礼します』
『あの』
『はい?』
『真悟君は…』
『…彼は大丈夫ですよ。報告では安静にしているとか、では』
そう言ってユニバーは消えた。
ガシェイトで移動したんだろう。
便利なものね…そう考えているうちにステーキを食べ終わっていた。
この皿をどうするかわからなかったけど、部屋を見渡すとキッチンと流し台があった。そこに皿を入れた。
そして、集会に必要な服装に着替え始めた。
着替え終わるといきなり移動した。着いた先には門のところだった。
『あら、あなた……藤原さんね!』
『ララさん!』
『さぁ、入って、入って』
ララが背後にまわり背中を押され門を通って今の状況に至る。
「さぁ、今度は藤原絵理さん!」
「えっ!?」
みんながこっちを向く。注目されるとなんだか恥ずかしい。
自分もあんな話をするのか。今まで聞いた話は、彼氏が気を遣わない、ほかの女に目を向く…つまり男女関係の話だ。
仕方ないのでホシザクラの下に向かって歩く。
「この方は日本から来てくださいました、藤原絵理さんです!…藤原さん、挨拶!」
ララに催促される。
「藤原絵理です、日本から来ました。十六歳です」
そのとき、歓声が起きた。
「日本人キタ―――!」
「可愛いわね」
「彼氏いるの!?」
「やっぱり大和撫子の国、油断ならないわ!」
聞いていると恥ずかしくなってくる。
「さぁ、みんな!藤原さんは日本から来ました!彼女が恋する男の子の話を聞きましょう!……金原君のこと」
小声で金原君のことと言われる。
…!?私、覚に恋をしている!?
「えっ!?違います!…その…」
「さぁ、マイクをどうぞ!」
マイクを渡されどうしたもんかと悩む絵理。
…じゃあ、あの話をしてみよう。
絵理は金原覚の関係を話した。
話し終わると沈黙されてしまう。
えぇ!?沈黙された。ララはなるほどとうなずいていた。
「マイク、渡して」
「あっ、はい。どうぞ」
ララにマイクを渡す。すると――
「みなさん、どうでしたか!?」
「やっぱり恋をしているわ!」
ん!?
「感動したわ!彼にむかつくけど守ってくれるなんて!」
「カネバーラ、すごい!」
予想外の反響に絵理はひるむ。
「私も感動した!恋が成就するよう、最後にみんなで祈りましょう!」
「ちょっと、待って!」
そんな声が聞こえたのは後ろの方だった。同じ服を身にまとった人が私に向かってきた。その顔には見覚えがあった。
「黒井さん!?」
黒井さんがララの目の前に出てきた。
「あら、黒井ちゃん。どうしたの?」
「……マイクを貸してください」
ララがマイクを渡し、玄武が受け取る。するとこう言った。
「……ヒートは私のもの、あなたには渡さない。藤原絵理!」
全員が驚く。金原覚をヒートと呼ぶ女の子がいたなんて…と。
ララはこの事態を想定していたのか、黒井さんに質問していた。
「あらら…金原君、もてるねぇ…。でも、好きになった理由を教えて、黒井ちゃん」
「好きになった理由…それは、私を笑顔にさせたこと」
そういえば、私たち以外に笑顔を見せていない。
絵理に暗い感情が少し灯った。
「あら、それなら好きになっちゃうわね。対抗して、絵理さん。この状況はどう見る?」
でも、私の方が――!
「私の方が……覚を知っています。どんなことでも」
私は恥ずかしい台詞を言ってしまった。
これで恋をしていると確定された。
すると、遠くのほうから何か音がした。全員も不思議がっている。
空を見上げるとそこには・・・
「みんな!ALKATONESSよ!!木に隠れて!!」
ララの言う通りに全員が木に隠れた。
敵は静かに侵入していた。
「やっと、侵入できたぜ。アック!体はどうだ?」
「調子がいいよ、アルドア…《機械化》した体は最高だ。そうだな、あの木にいる女から統括と日本人と武器族を誘拐しろ、そうしたら…奴らは追ってくる。第五次大戦の幕開けとなる…行くぞ!メカロイド部隊、降下する!結界に弾かれないよう気をつけろ!」
そして、四人の部下を従いアックは降下した。
――サトル、これで俺の勝ちだ。
「なんだ!?あのでかい飛行物体!?」
俺は驚いていた、突如出現した空を飛ぶ何か。
ファリアも驚いている。しかし、驚いているのは別のことだった。
「あいつら、結界の中に入り込んだぞ!?弾かれるはずなのに!あそこはホシザクラ…!姉さんが危ない!イエル、ガシェイトは使えるな!?」
「うん!」
「兄貴は姉さんを助けに行かなくちゃならない、S.W.にこのことを伝えるんだ!お前にしかできないことだ!いいな!?」
「わかった!」
イエルが返事をした後、ガシェイトで移動した。
「カネバーラ、君はついてこないほうがいい」
でも、俺にもファリアと同じ理由がある。
「俺も守りたい存在がいるんだよ、絵理もあのホシザクラのところにいる。俺も行かせてくれ!」
『気配感知』でわかった。
前は忌まわしい能力だった。今では気に入っている!
絵理は確かにいる。
俺が守る、何が何でも!
そのことが伝わったのか、ファリアがにやけた顔でこっちを見ていた。
「お前、女友達のことになるとそんな顔になるんだな…もう一回自己紹介しよう。俺はアンニファリア・イキレイス。S.W.の武力部副隊長兼警備部隊長だ。よろしく!」
身近にS.W.がいた。
「S.W.だったのか…!」
「休暇中だけど、非常事態だ。つかまれ」
俺はファリアの手をつかみガシェイトで移動する。
待っていろ、絵理!俺が助ける!!
アックはホシザクラの下に降り立つ。
――忌々しい木だ。切り倒してやる…だが、ほかにやることがある。
統括と日本人と武器族を捕らえるだけだ…。
「ニューアルティメットシステム、発動」
ガントレットから装甲が形成される。
しかし、その装甲は金色ではなく黒色だった。
そして頭にも装甲が形成される。顔が見えなくなり顔も隠れる。
目にあたるツインアイが光る。
「さて、目標を確認。統括は…ララ・スクリアッド。日本人、藤原絵理。そして、武器族、玄武…見つけ次第捕らえろ」
「「「「ハッ」」」」
部下はもう発動している。
これで見つけなかったら…始末しろと言われている。
その時は――
「待て!」
――!来たな、金原……!!
「んっ!?あいつは…アック・ステーリアだ!気配がなにか違う!」
朱雀と同じような気配が混ざっている。
「気配がわかるのか、もしかして『気配感知』の…?」
ファリアが不思議がっている。
「今はそういう状況じゃない、あいつは危険だ」
どうする、俺!?勢いで来たけど何をすればいい!?
――お前に力を与えてやる。
「誰だ!?」
「どうした?カネバーラ?」
……創造する力を……《創造主》を…さすればこの事態、乗り切らせてやろう……。
俺の中の声がそう告げたとき俺の手が光る。
力が満たすこの感覚……。
『気配感知』……いや、あいつに『科学魔法』をかけられた感覚だ。
「お前、どうした?」
どうやら、俺に新しい力が増えたようだ。
「ファリア、下がっていてくれ。俺が、戦う」
「何を…!?……わかった、俺は応援を呼ぶ。無茶をするな、いいな?」
俺はうなずき、ファリアは応援を呼びにガシェイトで移動した。
俺に任せてくれるとは、ありがたい。
普通、俺と同じような年齢の奴は逃げ出すだろう。
でも、そうしなかったのは――
「あの声に従えば死ぬことはないだろうからだ。アック!!俺が相手だ!」
俺の挑戦に鼻で笑うアック。
「金原……お前に俺の相手が務めるのか…?」
「アック様、私が」
青い色の装甲をまとっている女性がアックの前に出た。
「アルシア、手を出すな。ブレック、フルイ、ポードル!探索やめ、待機せよ」
アックの指示で探索をやめる三人。
アルシアと呼ばれた女性もアックの後ろに立った。
「いい度胸ではないか。『機械化』を施したこの体で最初に戦うのはお前とは…少し残念で、少し感謝しよう…来い、金原」
「…メカライズ…?じゃあ、言葉通りに!」
やってやる!やってやるぞ!!
…創造せよ、力を…
「俺が創り出すのは……」
手に光が集まる。そして、銃が形成される。
引き金を引くと弾丸が出た。その反動で、腕が上に上がる。
アックはその弾丸を避け俺に近寄る。次は!
「はぁ!!」
振り抜くような動作とともに剣を創り出した。
「ふん、剣か。しかし、装甲を斬るのはまだまだ足りないぞ!!」
剣を形成し、斬りつけたが失敗したようだ。
拳が迫ってくる。こんなに近ければ避けられない。
なら、これで――!
「動かないか!」
俺は拳の直撃を受けた。
しかし、俺は倒れない。なぜなら、奴の装甲の硬さを創り出した。
つまり、奴の装甲を俺の顔につけたということだ。
「考えたか!金原!!」
めちゃくちゃ硬いものを想像したからな!
「とっさの判断だよ!!それと、これもお土産だ!!」
「!?」
アックが驚いている。
そうさ、俺の手の中には…爆弾があるからさ!!
ドカァアアンと爆音がトスカ島に響いた。
「覚…!!」
飛び出そうとする私を――
「今は出ちゃダメ!!!…金原君、大丈夫かしら…」
ララさんが止めた。
私は玄武とララさんと隠れていた。
ほかの人たちはララさんがガシェイトで移動させ、被害はなかった。
統括と日本人と武器族…それは私たちだった。
もうダメかと思ったとき、覚が来てくれた。
「こんな事態に出てくるなんて、甘いわね……私たちも逃げ出すわよ」
「さ、覚は!?」
「ヒートが時間を稼いでくれている!逃げる時は今!」
玄武が絵理を説得する。
私だって…そうしたい、けどそうしたら覚は…どうなるの?
煙から出てきたのは…覚とアック。
しかし、覚は…倒れていた。
「彼、意識が無い!」
ララさんがそう言うと私は覚に向かって走り出していた。
くっそ…やられた。
そう思ったのは遠のく意識の中だった。
声に従って行動したのに…俺は…。
絵理…来るな。奴らに捕まる。
ファリア…応援はどうなっているんだ。俺はお前に任せたんだぞ。
絵理…すまない…こんなことに巻き込んで、変なことをして…。
俺は後悔している。俺が一人で来れば…いや、こんな能力なんて無ければよかったんだ。
涙が出ていた、視界がぼやけているからだ。
アック、やめろ。統括、玄武…やめてくれ…くっそ…俺は…。
「覚!!」
目の前に横たわっている覚。絵理は絶望した。
「ふん、死んだよ。統括と武器族を捕らえたか!!」
「捕らえました、アック様」
「アック、降参するわ。あなたの要求は何なの?」
ララさんが降参した。玄武は黙ったままだった。
「要求か…戦争の幕開けだ。最終決戦、第五次大戦を開始する。そのための人質なんだよ。統括さん」
ララさんは逃げることに失敗した。私のせいだ。
「戦争か…どうして、そんなことを!?」
「俺たちには戦争する意味がある。よく見ろよ、統括さん。俺たちは元S.W.なんだよ。覚えてないだろうな。こんな下っ端のことなんか」
アックはララさんにそう言った。ララさんは驚いているように見えた。
「あなたは…隠密部のアルシア・フットレイン!武力部のブレック・ストーンとフルイ・ノリダムス!機動部のポードル・アクスリス…なんで、ALKATONESSに!?」
それは私が斡旋したからですよ、統括。
その声は、コクロン・ユニバーだった。
「斡旋ってどういうこと!?」
ララさんがユニバーに詰め寄った。
「フフッ…彼らは適合しなかったんですよ。この組織にね。そして、私はブローカーとして彼らをALKATONESSに引き渡した。奴は…特に金原は危険視していましたからね。『気配感知』を持った能力者が現れた。あのサトルのクローンと思わせ、サトルに金原を消すように命令した。しかし、失敗だった。なぜか、それは」
「それは、僕が見抜いたからですよ」
そこに立っていたのは――
「真悟君!?」
「サトル様!!」
サトル・ユクロンだった。身にまとっているのは白い服だった。
サトルは覚の背に手を当て、労った。
「金原君…いや、覚君。君を疑ってすまない。君が僕のクローンだなんて。会ったときから気づいていたのに…本当にごめん…少し休んでて」
そして、信じられないことが起きた。
「あいよー」
弱々しいけど、覚の声が聞こえる!!
「覚!?生きてたの!?」
「ヒート!!」
俺は立ちあがれない。けど、生きている。なぜなら、あの爆発の時、装甲をまた創り出したのだ。
あれが無かったら体はちぎれていたはずだ。まぁ、ユニバーの本性がわかった。そして、本当の目的もわかった。
「ちっ!!生きていたか…しかし、私を捕らえることはできんぞ、アック!!」
その合図でアックは自分の部下たちに命令を下した。
「退却する、全員ステルスモードを発動!!」
「玄武!!こっちに来て!!」
玄武は元の剣に戻りサトルのもとへ。
でも、二人が!!
「絵理!!くそ、動け!!」
体が動かない!絵理!!行くな!!
「覚!!助け…」
裏切り者と五人は消えてしまった。
ララと絵理を連れて――
「絵理ぃぃぃぃぃい!!」
俺は叫ぶことしかできなかった。
エクストラストーリー3
ファリアは急いでいた。
どうして結界が崩壊せずに敵は侵入したのか。
ファリアは警備部隊長であるため、結界の仕組みは知っていた。
原因は二つと仮定していた。
トスカを囲っている四本の柱のうち一つが見つかり破壊されたか。
それとも――
「そこで何をしているのかな?」
そうだ、この人物に聞けばわかるかもしれない!
「司令官!結界が――!」
その瞬間、目の前で爆発が起きた。
何が起きたのかわからなかった。
でも、確信した。
本部の中に裏切り者――裏人がいたのだ!
第六話「助けにいくよ、君のために」
Secret Workers本部、本部長執務室――
そこには俺とサトルとケントがいた。
「…統括の正体を知って君はどう思ったのか、聞きたいね」
俺の隣からビシビシと痛い気配が漂っている。
ケントがサトルに喧嘩を売ったのだ。
「本部長、師匠がなぜ統括になっているのかわかりません。しかし、今の事態には関係ない話でしょう」
しかし、その気配は穏やかになり冷静になった。
怒っていても仕方がない。本部長もそれに同意したようだ。
「それもそうだな…集会の日を襲撃してくるとは…私の責任だ。…奴らは戦争を望んでいるのかね?」
「そのようです。玄武にも聞きましたが、やはり第五次大戦を望んでいるそうです。捕らわれたのはララ・スクリアッド、藤原絵理…やはり、戦争でしょうか」
ケントとサトルは考えている。
戦争になるのか。絵理、無事でいてくれ。
その時、ドンドンとドアを叩く音を聞いた。
そして中に入ってきたのは――
「健!?」
どこにいたんだ!?
「覚、絵理が誘拐されたっていうのは本当なのか!?」
「お前はどこにいたんだ!?」
「それは私の責任だ。金原君。彼は次元の狭間をさまよっていた。ユニバーの策にやられたんだ。彼を責めないでくれ」
ケントがそう告げる。
部下に裏切られるのは苦しいようだ。
それにしても、次元の狭間をさまようなんて…。
「お前らしくないなぁ」
「…すまん、でも絵理が誘拐されたのか?」
その時は一緒にいた。目の前で……誘拐された。
「そうだ。俺の判断ミスだ。ファリアの応援が来ると思っていたのに」
「ファリア……アンニファリアのことか?」
ケントが険しい目つきで聞く。
「はい、そうです」
「…ファリアは重傷を負っていた状態で発見された」
「えっ!?」
だから、来なかったんだ。
「おそらく……司令官が」
ケントはサトルを咎めた。
「サトル、奴は司令官じゃない。裏人だ、区切りをつけろ」
その一言でサトルは黙ってしまう。
信頼していた上司に裏切られたら悔しい気持ちになるよな。
俺に上司はいないが。
「…仕方ない、奴らの要求を呑もう。戦争を始める」
「本部長、その判断は」
ケントの性格を知っているのか、サトルは止めた。
「人質がいる。知っている、我々は後手に回るしか他はないだろう」
その時、ピリリリリリリ……とサトルがつけているブレスレットが鳴る。
それに応えるサトル。
「どうしたの?…できたのか!よかった…でも、使うときは」
「サトル、ツインコアシステムができたんだろう?隠すな」
ケントもサトルのことをよく知っているらしい。
「うっ……こっちの話、じゃあ後で行くよ」
ピッと通信を終えるサトル。
ツインコアシステム?何だ、それ?
「じゃあ、行ってくれ、サトル。私はこのことを副本部長と各部の部長に知らせて戦闘準備を整えさせる。これが、私のできることだ。サトル、嫌なことでも、やらなければならないときはやるしかないんだ。わかったな?」
「わかりました。金原君行こう」
「おうよ、健。俺の手をつかめ、ガシェイトで移動するそうだ」
「あれか」
健は俺の手をつかんだ。
そして移動して、着いた先は少し暗い場所に着いていた。
地下か何かだろうか。
「名誉隊長!!お待ちしておりました」
走り寄ってくる女性だった。それにしても、美人だ。
この島は美人だらけだな、男もだが。
「アリス副隊長、協力感謝します。こんなことをしないで自分の研究に没頭すればいいのに」
アリスは首を振り反論した。
「夫があんなことをしでかしたんですもの。ヨセフ、夫を連れ戻して来て!!」
「わかりました。ところで、肝心のアレは?」
「できています。あとは調整するだけです」
アリスがサトルを案内した。
案内した先はパワードスーツが鎮座しているところだった。
コードがまだ収納されていない、まだ作っている途中のようだ。
「…シンクロ率はどうなっているかな」
「はい、九十パーセントを超えていますが百パーセントまでまだ超えていません。装着者がいないと超えられないと思います」
シンクロ率について問題点を挙げるアリス。
「ふむ…アプスとイプスはどうなっている?搭載は完了しているかな、それとシステムはまだ入れてないのかな?」
その質問を受けアリスは答えられなかった。
アプス?イプス?何だ?専門用語なのか?
「アプスとかイプスとか何かわからないぞ。サトル」
少し答えるのに躊躇しているが、答えてくれた。
「…そうですね。アプスはAir Pointer Systemのこと。つまり…どう言えばいいのか…空間を触るためのシステムですね」
「空間を触る?」
「はい、このシステムがあれば宙を浮いたまま移動することができるんですよ」
つまり、無重力で移動ができるのか…すごい技術だ。
「イプスはEnergy Pointer Systemのこと、エネルギーを触るためのシステム。仕組みはアプスと同じ。まぁ、見えない攻撃を探知するためのシステムだね」
「ふむ…すごいなぁ」
健が感心している。
でも完成してないのか…。
「ところで、名誉隊長!」
アリスがサトルに質問をした。
「アリス副隊長、ヨセフでいいですよ。名誉隊長は名前だけの勲章ですから」
名誉隊長と呼ぶなということらしい。
「わかりました…ヨセフ、その少年は《創造主》に覚醒したと報告が来たんですが、本当ですか?」
そのことを言われたサトルはアリスから目を逸らした。
《創造主》……あの時の能力か。
「俺がそうだよ。それが」
「覚、お前もか」
健が信じられないことを言う。
「え?」
俺は健を見る。…嘘だろう?
「お前、変な声を聞いたのか!?」
「あぁ…次元の狭間で聞いたんだよ。女の声で覚醒させてやるからここから出ろってな…《創造主》って何なんだ?」
信じられない…俺は女性と男の混じった声で聞いたのに…。
「……ヨセフ?」
「はい…」
サトルはアリスに睨まれていた。
「隠していたのね……?」
サトルは汗を流していた。
…この光景、どこかで見たことがあるなぁ…俺か…。
「…仕方なかったんですよ。本当なんです。何で覚醒したのかわからないんです。呪いの暴走かもしれません」
呪いの暴走!?
「でも実験体がのこのこと集めてくれたのは感謝するわ」
「「実験体!?」」
俺と健の声が合う。
よく合うなぁ。感動を覚えるよ。
…でもこの事態を抜け出すことに力を尽くしたい。
「実験って…何をするんですか?」
「…脳の波長を調べます」
脳の波長を調べるのか…見間違いかな、メスのような刃物を持っているんだが。
「アリス副隊長、何をするんですか…?」
サトルも見たらしい。わかるだろう?実験体は俺たちだけじゃないということ。
「波長を調べるのよ?」
同じ回答を繰り返すアリス。
しかし、それは途切れた。
「そこまでにしておけ!!」
突然、男の声に俺たちは驚く。…!目の前にいた!!
「だ、誰だ?!お前は!?」
「俺はシジン・フェインドラ。兵士部四大兵長の一人、そしてサトル・ユクロンの兄弟子だ。《創造主》が二人に増えたのか…俺も《創造主》だ。覚醒ではなく実験によって能力が発現した。…ところで、アリス副隊長、作業はどうなっている?」
長い自己紹介だ。
…兄弟子?しかし、印象に残るなぁ…他の奴らとは違う雰囲気だ。
「印象に残っているのは、そいつがくぐり抜けた修羅場の数だ。お前と俺では違うぞ」
また、見抜かれてしまった。ここに来てから見抜かれてしまうことが多いな。
「は、はい!!アプスとイプスの搭載が難航していまして!シンクロ率は百パーセントに届いていません!」
アリスは完全に上の空だったらしい。
「そうか……サトル、ブレスレットにツインコアシステムを搭載したこいつをインストールしてくれ。そのあとは装着をしながらシンクロ率を高めていけばよい。どうだ?」
「やってみます」
サトルはパワードスーツに触った瞬間、パワードスーツが粒子になってブレスレットに入った。
そのあとの光景が形容しがたいものだった。
「インストール完了。…何にしよう…よし!Normal[T.C]system、発動!」
まず、サトルの着ている服が黒色になりタイツのような形になる。
その上に白い装甲が形成された。腰から足へ胴から胸、腕に広がっていく。
しかし、コードが出ている部分もあった。サトルは装着を完了した。
「う〜ん…しっくりこないなぁ。身長が伸びたのかな?まぁ、いいや。やってみたよ、兄さん」
シジンも想像していたのが違ったようだ。
「……そうだな。装甲が小さい。このままではいかんな。アリス副隊長」
「はい」
「カリア隊長も呼んでくれ。それと特殊班と分析班も呼んでほしい、できるか?」
「わかりました、呼んできます!」
アリスは走り出した。
「サトル、お前はこのままシンクロ率を高めておけ。自動修正システムも搭載しているはずだ」
「わかりました」
すごい、指示がスラスラと出てくる。
俺たちも指示されるんだろうか。シジンが近づき、こう言った。
「お前たちは俺と来い。行くぞ」
シジンは手を光らせて、パンと叩くと移動していた。
一方、アラスカの地下にて。ALKATONESSに捕らわれたララと絵理は牢屋にいた。
捕らわれた後、アラスカの本拠地に移動させられ牢屋にいた。
「…はぁ…降参するって言わなかったほうがよかったかも…」
ララさんは後悔していた。何で降参したんだろう?
「何で、言ったんですか?」
「…能力、覚醒したでしょ」
「………」
沈黙のあと、絵理はうなずいた。
…覚が倒れたとき、私の中で何かが目覚めた。
深い闇のような憎しみ…名前は…何だっけ?
「《闇神》…何なの…この能力…?」
「…その能力、使わない方がいいかも。その能力を使う能力者の結末を知っている。その能力は…」
「憎しみを相手にぶつけ、自分もその憎しみを受ける。統括、私が先に言いましたよ」
そこにいたのはユニバーとアックだった。
「ユニバー…あなた、こんなことしていいの!?」
それをゆらりと避けるユニバー。
「降参してきたのはそちらだ。あの時点で負けだと知ったのはあなただけだ。今、戦争を仕掛ければ我らが勝つ。クローンを利用して…連れて来い」
「ハッ!」
アックはどこかに行き、すぐに戻ってきた。
そのクローンの姿は驚くべきものだった。
「真悟君!?」
「…!弟子君!?」
倒したはずなのに!ララは呆気に取られた。
「このクローンはサトル自身が処分できなかった一体だ。そこから、新たにクローンを作りだし、今は…百人、それぐらいだったな?」
遺伝子があれば……何体でも作り出せるんだっけ!?忘れてた!!
「その通りです…」
「そんな…これじゃあ、本当に負ける…」
ララは絶望を感じた。
自分が育て、数々の修羅場をくぐり抜けた弟子ならばSecret Workersを破壊してしまう。
「まぁ、安心したまえ。サトルの持っている能力は無い。そこまではできなかったからだ。数はこれで解決しただけだよ」
「何で…そんな情報を教えるのかしら?あなたは私たちの敵なのに」
一瞬、ユニバーの顔が引きついた。
「フッ…相手に余裕を見せつけ優越感に浸る…これこそ、最高の自己満足だ。私はこれを経験したかったのだよ。…まぁ、こっちに来てこれを経験するのは嫌だったが仕方がない」
最後の一言が聞こえないくらいに声を小さくしたユニバー。
「司令官!!」
「何だ?一号」
突然、サトルのクローンがユニバーに話しかけた。
「この女性方々は何で捕まっているのですか!?」
「ふむ、まだ記憶が安定してないか…悪いことをして捕まえたんだよ」
「そうですか!!それだけです!!」
…?何?この会話…何だろう…このふつふつとくる感情は…。
私はあの変人になった幼馴染を思い出す…!
「フッ…一号、ここで見張れ。できなければ、ごはんなしだ」
「了解しました!!」
ユニバーとアックは去っていった。そして、重い扉が閉まる音を聞いた。
「はぁ…ねぇ、一号。あなた、友達いるの?」
突然すぎる…絵理が思った。
そもそも話しかけて返事などしてくれるのだろうか。
「はい、何でしょう?友達は二号から百号までいますよ!!」
……馬鹿?
ララは話し続ける。
「そう…ねぇ、お姉さんがいいことを教えてあげるから、ここを開けて頂戴」
「……」
クローンが反応しない。…何だろう、この間…。
「いいことって何ですか?女の体の神秘ですか?」
絵理は唖然となる。
このクローンは本当に何を考えているの?
ララさんも唖然しているよりも顔が赤くなっているし…。
「え…えぇぇぇええ!?お、教えられないわよ!!ここで!」
「教えるんですか!?」
変人ばかりだ!
「おー」
クローンは何を言っているのかわからないらしい。
さっき記憶が安定していないことは…今考えているこの時間も忘れていることじゃ…。
「何だ、教えてくれないの…お姉さんと…妹さんは誰?」
しかし、クローンは普通の会話能力があるらしい。
「私はララ。妹じゃないけどこっちは絵理。でも、何で女の体の神秘を教えてもらおうとしたの?」
それに真顔でもじもじしながら答えた。
「えっと……百号について知りたいんだ。何でそんなに胸が大きいのかって。聞いたら『女の神秘よ』って言われたから」
百号は女の子…?私はこのクローンのことが知りたくなってきた。
「私からも聞きたいことがあるの?答えてくれる?」
「いいよ。絵理ちゃん、何が聞きたいの?」
まともなこと……といえば。
「百号って強いの?」
その時、その言葉を聞いて一号の顔が何かにおびえているような顔をした。
「…強いよ。他のクローンたちより。何ていうのかな…頭があがらない、彼女に。彼女がやることに口を出したら殴られる」
「…そ、そうなの…?でも、優しいでしょ?」
真悟君のクローンだから優しい……一号は私から目を逸らした。
そうでもなかったみたい。
「優しい…か…優しくない。失敗したら殴られる。二十連コンボは懲りたよ」
やっぱりこのクローン…覚に似ているところがある。
「二十連コンボってどんなものかしら?」
ララさんが質問をした。…その質問をしたらひるむでしょ?
「に…二十連を説明しろと…?嫌です、あの痛さは思い出したくもありません!彼女の繰り出す技の数々に恐怖を覚えていますから」
「そこまで教えなくていいわ、一号!!」
話していて気づいてなかったのかそこには女の子がいた。
「…!!百号様、違います、この話は聞かれて答えただけです!」
「聞かれて?へぇ〜聞かれたら答えるんだ?」
そこで一号の沈黙が始まった。汗を流し始めた。これぞ本当の修羅場。
それにしても、百号はサトルが女の子になるとこうなるんだ。
絵理はそこに感心していた。
「ねぇ、百号ちゃん。そんなに彼を責めないでよ。私たちが話しかけてきただけだから」
ララさんは、彼は悪くないと言った。
「ふぅん…まっ、いいわ。敵に機密情報を教えていなければ…の話だけどね」
「そんな情報は彼の口から聞いてないわ。それにしても彼にも他のクローンたちよりも厳しいのかしら?」
ララさんが質問をした。
気になっていることだけど、ララさんもすごい意味で質問をしているなぁ。
「そうね。私が一番強いんだから当然のこと。一号は最弱だわ、他のクローンたちに馬鹿にされているの。そこで私が直々に鍛えてあげるんだ、戦争の前にね」
「…ふぅん」
「…何よ、その返事。気になるわ、意味を教えなさいよ」
「いや、教えたら…あなた…恋をしているんじゃない?」
その解答に反応したのは一号だった。
しかし、意味がわかっておらず、首をかしげただけだった。
そして、百号の顔がみるみる赤くなっていく。
「わ、私が恋をしているですって!?何を言っているのかしら、このおばさん!!」
「あら、お姉さんよ。私の方が年上なんだからそんなことを言っても無駄よ」
そんな言われようは慣れていると言っているようだ。
統括は何があっても動揺しないように鍛えられているのは本当だった。
「……」
「……」
今、俺たちは次元の狭間にいた。
いや、ゲートの中にいると言ったほうが正しいだろう。
シジンに連れていかれたところはここだった。
どうしてここにいなければならないのかと質問したら――
『《創造主》として覚醒したお前たちは俺と同じ修業をした方がいいだろうという判断で来た…異論はないな?』
こうして俺たちは修業をしているのだ。
「…健、聞いてもいいか」
「何だ?」
「こんなことをやっていいのかと思わないか?シジンはどこかに行ったし、どうせ俺たちは戦争に参加はできないと思うんだ。そこで」
「逃げ出そうなどと思うなよ。金原!!」
…!?いついたのかわからなかった!!しかも聞かれていた!
「確かに、お前たちは戦争に参加はさせん。その代わりに、あいつの吸血に耐えられる体を作ろうとしているのだ!わかってなかったのか!!」
わからなかったよ!
「初めて聞いたよ!!…でも、本当に殺されてしまうのか?」
この修業の最中に健から俺はサトルの吸血で殺される予定だったらしい。
そして、殺された俺から能力を取ると…。
この年齢でファンタジックな殺され方で死にたくない。
こうして修業をしている。……座禅をしながら。
「お前の体は耐えられないだろうな。絶対に」
耐えられるという問題なのだろうか?ほかにあるんじゃないかと考えたところに。
「ヒート!」
「玄武!?どうして?」
俺は立ちあがろうとするが足がしびれて立てない。
玄武は近寄り…俺を抱きしめた。
この行動に俺は戸惑ってしまう。
なぜならやわらかいものに触れて……?あれ
「硬い?」
柔らかいはずなのに何故か――硬いのだ。
「ヒート!!私の胸…どう?」
顔を赤くしながら強気になる玄武。
そして、殺気を感じた。そう、俺は玄武しか見てなかった。
玄武の後ろに朱雀、青竜、白虎が俺を見ていた。見下す視線で。
「玄武、そこから離れろ。金原を始末しなきゃ…」
刀の刃が首に当たっている。
「妹に賛成だ」
背後から冷気が漂っている。
「変態……殺す……!」
俺は生き延びられるのか、その問題が出されたような気がした。
答えは…生き延びられない。
そして、玄武を除いたブジンの三人が俺に地獄を見せてくれた。
わかったことは、ブジンの拳は硬かった。
どうやら金属でできた彼女たちは硬ければ固いほど、強く美しいことだった。
……殴られているときにシジンから聞いた言葉だった。
これが効いたのか俺の意識は完全に世界からシャットダウンされた。
その頃、S.W.本部大会議室では各部の部長と副本部長、本部長が集まっていた。
「知ってのとおり、トスカにALKATONESSが現れた。そして、兵士部統括のララ・スクリアッドと日本人の藤原絵理が拉致された。この問題は早期に解決すべき問題である。従って我々は最後の武力行使をする。すなわち、戦争をするのだ」
大会議室はケントの言った言葉に戸惑う。
なぜなら、相手の要求を呑み、そのあとはこの組織を解体するという意味が込められていたのだ。
そして、一人の男が立ち上がった。
「本部長、敵の要求を呑むのですか?それならば、我々は後手に回ることを意味する」
武力部隊長のジョー・ミレイだった。
他の隊長たちもそうだとジョーの意見に賛成した。
「確かに後手に回るかもしれない。しかし、容易に手は出せない。奴らからの連絡を待つのみだ。宣戦布告をしてきたのはアック・ステーリアとコクロン・ユニバー元兵士部司令官だ」
そして、何かの通信が入ったのか。空中ディスプレイが現れた。
そこには――
「やぁ…S.W.の諸君。覚えているだろうか…儂はアイトリオン・アルカトネス。ALKATONESSの総帥だ。もっとも覚えているのは、ケント・スターズだけだがな」
アイトリオンが映っていた。
ケントと各部の隊長たちは冷静だった。
何度もこのようなことがあったからだ。
その度に、本拠地への逆探知をしているのだが失敗をしていた。
「よぉ、元気かい?俺様の家族を攫った罪は重いぞ。じじい!!」
ケントは元々口が悪い。
「フハハハハハ……元気だけはいいな。ケント…さて、話をしようではないか。第五次大戦について」
やはり、戦争を避けることはできそうにないな。ケントはそう思った。
しかし、ここでの交渉がうまくいけば人質を返してもらえるかもしれない。
「やはり、戦争が目的か?人質は無事だろうな!?」
「無事だ。しかし、クローンの相手をしてもらえるとはありがたい。そのクローンとは・・・知っているだろう?一年前のクローンだ」
一年前、クローン…。まさか!?
「サトル・ユクロンのクローンか!?しかし、サトル自身が…」
一瞬、ケントの頭によぎる。報告書の内容を。
二体は処分、しかし一体はどこかに逃げたことを。
「逃したクローンは我が手中にある。そのクローンをオリジナルとして九十九体もクローンを作り上げた。アックによって。百体目のクローンは特別だ。ケント、お前の力をはるかに超える力を持っている。戦力としては少ないが…アックとコクロンがいれば…この戦争は勝ったも同然だ」
「…そうか、すごい戦力だ。歯が立ちそうにもないな」
どよめく大会議室。それをあざ笑うアイトリオン。
…ここまでは順調だな。
「こんな戦力は太刀打ちできない。だから、人質を返してもらえないかな?」
「ほう…交渉か…。人質は二人。一人はそっちの統括。もう一人は…日本人か…。その代わりに何を差し出す?」
乗って来たな。
「戦争の場所の決定権、勝った場合の優遇、そして…俺様の命をあげよう。戦争に勝てた場合の話だがね」
「本部長!」
止めにくるジョーに構わず――
「…どうだ?この条件、お前にいい条件だと思うが?」
これでいい。奴は俺の血が欲しいのだ。
「わかった。では人質を返そう。今から戦争を開始する!場所は…」
この世界のありとあらゆるところだ。
そこで通信が切れてディスプレイが消える。
その時、外で何かが爆発した音がした。…戦争が始まったか!!
「全員、会議は終了!!戦闘準備を整え!奴らの本拠地はわかったか!?」
「わかりました!アラスカです!!」
…アラスカか…やっぱり変わっていなかったか。
しかし、油断はできない。戦争はありとあらゆるところで開始されている。
支部がうまく働くかどうか…。そう考えているうちにある人物に声をかけた。
「カリア隊長!いないか!?」
「ここにいます!」
「メカロイドはどうなっている?完成しているのか?」
あれがあればどうにかなるはずだ!
しかし、そうはいかなかった。
「まだです!調整が終わっていないことです!!今から手伝いに向かう途中であります!」
難航しているか…。
サトルの発明を兵器に転用させることは禁止にしていたが、この事態とシジンによる演説で転用の許可を出してしまった。
しかし――責任逃れはしない!
「これが最後の戦い…私も出る!私と兵士部特攻隊で本拠地を攻める!」
「あなた、危険です!本拠地はサトルのクローンが百体いるのですよ!?あなたと同じ力を持っているかもしれません!」
クリムがケントを止める。
…そうだよな…妻はわかっている。
ケントは妻を抱きしめ――
「大丈夫だ、生きて帰る。約束する」
ケントはガシェイトでどこかに移動し自分の妻を置いて行ってしまった。
「あぁ…いてて。…!?何だ、これ!?」
目覚めると俺は…何かを装着して立っていた。
しかも、何か騒がしい。
「目覚めたか!?金原!!」
ゴンと頭を叩かれる。…ゴン…?
「シジン!これは何だ!?」
目の前が真っ暗だ!しかし、徐々に視界がクリアになっていく。
「メカロイドだ。お前と健はこれから戦争に参加してもらう!」
「戦争に参加!?参戦じゃなく!?」
「…そうだ」
何だろうか、怒っているような気がする。
しかし、俺は今、メカロイドを装着しているのか。
どうりで視界が広くなっている。
「作戦を説明する。一度しか言わないからよく聞け!!」
「わかった!!」
「作戦内容はALKATONESSの本拠地、アラスカに潜入する!本部長もアラスカに向かう!気を付けてほしいのは敵の迎撃があるかもしれないことだ!そして、金原と健は人質の救出がメインとなる!ここまではわかったか!?」
大声で作戦内容を告げるシジン。
その作戦を聞いているうちに緊張と不安が押し寄せてきた。
絵理と統括の救出か。絵理、助けるぞ。
「わかった!」
「よし!では、出撃する!!特攻隊、出撃カウント!始め!!」
特攻隊、出撃準備整いました!三、二、一……
出撃タイミングを金原覚、花田健、シジン・フェインドラ、レイシェント・オリビア、ナチア・ル・ラリアン、本部長に譲渡します!!
「なんか…ガ●ダムみたいだな。よし、金原覚!!出撃する!!」
その瞬間、何かに引っ張られ俺は外に放り出された。
そこは青い空。あぁ、いい眺めだ。
視界がクリアだし結界の色さえもはっきり見える。
もしかして肉眼では見えないんだろうか?
そう…俺は空から落ちている!!
「うわぁあああ!!」
「落ち着け!!空中に浮かぶイメージをしろ!!天からの綱に引っ張られるような感覚だ!!」
綱に引っ張られる感覚…!?
……やるのだ、我が守る…我の声を聞け…
「また、あんたか…ハァッ!!」
気合いを入れて踏ん張ると空中に浮いた。成功した!!
「喜んでいる場合じゃないぞ!!敵は来ている!!装備はインストールされているはずだ!それを『武器、展開』と言え!!健、落ちるぞ!!気を抜くな!!」
「は、はい!!」
健もメカロイドを装着しているのか!?
でも、やはり敵がいる。結界を壊そうとしている。
あれを突破しなければならないのか。やるしかない!!ここまで来たんだ!!
「武器、展開!!」
すると手に光が集まり武器を形成していく。それは刀のようだった。
……空中で動くときは…鳥をイメージしろ。まっすぐ向かえ…
「鳥の様にか…やってやる!」
鳥を頭の中でイメージすると体が前に進んだ。
そのまま速度を高めていく。
目の前には結界を破壊しようとする敵がいた。俺はそのまま敵にぶつかる。
「ぐはっ!!」
敵をつかんだまま飛び続ける。
「ハァアッ」
そして斬りつける。
敵は海へと落ちていったが海に落ちる前に消えていた。
「その武器は斬れば斬った相手を本部の牢獄に転送される。このまま、アラスカに向かう。防衛線は大丈夫だ、行くぞ」
シジンが催促している。他のみんなもついてきている。
なら、行くしかない!!そのままアラスカへと向かった。
「自己紹介がまだだったね。カネバーラ」
銀色の装甲をまとった隊員が声をかけてきた。
「あんたは?」
「僕はレイシェント・オリビア。兵士部四大兵長の一人で特攻隊員。よろしく」
レイシェント・オリビアか…オリビアは女性の名前だと思うんだが…。
「よろしく」
そして、その横から赤色の装甲をまとった隊員も声をかけてきた
「俺はナチア・ル・ラリアン。兵士部四大兵長の一人で特攻隊員だ。この作戦、成功させるぞ」
「俺も成功させたい、よろしく」
ナチアは渋い声だな。迫力がある、ジョーと同じくらい。
「みんな、この作戦は戦争を最短時間で終わらせる作戦だ。気を引き締めてくれ」
ケントが気合いを入れるよう指示した。
「「「了解」」」
「「わかりました」」
最短時間で終わる戦争か。現実もそうであってほしい。
「本部長、敵の戦力はどうなっていますか?」
シジンが質問をした。ケントはそれに答える。
「奴らの戦力はアックが率いるメカロイド部隊。そして…サトル・ユクロンの百体のクローンだ」
「そうですか…サトルのクローンが生きていたとは…」
クローン……強いだろうなぁ。
「そして、百体目のクローンは特別らしい。逃したクローンをオリジナルとして増やしたそうだ。ところで、サトルは出撃していないそうだがどういうことだ?」
シジンは黙っている。…まさか、完成しなかったのか!?
「そうか。奴はゲートで来させる。本拠地を見つけ次第、座標を手に入れる。・・・敵は待ってくれるかどうか運次第だな」
「その通りですね。…申し訳ない、ツインコアシステムがまだ完成していないんです」
ツインコアシステム…希望の光みたいだな…。
「なら、完成させる前に戦争を終わらせよう。希望は待っているだけじゃ来ないものだ」
俺の言ったことが意外だったのか、誰もが沈黙した。
「言う通りだな。目標は近いぞ。もっと速さを上げるぞ!一列に並べ!!」
本部長の号令に従い、一列になる。
寒さが近づいている、もはやたどりつくのは時間の問題だった。
「みんな…出撃しちゃったか…」
サトルはそうつぶやいていた。
実はシンクロ率を高め百パーセントにたどりついたが、装備の完成が遅れていた。
「気を落とすな。本部長はアラスカに着いたら座標を送るらしい。そこにゲートを開けてお前を出撃させるらしい。さて、あの装甲を解析してみたらいい発見が見つかった」
「武器のことですよね。ルシフェウス・トリガーの進化形ですよね?」
自分しか取り扱えない武器を思い出した。
「そうだ。それにもう完成してある…だが、問題点が見つかったんだよ」
「問題点?何ですか?」
カリアがあの盾のような武器を取り出す。
「反動が相殺しきれないことだ。試行錯誤して、最小限の反動になったが…なくせばよかったんだが…申し訳ない」
「大丈夫ですよ」
僕はそれを受け取る。
そして、朱雀、青竜、白虎、玄武が近寄ってきた。
みんな、心配しているようだ。みんな、涙目になっている。
「主人、行かなくていいんですよ。本部長はサトルが来る前に決着をつけると言っていました」
朱雀は優しいな。
「我もそう思う。せめて」
「うちたちを連れて行ってよ、王子様!!」
「サトル様…!!」
青竜、白虎、玄武も優しいな。
ふぅ…女性の涙には敵わない…。
でも、ブジンであってもその前に女性なのだ。
きれいな顔に傷とか痣をつけさせたくない。
「いや、これは僕の戦いだ。みんなを巻き込むわけにはいかない。メカロイドは君たちよりも強力で怖いものなんだ」
「でも、それでは私たちの存在意義がありません!!戦うために生まれたブジンは死ぬときも戦うこと」
朱雀は黙った。青竜、白虎、玄武も…抱きしめたからだ。四人を。
「存在意義か…それなら、無事を信じてくれ。僕は必ず帰ってくる。そうしたら、S.W.を辞めるから…そうしたら、五人で父さんと母さんを探しましょう」
その言葉で四人は泣いた。泣かせる気はなかったんだけど…ごめんね。
「隊長!!ゲートが開きました!!」
「サトル、出撃準備はできているか?…彼女たちをついてこさせてもいいんだぞ」
彼女たちを辛くさせないため――でも、僕には辛い。
メカロイドは僕自身の汚点だ。消さないと。
「いえ、僕だけで出撃します」
僕はゲートに向かって歩く。
数々の記憶を思い出しながら、歩く。
本当に最後の戦いだ。気合いを入れないと…死ぬ。
嫌だったけど、使わせてもらう!お前の力を!
「サトル・ユクロン、Ultimate[T.C] Mchaloid Suit System、出撃する!!」
ダンッと床を蹴りゲートへダイブする。
「主人!!」
振り向かない、帰ると言ったのだから。
そして、ゲートは閉じた。
第七話「最終決戦」
その頃、アラスカ――
悟のクローンが待ち伏せをして奇襲攻撃を仕掛けられた特攻部隊。
「…やっぱり、あいつと同じ攻撃を仕掛けてくるか…全員聞け。奴らは笑いながら攻撃を仕掛けてくる…むかつくと思う人、手を挙げてくれ」
全員、手が挙がる。そう、耳を澄ましてみると――
「アハハハハハハ!!」
「アハハハハ!」
笑いながら銃で攻撃してくる。
…それにしても悪趣味だ。数は五体。身体能力も高いらしい。
…それにしても本当にむかつく!!
「攻撃を仕掛けた方がいいのでは?このまま続くといずれ撃ち殺されてしまいます」
もっともな意見を言う…レイ。レイシェントの略。
あだ名をひそかにつけた。レイと呼ぼう。
「そうだな。最初の難関を越えなければサトルを移動させることができない。もうすぐ来るはずだ。そのうちに何とかしないと…」
ケントは作戦を考えていた。しかし、それはやらなくてもよかった。
「では、私を行かせてください」
そう言って素早くクローンを一体殴る…ナチア。
そのままの動きで残りの四体のクローンも倒してしまった。
「ナチア…ここは本部長の出番じゃなかった?」
「いや、いいんだ。レイ。ナチア、すごかったぞ」
ケントがオリビアをレイと呼んでいた。
「ありがたきお言葉……さて、乗り込むぞ」
ナチアはそのまま門を吹き飛ばした。
彼が持っている武器はクリティカルハンマーという大槌。
当たれば何でも吹き飛ばす効果があるらしい。
「行くぞ。もう敵には来ていると知れ渡っている。ぐずぐずするなよ」
「了解!」
「わかった」
そのままナチアに続いて俺たちは侵入した。中は暗い。
メカロイドの視界で多少は見えるものの見えないものもある。
そしてナチアが止まった。
「クローンだ。人質もいる…統括と…日本人だ」
日本人――絵理!?
「絵理がいるのか!?」
「誰だぁぁあああ!!敵かぁぁぁあああ!!」
ドドドドドドドドドとマシンガンの弾丸がプロテクターをかすっていく。
…危ない奴だ。サトルの性格を凶暴に変えた奴か…?
とりあえず物陰に身を隠す。しかし、ケントが前に出てしまった。
「よっ…サトルのクローンだな?私はケント・スターズだ。おびえることはない。その人質を返してもらいたいのだよ」
「俺の名前は八十六号だ!!…お前がケント・スターズ…本当か?そのプロテクターを外してもらう!顔を出せ!!」
その命令に従ってケントはプロテクターを外した。何をしているんだ!?
「確認した。人質は返してやる、行け」
絵理とララがケントのもとへ向かう。
…!!その時、気づいた。八十六号がマシンガンを構えていた。
俺はとっさに刀を投擲し、八十六号に突き刺さり消えた。
「ナイス判断だ。助かった、これで作戦は終了だ」
ケントがそう言った。これで作戦は終わった。俺と健は絵理に近寄る。
「絵理!!無事か!?」
「うん!!怖かったよぉ……グス…」
絵理……。
「よく来てくれたわ…疲れたわ。…本部長、敵は奥にいます」
ララがそう告げる。
……やっぱりこうなるか。俺は刀を持ち、絵理に向かって構えた。
「なっ…何するの、覚!?」
決まっている。俺は刀を振り、絵理を斬った。
すると皮らしきものが引き裂かれその中にはクローンがいた。
驚いているララにも斬りつける。同様にクローンが現れ、二体は消えた。
「『気配感知』で気づいていたのか?金原」
もちろんだ。でも――
「…悲しいことだ。斬りかかるなんて…二人はまだ奥にいる。それも下にいる」
俺の態度に健が怒った。
「何で…斬りかかった!?突然すぎるだろう!?」
ショックなのはわかっている。でもな――
「健…お前もわかっていたはずだ。二人は違う存在にすり替わっていると」
俺がそう言うと健はうつむいた。
本当のことを言われて気づかされたんだろう。
俺の手は、まだ震えている。
「君はやはり放っておけないな。この戦争が終わった後、私のガードマンになってくれ」
「その願いは作戦が終了してから考えます。行こう」
俺は先頭に立って歩く。
やはり来た。クローンが何体も来る。数えて…九体か。
その時、上から攻撃を受ける!あの青い装甲は…!!
「何をやっていると思えば…Secret Workersか。フフッ…そこの坊やは…金原覚ね?」
「アルシア…君が消えてどうしているかと思えば…こんなことをしていたのか?」
ケントはやりきれない思いだろう。味方が、敵になったから。
「本部長…お久しぶりです。でも、今は敵…覚悟」
合図でクローンが襲い掛かる。
しかし、俺たちはクローンを斬り、殴り、撃ち、突き、打つ。
そうこうしてクローンは一人残らず消えていた。残るはアルシアだけ。
「くっ!!ハァア!!」
アルシアはケントに向かって斬りかかる。冷静さを失っている。
ここまで攻められたことを悔やんでいるんだろう…だから気づいていない。
レイがアルシアを撃ったのだ。
「そんな……アイトリオン様…」
アルシアは消えていった。アイトリオン…攻めなければならないな。
これで最後だ。ケントは覚悟を決めた。
「この揺れ…」
ララは揺れを何度か感じていた。やっぱり――
「…覚が来てくれた!!」
私はそう感じた。まさか、来てくれるなんて。
「くっ…一号!!」
「はい!!!」
百号が一号に命令する。
「敵が来たわ。あなたを守らないといけない!!シェルターに急ぐわ…」
「待ちまたまえ。百号」
百号は振り向く。その相手は――
「ユニバー…!これで終わりよ!!」
ララさんはユニバーに降伏を促した。
しかし、ユニバーは鼻で笑い――
「終わりじゃないさ…統括。百号。君も前線に来るんだ。一号は放っておけ」
百号はそれに反論した。
「そんな…一号は弱いのよ!!私が守らないといけないの!!そのことをわかっているの!?」
一号はまた首をかしげる。
何もわかっていない様子だった。百号は一号の肩をつかみ――
「一号、よく聞いて。私は百号、わかるわね?」
「うん!!百号」
一号の記憶が不安定になってきていた。
「…これで会うのは最後かもしれないから、あなたに名前をつけるね」
一号はその言葉の意味がわからなかった。
私は、この場面を映画とかで観たことがある。
「名前…?僕は一号!それでいい!!」
「…でも、私が勝手につけるから気にしないで。あなたはイルファ。そして、私をこう呼んで…マリア…と」
マリアは涙を流しながら一号に名前をつけた。
そして、ユニバーは無言でマリアを連れて行った。
「……?イルファ…マリア…?マリア、どこに行くの?」
一号――イルファはやっと、マリアがどうなるのかを知った。
「さようなら…生きていたら…会いましょう」
そして、無情にもその声は扉のきしむ音でかき消されマリアの姿はいなくなる。
「マリア…?どうしていなくなるの?僕は…うぅううう!!頭が痛い!!」
頭を抱えてうずくまるイルファ。
「イルファ!!彼女がいなくなるわ!ここを出しなさい!」
これをチャンスと見たのか、ララがイルファに頼んだ。
「頭が…痛い…!!何だ…思い出す…!そうか…僕は…俺は…こうなることに逃げていた。…マリア……おい、お前ら」
イルファの口調が変わる。
…この状況は危ないんじゃ…
それでもララは何か確信があるのか、答えた。
「…何かしら?」
「…ここから出せば、マリアを助けられるか?師匠」
ララさんを師匠と呼んだとき、ララさんは戸惑った。
「…師匠はあの子しか呼ばせないんだけど…いいわ。助けてあげる。でも、肝心のところはあなたがやるのよ。イルファ!」
「おうよ!!」
…変わりすぎじゃない?
そしてイルファは鍵を素手で壊した。そしてララさんが出る。
「ほら、行くわよ。絵理ちゃん!覚に会わなきゃ!」
「はい!!」
私はついていく。何としても元の場所に…覚と健がいる場所に!
私は悩んでいた。本当にこんなことをしてよいのかと。
マリア――百号と言うべきか。自分で名乗ったことは今までのクローンを見てきて初めてのことだ。
特別の存在とも言える…。
「百号…いや、マリア。私の勝手な判断でイルファから遠ざけてしまった。私は後悔している」
すると、マリアは首を振った。
「…いえ、いいんです。イルファはお兄さんのような存在です。どうあっても人間のような恋人にはなれませんから…サトル・ユクロンを倒せば…すべて、終わるんですよね?」
彼女は涙目で聞いてきた。
…はぁ…もし、レジアル教を信仰していなかったら私は彼女の気持ちをあざ笑っていただろう。
「その通りだ。問題は…奴に惚れるなよ」
「ど、どういうことですか?」
私の唐突な発言に困惑するマリア。
「一号はサトル・ユクロンそのものなんだ。会えば、わかるさ」
「まさか…会わせる気で…」
そこでまた揺れる。
直感でサトル・ユクロンが来ているとわかった。
彼は怒っているはずだ。そこでこのクローンをぶつけてやる。
そして――
僕は待ち伏せを受けたみたいだった。
僕が相手をしていたのは…メカロイド部隊だ。
一人いないが…男だけで助かった。ようやくあいつを解放する。
…いや、一緒に戦うことができる!!
「グレア、行くよ!!」
(おうよ、サトルェン!!)
その瞬間、コアと装甲が二つに別れた。
そして、コアにある文字が浮き出す。
しかしクルスト語で書かれている。しかし、意味はわかる。
アルファベットに直すと一つはS、そしてもう一つはGだ。
「気を付けろ…奴は一人だ。人格が二つあるだけであって」
「おせぇぞぉぉぉお!!」
グレアは殴りかかる。
その拳は装甲を破壊した。そして装甲をまとっていた人物も消えた。
「一人、転送…ライズ・トリガー展開」
歪みが現れ、手を入れて武器を取り出す。
盾と銃…そして、刃が合わさった武器が現れた。
そして残りの敵も一閃した。その速さ、風のごとく。敵の姿は消えた。
「戻って。この状態は長くは続かないから」
「わかった、戻るぜ」
装甲とコアが合わさり二つになった。
「さぁ…乗り込むか…アックも待っている…?何だ?この反応。メカロイドのコア反応が…六…?そうか、みんなも来ているんだ。行かねば」
僕はガシェイトで移動した。
「各員、あの攻撃には当たるなよ!!」
現在…手強い相手と戦っていた。相手というのは――
「フッ…金原…お前を殺す…!」
アック・ステーリアだ。
ナチアは地面に沈められて本部に転送された。
レイも同じく攻撃を当てられ転送。
残るは俺と健、シジン、ケントだけだ。
しかもクローンも多い。もう、まずいところまで来ている…。ここまでか。
「お前ら、待てぇぇぇえええ!!」
その時クローンの後ろの方から大声が響いた。
そこにいたのは――サトル!?絵理!?
「絵理か!!絵理、無事だったか!?」
「覚!!無事よ!!」
「金原君!私たちは大丈夫だから戦って!!」
「クローンども!あいつらを殺せ!!命令だ!」
しかし、クローンは動かない。それどころかアックから離れていく。
「どうした!?敵はあっちだ。戦え!!」
アックが焦りだした。
「戦うわけがない。アック」
その声は…あぁ…あんたはこっちの人間だったか……
「ユニバー!!どういうことだ、クローンが…百号?何をしている?!」
「今は…マリアよ。みんな、イルファの指示に従って!!」
はい!!
……女性がいる。しかも可愛い…。
あいつのクローン…なかなかいいじゃないか。
「さて、僕の出番ですよねぇ!!」
いつの間にか…白色の装甲をまとっている人物がいた。…遅いんだよ。
「サトル!!」
「お待たせ!!…アック。…決着をつけよう」
「その通りだ…来い!!サトル!!」
アックはサトルに飛びかかる。
それをサトルは避ける。
そして、サトルは素早い動きで武器を振る。その斬撃はアックの腕を切り落とした。
そして、驚いた…腕が…機械になっていた。
「なっ…これは《機械化》…!?どうして…どうして!!」
サトルは絶望していた。その隙をアックに突かれた。
「お前を超えるためだぁ!!」
切り落とした腕が機械だと知り油断したサトルはアックの攻撃を受け、プロテクターが頭から外れてしまう。
そのまま、クローンがいるところまで吹き飛ばされてしまう。
「フッ…ここまでか!?サトル!!」
「まだまだぁぁぁああああ!!!」
クローンを吹き飛ばしながらサトルが飛ぶ。
…アプスは飛ぶための物か。
俺も使っていたけど。
「そうこなくては!!」
「うおぉぉぉぉおおおお!!」
サトルがアックの前に迫ると驚く行動にでた。
「消えた!?」
サトルが光になって消えたのだ。そして五秒が経つと――
「ぐあぁぁぁぁああああ!!」
アックの体が分解し四肢が無く胴体だけの体になった。
そしてサトルが現れた。
「これで終わりだ。お前はもう…動けない」
…わかっている、何か聞いたことがあるぞ。でも言わないぞ。
「これで、終わりだな」
「ぐぅ」
そこにはケントと老人がいた。…誰なんだ?
「裏切ったな…コクロン・ユニバー…」
ユニバーを恨めしそうに見ている老人。
「アイトリオン、裏切ってはいません…もともと、スパイでしたので。本部長に頼まれて引き受けたんですよ。マリアはわかってくれました」
「ええ」
…それじゃあ…聞いてみよう。
「司令官、質問があるんだがいいか?」
「何かな?」
「俺より健と絵理の扱いが良くて俺の方が悪いのは、味方を騙すためのものか?」
目を逸らされてしまった。
このことでわかったのは、スパイでもS.W.でも関係なく俺を悪く扱っていたのだ。
…ふつふつと来る感情を抑えながらその行動を起こさないように制御していた。
「何故だ…何故、俺は勝てない…!!」
アックは体がバラバラになっても動いている。
「アック…君は《機械化》を施して強くなったつもりでも、副作用を抑えなければ勝てないよ」
「何故だ!?」
「メカライズは…失敗している術式なんだ。コアとスーツを必要としない次世代型のメカロイド…君の体はもう機械の体だ。…残っている敵もいるみたいだし話はここまでだ」
そう言った瞬間、床が崩れ出てきたのは巨大なロボット!
…敵ってこれ!?
「アックはそこまでのようだ。アイトリオン様、今助けます!!」
ロボットの中から人の声が聞こえた。
「クロスバーン!やれ!S.W.どもを蹴散らせ!!」
老人が元気づいている。
「くっ…奥の手があったとは…ん!?何だ、この気配は…いや、気配じゃない……プレッシャーか!?」
ケントがそう叫んだ。
…確かに…プレッシャーを感じる。
……このプレッシャー…懐かしいなぁ…そう、絵理が怒っている。
何かの能力が発現したんだろうか?
「何でこんなことになるのよ…やっと終わったと思ったらまだ、抗うのか!?」
「絵理ちゃん!?《闇神》ってそんなことで発現するの!?」
ララが焦っている。…こうなった絵理は止められない。
止めたら巻き込まれるからだ。
「何だ!?あの日本人は!?」
クロスバーンが驚くのも無理はない。
絵理が飛びかかったのだ。
そして黒く光る手で殴ると、大きな凹みができる。
…あぁ…見たくない。ロボットがどんどん小さくなっていく。
そして、爆発した。人影が脱出しているのを見た。
これで、絵理の暴走は止められるだろう…そう思ったのに…絵理がこっちを向いた。
「覚…次は…お前だぁぁぁああああ!!」
「えぇぇぇぇええ!!??」
次は俺!?いや、冗談を言っているんじゃないよね!?
助けようとしたのに!!
「覚君、今の彼女はおかしいです!呪いの感染によって能力が強くなりすぎています!君が相手をしてください!花田君もお願いします!」
「えぇ!?」
健、嫌がるな。俺も嫌なんだから。
…さて、レディのお相手をしよう。
レディって言いなおしたのは…彼女のためだ。
「絵理、無事でよかった!…その、強くなっているね!!」
精一杯だった。それで絵理の歩いてくる音がドシンと響いている。
ドシン、ドシン…ピタッ…俺の前で止まった。
「強くなっているかぁ…女の子にそんなことを言うのは御法度って知っているよね。私だけの御法度だけどね?」
都合がいいな。低い声で言われるとすんなりと受け入れてしまうよ。
でも――
「…絵理、怖い目に遭ったんだ。俺も戦うのは怖い。でもお前を助けるために」
「ために…?私のためってどういうこと?」
うぅ…視線が鋭い…でも負けてはいけない。
恥ずかしいが言うしかない!
「…俺はお前が好きだからだ!!」
「!!」
…長い沈黙が流れる。
わかっている、こんな場面で言う台詞じゃないこと。
でも言うしかなかったんだ。すると絵理の顔が赤くなっていく。
『気配感知』を使うと…彼女の中でいろんな感情が渦巻いているのを知った。
…そうだよな、好きでもない男に、好きって言われてもな。
俺だけか――だが、絵理の答えは違った。
「私も…好きです…。だって…守ってくれる人があなただから。ごめんね、覚。覚が離れると…私…怖くて…健も行っちゃうと…どうしたらいいのかわからなかった」
俺は初めて絵理の気持ちを知った。
…申し訳ない気持ちになった。
守ってくれる人がいないと…か。俺、そんなつもりじゃないのに…そうなってしまったか。
「絵理、これからも俺が守ってやる。変なことをしでかすかもしれんが…」
その瞬間、抱きしめられた。
俺はその抱擁に今までの疲れが吹っ飛んだ。
だから気づかなかった。白い布にくるまれていることに。
そして…俺は眠りに落ちた。
……金原、ひと時の話をしよう。
何だ?
…私は…消える。元の体に戻るのだ。我が主…サトルェンの元に。
そうか…そうなったら、俺は普通の人間になるのか?
……そうだ。元に戻る。しかし、元に戻せないものがある。
何だ、それは?
…『気配感知』が離れないのだ。お前から…どうやら、お前のものになってしまったようだ。そこでお願いがある。
わかった。
……何も話していないぞ。
俺は受け入れる。能力があっても俺は俺だ。変わらないことだ。だから、教えてほしい。最後の願いだ。……お前は誰なんだ?
…教えてやろう。俺はジャン・ユクロンであり、私はクリア・リアスであり・・・闇なのだ。
俺は目を開けると…そこにはいつもの部屋の天井だった。
…いつもの!?驚いて立ち上がる。…いつもの部屋だ。
アラスカは!?どうして、ここにいる!?
その時、テレビの音声が聞こえる。テレビを見るとそこには驚きのニュースがあった。
世界各地で起きた謎の爆発が収まりました。黒時町での爆発も収まり、避難していた人々も帰っていきます。
爆発…?そして、俺は見つけた。
黒い封筒を。その封筒を開けると、手紙はこんな内容だった。
第五次大戦に巻き込んですいませんでした。君は今、この手紙を読んでいる頃には戦争も終わり、元の生活に戻っています。でも、失敗したことがあります。君の記憶だけ戦争のことやSecret Workersの記憶を喪失させることはできませんでした。そこで、お願いがあります。このことは誰にも話さないでください。藤原さんや花田さんにも。しかし、トスカでの変化の記憶は抜けていませんので今まで通りに接してください。さようなら
手紙はそこで終わっていた。…サトルか。俺と同じ名前のいい奴。
「こんな別れは耐えきれん…げっ!!学校が始まっているじゃあねぇか!?」
俺は急いで着替えて学校に行く。
ドアの鍵が閉じてあるのを確認して走る。
走って門に着いたとき、驚いた。
なぜなら…学校が半壊していた。…戦争か…嫌だな。
偽物だったけど、絵理を斬った。傷つけた。
でも、二人の声が聞こえるまでには収まっていた。
「「さとるぅぅぅううう!!」」
「絵理、健!」
二人は慌てて俺に駆け寄ってきた。
絵理は俺に平手打ちをした。
「どこに行っていたの!?心配したよ!?」
「お前、今までどこにいたんだ!?」
二人に心配された。…話そうと思ったがやめた。
奴の願いだ。叶えてやるよ。
「俺はちゃんと避難していたぞ。見忘れていたんじゃないか?」
おどけて見せた。それでやっと、二人が安心してくれた。
「…そうなの…よかったぁ…」
俺も……よかった。
「絵理」
「何?」
「心配かけてすまんな。それでだが…俺と付き合ってくれないか?」
「!?」
絵理の顔が赤くなる。…初めて言ったんだけどなぁ。
正確には、好きだ――そう言ったんだかな。
「はい…よろしくお願いします!!」
「絵理!?ど、どういうことだぁ!?何で覚を選ぶ!?覚、てめぇ…!!」
「いつでも相手になってやるよ。絵理を守るのは俺だ!!」
俺は健に喧嘩を売る。…そうだ、これが…俺の望んでいたことかもしれない。
奴も元気でやっているだろう。
あっ……玄武に謝れないなぁ。
終章「新たな戦い」
「…ヒート……グス…」
ヒート――金原覚をちゃんと別れさせなかったことをサトル・ユクロンは悔やんでいた。
「玄武、泣かないで。また会えるさ」
玄武に言う。また会えると。
…僕もそんな気がする。…あのあと、ツインコアシステムが呪いを回収してくれた。それで殺さずに済んだ。
それで、僕はまだS.Wでいる。なぜなら、僕の居場所はここしかないからだ。会社はまた新たな敵に苦戦しているからだ。だから、僕が必要なんだと。
ピロロロロロロロロロロ………ピッ
「ユニバーだ。BASCLINEが現れた。その地点から五キロメートルだ、行けるか?」
ユニバーは兵士部司令官に復帰できた。統括のおかげ。
それでもBASCLINEが現れた。アイトリオンが逃げて創立したのだ。
「行けます!ただちに向かいます!!」
ピッ
「行くよ、アック」
かつて敵だった名前を呼ぶ。
「はい、サトル。…はぁ…こんな体になるとは…」
「文句は言わない!!行くぞ!」
僕はロボットに話しかける。
…アック・ステーリアだ。こんな体になったのは《機械化》の進行を止めるため。
完全な機械になれば意志はなくなるからだ。
「ほら、行くよ。玄武、また会えるから…彼が忘れなければ」
「…はい……サトル様」
玄武は武器に戻り懐に入った。
さて、行こうではないか!!僕は移動し…たどりついた。
やっぱり苦戦しているじゃないか。
メカロイドを量産して、すぐに終わるはずなのに。
「お前は…!!」
「僕はサトル・ユクロン!」
Secret Workersだ!!
そして、彼の戦いは続くのであった、それは終わりのない戦いであった。
終




