18.~情報交換~
また追加で書いていきます。
行き当たりばったりで申し訳ありません
「ね、ねぇ、そろそろ話も終わりにして降りないかい?」
山田が恐る恐る話しかけてきた。
時間を掛け過ぎて見張りが戻ってくる恐れもあると思いはじめていたこともあり、ここから離れなくてはいけないのではないかと俺も内心では思っていたが、
どうにかこの女と敵対しない様に治めたかった、欲を言えば仲間に引き込みたいと考えていた。
「あらぁ、山田さん大丈夫よ、私の持ち場の交代は後30分以上残ってるから他の奴らなら暫くは来ないから安心してよ?」
「でもさあ、あまり長居して新井が戻ってきたら…」
「大丈夫だってあんなヘタレ、変なことしたら原型も留めないくらいぐちゃぐちゃに出来るんだから」
恐ろしいことをさも簡単に言葉にする女に少し嫌悪感を示していると考えが読めたのか、笹川がこちらに向けて話してきた。
「小此木優、分かるわよアンタの今の気持ちは、でもしょうがないじゃない。アイツ私のこと犯そうとしたのよ?恨むぐらいするでしょ?まだ生かしてあるのは私が慈悲深い女だからよ」
「自分に酷いことをしてきた相手に対して辛く当たるのは分かるけどいちいち兄貴の力を使うのはちょっとどうかと思うけどな」
『お兄ちゃん』を指さして皮肉交じりに言う。
「アンタ何か勘違いしてない?私も身体能力は飛躍的に強くなっているのよ?新井なんて、バッチバチのボッコボコよ」
どうやらこいつは兄貴の力を使って三階のグループを押さえつけているわけではないようだ。
力でここのリーダーをねじ伏せ、実質リーダーの座を自力で奪い取ってしまったようだ。
まぁそれ故に、本当にリーダーとして認められているかどうかは分からないところではあるが…。
「いや失礼、どうにも想像できなかったものだから」
「あのねぇ、私だってアンタと同じ保菌者なのよ?そこらの人間に負けるわけないじゃない!って言っても新井は保菌者だけどね」
「それもおかしくね?女のキャリアと男のキャリアの強さを測るんなら普通男の方が勝つんじゃないか?」
「私もそこは勘違いしてたわ。でも違った現実にはやっぱり個体差があるんだと思う」
保菌者にあてはめなくとも確かに女より力のない男も居れば男より強い女もいて当たり前の話であった。
笹川の細腕からは想像もしない力が出るのだろうか?はたまた力を入れる時だけ筋骨隆々の筋肉達磨に変化するのだろうか?
その力をこちらに向けられないようせいぜい気を付けようと思う。
「何か勘違いしていない?腕だけ太くなったり全くしないからね」
「何故わかる?」
「アンタが考えてることくらい分かるわよ、薄っぺらい考えね、そんなんじゃあこの先、生きていけないわよ?」
「女の感は甘く見ないこと」
笹川は、人差し指を立てポーズをとっている、何かノリノリだったがその仕草もすぐさま止めて口を開いた。寒い奴め。
「ところでさぁ、アンタたちそんなに私達に見つかりたくないのに、なんで三階まで上がってきたの?」
この笹川の疑問に浩平が口を開いた。
「下の階に行ってから俺たちは安全圏を広げる作業をしていてね、
各自探索をしていたんだけど一人ゾンビに囲われてしまってその人を助けるためにみんなで救出班と囮役をしてたわけ、んで俺たちは囮役、
何とかゾンビを誘き出し、救助も成功したんだけど今度は猿みたいな変異体が現れたり、まぁいろいろあったって感じかな?」
笹川は眉を顰めながら思考しているような仕草を向け真剣な様子で浩平の話を聞きき口を開く。
「変異体…ね、もしかしてあの猿の出来損ないみたいな奴かしら?あいつが出てくるとちょっと厄介なのよねお兄ちゃんと私なら何とか撃退できるかもしれないけど…でアンタたちは命からがらにげて来たってわけだ?」
「まぁ逃げて来たってことで合ってる、流石に一体殺すのに死にかけたからな、そいつが何体も一階中央広場に現れたって話だから…」
そう優が話を続けようとすると笹川妹は驚いた顔で話を遮った。
「一人であの化け物を殺したの!!?あいつかなり硬いわよ?考えてるような硬さじゃないまるで岩みたいで普通に刃物の刃筋すら立てるのは難しいのに!どうやったの??」
「そんなに攻撃が通じない様には思えなかったんだが…金属バットで手はぐちゃぐちゃに潰せたし、山人刀を目に突き立てて脳を破壊してやっただけだ」
優は実際に死を予感したこともあり簡単には殺せないことは意識していたが少し強がるように言っていた。
「なるほど、戦力としては申し分ないわね…私の名前は琴音、笹川琴音よ。アンタ私の仲間になりなさい。嫌なら単なる協力者ってことでもいいわ、どう?」
「どうと言われても、もう浩平達のグループに居るしな…協力関係なら別に良いぞ」
仲間になるとしても三階組のメンバー構成や個々の性格、どういった経緯の持ち主が多いか、誰を警戒すれば良いのか、または自身に敵対しそうな者の存在の有無など、結局のところややこしくなることは避けれない問題であったし、入ったばかりの一階組を一日と経たないうちに抜けるのも気が引ける、現状の把握や友人の安全などを確認してからでなければ優は上手く動けないことを悟っていた。
「それで良いわ、話が早くて助かる。今は使える人間を探してるところなの、単純に生きるためというのが一つよ、これは今この現状に対峙している人間にとって共通の目的と言える。二つ目は、私事だけどお兄ちゃんのために情報が必要、だから新井も普通の人間より強いし、人を統率するための強制力もあるから情報集めに役立つはずよ。今度改めて紹介する。」
「俺らのグループの頭も中々統率は取れてるようだけど?」
一階組も来たばかりで分からないが、航平、遼、晴が居ることからしてもまだ判断材料は多い筈である、実際のところ1人しか会ったワケではないのだけど…。そして三階組から離脱するほど両者の思想は異なっている状態と考えられる現状。
友人が居なければドライな関係ほど楽なものは無く、こちらに身を置いても良かったと割り切ることが今の優にはできた。ただ多少の怪我をしても直ぐ治ってしまう保菌者と違い、普通の人間は三階組に寝首をかかれたり裏切られる事が怖いのだろう。
「ああ瀬戸内さんね?何かうさん臭くて嫌なのよ、ああいう人間は信じすぎると痛い目に合う、下に戻るならアンタも注意しなさい」
「まぁ、俺も何か暑苦しいのは苦手だからな、行動を制限されたり俺の目的を妨げる様ならここを出て行く事も視野に入れてはいる。」
「目的?」
「ああ、航平や遼や晴を最低限守れる様にここへ来たわけだからな。お前らが俺の連れに手出ししなければ俺は敵対しない」
「守るべき対象ね、言葉だけで言うなら胡散臭い、でもなんだろあんたは何だか信用出来そうな気がするわ、ちょっと馬鹿そうだし」
「もっと馬鹿な奴らが周りに居るからな、俺はまだマシな部類だ」
そう言って携帯電話をポケットから取り出し、笹川と連絡先を交換する。
「また何かあったらお互い連絡しましょ」
その言葉を最後にエスカレーターへ向き直りそろそろ出発しようと歩き出したとき、携帯のバイブが鳴った。
携帯を見てみると一階から連絡がグループできた様で3人共それぞれに携帯を取り出していた。




